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株式会社フジテレビジョン、ワールドカップバレー 2019 の配信において AWS を利用した超低遅延配信を実現
『 超低遅延配信は放送番組の視聴をより楽しくするマルチスクリーンでの利用や UGC におけるユーザ体験の向上を通し、インターネット配信に大きな変化をもたらすでしょう。』と株式会社フジテレビジョン(フジテレビ) 技術局 技術開発部 副部長 伊藤氏は述べます。
そして以下のように続きます。『 今回の ワールドカップバレー 2019( FIVB2019 ) では数万人が同時に視聴できる環境をわずか 3~4 週間で組み上げ本番に臨みました。我々は手軽に素早く超低遅延配信環境を実現できるようになりました。また、従量課金で利用でき、配信時における煩雑な運用から解放された事を非常に嬉しく思います。我々は既にそのユースケースを拡大しています。』
超低遅延配信はスポーツ Live 、TV と連動した配信、配信者/ユーザとのインタラクティブなやりとりを必要とする配信など様々なシーンで求められています。ただし超低遅延配信の実現には CMAF-UltraLowLAtency(ULL) 、WebRTC 、LL-HLS 、セグメント秒数を切り詰めた HLS/MPEG-DASH など様々なアプローチがありますが、超低遅延配信に対応したエンコーダ/インフラ/プレイヤーの準備が必要であり、大規模配信への対応の容易さ、到達できる遅延秒数も様々でした。
フジテレビは CMAF-ULL を用いて地上デジタル放送と同程度の約2~3秒という遅延量で FIVB2019 の配信を実現させました。それは地上デジタル放送の放送映像をさらに楽しんで頂くためのマルチスクリーンとして配信され、TV では試合のコート全体が映し出されている間、手元のスマートフォンではエース選手やフォーカスされた選手にクローズアップされるといったユーザ体験を向上させる取り組みでした。目的はユーザ体験を向上させ、これまでよりも更に試合の運び、選手の動きに注目し、放送番組にのめり込んでもらう事でした。
低遅延配信を実現した仕組みを以下の図に記します。
- 試合会場からの映像信号はフジテレビ局舎に伝送され、地上デジタル放送用設備と超低遅延配信用エンコーダである Videon社のEdgeCaster4K に分配して入力されます
- EdgeCaster4K では入力された映像信号を CMAF-ULL の HLS/DASH に処理します。1つの fMP4 ファイルの構造は 8 秒セグメント、200msec の Chunk です
- EdgeCaster4K からは専用線である AWS DirectConnect を通りオリジンサーバとなる AWS Elemental MediaStore へとストリームが出力されます
- ユーザのデバイスからは html5 プレイヤーを用いて Amazon CloudFront へと向けてリクエストが送信されます。Amazon CloudFront からは AWS Elemental MediaStore へリクエストが送信され HLS/DASH の fMP4 ファイルを Chunk 単位で取得します
超低遅延配信を実現するに当たり、課題はファイル出力を待たずにChunk単位(Chunked Transfer)で高速転送させることです。この Chunked Transfer に対応したエンコーダ、オリジンサーバ、CDN 、プレイヤーについて、フジテレビは AWS と連携し先行技術検証を行い、AWS Summit Tokyo 2019 で事例紹介すると共に、Conneted Media Tokyo 2019 では技術参考展示をされておりました。
Amazon CloudFront 、AWS Elemental MediaStore は共に Chunked Transfer と大規模配信に対応し、且つ、マネージドサービスであるためフジテレビは配信規模に応じたスケーリング動作、障害発生時の切り替え対応等の煩雑な運用から解放され、配信に集中する事ができたとの事です。
超低遅延配信によるマルチスクリーンは、その後も他のスポーツ中継番組での実施へと拡大しており、放送番組の視聴体験をより高めるマルチスクリーンとなるよう配信パラメータやプレイヤーの改良に取り組んでいるとの事です。
ワールドカップバレー 2019
InterBEE2019 特別講演での事例紹介
ソリューションアーキテクト 金目 健二