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Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop のご紹介

IoT やコネクテッドデバイスの普及により、製造業の製品はハードウェア単体からソフトウェアで価値を提供する「スマートプロダクト」へと進化しています。自動車、空調システム、産業用コントローラなど、あらゆる製品がクラウドと連携し、 OTA(Over-The-Air)アップデートを通じて継続的に機能を改善する時代になりました。

この変化に伴い、組込みソフトウェア開発にもサービス開発と同様の「開発・改善の高速化」が求められています。 2024 年のコーディングアシスタント、 2025 年の AI エージェント、そして 2026 年の自律型 AI 開発——AI が変えるソフトウェア開発の進化は、組込み開発の世界にも大きな変革をもたらしつつあります。この課題は組み込みソフトウェア開発に限ったものではありません。製造業や SI 業界をはじめとする多くの産業が、長年にわたり確立してきた開発プロセスや既存開発アセットに対して、いかに AI を組み込み連携させるかという同じ問いに直面しています。

開発全域の加速のためにAIコーディングエージェントを活用

開発者の時間の大半は「コーディング以外」に消えている

一般的な開発者がコードを書く時間は 1 日 1 時間以下と言われています。残りの時間は、テスト、デバッグ、ビルド環境の構築・維持、仕様書やドキュメントの作成、コードレビュー、デプロイ手順の整備、運用対応といった「コーディング以外」の作業に費やされています。開発者の 73%の時間はアプリケーションの実行や保守に費やされているという調査結果もあります。例えば組込みソフトウェア開発では、クロスコンパイル環境の構築、実機との HW/FW 結合テスト、 CI/CD パイプラインの整備、 OTA デプロイの準備など、コーディング以外の作業がさらに膨大です。

AI コーディングエージェントの登場により、コードを書く速度は劇的に向上しました。しかし、 SDLC (Software Development Life Cycle) は Research → Plan → Development → Release → Operation のサイクルです。コーディング(Development の一部)だけを高速化しても、ライフサイクル全体のボトルネックは解消されません。テスト設計に 1 週間、ビルド環境構築に 3 日、デプロイ手順の整備に 2 日——これらが変わらなければ、コードが速く書けてもリリースまでのリードタイムは大きく短縮されないのです。

SDLC 全体に AI を広げようとしたときに直面する壁

では、コーディングだけでなく SDLC の各フェーズに AI エージェントを活用しようとすると、フェーズごとに固有の壁が立ちはだかります。

  • Research — アイディアの妥当性を素早く検証したいが、組込みシステムのプロトタイプは実機依存が強いため実装負荷が高く、試行錯誤のサイクルが遅い
    Plan — AI に開発を任せるには明確な仕様と開発標準が必要だが、 Vibe Coding では記録が残らず再現性がない。商用製品には「制御可能・追跡可能・学習可能」な開発プロセスが求められる
    Development — 組込みテストは実機ハードウェアに依存し、仮想環境でどこまでカバーできるかが不明瞭。 AI にテスト設計やデバッグを任せようにも、物理デバイスとの接続方法が課題
    Release — ローカルビルドからクラウド CI/CD への移行はインフラ知識が必要だが、組込み開発者にはそのスキルギャップがある。環境構築の複雑さが AI 活用の前提条件を阻む
    Operation — 市場で稼働するデバイスからのテレメトリー、 CRM 問い合わせ、気象データなどが分散しており、データを横断的に分析して開発へフィードバックするループが確立されていない。加えて、組込みソフトウェアの開発組織にとってデータ分析のスキルを持つ人材の確保・育成は容易ではなく、せっかくデータが蓄積されていても活用しきれていないケースが多い

これらの壁を乗り越え、 SDLC 全体で AI エージェントを「制御可能・追跡可能・学習可能」に活用するアプローチをテーマとして、「Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop」を開発しました。

図: ソフトウェア開発ライフサイクルに AI を活用

AI 駆動開発 × クラウド仮想化で壁を突破する

Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop では、この課題に対して 4 つのアプローチを提案します。

1. 組込みソフトウェアライフサイクル全体にわたる AI 駆動開発

Kiro(AI コーディングエージェント)を中心に、 SDLC 全域で AI エージェントを活用します。本ワークショップでは、 Kiro を通じてプロジェクト固有の開発標準やワークフローを理解させ、 Issue Tracking System と連携してチケットの読み込みから実装・テスト・進捗報告までを自律的に遂行させます。また、 MCP(Model Context Protocol)や Steering (AI に対する指示) により AWS サービスや GitLab などの外部ツールに AI から直接アクセス、自動的に操作が可能になるため、組込み開発者がインフラ構築やデバッグ操作のスキルギャップを埋めることが可能になります。

2. チケット駆動による人間-AI コラボ開発

多くの製品開発ではチームが編成され、複数のエンジニアが協調して機能を実装します。一方、AIエージェントの活用については、Vibe Coding や Spec-Driven Development(SDD)といったアプローチがありますが、これらは個人の開発者と AI の対話が基本です。この個人最適の構造をそのままチームに持ち込むと、誰が何を AI に指示し、何が返ってきたのかが散逸し、チーム全体での再現性や引き継ぎが失われます。AI エージェントを効率よくチーム開発へ導入するには、エージェントをチームコラボレーションの一員として参加させ、タスク・進捗報告・成果物をチーム間で共有しながら活用する仕組みが不可欠です。

この課題に対し、本ワークショップでは Issue Tracking System(GitLab)を人間と AI の共通インターフェースとして活用します。人間がチケットに要件・受け入れ基準・スコープを明文化し、AIエージェントがそれを読み込んで実装計画を立て、進捗をIssueコメントに記録しながら作業を進めます。作業結果はすべてチケットに紐づくため、「誰が・何を指示し・何が実装されたか」がチーム全体で追跡可能になり、Vibe Coding では実現できない再現性と引き継ぎ性を確保できます。人間はレビューと承認に集中し、AIが重労働を担う——この役割分担が SDLC 全体を通じた持続的なチームコラボレーションの基盤となります。

3. クラウドでの仮想化がもたらす DevOps

AWS 上でターゲットデバイスを仮想化し、組込み開発にもサービス開発と同等の DevOps 環境をもたらします。 Amazon EC2 上に仮想デバイスを構築することで、実機がなくてもソフトウェアのビルド・テスト・デバッグが可能になり、 AWS IoT Greengrass を通じて仮想デバイスと実機の両方に同一バイナリをデプロイできます。これにより「開発環境と本番環境の差異」という組込み開発の宿命的な課題を環境パリティで解消します。さらに、 AWS CodeBuild, AWS CodePipeline による CI/CD パイプラインを AI エージェントが自動構築することで、組込み開発者がクラウドインフラの専門知識を持たなくても継続的インテグレーション環境を手に入れることができます。

4. AI によるデータドリブンな製品改善サイクル

製品リリース後の Operation フェーズでは、市場から日々蓄積されるデータ——CRM 問い合わせ、デバイステレメトリー、気象情報など——をいかに次の開発サイクルへ繋げるかが問われます。しかし、これらのデータは異なるシステムに分散しており、横断的な分析にはデータサイエンスのスキルが求められます。本ワークショップでは、 AI エージェントと対話しながら仮説を立て、複数データソースを統合分析し、根本原因の特定と次のアクション提案までを導出するプロセスを体験します。専門のデータアナリストを雇わなくても、開発チーム自身がデータに基づいた製品改善の意思決定を行えるようになります。

Lab 概要

本ワークショップは、 HVAC(空調)管理システムをシナリオとして、 5 つの Lab で構成されています。 HMI デバイス、部屋ごとのコントローラ(温度・ CO2 センサ)、クラウドの集中管理システムからなるシステムを題材に、組込み開発の各フェーズで AI を活用する体験を提供します。

Lab 1 [Research]:AI で試行錯誤のスピードを上げる

AI コーディングエージェント(Kiro)の能力を体感する Lab です。 HVAC 管理システムの HMI(Human Machine Interface)画面の改善をテーマに、まず UI デザイン画像をインプットとして与え、 Kiro に HTML/CSS ベースのモック画面を生成させてアイディアの妥当性を素早く検証します。モックで方向性を固めたら、そのデザインを C++の製品コードに変換し、実機環境で動作確認可能なバイナリをビルドするところまでを一気通貫で体験します。従来であればデザイン検討から実機確認まで数週間かかるプロセスを、 AI の力で圧倒的に短縮できることを実感する Lab です。

Lab 1: HMI のデザインプロトタイピング

Lab 2 [Plan]:組込みソフトウェア開発における AI と人間の役割を適切に分担する

この Lab では、 GitLab の Issue に AI への指示を書き込み、 AI エージェントがそれを自律的に読み込んで設計・実装を行う一連のフローを体験します。 AI が自らチケットを取得し、コードベースを分析して実装計画を立て、コードを書き、結果を Issue コメントに報告する。人間はその結果をレビューし、必要に応じてフィードバックを与えるだけです。さらに、マイルストーンとスコープ境界を設定することで、複数機能が並行するプロジェクトでも AI の作業範囲を制御する手法を学びます。

Lab 2: ITS を活用した AI と人とのコラボレーション

Lab 3 [Development]:クラウド上で組込みソフトウェア開発のテスト・デバッグを実現する

この Lab では、 AWS 上に構築した仮想デバイスを使い、テスト・デバッグを AI により加速させる方法を体験します。 AI がテスト計画とテストコードを生成し、仮想デバイス上でブラウザ経由で GUI を確認しながら動作検証を行います。デバッグ工程では、 Kiro がリモートの仮想デバイスに SSH 接続し、 AWS IoT Greengrass のログ確認や Docker コンテナの状態確認といったクロスレイヤーの操作を自律的に実行します。実機がなくても開発サイクルを高速に回せる仮想デバイスと、対話的な手動操作を代替する AI エージェントの組み合わせを体験する Lab です。

Lab 3: 仮想デバイスを活用したクラウド上でのデバッグ・テスト

Lab 4 [Release]:AI と AWS を接続し、自動ビルドシステムを構築する

組込み開発者が CI/CD を導入したくても、クラウドインフラの構築スキルが壁になることは少なくありません。この Lab では、 MCP を通じて Kiro が AWS サービス(CodeBuildCodePipelineECR 等)を直接操作し、 CI/CD パイプラインを自動構築する体験を提供します。 AWS MCP Server の設定から始まり、 GitLab へのコードコミット、 AWS サービスとの接続設定、パイプラインの自動作成、さらには仮想デバイスへの自動デプロイまでを一気通貫で行います。「インフラがわからない」というスキルギャップを AI エージェントが埋め、組込み開発者が本来注力すべきアプリケーション開発に集中できる環境の作り方を学びます。

Lab4: AIが作ったCI/CDパイプライン

Lab 5 [Operation]:市場データから Next Action を導き出す

製品をリリースした後も、 SDLC のサイクルは続きます。この Lab では、 CRM 問い合わせデータ、デバイステレメトリー、気象データといった複数のデータソースを AI エージェントに分析させ、市場で発生している問題の根本原因を特定し、次の開発サイクルへの改善アイディアを導出します。この Lab では Amazon Quick を活用して、データ分析の専門スキルがなくても、 AI と対話しながら仮説を立て・検証し・アクションを決定するプロセスを体験することで、組込み開発チームがデータドリブンな製品改善サイクルを回すための第一歩を学びます。

Lab5: Amazon Quick を活用したプロダクト分析の流れ

SDLC の全フェーズを AI と共に走り抜ける

Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop は、組込みソフトウェア開発ライフサイクルの全フェーズ(Research → Plan → Development → Release → Operation)にわたって、 AI エージェントとクラウドがどのように開発を加速できるかを体系的に体験するワークショップです。

製造業・組込みソフトウェア開発に代表される産業でのソフトウェア・システム開発の現場において、バイブコーディングだけでは解決できない課題——既存の設計・コード・プロセスの制約の中で、いかに AI を「制御可能」「追跡可能」な形で活用するか。本ワークショップでは、 AI によるコーディング・テスト・デバッグの自動化、 MCP を通じたスキルギャップの解消、クラウド仮想化による低コストな CI/CD 環境構築、そしてチケット駆動による人間-AI の持続的なコラボレーションを体験します。 AI は万能ではありませんが、適切なプロセス設計と組み合わせることで、組込みソフトウェア開発の全域で確実に生産性を向上させることができます。本ワークショップで体験した手法は、明日からの開発現場ですぐに実践できるものです。