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【開催報告】通信ネットワーク運用向け AI エージェントワークショップ開催しました! ( 2025 年 11 月 27 日 )
通信業界のネットワーク運用ではより安定した通信ネットワークを提供するために、障害の検知、要因特定、復旧を早期に対応する必要があります。一方で、近年拡張し複雑化し続けるネットワークに追従することは従来のオペレーションでは難しく、自動化、高度化、自律化が求められています。その実現手段の1つとして、AI エージェントとデータ活用が注目されており、導入への期待が高まる一方で、AI を適用する運用ユースケースの策定、より簡単な AI エージェントの実装方法、商用運用への本格導入、といった課題があります。そこで、本ワークショップでは、通信ネットワークの運用に携わる方向けに、 AI エージェントの仕組みを学び、参考アーキテクチャや事例から最新動向を知り、ハンズオンでより具体的な実装方法を学び、ネットワーク運用 AI エージェントを触って体感していただく場を提供しました。事例紹介の 1 つとして、株式会社 NTTドコモにご登壇いただきました。また、複数社による同じネットワーク運用に携わる者同士の意見交換や AI エージェント活用のためのユースケース議論を行っていただくことで、他社動向や自社の課題を浮き彫りにし、今後のアクションの参考にしていただく場も提供しました。通信ネットワーク運用に特化した業界横断イベントは、今回初めてであり今後も定期的に開催していきたいと思います。
早朝から 96 名/ 14 社のお客様に目黒オフィスまで足を運んでいただき、懇親会まで含めて大盛況なイベントとなりました。ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました!!
アジェンダ
| タイトル | スピーカー | 資料 |
| AI エージェント とは
– Autonomous Network の実現のために |
宮崎 友貴*1 | ダウンロード |
| Strands Agents ハンズオン
– AI エージェント開発を簡素化しよう |
神谷 拳四郎*1 | ダウンロード |
| ランチタイム
ユースケース議論 |
宮崎 友貴 | |
| 通信ネットワーク運用 AI エージェント実践編
– 実際に作って、動かして、触ってみよう |
堀場 勝広*2 | ダウンロード |
| Amazon Bedrock AgentCore 概要
– AI Agent を本番環境にデプロイおよび運用する方法を学ぼう |
川岸 基成*1 | ダウンロード |
| クロージング | 宮崎 友貴 | ダウンロード |
| 懇親会 | – | – |
※1. Solutions Architect, ※2. Principal Solutions Architect
AI エージェント とは – Autonomous Network 実現のために
通信業界のオペレーション標準化団体である TM Forum では、Autonomous Network (自律ネットワーク)の自律レベルを定義しており、 近年、多くの通信事業者が L4 (高度自律ネットワーク) / L5 (完全自律ネットワーク) を目指す動きが出てきています。それを実現するためのコンポーネントの例と AWS で実現する参考アーキテクチャをご紹介しました。このアーキテクチャのキーは、AI エージェント × データであり、Autonomous Network の実現には必須要素であることをお伝えしました。そして、AI エージェントが自律的な行動を行うことができるようになった基礎技術や変遷と共に、オペレーション業務に携わるオペレータと近い動きができることを説明しました。最後に、AI エージェントの活用事例とネットワーク運用における AI エージェントの参考ユースケースをご紹介することで、最新の業界動向と AI エージェントによる自律運用が実現可能な世界であることをインフルエンスさせていただきました。
NTTドコモ 「さらば、単純作業!AWSで実現する、”人間が人間らしく働く”ためのネットワーク運用自動化」の事例紹介
AI エージェントを使ったネットワーク運用自動化の事例として、NTTドコモ の舟山空良氏と福嶋章悟氏にご登壇いただきました。両氏は、モバイル端末と MEC 基盤を直結して通信経路を最適化することで、低遅延・高セキュリティ通信を実現するサービス docomo MEC® のオプションであるサービス「MECダイレクト®」の開発・構築・運用を担当しており、定義済みのフローによる運用の自動化がある程度完了したことで、さなる自動化を目指し、AI の活用に挑戦しました。
登壇時点では、AI エージェントによる監視措置業務の自律的な実行を実現し、アラート受信、分析、措置手順の提案までの自動化を達成され、そのソリューションとして Amazon Bedrock エージェントを使用していることをご説明いただきました (以下、システム構成図)。Bedrock エージェントの選定の理由としては、マネージドかつサーバーレスなためインフラの構築に時間をかけず迅速な開発を行うことができた点や、社内のセキュリティ承認を得るためのデータプライバシーの観点で Bedrock ではデータをモデルの学習にはしない点が評価されました。
実際の AI エージェントの開発では、参照するデータを泥臭く時間をかけて整備し、プロンプトを工夫することが精度向上には必要であることや、AI に完璧さを求めないこと、がリアルな実装のポイントとして挙げられました。将来的には、LLM 適用による維持管理業務への AI エージェントの適用を行い、AI エージェントの適用領域のさらなる拡張を進め、自律レベルの向上を目指しています。
Strands Agents ハンズオン – AI エージェント開発を簡素化しよう
Autonomous Network 実現の核となる AI エージェント、それをわずか数行のコードで構築可能なオープンソース SDK である Strands Agents をご紹介しました。Strands Agents はシンプルな実装だけでなく、本番稼働に対応するためのオブザーバビリティ、モデルプロバイダーやデプロイ環境に依存しない設計思想、データを保護しながら責任を持ってエージェントを実行することを最優先とするなどの特徴があります。本パートでは実際に SDK を使って AI エージェントを構築し、Strands Agents における主要な概念と機能を探索するハンズオンを行いました。
Autonomous Network の自律レベル向上を目指していくにあたっては、単一の AI エージェントによるタスク処理だけではなく、マルチエージェントによる協調の必要性が高まってくるでしょう。異なるスキルやモダリティをもつ、複数の専門化された AI エージェントを効果的に組み合わせるデザインパターンとして Agents as Tools、Swarm、Graph、Workflow の4つをご紹介しました。
運用業務における AI エージェントのユースケース議論
本イベントは、複数社の運用担当者にご参加いただいたので、各社混合のグループディスカッションを AWS 社員も交えて実施いただきました。議論テーマは、以下です。各社、自担当の業務をご紹介いただき、どのような業務を AI エージェントに任せられるのか、を議論いただきました。AI エージェントに任せられる業務としては、調査、分析、切り分け、オペレータの支援、ドキュメント作成、オペレーションの記録、ネットワークのエッジ側での操作、などが挙げられ、任せられない業務としては、サービス影響の出る可能性のあるオペレーションの実行、顧客対応や社内調整など対人コミュニケーション関連の業務が挙げられました。各社の AI 活用状況や運用の現場における課題の共有、活発な意見交換が行われました。
通信ネットワーク運用 AI エージェント実践編 – 実際に作って、動かして、触ってみよう
本セッションでは、「実際に触って、動かして、理解して、そして、考えてみよう」というコンセプトに、通信ネットワーク運用における AI エージェント活用の実践的なハンズオンを実施しました。参加者の皆様には、通信ネットワークの保守運用者の立場で、数千台以上の装置で構成されるトランスポート~基地局 NW 網を管理し、毎日数万件以上のアラームが発生する環境で AI エージェントを活用したネットワーク運用を体験いただきました。
ハンズオンの技術アーキテクチャ
本ハンズオンでは、AWS の複数のサービスを統合した実践的な環境を構築しました。データストア層として、Amazon Neptune をグラフ DB とベクトル DB の両方で活用し、ネットワークトポロジデータとエージェント用の知識ベースを格納しました。また、Amazon Aurora (RDB) にはネットワークトポロジとアラーム情報を、Amazon S3 ストレージには保守運用マニュアルや対応手順書を格納しました。
AI処理層では、Amazon Bedrock が提供する大規模言語モデル(LLM)を基盤として、複数の専用 AI エージェントを配置しました。Orchestration エージェント(全体調整)、Observability (分析)エージェント、ナレッジエージェント、チケット管理エージェント、そしてRCA (根本原因分析)エージェントが連携し、包括的なネットワーク運用支援を実現しています。さらに、外部システムとして ServiceNow ITSM と連携し、インシデントチケットの管理も可能にしました。
実践的な対話シナリオ
参加者の皆様には、AI エージェントとの対話を通じて、以下のような実践的なシナリオを体験いただきました。
ナレッジベースへのアクセス:「網内の装置にて IF 品質異常発⽣(流⼊ error )が発⽣した場合どう対処すべきか?」といった質問を通じて、保守運用マニュアルから必要な情報を即座に取得する体験をしていただきました。
アラームの分析:「 2024-0713-0900 前後 30 分間に埼玉エリアで発生したアラームから、発生していたネットワーク障害の内容をまとめて下さい」といった時系列での障害分析や、計画作業との関係性分析を実施しました。
トポロジの分析:アラーム情報とネットワークトポロジ情報を組み合わせることで、障害の根本的な原因を特定する高度な分析を体験いただきました。さらに、マニュアルに沿った対応として、「根本的な原因を解決するために必要な処理は何ですか?保守運用マニュアルに従って回答して下さい」という質問を通じて、AI エージェントが適切な対応手順を提示する様子を確認しました。
最後にチケットの起票:「障害の概要、根本原因の分析結果、対応手順を取りまとめて ServiceNow にチケット起票」と言う依頼を通じて、AI エージェントが一連の対応を外部システム( ServiceNow )に書き込み可能なことをご確認いただきました。
システムの内部構造を探る – 応用編
ハンズオンの後半では、Jupyter Notebook を使用して AI エージェントの動作をカスタマイズし、パラメータ調整による応答内容の最適化を体験いただきました。例えば、マルチエージェント構成のオーケストレーターエージェントのシステムプロンプトを変更することにより、他のエージェントの呼び出し方の変化を体験いただきました。これにより、AI エージェントが単なるブラックボックスではなく、調整可能なシステムであることを実感していただけたと考えています。
ハンズオンを経験した上でのユースケース議論
ワークショップの後半 60 分間では、グループに分かれて AI エージェントの活用方法を議論しました。参加者の皆様には、以下の5つの質問を軸に、自担当でのオペレーション業務の洗い出しから、AI エージェントに任せられる業務と任せられない業務の仕分け、その判断基準の検討、必要なデータと指示(プロンプト)の検討、そして実際の AI エージェントアーキテクチャの設計まで、包括的なディスカッションを行っていただきました。このグループワークを通じて、AI が単なるツールではなく、ネットワーク運用を変革する可能性を持つことを体感いただけたと考えています。特に、どの業務を AI に委譲できるか、どこで人間の判断が必要かという議論は、実際の業務への適用を考える上で非常に重要な示唆を与えるものとなりました。
Amazon Bedrock AgentCore 概要 – AI Agent を本番環境にデプロイおよび運用する方法を学ぼう
続いては、AI エージェントを大規模かつ安全に構築、デプロイ、運用するためのビルディングブロック Amazon Bedrock AgentCore についてのセッションです。これまでのセッションで Strands Agents を利用したエージェントを作りました。このエージェントを本番環境で運用するには、リクエスト増減に合わせてさばけるスケーラブルなコンピューティング環境、認証認可の仕組み、会話履歴などを管理する記憶領域、ツールへの接続と管理、などを考慮する必要があります。これらの課題解決に役立つのが Amazon Bedrock AgentCore であることをお伝えしました。
通信ネットワーク運用というワークロードに当てはめた際の使い方や価値についてもお伝えしました。例えば、機密性の高いNW運用ワークロードでは、Runtime のセッション分離のセキュアな環境が役立つでしょう。AI Agent とのやり取りの中で発見されたインシデントパターン、解決戦略などのナレッジを Memory に蓄積・活用していくことで、より精度を高められる可能性があります。
クロージング
最後に、ワークショップ全体の振り返りながら、AI エージェントを導入するには、AI エージェントに加えてユースケースに応じたオペレーションデータを活用することが必須であることを改めて伝えさせていただきました。また、その実現に向けて AWS がどのように貢献をすることができるか、について、サービスとしてのメリットだけではなく、豊富な事例やネットワーク運用を理解した支援が可能である点をお伝えしました。本ワークショップはその支援の一つであり、ネットワーク運用に携わる方にとってより実用的な内容だったかと思います。
おわりに
本記事では、「通信ネットワーク運用向け AI エージェントワークショップ」についてレポートしました。参加頂いたお客様からは「AI エージェントの現場への導入へのイメージの確度が高めることができた」「やれる気がしてきた」「他社他部署の運用保守に携わる方と交流できた貴重な時間」「Amazon Bedrock AgentCore がサーバレスなので運用がとても楽になる」などのご評価を頂きました。ご参加頂いた皆様、本当にありがとうございました。頂いたフィードバックをもとに改善を重ねて参ります。また、ネットワークの運用 AI エージェントの導入に向けて、本内容が少しでも皆様の業務のお役に立てば幸いです。
著者
宮崎 友貴
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ
ソリューションアーキテクト
神谷 拳四郎
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ
ソリューションアーキテクト
川岸 基成
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ
ソリューションアーキテクト
堀場 勝広
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Telecom Industry Business Unit
プリンシパルソリューションアーキテクト



















