お客様事例 / IT サービス

2023 年
株式会社 JPX 総研

JPX 総研、マイクロサービスと高速開発の手法により、AWS 上でカーボン・クレジット市場の取引システムを開発、3.5 か月でリリース

3.5 か月

取引システムの開発期間

8 件

3 年間の PoC 実施件数

マイクロサービスによる柔軟性の確保

インクリメンタル開発による短期開発

複数の階層構造によるセキュリティの強化

概要

日本取引所グループ(以下、JPX)の戦略的なデータ・デジタル事業展開を担う株式会社 JPX 総研。同社は温室効果ガスの排出削減量などを取引するカーボン・クレジット市場の取引システムをアマゾンウェブ サービス(AWS)上に構築。パートナーの日立製作所と共にインクリメンタル開発の手法を取り入れ、わずか 3.5 か月でリリースしました。AWS の活用により高難度の開発を短期間で成し遂げ、社会的重要施策である実証を成功させカーボン・クレジット市場の開設に貢献しました。

株式会社 JPX 総研

ビジネスの課題 | 短期開発と要件追加への対応が求められたプロジェクト

日本政府は 2050 年のカーボンニュートラルに向け 2022 年 2 月、「GX リーグ基本構想」において、自主的な排出削減目標の設定および目標達成のための排出量取引の仕組みと共に、その排出量取引を自主的に行う場として「カーボン・クレジット市場」の創設を掲げました。それに応じて JPX グループの東京証券取引所は、経済産業省の公募案件「カーボン・クレジット市場の技術的市場実証等事業」を落札し、2022 年 6 月から受託事業を開始しました。

取引システムの開発は JPX 総研が担うこととなり、パートナーにはグループのシステム開発を手がけてきた日立製作所を採用。「実証試験は 2022 年 9 月 からスタートすることが決定しており、開発に与えられた期間は約 3 か月半しかありませんでした。これまで取引システムのほとんどをオンプレミス環境に構築してきた当社も、従来の手法では間に合わないと判断し、クラウドの活用を検討しました」と語るのは、JPX 総研 IT ビジネス部 アプリケーション開発統括課長の岡田暁光氏です。

取引システムの開発を新しい制度設計と並行して行うため、多様な要件をスピーディに取り込む必要があり、開発中に要件追加や変更が発生することも予想されました。

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J-WS における 3 年間の AWS 活用を通して、インフラ部隊にもさまざまなナレッジが蓄積されてきていますので、JPX グループの DX を推進する立場として、新たなチャレンジを続けていきます

岩村 佳紀 氏
株式会社 JPX 総研 IT ビジネス部 デジタライゼーション統括課長

ソリューション | AWS 上に構築した JPX グループ共通のクラウド基盤『J-WS』を活用

JPX 総研は取引システムの開発にあたり、すでに構築していた JPX グループ共通のクラウド基盤『J-WS』の活用を決定。J-WS は、JPX グループがクラウド活用を見据えて 2020 年から AWS 上に本格的な環境構築を開始したものです。共通基盤に必要なセキュリティ、アクセス制御、ライブラリなどの機能実装を進め、2020 年 11 月に情報配信系のシステムから利用が開始しました。

以降クラウドシフトを進め、現在は約 30 のシステムが J-WS  上で運用されています。「データ・デジタル事業分野のサービスを中心に、グループとしてクラウドの利用を広げていく方針のもと、アジリティや拡張性などのメリットを得やすい情報系システムから移行しています」と、IT ビジネス部 デジタライゼーション統括課長の岩村佳紀氏は語ります。

J-WS で AWS を採用した理由は、クラウド企業としての実績、充実したマネージドサービス、サポート体制、情報量の豊富さにありました。IT ビジネス部 J-WS担当課長の鈴木智之氏は「インターネット上に技術情報が多数あり、リファレンスも多数公開されていることが決め手となりました。オンラインセミナー、トレーニングプログラム、資格制度などが充実していることも大きいです」と語ります。

同社はカーボン・クレジット市場の取引システム短期開発に向けてマイクロサービスを採用し、取引に必要な売買、約定、決済などの機能要素を独立したコンポーネントに分割して J-WS上で開発する方針を決定。また開発手法として、システムを分割して要件を満たした機能を段階的に開発 / 統合していくインクリメンタル開発の手法を採用しました。

AWS のサーバーレス環境とマネージドサービスを徹底活用し、インフラ構築の負荷を軽減することでアプリ開発に集中。アプリ実行環境はコンテナ化し、コンテナの実行環境を AmazonECS on AWS Fargate によって構築しています。データベースは Amazon Aurora、利用者アクセスにはAmazon CloudFrontAmazon API Gateway、外部 SaaSとの接続には AWS Lambda、ジョブ制御に Amazon EventBridgeAWS Step
Functions
を採用しました。

「J-WS はセキュリティの強化のために複数のアカウントを用いて複数の階層構造とし、外部と接する領域、オンプレミスと接する領域などで個別のセキュリティポリシーを設けています。日立製作所にはそれぞれのポリシーに準ずる形で、AWS サービスの再配置をデザインしていただきました」(鈴木氏)

その他、開発を高速化するためにパイプライン構築をコード化する AWS CodePipeline を採用してデプロイを自動化したほか、日立のアプリケーションフレームワークやローコード開発ツールを用いて生産性を高めています。

さらに、AWS プロフェッショナルサービスの支援も受け、AWS のサービスを活用するうえでのセキュリティ上の注意点に関するアドバイスを求めました。

「AWS からは設定に関する疑問や不具合の解消に関して、週次のミーティングや日々のコミュニケーションを通してリアルタイムに情報を提供いただきました」(鈴木氏)

アーキテクチャ

導入効果 | 取引システムを 3.5 か月でリリースし、実証の成功に貢献

カーボン・クレジット市場の取引システムの構築は計画どおりに進み、2022 年 9 月より 145 の組織が参加する実証を開始。最終的には 183 の組織が参加して、2023 年 1 月末に実証を終了しました。2023 年 10 月から本番稼働し、実証時の取引システムをベースに機能追加や改修も進めています。

JPX 総研において、安定性が求められる取引システムを J-WS上に構築するプロジェクトは初めてでしたが、日立製作所や AWS の支援により、多くの困難を乗り越えられたと評価しています。

「日立製作所にはこれまで、弊社 JPX のシステム開発において、要件定義で仕様を厳密に固める安全重視のプロジェクトをお願いしてきました。今回は短期開発の事情を把握し、AWS をよく理解しモダナイゼーションの志向を持つ SE と、証券業界の知識や弊社のシステムを理解する SE をバランスよくアサインして対応いただき、品質の高いシステムを短期間で構築できました」と、IT ビジネス部 カーボン・クレジット市場システム担当課長の若山幸市氏は語ります。

また、岩村氏は「オンプレミス環境なら 1 年半はかかるところが、3.5 か月で構築できたのは間違いなく J-WSのおかげです」と語ります。物理サーバーの調達が不要になったことで、新たなシステム開発に向けた PoC のハードルも下がり、J-WS の稼働開始から約 3 年の間に 8 件の PoC を実施しています。

今後に向けて同社と AWS はクラウド活用のさらなる拡大に向けてタスクフォースを設置し、運用の高度化と高機能化に取り組みながら、多様なシステムの移行を視野に協業を進めています。

「J-WS における 3 年間の AWS 活用を通して、インフラ部隊にもさまざまなナレッジが蓄積されてきていますので、JPX グループの DX を推進する立場として、新たなチャレンジを続けていきます」(岩村氏)

アプリ開発においても、今回のプロジェクトで獲得したインクリメンタル開発などのノウハウを活用しながら、新たなチャレンジを続けていく計画です。

「変化が激しくなる証券市場では、これまで以上にスピードが求められるため、柔軟な開発スタイルに磨きをかけていきます。システム開発においても、新たなビジネスを作るというビジネス目線が求められています。AWS と日立製作所とは今後も密に連携しビジネス開発を進めていきます」(岡田氏)

企業概要 : 株式会社 JPX 総研

東京証券取引所グループと大阪証券取引所が 2013 年 1 月に経営統合して誕生した日本取引所(JPX)グループが、データ・デジタル事業を集約するため 2021 年 12 月に設立。金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービス及びシステム関連サービスの提供、その他の取引所金融商品市場の開設に附帯する業務などを担当する。現在、2030 年までの長期ビジョン「Target 2030」のもと、グローバルな総合金融・情報プラットフォーム「G-HUB」の構築を目指している。

 

岡田 暁光 氏

岡田 暁光 氏

若山 幸市 氏

若山 幸市 氏

岩村 佳紀 氏

岩村 佳紀 氏

鈴木 智之 氏

鈴木 智之 氏


AWS アドバンストティア サービスパートナー

株式会社日立製作所

日立の IT サービスは、さまざまなビジネス分野の豊富な専門知識を組み合わせることで、お客様の多様なニーズに対応している。日立は、クラウドサービスビジネスにおいてはフェデレーションクラウドに強みがあり、それによりさまざまな種類の複数のクラウドサービスを組み合わせて使用することができる。

株式会社日立製作所

ご利用中の主なサービス

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フルマネージド型サービスの Amazon API Gateway を利用すれば、デベロッパーは規模にかかわらず簡単に API の作成、公開、保守、モニタリング、保護を行えます。

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