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AWSも提言を行った、農水省DX室の「デジタル地図」構想がプレスリリースに至りました

農林水産省(以下「農水省」)様より、”「デジタル地図」を活用した農地情報の管理に関する検討会』取りまとめ” が公開されました(2020年3月下旬公開、以下「取りまとめ」)。2019年秋以降、本検討会へはAWSメンバーも参加して各種の提言を行って参りました。以下、AWSパブリックセクターより、本「取りまとめ」の意義や要点を解説しながら、農林水産政策分野やデジタル地図に関連するAWSのサービスや事例をご紹介させていただきます。

 

❖「デジタル地図」検討会設置の目的

農水省では、現状の”農地情報は各施策の実施機関ごとに個別に収集・管理されている”こと、つまりは情報が散在していることに起因し、
1)農業者は、同様の情報でも実施機関ごとに個別に申告、
2)実施機関ごとに、農地情報を独立したデータベースで管理、
3)現地確認も実施機関ごとに実施しているため、情報の整合性を保つための突合作業等は大きな負担となっており、また、整合性が取れていないケースもあるといった状態
────といった問題があることを特定しました。

これらの問題意識から出発し、農水省DX室は今回の「デジタル地図」を活用した農地情報の管理に関する検討会の設置を決め、約半年間に渡り活動を重ねてきました。この、先進技術と政策の融合を目指した取り組みに関しては、「農地情報をデジタル地図に 農水省が一元化」と題して日経新聞など各種メディアでも報じられていたところです。

検討会での主な論点となったのは、「農地情報の一元的な管理を可能とする技術的環境が整備されつつある」なか、いかにして「農地情報の正確性と整合性を確保しつつ、農業者や実施機関等の関係者の負担軽減を図ることができる」か──という点です。特に、「幅51cmもの、農地転用に関する分厚い書類」「2,136時間&57,300枚が、経営所得安定対策の申請受付等に費やされる」「7,200経営体が22,000筆のデータを個別にPDF化し打ち込み」といった全国の農業関係者が直面する困難がデータポイントで列記される「第2章 現状と課題」は圧巻です。
これらの負担を先端技術により解決することを目指した本検討会においては、クラウドを活用することで高水準で実現することができる”拡張性”・”信頼性”・”柔軟性”・”堅牢性”・”可用性” 等の観点から整理をいただき、”システムの構築・運用に当たっての原則”として記載をいただいております。詳しくは、「取りまとめ」の“第5章 デジタル地図のシステム要件”をご参照ください。

(参考) ↓:「取りまとめ」文書中の、システムの構築・運用の原則

こうした方向性のもと取りまとめられた今回の農水省DX室のイニシアティブが、以下サイトにてプレスリリースされました:
”「デジタル地図」を活用した農地情報の管理に関する検討会』取りまとめについて”

 

❖ AWSからの提言:クラウドが「デジタル地図」の有効活用を加速する

農水省の「取りまとめ」には、幾つもの政策的・技術的に踏み込んだ内容が記載されており、以下のとおりAWSからの提言と合致する論点も盛り込まれています:

  • オンプレからクラウドへの転換:「従来のオンプレミス[・・中略・・]では、限られたネットワーク内でしかGIS[注:地理情報システム]上の地図情報の閲覧、編集ができなかったが、クラウドベースのGISを活用することにより、インターネット接続による地図情報の閲覧、編集が格段と容易になる」との記載にて、クラウドベースでの技術のメリットを明記いただいています。 ”地図”に関連し、DX室にも紹介させていただいた、高精度地図データ配信にAWSの機械学習モデルを活用した株式会社ゼンリンデータコム様の事例に関しては、こちらをご覧ください。
  • 拡張性の高いデータベース:「データベース管理については、将来的なデータ項目の追加や、レコード数やアクセス数の増大等によるアクセス速度の低下防止に対応できるようにすることが重要であるが、データ項目の柔軟な加除やシステムの高速化を可能とするNoSQL等の新しいデータベース管理手法も活用可能となってきている」との記載にて、新型のDBMS採用を模索する方向性を明記いただいています。NoSQLデータベースを含む、AWSのデータベースサービスの全容に関してはこちらをご参照ください。
  • 超大規模データのオープン化:「国や地方自治体において、様々なデータをリアルタイムで集約し、データに基づいた多元的な分析を行うことで、農業施策に反映させることで、課題の的確な把握・対応を可能とする。また、集約されたデータをオープン化することで、研究機関等による多様なデータ分析に基づいた政策提言を容易にする」との記載にて、オープンデータ化の方向性を明記いただいています。オープンデータを加速するAWSの取り組みに関してはこちらをご覧ください。特に、公的機関向けにストレージ費用をAWSが負担する「AWS Public Dataset Program」は現在、「衛星画像」「地理情報」「気候」等のカテゴリーを設け、NOAA(アメリカ海洋大気庁)等が収集した、合計で120を超えるDatasetを公開しております(2020年3月現在)。
  • パブリッククラウドとLGWANとの接続:「地方自治体においては関係業務がLGWAN環境で行われる一方、現場におけるインターネット環境でのタブレット等による農地情報の閲覧、編集のニーズがあることを踏まえ、LGWANとインターネットのハイブリッド方式を採用」「LGWANとパブリッククラウドの接続のあり方に関しては現在総務省において検討が進んでおり、その結果を踏まえ、必要な検討を行う」との記載にて、農業関係者皆様にとっての高い利便性確保のための整理が待たれる旨、明記いただいています。

AWSは、クラウドが次世代の農業をサステナブルかつ、魅力的な産業へと進化させていくことに強くコミットしています。自身も農業の盛んな米国ケンタッキー州の出身であると回顧することから始まるテレサ・カールソン(AWS Worldwide パブリックセクターのバイスプレジデント)のブログも併せてご参照ください:”Mission: Technology-enabled, sustainable agriculture”

 

❖ 提言させていただいたAWSのサービス

今回の農水省の検討会では、以下のAWSサービスが特に「デジタル地図」の構想と親和性が高いものと判断し、提言に盛り込ませていただきました。

  • データレイク構築の要となる“Amazon S3(Simple Storage Service)”:様々なデータを分析し正しい意思決定を行うためには、規模にかかわらず、全ての構造化データと非構造化データを長期間、安全に保存することが可能な「データレイク」を構築する必要があります。Amazon S3を活用いただくことが、圧倒的低コストでのデータレイク構築のための近道です。
  • 軌道衛星からのデータを受信する “AWS Ground Station”:天気予報、地表画像撮影、通信、放送など軌道衛星からのデータを、独自の地上基地局を管理することなくご活用いただけます。AWS Grand Stationで受信されたデータは、AWSグローバルインフラストラクチャ(世界規模の低遅延ファイバーネットワーク)を経由し、Amazon S3等へ蓄積し利活用が可能です。
  • Amazon DynamoDBなど多種多様なデータベース:データ処理を高速、低コストで実現するためには、アプリケーションや利用ユースケースに最適なデータベースを無理なく選択する必要があります。AWSが提供しているデータベースは、一般的な利用ユースケースをほぼ網羅するデータベースが7分類あり、AWS上で簡単に相互連携することで、高速、低コストなデータ処理を実現可能です。
  • ”Amazon VPC(Virtual Private Cloud)”:AWS クラウド内で論理的に分離した閉域空間をお客様専用に割り当てることが出来ます。本空間は、Amazon VPCが提供するセキュリティグループやネットワークアクセス制御リスト等の高度化セキュリティ機能により、機密性が高いデータを安全に取り扱うことが可能です。
  • ”Amazon Rekognition”:機械学習の専門知識を必要とせずに、実績のある高度にスケーラブルな深層学習技術を使用し、簡単に画像およびビデオ分析を利用することが可能です。Amazon Rekognitionを利用することでデータレイクに保存された画像、ビデオから効率的に物体、人物、テキスト、シーン、活動を特定することが可能です。

 

❖ Read More: ”農業”や”デジタル地図”関連の、AWSクラウド活用事例

以下に、農水省の今回の取り組みとの関連性の高いAWS活用事例を、幾つかご紹介させていただきます。

  • “Earth on AWS”のイニシアチブ:オープンな地理空間データを使用して、クラウドに惑星規模のアプリケーションを構築することを目指しています。こちらのブログでも「EOデータ=Earth Observation Data」を観測する革新的な技術に関し、紹介をしております:“The true value of Earth Observation data…now
  • 「JAめむろ」の事例紹介農業では広範囲な農地を対象に、さまざまな農耕機具などを活用し作業を行うため、JA めむろではセンサー情報を活用するような IoT 分野への進出も視野に入れています。「AWS が提供する IoT 関連のサービスにはとても期待しています。AWS には便利なサービスがたくさんありますが、それらをもっと理解すればやりたいことが簡単に実現でき、さらに便利な仕組みが必ず実現できるはず」とのコメントをいただいております。
  • Bayer のデジタル農業ユニット強化の事例紹介Amazon SageMaker でトレーニングされた画像認識モデルを使用し、携帯電話向けにモデルを最適化。この設定により、農家はモデルを使用して、インターネットにアクセスしなくてもすぐに結果を得ることができます (多くの農地ではインターネット接続がないため)。農家に適切な修復ガイダンスを提供し、田畑の収穫量や農家の成功に大きな違いをもたらしています。
  • re:Invent 2019でのSaildrone社の登壇動画:完全無人での大洋観測・気象観測・北極圏への調査実施・海洋資源の調査などに挑んでいます。
  • 2019年米国にて開催されましたWashington DC Public Sector Summitでの登壇動画:■ “Leveraging Earth Observations and Cloud Technology for Global Sustainable Development”

 

今回の農水省の検討会での、各回での提出資料等はこちらの農水省のサイトに掲載されています。

 

❖日本の公共部門の皆様へのご案内

他、政府機関・教育機関・非営利団体の皆様に、ぜひともご参照いただきたいコンテンツとして、

  • 2019年のAWSサミット東京の動画はこちら
  • ワシントンDCで開催されたAWSパブリックセクター・サミットの2019年の動画はこちら

──にまとまっております。

今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、クラウドを利用してミッションを推進している世界中の AWS のお客様を紹介するこちらのビデオもぜひご覧いただければ幸いです。

このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が執筆し、個々のサービスの説明に関してはソリューション アーキテクトの的場大祐が監修・加筆しました。