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消費財企業におけるデジタルトランスフォーメーションの3つの原則

パンデミック、サプライチェーンの混乱、変化し続ける業界規制や消費者の期待など、直近のビジネス環境において、消費財ブランドは多くの観点で未知の領域に直面しています。しかし、このような不安定さの中でも、消費者の需要が驚異的な速度で増加し続けているため、消費財業界にとっては大きなチャンスともいえます。この需要を満たすために、ビジネスのデジタル変革に投資する消費財ブランドが成功するために次の3つの主要原則を検討する必要があります。

1. シームレスなエンドツーエンドエクスペリエンスでブランドのロイヤルティを高める

ショッピング体験のあらゆる側面が、消費者がブランドをどのように認識しているか、そして忠実な顧客になろうとする意欲にも影響します。ブランドは、顧客が最初に商品を検索するところから配送あるいは、店頭で受け取るまで、そしてその間のすべての段階でシームレスな体験を提供する必要があります。そのためには、消費者を統合的に把握し、やりとりの都度をパーソナライズすると同時に、商品の在庫状況も認識する必要があります。

このプロセスは多くの場合、オンプレミスのデータソリューションからより柔軟なクラウドベースの選択肢に移行することから始まります。オンプレミスでサイロ化されたデータは、社内の事業部門全体や小売のパートナーなどのサードパーティから集められたデータに比べると、価値が限られます。クラウドベースのデータソリューションにより、このようなデータの統合と一元管理が可能になります。次に、このデータに高度な分析を実施し、社内チームと外部パートナーの両方がデータにアクセスできるようにすることで、ブランドはより洞察に富んだ意思決定を行い、顧客を再訪させ続ける楽しいショッピング体験を生み出すことができます。

Nestlé Purina Australia 社は、ペットと飼い主のためにパーソナライズされた栄養に関する推奨を作成するために、AWS IoT CoreAWS IoT AnalyticsApache Solr を使用して、ユーザーのモバイルデバイスに接続されたスマートボウルから収集されたリアルタイムデータを処理します。Nestlé 社はこれらのモバイルデバイスをクラウドに接続し、何百ものデータポイントを処理しました。次に、この情報を動物の活動レベルに関するデータと組み合わせて、飼い主が自分のペットの世話に役立てます。

2. インテリジェントなソリューションで組織の俊敏性を高める

動きの速い消費者直販 (Direct-to-consumer, DTC) ブランドやデジタル・ネイティブ・ブランドが市場に殺到し、従来の消費財ブランドとの競争が激化する中、衰える気配はありません。さらに、蓄積されるビジネスデータや顧客データはペタバイト単位で増え続けています。このデータを効果的に活用できるブランドは、機敏な新規参入企業との競争においても生き残る可能性が最も高いです。そのため、部門横断型分析、人工知能 (AI)、機械学習 (ML) の実装がますます求められています。

消費財企業は、AI と ML を使ったソリューションを使用することで、データからより深い洞察を得て、出現するより多くの機会とリスクをリアルタイムに予測できます。さらに、この可視性により、ブランドは即座に行動を起こし、組織全体の対応を加速させることができるため、競合他社の一歩先を行くことができます。

Under Armour 社 は、フィットネスアプリを毎日使用する人が増えたため、Connected Fitness プラットフォームの成長をサポートするために AWS に注目しました。Under Armour 社は、クラウドソリューションが伸縮性と信頼性の要件に最も適していると判断した後、MapMyFitness と UA Record というアプリを AWS に移行しました。
そして、AWS と幅広い選択の AWS パートナーによって、デジタル顧客体験全体にわたる高度な ML 分析とエンドツーエンドの分析を結びつけながら、Connected Fitness アプリをユーザーの需要に応じて弾力的に拡大または縮小できるようになりました。

3. 業務の効率化と規模拡大を促進し、持続可能な成長を目指す

デジタルトランスフォーメーションは、今の消費財ブランドが顧客のニーズに応えるために必要ですが、経済的に持続不可能なコストでは実現できません。消費財企業は、組織要素を標準化し、中核となるさまざまなシステムとデータソースを一元化し、IT インフラストラクチャをクラウドに移行して大幅なコスト削減を実現する必要があります。

データセンターとアプリケーションを最新のクラウドインフラストラクチャに移行すると、IT 部門の負担がクラウドベンダーに移り、IT 部門の作業が簡素化され、組織のインフラストラクチャが削減されます。大幅な節約につながります。さらに、経験豊富なパートナーは、AI、ML、ロボティクス、コンピュータービジョン、マイクロサービスを使用するクラウドサービスの導入を支援できます。これにより、ロジスティクスやフルフィルメントなどの複雑なプロセスの新たな効率化を実現し、持続可能な成長をより良く実現できます。

コカ・コーラの主要ボトラーの 1つである Coca-Cola İçecek 社 (CCI 社) は、AWS の協力で IoT を使用して定置洗浄 (CIP) プロセスを最適化しました。導入から 4か月以内に、CCI 社は改善の見込みのある 30箇所を特定しました。その結果、年間電力を 20%、水の消費を 9% 節約できました。さらに、CCI 社は、AWS のデジタルツインソリューションを使用することで、 1年あたり 34日間の稼働時間を節約できると予測しています。諸経費の削減や、効率のさらなる向上をもたらします。

ブランドエクスペリエンス、アジリティ、サステナビリティで不安定な状況に対応

消費財ブランドは、現在の市場状況における課題と機会に立ち向かうために、弾力性が高く、持続可能で、インテリジェントなクラウドベースのソリューションを構築する必要があります。シームレスなエンドツーエンドのブランド体験の創出、ボラティリティに直面した際のビジネスの俊敏性の強化、長期にわたる業務効率の確保を目指すことで、消費財企業は優位に立ち、新たな回復力を得ることができます。

15年以上にわたり、AWS は世界で最も包括的で広く採用されているクラウドサービスでクラウドコンピューティング業界をリードしてきました。急成長中のスタートアップ企業から世界の大企業まで、何百万もの顧客が、ブランドロイヤルティ、組織の俊敏性、運用効率の向上に AWS を信頼しています。

主要な消費財ブランドが AWS で戦略的にビジネスを変革している方法に詳しく知るために、無料のホワイトペーパー(英語)をダウンロードしてご確認ください。


著者について

Eric Seiberling は、AWS の消費財業界向けのマーケティングのグローバル責任者であり、企業がクラウドの力を利用してブランドと消費者のより緊密な関係を構築し、組織の俊敏性を高め、デジタル変革の加速を支援しています。AWS に入社する前は、Dassault Systèmes North American 社のマーケティング活動を指揮し、消費財や小売の大手企業に戦略的および組織的な変更管理コンサルティングを提供し、Procter & Gamble 社でブランドマネージャーを務めていました。

翻訳は Solutions Architect シャルノ ミカエルが担当しました。原文は「Three Principles for CPG Digital Transformation」です。