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AWS におけるコスト効率の現状レポート
re:Invent 2025 でコスト効率(Cost Efficiency)メトリクスを発表して以来、お客様から繰り返し寄せられる質問があります。「自社は他社と比べてどうなのか?」というものです。この問いに答えるため、私たちは直近四半期において、分析への参加に同意いただいた 71,000 社を超える AWS のお客様の匿名データを対象に、最適化のパターンを分析しました。Savings Plans のカバレッジは、あらゆるコスト最適化戦略の基盤となるものですが、それはパズルの 1 ピースに過ぎません。データが示すのは、コスト効率が最も高いお客様では、Savings Plans だけにとどまらず、削減効果を複利的に高める一連のプラクティスを実践しているということです。本レポートでは、トップパフォーマーが何を実践しているのか、そして彼らと同じ成果を実現するためにはどうすればよいのかを、詳しく解説します。
- 2026 年 5 月時点で、すべてのお客様のコスト効率スコアの中央値は 83、一方で平均値は 79 です。この差は、最適化が進んでいないアカウントによるロングテール(裾が長い分布)によって生じています。
- EC2 のメモリメトリクスを有効化すると、推奨事項 1 件あたりの削減率が 8〜30 パーセンテージポイント高くなる傾向がありますが、対象のお客様のうち有効化しているのはわずか 17.7% にとどまっています。
- AWS Compute Optimizer の「アイドル状態」および「ライトサイジング」の推奨事項をカスタマイズしているお客様は、カスタマイズしていないお客様よりスコアの中央値が 3〜4 ポイント高くなっています。
- 直近四半期のデータによると、Savings Plans とライトサイジングを併用している大規模なお客様は、Savings Plans のみを利用するお客様と比べて、新しい世代のハードウェアで実行している EC2 インスタンスの割合が約 60% 多く、コスト効率スコアの中央値の改善も 4 倍速い傾向にあります。
- Savings Plans のカバレッジが高いと、ライトサイジングや Graviton による最適化機会が見えにくくなる場合があります。Savings Plans のカバレッジが 95〜100% のお客様では、カバレッジが 0〜25% のお客様と比べて、Savings Plans 以外の最適化機会の合計が 65〜80% 減少することが確認されています。
コスト効率メトリクスとは?
コスト効率は、AWS Cost Optimization Hub において毎日算出される単一のスコア(0〜100%)で、最適化可能な支出額のうち、すでに十分に最適化されている割合を測る指標です。このスコアは、ワークロードの最適化(ライトサイジング、アイドルリソースのクリーンアップ)とレートの最適化(Savings Plans、リザーブドインスタンス)を 1 つの数値に統合しています。メトリクスの仕組みの詳細については、コスト効率の発表ブログをご覧ください。
あなたの効率スコアはどのくらい?
2026 年 5 月時点で、すべてのお客様のコスト効率スコアの中央値は 83、一方で平均値は 79 です。この差は、最適化が進んでいないアカウントによるロングテール(裾が長い分布)によって生じています。Cost Optimization Hub を開けば、自社の現在地を確認できます。注記:新しい最適化の推奨事項がリリースされると、スコアが変動する場合があります。
最適化の傾向をさらに理解するため、私たちは支出規模に基づいてお客様を「小規模」と「大規模」の 2 グループに分類しました。これは、概ね中小企業とエンタープライズ企業の区分に相当します。小規模のお客様では、最もスコアが低いお客様と最もスコアが高いお客様との間に 52 パーセンテージポイントの開きがあるのに対し、大規模なお客様ではこの差が 35 パーセンテージポイントとより狭い範囲に集中しています。いずれのグループも、上位層では高い効率スコアに達しています。ここから読み取れるポイントは 2 つあります。
- 小規模のお客様では、スコアのばらつきが大きく、FinOps プラクティスを本格的に導入しているお客様と、取り組みがまだ初期段階にあるお客様が混在していることを反映しています。
- 大規模のお客様は、より一貫して最適化を行っています。専任の FinOps チームや Savings Plans 戦略を持つ傾向が高く、その結果としてスコアも高くなっています。
図 1. 小規模・大規模のお客様におけるコスト効率スコアの分布。小規模のお客様は 52 ポイントの範囲に分布し、大規模のお客様はより狭い 35 ポイントの範囲に分布している。両グループともに、分布の上位層では同程度に高いスコアに達している。
高い効率スコアは、どこからでも到達できる
スコアが高いお客様と低いお客様の違いを分析した結果、上位 25% のお客様に共通して見られる 4 つの行動を特定しました。
Amazon EC2 のメモリメトリクス
Amazon CloudWatch またはサポートされているサードパーティのオブザーバビリティツールを通じて EC2 インスタンスのメモリメトリクスを有効化しているお客様は、スコアが高くなる傾向があります。既存の EC2 インスタンスでメモリメトリクスを有効化することは、EC2 のコスト最適化において最も効果の高い施策の 1 つです。多くのインスタンスにおいて、メモリデータがあるかどうかで、ライトサイジングの推奨が得られるか、全く得られないかが決まります。新たな削減機会が表面化することで、一時的にコスト効率スコアが低下する場合がありますが、それは、対処できる削減余地をより多く掘り起こせていることを意味します。EC2 のメモリメトリクスを有効化すると、推奨事項 1 件あたりの削減率が 8〜30 パーセンテージポイント高くなる傾向がありますが、対象のお客様のうち有効化しているのはわずか 17.7% にとどまっています。図 2 は、メモリメトリクスの導入が、さまざまなインスタンスタイプでどの程度削減率を向上させるかを示しています。
推奨事項設定のカスタマイズ
AWS Compute Optimizer の推奨事項をカスタマイズしているお客様は、カスタマイズしていないお客様よりスコアが 3〜4 ポイント高くなっています。推奨事項のカスタマイズは、必ずしも削減額の増加に結びつくわけではありません。しかし、それはチームが最適化に積極的に取り組み、エンジニアリングチームに推奨事項を信頼してもらえるよう努めていることを示す先行指標となります。
高い Savings Plans のカバレッジはゴールではない
Savings Plans のカバレッジが高いお客様は、コスト効率スコアも高くなります。Savings Plans は最適化済みの支出としてカウントされるため、Savings Plans のカバレッジとスコアには直接的な相関があり、カバレッジを上げればスコアも高くなります。一見するとこれは、「高度に最適化されている」という喜ばしい状況に見えますが、時に誤解を招くことがあります。なぜなら、その背後にあるリソースは依然として過剰なサイズである、あるいはアイドル状態である可能性があるからです。 Savings Plans のカバレッジが 95〜100% のお客様では、カバレッジが 0〜25% のお客様と比べて、Savings Plans 以外の最適化機会の合計が 65〜80% 減少することが確認されています。これらの削減機会は、コミットメントが更新時期を迎えたとき、またはワークロードが変化したときに初めて、再び実行可能になります。大規模・小規模のお客様における削減額については、図 3 をご覧ください。ここから次のポイント、「まず縮小する(Shrink first)」につながります。
まず縮小し、それからコミットする(複利効果)
最も効率的なお客様は、Savings Plans と能動的なライトサイジングを組み合わせており、コスト効率スコアと実際の総削減額の両方で、より大きな成果を上げています。直近四半期のデータによると、コミットメントとライトサイジングを併用している大規模なお客様は、Savings Plans のみを利用するお客様と比べて、新しい世代のハードウェアで実行している EC2 インスタンスの割合が約 60% 多く、コスト効率スコアの中央値の改善も 4 倍速い傾向にあります。Savings Plans を利用しているお客様のうち、能動的にライトサイジングを行っているのは 47.1% に過ぎず、潜在的な削減機会が手つかずのまま残されています。コミットメントはインスタンスの単価を下げ、ライトサイジングは必要なインスタンスのサイズを縮小します。新しい世代のハードウェアでワークロードを稼働させることで、より高い性能を得ながら、単位あたりのコストも下げられます。時間の経過とともに、追加の Savings Plans がより無駄のない最新のリソース構成に割引を適用するため、これらの削減効果は複利的に積み上がっていきます。
効率スコアを改善する方法
ここまで、トップパフォーマーが何を実践しているかを見てきました。ここからは、これらのインサイトを実際の行動に移していきましょう。以下のステップは、リスクと労力の小さい順に並べてあり、まずは取り組みやすい施策から始めて、信頼と推進力を高めながら、より大きな変革へとつなげていくことができます。
アイドルリソースから始める
アイドルリソースのクリーンアップは、最もリスクの低い出発点です。対象となるのは、何の役割も果たしていない可能性が高いリソース、たとえばどこにもアタッチされていない Amazon EBS ボリューム、使用率がほぼゼロの EC2 インスタンス、接続のない Amazon RDS データベースなどです。
AWS Compute Optimizer は、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)、Amazon Elastic Block Store(Amazon EBS)、Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)をはじめとするコンピューティング、ストレージ、ネットワークの各サービスにわたって、アイドルリソースを特定します。今週初めには、アイドルリソースの検出対象をさらに 6 つの AWS サービスに拡大し、アイドルリソースに関する推奨事項の数を 2 倍に増やしました。
これらの推奨事項はすべて、Cost Optimization Hub に集約された形で確認できます。各推奨事項には、そのリソースをアイドル状態であると判定した具体的な基準が含まれています。たとえば、アイドル状態の EC2 インスタンスとは、直近 14 日間においてピーク時の CPU 使用率が 5% 未満、かつネットワーク I/O が 1 日あたり 5 MB 未満であるものを指します。アクションを実行する前に、そのリソースが本当に不要であるかどうかを確認することをお勧めします。EBS ボリュームについては、Compute Optimizer は削除前のスナップショット作成を推奨しています。これにより、データを復元可能な状態に保てます。RDS については、再び必要になる可能性がある場合は、削除ではなくインスタンスの停止を検討するとよいでしょう。ただし、RDS インスタンスはメンテナンスのため 7 日ごとに自動的に再起動される点にご注意ください。そのため、長期的な解決策としては、スナップショットを取得したうえで削除することになります。多数の推奨事項に対応しやすくするために、Compute Optimizer の自動化機能を利用できます。この機能は、EBS のアップグレードやアタッチされていないボリュームのクリーンアップに関する推奨事項を、設定した基準に合致した場合に定期的に適用し、スナップショットの作成やロールバックにも対応しています。まずは本番以外の環境から始めて、確信を得たうえで、対象を広げていくとよいでしょう。
リソースをライトサイジングする
リソースのライトサイジングは、大きなコスト削減の可能性を秘めています。メモリデータを有効にすると、Compute Optimizer は、メモリの実際の使用状況も把握できるようになるため、メモリ不足を懸念して保守的な推奨にとどまることなく、EC2 インスタンスの CPU とメモリの両方を適正なサイズに調整できます。新たな削減機会が表面化することで、最初はスコアが低下する場合があります。しかしそれは、実現可能な削減余地がそれだけ多くあることを意味します。Compute Optimizer は、RDS および Aurora データベース、EBS ボリューム、Lambda 関数、ECS on Fargate など、さまざまなリソースについてもライトサイジングの推奨事項を提供します。まずは削減額の合計が最も大きい推奨事項に注目し、本番以外のリソースから着手することで、エンジニアの信頼を得ていきましょう。また、推奨事項をカスタマイズして、組織のリスクおよびパフォーマンスの許容度に合った内容に近づけることも検討してください。このカスタマイズは、Compute Optimizer コンソールから、ルックバック期間、使用率のヘッドルーム、インスタンスファミリーなどの項目について推奨事項の設定を調整することで行えます。これらの設定は、組織全体に対して一度だけ構成することも、パフォーマンスとコストのトレードオフが異なる環境向けにアカウントごとに構成することも可能です。
最適化済みリソースの上にコミットメント購入を重ねる
アイドルリソースをクリーンアップし、インスタンスのライトサイジングを終えたら、無駄を削減したリソースに対して Savings Plans を購入します。最大限の削減を得るには、この順序が重要です。先にすべてのリソースに対してコミットメントを購入してしまうと、過剰にプロビジョニングされた容量に割引レートを固定することになり、後からライトサイジングをしても、請求額が下がるのではなくコミットメントが余ってしまいます。別の方法として、より小さい単位で頻繁に購入を始め、ライトサイジングの進行に合わせてカバレッジを段階的に増やしていくこともできます。この方法には、将来、大きなコミットメントが一度にまとめて期限切れを迎える「崖」を回避できるという利点もあります。新しい Savings Plans Purchase Analyzer のターゲットカバレッジ機能を利用すれば、一度に大きくまとめてコミットするのではなく、時間をかけて段階的にカバレッジを買い増していくことができます。
進捗を追跡し、改善を繰り返す
コスト効率スコアは毎日更新されるため、月曜日に実施したアクションは水曜日までに反映されます。このフィードバックループを活用して、削減機会とコスト効率スコアへの影響を確認し、目標に対する進捗を追跡しましょう。月次・四半期ごとの目標を設定すれば、FinOps チームは、具体的なコスト削減額と結びついたコスト効率の改善成果を示せるようになります。週次または隔週のレビューサイクルを設け、アカウント単位の内訳も確認しましょう。これは、最適化目標を着実に追い続ける必要があり、運用面での規律が求められるチームに役立つとともに、最も効率的に取り組んでいるチームの優れた実践を可視化することにもつながります。
まとめ
私たちは、71,000 社を超える AWS のお客様の最適化パターンを分析し、「最も効率的なお客様が何を実践しているのか?」という 1 つの問いに答えました。トップ層のお客様で実施しているのは、Savings Plans の購入だけにとどまりません。メモリメトリクスを有効化し、コミットする前にライトサイジングを行い、最適化を一度きりのイベントではなく継続的な取り組みとして捉えています。
こうしたトップ FinOps プラクティスを実践することで、戦術的に信頼を積み重ねながら文化の変革を促し、測定可能な形でより大きな削減を実現できます。Cost Optimization Hub を開いて、現在のスコアと、最も大きな削減機会がどこにあるかを確認してください。スコアは毎日更新されます。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの西村が担当しました。原文はこちらです。

