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ビデオストリーミング急増に伴う課題を解決したAWSがテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞

2020年の混乱の中、何百万もの人々がオンラインビデオでニュース、情報、スポーツ、エンターテイメントを求めていました。 このことは、オンデマンド配信で世界中の視聴者数が39%増の7億7,000万人という記録的な伸びを示したことからも明らかです。ビデオストリーミングはすべての地域で増加し、 Conviva によれば、2020年第4四半期のストリーミングの時間は2019年と比較して44%跳ね上がりました。

これにより、OTT(over-the-top)、IPTV、その他のストリーミングプラットフォームからの動画コンテンツの量が増え、コンテンツプロバイダーにとって複数の課題が生じました。視聴者の増加により、インターネット上のトラフィックが増えたことで輻輳も増え、信頼性の高い動画ストリームを安定して配信することが難しくなりました。同時に、コンテンツの選択肢が増えることで、バッファリングなどのパフォーマンス上の問題に対し視聴者の忍耐力は低下します。 1つのストリームに問題があると、視聴者は他にも多くの選択肢があるため、すぐに「チャンネルを変える」ことができます。 その結果、見栄えの良い動画コンテンツを何百万人もの視聴者に同時配信できる、より優れた動画圧縮技術がコンテンツプロバイダーにますます求められるようになりました。

全米テレビ芸術科学アカデミー(NATAS) は、ビデオ圧縮分野における AWS テクノロジーに対し、2つのテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞をAmazon Web Services(AWS)に授与することを発表しました。 これらの賞では、少ない帯域幅でより高画質な映像を視聴者に届けるためには動画圧縮を最適化することが、お客様にとっていかに重要であるかが認められ評価されました。

2020 年に獲得した1つめの テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞「大規模処理最適化圧縮テクノロジーの開発」は、AWS クラウドの弾力性を利用したビデオ品質とファイルサイズを最適化する技術を評価しています。この技術は、並列化により各エンコーディングジョブに多くのコンピューティングリソースを引き出しています。より多くのコンピューティングリソースを投入することは圧縮を改善するための1つの方法として常に行われてきました。 つまり従来の放送データセンターでは、トランスコーダの大規模な物理サーバーファームを構築していましたが、ほとんどの場合、フル活用されない機器に多くのコストを費やしていました。しかし、今は多くの企業がコンピューティングおよび分析のワークロードを従来のような企業所有、あるいは共有のデータセンターからクラウドのインフラに移行しているため、もはやアセットのトランスコードとパッケージングは、一定レベルのリソースに制限される必要はありません。クラウドでは、ビデオをトランスコードする必要があれば簡単にスケールアップできますし、ジョブが完了したらスケールダウンします。この組み合わせにより、アセットのパッケージングとトランスコードの処理時間短縮、品質の向上、帯域幅の削減、コストの削減を実現しました。 AWS は、ビデオ素材をエンコードおよび圧縮できるよう刷新したソフトウェアスタック、特にAWS Elemental MediaConvert サービスの 高速トランスコーディング 機能で、このカテゴリーを獲得しました。

高速トランスコーディングは、ファイルベースのビデオエンコーディングジョブの処理速度を最大25倍向上させます。様々なデバイスや解像度での視聴をサポートするために、ビデオを複数の出力フォーマットに変換することに利用されるAWS Elemental MediaConvertの1つの機能としてリリースされました。 例えば、24時間放送のプレミアムテレビネットワークであるEPIXでは、高速トランスコーディングを使用して4K UHDコンテンツをストリーミング用に変換し、米国の約7,000万の有料テレビ視聴デバイスに配信しています。 高速トランスコードを追加することで我々のお客様は、リニア放送と並行して、ソーシャルメディアで、より多くのコンテンツを迅速に配信することができるようになりました。

しかしながらリアルタイムビデオ圧縮技術の向上に必要なことは、コンピューティングリソースだけではありません。よりスマートになることも求められるため、ここでは機械学習が重要な役割を果たします。 ビデオエンコーディングの最大の課題の1つは、圧縮効率と知覚する品質の間で最適なバランスを探ること、言い換えれば視聴者にとってビデオの見栄えがどうかということです。 インテリジェントなコンテンツ認識エンコーディングは、ビデオクリップのコンテンツに応じてリアルタイムでビデオエンコーダを構成し、映像の複雑さに基づいて必要なビットだけを割り当てます。

2つ目のテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞では、 品質指定可変ビットレート(QVBR: Quality-Defined Variable Bitrate Control) と呼ばれるAWS Elementalのコンテンツ認識技術が評価されました。QVBRは、たとえば高速にアクションが行われるスポーツのような、人間が画質の違いに気づきやすいシーンをエンコードする際にはより多くのビットを使用する点で「スマート」です。スタジオの解説者を映しているときのような、より静的なコンテンツに切り替わると、QBVR はエンコーディングに割り当てられるビット数を減らします。 そのため、QVBRはビデオソース内のビデオの各フレームの全領域を分析し、情報の違いに対処するためにビットを自動的に割り当てます。複雑なビデオセグメントでは高いビットレートを使用し、あまり複雑でないビデオセグメントでは低いビットレートを使用します。 これにより、コンテンツプロバイダーは視聴者に安定的な品質の動画を提供し続けることができます。 この性能をさらに高めるため、AWSはモーション補正された時間的フィルタリングを実行する新しいクラスのアルゴリズムも開発しました。これにより、ブレなど高速モーションシーン中にビデオ品質を損なうアーティファクト(ノイズ)が削減されます。 AWS Elemental QVBR を活用しているメディア業界のリーダーカンパニーには、FOX、SonyLIV、Cengage、EPIX、Glo などがあります。

スケーラブルで弾力性のあるクラウド処理と、QVBRや高速トランスコードなどの新しいテクノロジーにより、コンピューティング負荷の高いワークフローは処理時間を短縮し、スタジオ基準のトランスコード品質を満たすことができます。

2021年10月10日(日)に全米放送局協会(NAB)との提携でオンライン開催が予定されている第72回テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞授賞式にて、今年のテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞の受賞者が表彰されます。詳細については、こちらのサイトをご覧ください。 https://theemmys.tv/tech/

放送局やオンライン動画配信サービスプロバイダーは、動画インフラストラクチャを強化し、高品質の視聴エクスペリエンスを提供するためにAWSを利用しています。 たとえば、Prime VideoおよびDiscoveryでは、お客様のお気に入りのコンテンツがストリーミングされるとき、バックグラウンドではAWSが使用されています。 CBS Interactive (CBSi) は、AWSを使用して広範なオンラインコンテンツネットワークをサポートし、March Madnessからスーパーボウルまで、主要なイベントをストリーミングしています。 また、DiscoveryおよびFOX NE&O(ウォルト・ディズニー・テレビジョン)は最近、AWSおよびAWSパートナーのEvertzやSDVIと緊密に協力し、メディアサプライチェーンをクラウドに移行しました。

AWSメディアサービスの詳細については、こちらをご覧ください。

AWS Media & Entertainment 参考コンテンツ

AWS Media & Entertainment Blog (日本語)

AWS Media & Entertainment Blog (英語)

 

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翻訳は BD山口 賢人とSA金目 健二が担当しました。原文はこちらをご覧ください。