National Australia Bank が Murex MX.3 を AWS に移行することで、パフォーマンスを 30% 向上させ、俊敏性の向上と成長への足掛かりを築きました。

National Australia Bank (NAB) は、Murex 取引プラットフォームを Amazon Web Services (AWS) に移行することで、資本市場における活動の俊敏性とパフォーマンスを向上させました。この銀行はオーストラリア最大の金融機関の 1 つで、世界中の顧客にサービスを提供しています。重要な取引、リスク、処理機能には Murex の MX.3 プラットフォームを使用しています。NAB は、オンプレミスのデータセンターのインフラストラクチャに柔軟性がなく、MX.3 アプリケーションのパフォーマンスと俊敏性が制限されていることに気付きました。このため、Murex と AWS からソリューションをクラウドに移行するための支援を受け、計算能力とイノベーションの柔軟性が大幅に向上しました。

オーストラリア最大の金融機関の 1 つである NAB は、個人、法人、機関投資家向けバンキングで 900 万を超える顧客に、パーソナルバンキング、ローン、クレジットカード、その他の金融サービスを提供しています。NAB は長い間、Murex の戦略的パートナーでした。Murex は、企業全体のクロスアセット金融技術ソリューションを資本市場関係者に提供しています。Murex の MX.3 は機能をまたがるプラットフォームで、取引、財務、リスク、取引後の業務をサポートし、NAB のような金融機関が規制要件をより適切に満たし、リスクを管理し、IT コストを制御できるよう支援します。

NAB は MX.3 を使用して、グローバルでの FX の現物およびデリバティブ、コモディティ取引、高価値の機関投資家や企業取引を管理しています。しかし、その物理データセンターでは、目標とする拡大やコンピューティング需要に対応できませんでした。NAB は、FRTB 規制への準拠、新しいビジネスイニシアチブのサポート、開発スピードの加速に必要な大量の計算処理に対応できるよう、スケーリングが簡単な AWS インフラストラクチャを採用することを決定しました。さらに、同行は、システム全体の安定性を維持しながら、インフラストラクチャの効率を改善してコストを削減することを目指しました。

NAB は Murex と協力して MX.3 プラットフォームを AWS に移行しました。同行は、クラウドでデータベースを簡単にセットアップ、実行、スケーリングできるように設計されたマネージドサービスである Amazon Relational Database (Amazon RDS) を含む一連の AWS のサービスを利用しました。

NAB は、クラウドなどの革新的なテクノロジーを使用して、オーストラリアおよび国際市場の顧客に利益をもたらすことに尽力しています。「私たちには自社のデータセンターがありました」と、NAB のマネージングエンジニアである Adrian Aw 氏は言います。「しかし、オペレーティングシステムやデータベースのバージョンを含め、すべてのインフラストラクチャは古いままでした。私たちの戦略的イニシアチブは、クラウドへ移行することでした」。

NAB は成長への取り組みを計画していましたが、インフラストラクチャは既に容量の上限に達しており、ビジネス目標をサポートするための効率的なスケーリングができませんでした。MX.3 は同行の資本市場活動の核となるものです。そのため、クラウドへの移行は大変な作業でした。このソリューションのグローバルユーザーには、オーストラリア、ニュージーランド、アジア、英国、欧州、米国のフロントオフィス、マーケットリスクチーム、財務チーム、および運用チームが含まれます。

「重要なのは、グローバルな視点でクラウドの専門知識を構築することでした」と Aw 氏は言います。NAB は移行の初期段階でこの専門知識を身に付けるためのサポートを、AWS プロフェッショナルサービスに依頼しました。このサービスは、企業が AWS を利用して望ましいビジネス成果を実現できるよう支援する、専門家で構成されるグローバルチームです。「AWS プロフェッショナルサービスチームのサポートは、プロジェクト全体を通して素晴らしいものでした」と Aw 氏は言います。「私たちはいつもエンジニアと連絡を取り合い、常に迅速な対応と詳細な技術的フィードバックを提供してくれました」。

同行はまた、コンサルタントグループや AWS パートナーの Contino と協力して、クラウド移行や DevOps の専門知識などの追加サポートを受けました。「AWS のサービスを利用することで、好調なスタートを切ることができ、結果的に管理と維持が容易になったと感じています」と Aw 氏は言います。移行中、NAB は Murex のエンジニアと「ドレスリハーサル」を何度か行いました。これにより、MX.3 での新しい運用を自信を持って行えるようになりました。Murex Australia の運用環境責任者である Philip Anderson 氏は、「移行期間中、NAB は Murex Australia チームを信頼し、ベストプラクティスのドキュメントや設計レビュー、毎週の会議まで、サポートを受けることができました。デプロイを行った際は、セキュリティ要件を満たすのに役立ちました」と述べています。

このプロジェクトはわずか 15 か月で完了し、NAB は 2020 年 8 月から 2021 年 11 月の間に、ミッションクリティカルな MX.3 プラットフォーム全体を AWS に移行しました。移行プロジェクトの間、NAB のビジネス関係者と技術チームは緊密に協力しました。新しい体制が現地および国際的な規制当局に準拠しているようにするために、NAB は早い段階で専任チームを配置し、コンプライアンス上の懸念が期日内に解決されるようにしました。ビジネス関係者はテクノロジーチームに大きな信頼を寄せていたため、本番稼働は難なく行えました。

NAB では、AWS への移行が完了して以来、MX.3 のシステム停止は発生していません。「AWS で、安定性を維持し、初日からバッチ処理のパフォーマンスを 30% 向上させることができました」と Aw 氏は言います。「これは当行のビジネスユーザーにとって大きなメリットでした。オーストラリア国外で事業を行っている海外ユーザーも、AWS でパフォーマンスが著しく向上したと報告しています」。

同行は MX.3 のデータベースコンピューティングに Amazon RDS for Oracle を使用しています。これは、クラウドでの Oracle デプロイのセットアップ、運用、およびスケーリングを簡単に行えるフルマネージド型の商用データベースです。「Amazon RDS for Oracle の利用しやすさも、NAB の変革の成功に大きく貢献しました」と Anderson 氏は言います。NAB では Amazon RDS リザーブドインスタンスも使用しています。これにより、企業はデータベースインスタンスを 1 年または 3 年の期間で予約することができ、その結果、オンデマンドインスタンスの料金と比べると、大幅な割引を受けることができます。「当行では Amazon RDS リザーブドインスタンスをよく使用します。本番環境以外ではプロジェクトの需要によって異なりますが、本番環境では常に一定量を使用しています」と Aw 氏は言います。

同行は復旧能力も高速化しました。「私たちはディザスタリカバリを自動化しているので、ディザスタリカバリイベントが発生したら、オーストラリア国内のアベイラビリティゾーンから移動して、オンデマンドで AWS インフラストラクチャを起動するだけです」と Aw 氏は言います。アベイラビリティーゾーンの使用に加えて、NAB はデータとアプリケーションのスナップショットを自動的に取得して、バックアップと復元のプロセスをさらに高速化しています。以前はディザスタリカバリに数時間かかりましたが、AWS で 30 分以内に復旧できるようになりました。そして、同行はさらなる最適化によりその時間を短縮する予定です。

NBA は Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) も活用しています。これは、安全かつサイズ変更可能なコンピューティング能力をクラウド内で提供するサービスで、これにより、アプリケーションのコンピューティング能力を確保できます。その結果、柔軟性が向上し、将来の成長が見込めるようになりました。「Amazon EC2 を使用することで、垂直方向と水平方向の両方のスケーラビリティが向上しました」と Aw 氏は言います。「必要に応じて新しいサーバーを追加できるので、新しいワークロードに合わせてコンピューティングを簡単かつ迅速に、拡張およびスケールできます」。

同行では、コンピューティング能力とコスト効率のバランスを取るために、本番環境の Amazon EC2 オンデマンドインスタンスを含め、複数のインスタンスタイプを使用しています。AWS で本番環境を適正な規模にできたことで、本番運用コストを大幅に削減しました。また、NAB は非本番環境の MX.3 環境の 87.5% を Amazon EC2 スポットインスタンスを使って稼働させています。これにより、未使用の Amazon EC2 容量を、オンデマンド料金と比較して最大 90% の割引料金で活用できます。「本番環境以外では、同行の DevOps エンジニアは 30 種類以上の Amazon EC2 インスタンスタイプを使用して、非本番環境のさまざまなワークロードに対応しています」と Aw 氏は言います。「スポットインスタンスを使用して、コストを最適化しています」。

パフォーマンス上の利点に加えて、NAB は Murex のプラットフォームをクラウド上で実行することで、コスト削減を促進するための可視性と制御性を備えました。「AWS で稼働してからわずか 3 か月で、コストを大幅に削減できました」と Aw 氏は言います。同行は、キャパシティと需要を一致させるクラウドコスト最適化プラクティスを構築することで、これを実現しました。Infrastructure as Code を採用し、インフラストラクチャの社内制御を設定することで、NAB は柔軟性と効率性を向上させ、コストをさらに削減しました。さらに、AWS での運用が透明であることで、同行はより多くの節約の機会を見出し、対応する AWS のサービスを利用するチームにコストを配分しやすくなります。

一方、NAB は自動化機能をクラウド上の環境の作成と管理にまで拡張しました。同行では、常に 40 以上の MX.3 のインスタンスを同時に実行しており、それぞれが独立して自己完結型で管理されています。AWS では、NAB は MX.3 ソフトウェア、ライブラリ、データベースなどのさまざまなコンポーネントから環境を構築し、そのプロセスを自動化して、より迅速に組み立て、起動することができます。以前は、環境の構築に 8～10 時間かかっていましたが、現在は 1 時間になりました。

「再現性、信頼性、高速性を備えた新しい MX.3 インストールを自動的に構築するプロセスを確立しました」と Aw 氏は言います。NAB は、パフォーマンスを低下させることなくこれらの利点を得ました。「自動化はすべて正常に機能しています。DevOps ツールの改善により、このような環境を構築する際、MX.3 設定のドリフトや不整合が発生する可能性は、事実上排除されないまでも、著しく低下し最小限に抑えられます」と Aw 氏は言います。

MX.3 を AWS に移行することで、NAB は同行のインフラストラクチャをグローバルな DevOps ベストプラクティスに合わせました。このプロジェクトは、Murex ソリューションをサポートする NAB のチームにとって、貴重な学びの体験でした。同行が AWS で MX.3 を実行するようになったため、エンジニアはソリューションの運用と保守に必要な知識と専門知識を身に付ける必要がありました。プロジェクトが完了するまでに、NAB は Murex ソリューションをサポートする新しい自律型クラウドチームが生まれていました。このチームは、ミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドで実行し、スケーラビリティと効率を向上させるためのオペレーションを構築し、変革しました。ビジネスの成長とビジネスユーザーのニーズの変化に合わせて維持およびスケールできる、最新のインフラストラクチャ設定を実現しました。「現在において自由に使えるすべての AWS サービスを最大限に活用できるように、やり方を変えました」と Aw 氏は言います。「AWS では、MX.3 をホストしているインフラストラクチャの容量に制限がなくなりました」。 12 以上の Murex プロジェクトが並行して実行しているため、この点は特に価値をもたらしています。

AWS での変革が成功した後、NAB のチームはクラウドの専門知識を深める機会が増えたと考えています。同行は 7,000 人のスタッフにクラウド技術とスキルのトレーニングを行いました。「NAB、Murex、AWS は、サポートの面で素晴らしい関係を築いており、実践的な専門知識の習得や認定の取得を奨励しています」と Aw 氏は言います。「Murex ソリューションを使用して包括的なコスト最適化の取り組みを完了したことで、クラウドの専門知識が刷新し、実証されました。今では社内で、クラウドで何ができるかのモデルになっています」。

AWS に移行することで、NAB は MX.3 をよりスケーラブルに、高い信頼性で、効率的に運用できるようになりました。アベイラビリティゾーンとスナップショットを使用して復旧プロセスを迅速化し、環境規模を適正化しスポットインスタンスを使用することでクラウドにかかるコストを最適化しました。「この移行により、より多くを構築し、より多くのオンボーディングを行い、開発スピードを向上させることができるようになりました」と Aw 氏は言います。「これは、私たちのビジネスがより急速に成長可能であることを意味します」。