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【Startup Architecture of the year 2018受賞者インタビューシリーズ】Game Server Services 丹羽一智氏

連載企画:Startup Architecture of the year 2018 受賞者インタビューシリーズ

こんにちは。AWS でスタートアップ領域のマーケティングを担当している石渡です。今回から3回にわたって、先日の AWS Summit Tokyo で行われた「Startup Architecture of the year」の受賞者インタビューシリーズをお届けします。

この企画は、スタートアップ企業のシステムアーキテクチャに着目し、優れた実装を行っているものを表彰しようというものです。このたび、入賞した3社をお尋ねして、トロフィー贈呈と合わせたインタビューを行ってきました。コンテストの際のショートピッチでは語り尽くせなかった思想なども、ご紹介していきます。

まず初回は、「オーディエンス賞」を受賞した、Game Server Services 株式会社(以下: GS2 と記載)代表取締役 CEO の丹羽 一智 氏とのインタビューです。

ちなみに、オーディエンス賞は、AWS Summit のスタートアップ専門展示エリアの「Startup Square」で行われていた投票結果に基づく賞です。いわば、当日来場していたエンジニアから、最も興味・関心を集めたアーキテクチャだったと言えるでしょう。

多数の来場者で賑わった会場での参加者投票の模様

気鋭のモバイルゲームプラットフォーマーが選んだ先進のFaaSアーキテクチャ

GS2 社は、愛知県名古屋を拠点として2016年9月に設立したゲーム向けの開発プラットフォームを提供するスタートアップです。ゲーム向けと言っても最近では市場が細分化されています。その中でも、同社が注力するのは、いわゆるゲーム専用端末でのプレイを前提とした、コンソールゲーム向け市場ではなく、スマートフォンやタブレットなどからのアクセスを主に想定した領域を狙っており、この領域を総称してモバイルゲーム市場と呼んでいます。

モバイルゲームへの急速なシフトと今後も堅調な成長が予想される市場

現在、ゲーム市場は、ゲーム専用端末を用いる「コンソール向け」、「PC向け」、そして「モバイル向け」の3つのカテゴリに分類されることが一般的なようです。その3つの中で、既にモバイル向けが、51%のトップシェアを占めています。そして、今後も2桁での成長が期待されている、極めて成長性の高いのがモバイルゲーム市場なのです。

【出所】Newzoo調査(https://newzoo.com/insights/articles/global-games-market-reaches-137-9-billion-in-2018-mobile-games-take-half/)

 

モバイルゲームとは?:従来のゲーム作りの勘所が効かない独特の難しさ

モバイルゲーム市場の高成長期待から、様々なゲーム開発会社の参入が起こっており、そして、今後も参入が予測されているそうです。しかし、丹羽氏は、「モバイルゲームは、従来のゲーム市場にはない難しさがある」と言います。それは、需要予測が事実上困難なほどに難しいという点だそうです。コンソールゲームやそれを前提とするネットワークゲームであれば、販売数を元にした予測などの手法もあるそうですが、モバイルゲームとなると、いわゆる「バズった」際の急激なアクセス増が予測を難しくしているのだと言います。仮にバズっても、落ちることなくサービスを提供しつづけなくてならない、というのが多くのモバイルゲーム開発者の多くに共通した課題なのだと言えそうです。

しかし、丹羽氏はこうした難しさを事業機会として着想し、GS2としての事業化に着目します。ここに機会を見いだした原点は、任天堂時代の経験にあるといいます。

GS2 代表取締役CEOの丹羽 一智 氏

サーバーのノウハウがない開発者にもユニークなタイトル作りに挑んで欲しい

丹羽氏は、任天堂時代に、サーバーサイドの知識が乏しいゲーム開発者が躓くところを見てきたといいます。特に、大量のアクセスが世界中から発生する大型のゲームタイトルとなると、少しのミスでも取り返しの付かない大規模障害に発展することもあるといいます。そうした障害に繋がるようなミスというのは、大体の場合、「設計ミス」、「実装ミス」、「キャパシティプランニングのミス」のいずれかが起因しているといいます。

ゲーム開発者が、こうした課題に頭を悩ますこと無く、すなわち、インフラの知識や経験を気にすることなく、ゲーム作りに専念できるようにしたいと考えたのが発端なのだそうです。

GS2が選んだアーキテクチャ

そうした背景で起業に至った丹羽氏。創業当初からプラットフォームに AWS を採用頂いています。その理由は、任天堂時代からAWSに触れる機会はあり知識があったこと、そして、気軽に相談に乗ってくれるソリューションアーキテクトが居たことも大きいとのことです。しかし、AWS を選んだ最大の理由は、AWS Lambda による関数だけでなく Amazon API Gateway や Amazon DynamoDB などのサーバレスアーキテクチャに必要なコンポーネントやサービスが揃っていたことです。

「当初から、仮想サーバーベースの設計は考えていませんでした。FaaSであれば、アクセスがなければコストが発生しないので、創業当初の我々には極めて大きいと思ったからです。そして、FaaSなら、スケーラビリティの観点でも上限無く対応ができるという意味で、安心してお客様にご紹介できる基盤が出来ると思いました。」

 

Startup Architecture of the year会場で掲出されたパネル原稿

純粋に技術で評価される点に惹かれて Startup Architecture of the year に応募

Startup Architecture of the year は、AWS 社員の Facebook 投稿でその存在を知り、技術だけで勝負できるという面白さに興味を惹かれて応募に至ったそうです。〆切りギリギリのタイミングで応募頂き、無事に第一次選考を通過し、次に進んだのが、AWS のソリューションアーキテクトによるアーキテクチャーレビューでした。

Startup Architecture of the year は、AWS が提唱している AWS Well-Architected Framework (以下W-Aと記載)が提唱する5つのカテゴリに沿ってエントリーをして頂き、審査員が評価するというモデルとしました。そして、応募者によるエントリー内容を審査させて頂き、第一次選考を通過した方には、W-Aに基づく 1:1 のアーキテクチャレビューを実施させて頂きました。

実際に、丹羽氏にも、W-A に基づくアーキテクチャーレビューを実施頂きましたが、ここで判明した事実があります。

それは、W-A 自体は、仮想サーバー主体のアーキテクチャを前提としたものであり、GS2 のようなサーバレスを前提としたアーキテクチャ設計の際には、サーバーレス・アーキテクチャを前提とした、「Serverless Architecture Lens」がフィットしているということが分かったということです。

この部分を、丹羽氏は、本番当日のプレゼンテーションでも紹介する予定だったそうですが、実は、このハイライト部分が制限時間切れで強制カットとなってしまったのです。。ということもあり、今回のインタビューでは、そのカット部分のスライドを掲載させて頂くことにしました。

惜しくも時間切れとなって紹介頂けなかった丹羽氏のプレゼンのハイライト

今後の展開について

GS2 社は、最新のアーキテクチャがもたらす低コストと大規模なスケーラビリティを兼ね備えた筋肉質のシステムで、さらなる事業展開を図って行くといいます。事業の一方で、今後も、サーバレスアーキテクチャやFaaSについて積極的な情報発信を続けていくという丹羽氏に、ぜひご注目ください。

トロフィーをお届けにあがり、お話をお聞かせ頂きました。ご協力ありがとうございました。

関連情報

【日本語ウェブサイト】AWS Well-Architected Framework

【英語版ホワイトペーパー】Serverless Application Lens