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シスメックス株式会社:子どもの個性や社会性を理解するための視線計測アプリ「Gazefinder」を支えるAWSアーキテクチャ

このブログは、シスメックス株式会社 次世代医療事業開発室と、ディピューラメディカルソリューションズ株式会社、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニア ソリューション アーキテクト 中島丈博による共著です。

シスメックス株式会社の視線計測アプリ「Gazefinder」のご紹介

背景

シスメックス株式会社は、「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」をビジョンに掲げ、臨床検査機器・診断薬やソフトウェアを世界中に提供しています。2025 年 10 月、私たちは新たな領域への挑戦として、お子さまの視線をオンラインで計測し、個性や社会性の発達を可視化するサービス 「Gazefinder」 をトライアルリリースしました。子育てにおいてお子さまの興味の対象を知ることは重要ですが、日常の中で正確に把握するのは簡単ではありません。そこで注目されているのが、視線を通じてお子さまの興味や発達を理解する技術です。

サービス概要

「Gazefinder」は、一般的なノートパソコンに搭載されたカメラを使って、お子さまの視線を計測します。視線の計測結果から専門的な知見をもとに、お子さまの個性や社会性の発達を客観的に把握し、保護者やご家族が安心して子育てできるようにサポートします。

Gazefinder 子どもの視線をオンラインで計測。個性や社会性がわかります | シスメックス株式会社

特徴

・視線計測の専用装置不要:ノートパソコンに搭載されたカメラで視線計測が可能で、計測後約 10 分で結果を確認できる

・専門的な知見に基づいたコメント:視線の計測結果は専門的な知見により解析が行われ、後日、視線から分かることがコメントとしてお手元に届く

・専門のオペレータによる解説:オンラインで個別のフィードバックを受けられる(有料)

・子育てに役立つ動画:専門のオペレータによる解説をご利用いただいた方に、興味・関心に応じた動画が配信される

AWS アーキテクチャのご紹介

サーバーレスアーキテクチャによるアプリケーション

視線計測アプリ「Gazefinder」はサーバレスアーキテクチャを採用しています。一般的にサーバーレスアーキテクチャとは、サーバーのプロビジョニングや管理をクラウドプロバイダーに任せて、ディベロッパーはサーバーレスのコード実行環境やマネージドサービスを利用してアプリケーションを構築する設計手法です。AWS ではサーバーを管理することなく、コードの実行、データの管理、アプリケーションの統合を行うためのサービスを提供しており、Gazefinder はそれらを活用して Web アプリケーションを構築しています。今回利用したいくつかのサービスの中からポイントとなる要素を抜粋し、以下にご紹介します。

AWS Amplify を活用した Web アプリケーション開発

AWS Amplify は AWS を使用したスケーラブルな Web およびモバイルアプリ開発のためのフレームワークです。AWS Amplify を利用することでバックエンド構築機能を使用してフルスタックのアプリを構築し、Amplify Hosting を使用して Web アプリケーションをデプロイ可能です。Gazefinder では Amplify CLI を利用してコマンドラインから効率的に Web アプリケーションを構築し、ホスティング環境は Amplify Hosting を利用することで、Git リポジトリから取得したソースコードから CI/CD が有効なスケーラブルなホスティング環境にデプロイしています。

視線計測を実現した Amazon Rekognition EyeDirection

Amazon Rekognition はクラウドベースの画像およびビデオ分析サービスであり、機械学習の専門知識がなくても、イメージファイルやビデオファイルの物体検出、テキスト検出、安全でないコンテンツの検出、画像/ビデオ分析、顔比較などの機能をアプリケーションに追加することが可能です。今回 Gazefinder に実装された視線計測には Amazon Rekognition のEyeDirection が利用されています。EyeDirection は画像内の顔検出機能である DetectFaces の属性の1つとして提供されるものであり、Amazon Rekognition API として提供されています。画像を分析すると EyeDirection はレスポンスとして、サービスが予測した視線方向に対する 0 から 100 の範囲の信頼度、-180 から 180 の範囲でピッチ軸での視線方向を表すピッチ、-180 から 180 の範囲でヨー軸での視線方向を表すヨーを返します。

ピッチとヨーの値は、ユーザーが見ている画面上の x-y 座標にマッピングする必要がありますが、ユーザーとカメラとの距離および相対位置によってピッチとヨーの値と、画面上の x-y 座標との関係が変化します。そのため、分析を実施する前に、ピッチとヨーの値のマッピングをキャリブレーションする必要があります。

キャリブレーションは映像の一部に組み込まれており、ユーザーは画面の上下左右に動くアニメーションを視線で追うことで自動的に行われます。さらに、Gazefinder では EyeDirection からのレスポンスのうち、視線方向の値の信頼度の情報も加味して解析することにより、正確な視線計測を実現しています。

Amazon Chime SDK を活用したオンライン相談

Amazon Chime SDK は、音声通話、ビデオ通話、画面共有機能をウェブまたはモバイルアプリケーションに追加できるようにする WebRTC ベースのリアルタイム通信プラットフォームです。Gazefinder では視線の計測結果について専門のオペレータとのオンライン相談が可能となっており、これに利用しているのが Amazon Chime SDK です。ビデオ通話は、WebRTC プロトコルを使用したオンラインミーティングが可能であり、クライアントアプリケーションが SDK を介して Amazon Chime のメディアサービスに接続し、音声・映像ストリームの送受信を行います。またAmazon Chime SDK は API を利用した実装が可能となっていることから、UI をサービスに合わせてカスタマイズすることが可能です。

おわりに

本ブログでご紹介したシスメックス株式会社とディピューラメディカルソリューションズ株式会社の取り組みや関連する AWS サービスに関して、ご興味・ご質問をお持ちのお客様はお問い合わせフォームもしくは担当営業までご連絡ください。

著者について

シスメックス株式会社

辻本 研二 (Kenji Tsujimoto) 執行役員 次世代医療事業開発室長:再生細胞医療やデジタル医療、そして小型デバイスをキーワードにシスメックスならではの新事業を創出することを目指しています。
村上 耕平 (Kohei Murakami) 次世代医療事業開発室 部長:デジタルヘルスの分野で新たな事業の企画、立ち上げ、推進、マーケティングまで新規事業に係る一連のプロセスを実行しています。

ディピューラメディカルソリューションズ株式会社

田野島 英司 (Eiji Tanoshima) 開発企画・開発部長:AI・IoT・クラウド・データ解析を融合し、医療・介護の専門家と利用者を結ぶ次世代スマートヘルスケアサービスの創出に向けた研究開発をリードしています。
竹内 康浩 (Yasuhiro Takeuchi) 開発企画・開発部 メディカルアプリケーションエンジニア:ゲイズファインダーアプリの受託開発ならびに保守運用を担当しており、AI を活用した新機能の企画・開発を推進しています。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

中島 丈博 (Takehiro Nakajima) ハイテク & ヘルスケア・ライフサイエンス部 シニアソリューションアーキテクト: ヘルスケア・ライフサイエンスのお客様を中心にクラウド利用の技術支援をしており、ユースケースの紹介やお客様のご要望を具現化するための活動をしています。週末は旅の予定に思いを巡らせています。

Amazon Web Services UK Inc.

Amir Omicevic Solutions Architect at AWS and works with customers across automotive, supply chain and professional services industry. He specialises in enterprise-scale strategizing, architecture and building transformative AI/ML solutions to deliver measurable business outcomes and unlock new business value for his customers. Beyond his professional role, he enjoys teaching his children how to play music instruments and the basics of computing and AI.