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基調講演 Liveblog【後編】クラウドが Women in Techに機会を拓く – AWSパブリックセクター サミット 2021
今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、今年のAWS公共部門サミット・オンラインの基調講演(キーノート)を担当したマックス・ピーターソン(vice president of international public sector at AWS )とテレサ・カールソン(vice president of worldwide public sector and industries)によるキーノートの「後半」の模様を、速報のLiveblog形式でお届けします(前半はこちら)。今からでもご登録をいただければ、基調講演とブレイクアウト・セッションの全てがオンデマンド視聴可能です。
Workforce(労働力)の未来とテクノロジー
開始50分:[マックス・ピーターソン]基調講演前半では、テクノロジーやクラウドに習熟した労働力(workforce)の重要性について、多くが語られました。そしてこの分野では、テレサ・カールソン(vice president of worldwide public sector and industries)は長年に渡って提言を続けてきた第一人者です。ここでテレサに戻ってきてもらい、未来の労働力(workforce)について、もっと教えてもらいましょう。テレサを交えて、モリーン(Maureen Lonergan、director of AWS Training and Certification)と タリカ(Dr. Tarika Barrett、 CEO of Girls Who Code)の3人に、平等なトレーニング機会の提供とスキル開発が、いかにインクルージヴで多様な、世界トップクラスの労働力の”厚み”を生み出すことに貢献するかを語ってもらいましょう──基調講演 後半の鼎談(Fireside Chat)を始めたいと思います。
開始51分:[テレサ] AWSのトレーニング&サーティフィケーション部門を、文字通り「スクラッチ(ゼロ)から」立ち上げてきたモリーンと、Girls Who Codeという若い女性たちにコンピューター・サイエンスを教えるNPOを運営するタリカの2名をスペシャルゲストに迎えられたことを、とても嬉しく思います。 モリーンは若い頃、アフリカ、モザンビークで教師をしながら生活をしていました。若い女性たちに機会を提供する必要があると、そこでも感じていたのです。タリカが所属するGirls Who Codeはこれまでに30万人もの少女たちに教育を提供してきました。私たちは、人種と性別の平等に強い関心があります──ギャップを埋めるアクションをとる必要があると感じています。
開始52分: [タリカ] 自分はニューヨーク州の教育部門(Department of Education)で働いていたころから、平等な機会の提供に強い関心がありました。デジタル・デバイドに対しても、我々は黙っていてはいけません。この今日のアメリカにおいても、1,200万人の学生がインターネットにアクセスできないと言われています。
開始56分:[テレサ] タリカ、Girls Who CodeのCEOへの就任、おめでとう。なにが一番重要な課題だと思いますか?
開始57分:[タリカ] 3分の1の黒人、特に有色人種の女性(Women of color)の多くは、失業状態にあります。労働力のパイプラインの問題は、STEM教育だけでは解決できないのです。驚くべき数字があります── コードやプログラムを女性が学び、彼女たちが文字通りにこの分野に「恋に落ちた」としても、3分の2もの女性たちが結果としてこの業界を去ってしまうのです。「このテック業界で初めてのポジションを得た後に、彼女たちは充分な支援を受け続けているのだろうか?」──この問いにこだわり続けねば、この「構造的なバリア(systemic barrier)」を打ちこわし、実質的な変化を起こせないと思うのです。放課後に学習できる拠点を、少なくとも今の3倍に今後数年間で増やすなど、[女性たちに機会が与えられていない]古い慣習を変えねばなりません。多くの習慣が「白人男性」がキャリア的に成功するために形成されてきたものです。幸いなことに、多くの企業がこの問題に目覚めつつあります──しかしもう一歩踏み込み、実質的な変化(actual change)を生み出さねばなりません。この「課題」に、CEOとして取り組めることを嬉しく思います。これらの古い習慣を一新(dismantle)する必要があります。
開始58分:[テレサ]もしCOVID-19が私たちに教えてくれたことがあるとするなら、それは「古い習慣であれ、働き方であれ、私たちは何でも変えられるのだ」──という教訓だと思うのです。特にこの教訓は女性にとって重要だと思います。 遠隔で受診する「テレヘルス」には保険が効か無い──これをわれわれはコロナ以前には当たり前だと思っていましたが、すっかり変わりました[=保険適用されるようになりました]。
開始59分:[テレサ] モリーンにも聞きたいと思います。あなたが拡大してきたAWSのT&C(トレーニング&サーティフィケーション)プログラムの重要性と可能性について、教えてくれますか?
開始60分:[モリーン]多様な労働力(workforce)の確保・育成ためにデジタルなトレーニングが、あらゆる世代に対して、あらゆる人生のステージにおいて必要とされています。学びたい人に、学びたい形式で、学びたいタイミングにおいて、デジタルなトレーニングを届ける必要が年々高まっています。特に、テクノロジー業界にいる女性労働者(=Women in Tech)など、これまで充分に代表されてこなかった集団に対して、こうしたサポートを届ける必要があるのです。無料のトレーニングも多数AWSから提供されていますし、また、「re/Start」という失業者・求職中の人々向けにクラウド業界でのキャリアスタートを支援するプログラムも提供しています。昨年2020年には、旅行業界など、コロナ禍で大きな打撃を受けた産業向けに、12週間でクラウドのスキルを身に着けるトレーニングを世界中で提供し、AWSは採用を加速する多くの企業との橋渡しも支援しました。
[テレサ]どんな傾向が昨年1年で鮮明になったでしょうか?
[モリーン]企業の多くが人材に「飢えている」ということが明らかになりました。そしてトレーニングを受けたいと希望する人も加速度的に増えています──あらゆる社会属性、あらゆる産業において。
開始61分:[テレサ]IDC FutureScapeのレポート(2020)によると、30%ものglobal IT jobsポジションがデジタルスキルを持つ人材の不足や奪い合いによって埋まらない──とする試算もあります。あなたの接するお客様からの声を聴いていると、どんなロールが特に求められていると感じますか?
[モリーン]実際には、全ての職種において、スキルを持った人材が求められているのだと思います。クラウドのおもしろいところは、その素養(cloud fluency)が求められるのが「テクノロジー」関連の職種に限らない、というところです。ソリューションアーキテクトはもちろんのこと、ディベロッパー、セキュリティ、ネットワーク、データベース、AIや機械学習(5つのラーニングパスを特化して用意してもいます)──など、全てがオンラインでアクセス可能です。そして多くの企業では、「エントリー・レベル」の人材を多く求めています──ダイバーシティの観点からも。
開始62分:[テレサ]タリカ、ここで、女性や少女たちが学ぶべき知識として、コーディング・スキルだけではなく、「ソフト・スキル」も重要であることを話してもらえませんか?
開始63分:[タリカ] 全くそのとおりで、女性・少女たちが学ぶべきは、コンピューター・サイエンスだけでは十分ではありません──そのことをGirls Who Codeは自覚しており、カリキュラムとしてBravery(勇敢であること), Resilience(レジリエントであること), Sisterhood(女性同士で支え合うこと)を組み込むことにしています。私たちは、彼女たちにテーブルに着き、席を占め、発言する権利がちゃんとあるのだと教えねばなりません。この業界で彼女たちがリードし、成功し、生き残っていくための「術」を教える必要があるのです。女性の行く手を阻みがちな、典型的な障害物についても予め教えておく必要があります。私たち[=テクノロジー業界で働く女性]は、お互いに学び、お互いに頼り合う必要があります(Lean on the Sisterhood)。その意味で、モリーンが成し遂げたトレーニングプログラムの拡大とデジタル化は、とても素晴らしいことだと思います。胸が熱くなりました。
開始64分:[テレサ] 私たちが目にしている現象を一言で言うと、「Stackable Credentialing(積み上げ型の、資格/信用形成)」の重要性が高まっている──ということなのだと思います。スキルを一つ一つ、獲得して重ねていくことが大事です。そして私たちは、学び合い、頼り合い、お互いの力を増幅(Amplify)する必要がありますね。新しい「筋肉」の使い方、鍛え方を学ぶのに似ています。
開始65分:[テレサ] モリーン、ここでもう一つ教えてください。この質問は、私が最も愛情を注いできた業界である「パブリックセクター」についての質問です。パブリックセクターは、採用したい人材の目標数との間の「スキルギャップ」に悩んでいますし、人材獲得において高い報酬を提示し驚異的な成長率を維持するテックカンパニーを含む「民間部門」と競い合わねばなりません。トレーニング&サーティフィケーション部門が、人材育成・獲得においてパブリックセクターが目標を達成することを、どのようにサポートしてくれるのか、教えてもらえませんか? [人材の厚み自体は高まりつつあるという]ひとつの例を出すと、コーディングスキルを一度でも学んだことのある中東エリアの女性の割合は65%にも達するとの統計もあります。
開始66分:[モリーン] AWSは数百万人規模でのトレーニングを提供してきました──STEM教育、カスタマー向けのプログラム、あるいはフィランソロピーのかたちであれ。 誰でも、今働いているその会社・機関に留まり成功したいと思っています。私もそうです。「そうしたニーズをサポートしたいし、人材を惹きつけたい、そして彼・彼女らを育てたい」──と多くの企業が言います。パブリックセクターは、自身を「人材の育成機関」であるとブランディングし、その業界に所属することで労働者が成功に近づけるのだというイメージを打ち出す必要があります。
開始67分:[テレサ] その通りですね。人材の流動性が高まっています。さて、私はここで、データの重要性をあらためて強調しておきたいと思います。「何が起きているか、どこに向かっているか」を把握するためには、データが重要です。ひとりの女性がある企業に留まるか、転職をするか決断するとき、いったいどの要素が影響を及ぼしているのでしょうか?
開始68分:[タリカ] 人口動態全体に目を配り、起きている現象やインパクトについて考察する必要があります。COVID-19は女性の就労状況にどんな影響を及ぼしたのでしょうか。 これまでの活動の蓄積により、Girls Who Codeは8万人もの大学生年齢相当の「アルムナイ(卒業生)」を擁しており、彼女たちはコンピューター・サイエンスを専攻していたり、テクノロジー業界で働いていたりします。この比率は、米国平均の15倍に当たる高い水準です。私たちは、彼女たち、つまり「若い女性たちが最初のTech Jobを職を得たその瞬間から、いったい何が起きるのか」を気にかける必要があります。若い女性たちが最初のTech Jobを得たのちには、35歳までに50%もの女性が働くことを辞めてしまうというアクセンチュアの最近の調査もあります。他の産業では、この数値は20%です。[離職率が高いということは、]「文化のリセット」が毎年企業で繰り返し起きているような事態です。特に、有色人種の女性たち(Women in color)にとって、この問題は深刻です。Girls Who CodeのCEOとして、これらの問題に取り組み、女性たちがこの問題に拘り、声をあげ続けること(persist)が必要です。
開始69分:[テレサ]在宅勤務になって、多くの父親・母親たちは「やさしさ(with grace)」を持って子どもたちに接することを意識するようになりました。特に女性たちは、状況に縛られ、自身で連続した判断を迫られると感じる状況も多かったと思います。タリカ、あなたのように行動する女性のCEOを私たちは増やす必要があります──状況を理解しつつ、リードし、創り出すことのできるリーダーを。
開始70分:[テレサ]モリーン、私たちはテクノロジー業界で働く女性(Women in Tech)のキャリア形成についても、社内外から多くの声を聴く機会がありますね。スタート地点のキャリアだけでなく、キャリアのゴール地点も意識しなければなりません。
開始71分:[モリーン] 「学ぶ文化を作る必要がある」のだと、今日ではどの企業もそう言います。しかし、変化は速いという点に留意するならば、各企業は社員が自ら学びやすいように「環境」を整える必要あるということ──私はこれを強調したいのです。1つのスキルに習熟しても、数年で陳腐化してしまうこともあります。社内でコミュニティを作って学ぶ文化をファシリテートし、エバンジェリストとして多くの社員が活動できる文化を整える必要があります。多くの企業が人材育成・雇用戦略・リテンション戦略を持っています。そうした戦略を持つことが「クール」であるという風に企業に対する価値観が変わってきています。「投資し、雇用し、それをしっかりリテンションする」──それが今後ますます重要となる価値観なのです。
開始72分:[テレサ] コールセンターの仕事も、いまや遠隔でできるようになっています。テック業界全体で、この傾向は明らかです──どこにいても、どんな仕事でも出来るのです。
開始73分:[モリーン]インクルージヴであること(Inclusive)の重要性も強調させてください。これまで、女性はテーブルに席を占めることも難しかったし、座っているだけで声をあげられなかったことがほとんでした。リーダーたちが率先すべきは、彼女たちに質問し、答えさせ、失敗を許容(be okay)することです。
開始74分:[テレサ] 世界銀行の「Global Workforce(世界の労働力)」の2020年の調査は、労働力市場において女性の占める比率が、1990年当時の数値よりも“下がっている”と指摘しています。恐ろしい数字ですし、衝撃的(super scary)なことです。一度労働力市場からドロップアウトしてしまった女性たちに、いかに機会を与えていくべきか、ここでタリカに意見を聞いてみましょう。
開始75分:[タリカ] 私たちは前に進もうとしています。しかしテレサ、あなたの言う通り私も非常に気になる数値を目にしています。 コンピュータ・サイエンス分野の女性労働者の比率は、37%(1995年) から24%にまで今日では下がってしまっています。子どものケア、家族の介護──、女性たちに「キャリア」と「家族」の選択を迫るべきではありません。この”不可能な選択”を女性たちに迫ってしまったことが、コロナ発生の初期に失業率が上昇した背景の実質です。パンデミック発生以前の、ネガティブな慣行に後戻りすべきではありません。女性がバーチャルに、フレキシブルに、非同期的なコミュニケーションを活用して、働けるようにするべきです。女性の賃金水準を挙げれば、上記の”不可能な選択”を女性たちに迫ることもなくなるでしょう──キャリアと家庭を両立できるようになります。率直に認めましょう──女性たちが労働力市場からドロップアウトしたのではなく、弾き落とされてしまった彼女たちを、私たちの社会が“受け止めてあげられなかった”のです。
開始76分:[テレサ]パートタイムでもいいですし、勤務時間の時短や、フレキシブルな働き方を認めればいいのです。セールスと言いつつも実際にはテクノロジーの素養が多大に要求される「Sales Tech」の分野に、今後多くの人材が必要であることは明白です。AWSには「Sales Tech Training Program」もあります。女性がこうした分野に参加していく余地は大きいはずですし、経済的にもメリットがあるはずです。
開始77分:[テレサ] モリーン、同僚としてのあなたは良く分かっているように、私はいつも会話を「アクション・プラン」で締めくくることにしています。私たちにはすべきことが、まだまだ多くありますよね。民間企業や公的機関は、AWSを今後「どう」使って、前に進んでいくべきですか?
開始78分:[モリーン] AWSトレーニングのサイト(aws.training)を訪れていただけたなら、そこには500を超える数の無料のトレーニングが並んでいます──ビジネス観点、そしてテック観点で豊富にコンテンツが揃えられていますし、ラーニング・パスも非常に詳細に設計されています。今後半年~9カ月以内に、「ラーニング・エクスペリエンス」をより素晴らしいものとするための、更なるアップデートをお知らせできると思います──そこにはもちろん、AWS自身のテクノロジーが用いられます。
開始79分:[テレサ]あなたのそのプランのドキュメントを読んだので、その企画がおもしろいことは私が請け合います。タリカ、ぜひ一緒に取り組みましょう。有益な情報と深い洞察、そして何よりも情熱(passion)をこの場で共有してくれた2人に感謝します。このFireside Chatでは、私はとても楽しい時間を過ごせました。基調講演の冒頭と同じ言葉で、締めくくりたいと思います──Thank you, Thank you.
Closing :[テレサ] 皆さんと過ごした全ての時間が楽しいものでした。皆さんのゴールを理解し、チャレンジに伴走できたことは最高の喜びでしたし、「デジタルの筋肉(digital muscle)」を一緒に鍛えてきましたね。これからはマックスが私たちが一緒に築いてきたものを更に拡大していってくれると思うと、とても嬉しいです。 クラウドジャーニーを続け、ぜひMove Fast(速く動いて)いきましょう。クラウドジャーニーを続ける方法? 今後3カ月間は、このAWS Public Sector Summit Onlineをオンデマンドで視聴することができます。皆さん、多くのブレイクアウト・セッションを、ぜひ楽しんで視聴してください。
日本の公共部門の皆様へのご案内
AWSでは、政府・公共部門、パブリックセクターの皆さまの各組織におけるミッション達成が早期に実現するよう、継続して支援して参ります。
【New!!】オンデマンド視聴のご案内:2021年4月より、AWSパブリックセクター サミット・オンラインの無料オンデマンド配信が始まっています(ご登録はこちら)。米国防総省の関連機関であるアメリカ国防兵站局など海外政府機関や、女性エンジニア育成にコミットする「Girls Who Code」、スタンフォード大学等の公的機関の事例を中心に45のブレイクアウト・セッションも3カ月の間、配信されています。日本からも初の事例登壇として京都大学の長﨑正朗先生から「ハイブリッドクラウドで実現したヒトゲノム解析プラットフォーム」について講演をいただきました(前半のLiveblogはこちら。)
今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、「農水省DX室」「気象庁の衛星ひまわり8号のデータセット」や「re:Invent 公共部門セッションのサマリー」など国内外の公共部門の皆さまとの取り組みを多数紹介した過去のブログ投稿に関しても、ぜひご覧いただければ幸いです。「クラウド×公共調達」の各フェーズでお悩みの際には、お客様・パートナー各社様向けの相談の時間帯を随時設けておりますので、ぜひAWSまでご相談ください。
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このブログは2021年4月16日の開催初日の基調講演および英文でのRecapブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が執筆しました。
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