お客様事例/製造業

2024
TOPPAN ホールディングス株式会社

TOPPAN、グループ全体の DX 推進基盤として SAP HEC with AWS を採用。グループ間のデータ統合・共有による意思決定の迅速化と業務効率の向上を実現

インフラリソースの拡張性の向上

複数のアベイラビリティゾーンによる可用性の向上

バックアップの自動取得による事業継続性の確保

サーバー更新にかかるハードウェアコストや工数の削減

概要

凸版印刷からグループ組織の再編によって持株会社へと生まれ変わった TOPPAN ホールディングス株式会社。システム基盤のモダナイゼーションを重要テーマに掲げる同社は、DX 推進基盤として SAP S/4HANA を導入。SAP がアマゾン ウェブ サービス(AWS)上でマネージドサービスとして提供する SAP HANA Enterprise Cloud を採用しました。グループ会社の経営情報をクラウド上で一元管理することで、データドリブン経営の実現を目指しています。

TOPPAN ホールディングス株式会社

ビジネスの課題 | データドリブン経営に向けてグループ共通の基幹システムに刷新

1900 年の創業以来、120 年以上にわたり印刷テクノロジーを進化させてきた TOPPAN グループ。2021 年 4 月に発表した中期経営計画に基づき、事業ポートフォリオの変革を進めながら、DX と SX(Sustainable Transformation)をグループ全体で推進しています。「TOPPAN グループが目指す DX のビジネスモデルは、さまざまなチャネルでデータを収集し、高度な運用ナレッジを活かしてデータを分析しながら、サービス開発やコンサルティングにつなげていくことにあります」と語るのは、デジタルイノベーション本部 IT 基盤センター長の下田泰之氏です。

同社の中期経営計画において、重点施策の 1 つに定めているのがシステム基盤のモダナイゼーションです。

「グループ全体の経営情報を一元管理し、データドリブン経営を推進していくうえで、印刷事業を前提に個別最適で運用されてきたシステムは、ボトルネックになりかねません。そこで、経営管理ルールを見直し、全体最適を前提としたグループ共通の基幹システムに再構築することにしました」(下田氏)

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SAP S/4HANA に蓄積したデータを DWH に転送し、BI ツールで可視化する仕組みを導入しました。AWS のトレーニングを受講した 1,600 人以上の社員自身により、分析できる習慣化・定着化を進めています"

下田 泰之 氏
TOPPAN ホールディングス株式会社 デジタルイノベーション本部 IT 基盤センター センター長

ソリューション | TOPPAN グループとして採用実績が豊富な AWS を採用

2019 年頃から新システムの構想に着手した同社は、将来の海外展開を見据えてグローバルスタンダードの SAP S/4HANA を採用。SAP S/4HANA を稼働させる基盤には、AWS をベースとした SAP HANA Enterprise Cloud(以下、SAP HEC with AWS)を採用しました。SAP HEC は、SAP システムの運用設計、環境構築、バックアップ、システム更新、可用性といった基盤関連の作業を SAP が提供するマネージドサービスで、IT インフラに AWS を採用しているのが SAP HEC with AWS です。

「リソースの拡張性、可用性、運用性、コストなどを総合的に判断して AWS を選択しました。2021 年に AWS トレーニングを非エンジニアも含めて 1,600 人以上の社員が受講し、1,000 人以上が AWS 認定資格を取得していることからも、AWS を採用するのは自然の流れでした」(下田氏)

2021 年頃より導入プロジェクトに着手した同社は、旧凸版印刷、旧トッパン・フォームズ、図書印刷の 3 社の会計システムの統合をターゲットに開発を進め、2023 年 7 月より本稼働を開始しました。その後、同年 10 月のホールディングス化にあわせてTOPPAN ホールディングス、事業会社の TOPPAN、TOPPAN エッジ、TOPPAN デジタルの 4 社を統合する会計システムとしても運用を開始しました。

SAP S/4HANA の導入に際して同社は、追加機能の開発基盤に SAP Business Technology Platform(SAP BTP)や社内 IT 用に AWS 上に構築したグループ共通基盤を採用しています。

デジタルイノベーション本部 IT 基盤センター 技術部 課長の味山博之氏は「SAP S/4HANA 本体はできる限り標準機能を適用し、アドオン領域は SAP BTP 上で開発して疎結合で連携する“Side-by-Side 開発”の手法を採用しました。一方、インターフェース部分で最小限のアドオンも作る必要があり、この部分については構築パートナーの実績から“InApp 開発”の手法を採用しました。業務メニューやシステム間連携、帳票出力といった基盤拡張領域は SAP BTP や AWS 共通基盤上で構築し、業務アプリの実行環境として統合しました」と語ります。

システム統合にあたり、難所となったのは各社の業務プロセスとデータの統一にありました。味山氏は「従来型の事業から、DX/SX 関連の成長事業や重点事業まで、複数のビジネスのデータを横断的に集めて統一する必要があります。そのために、グループを巻き込んで統一していくことが一番高いハードルでした」と振り返ります。

開発過程ではインフラリソースも大量に必要になったと言います。デジタルイノベーション本部 IT 基盤センター 技術部の土田光男氏は「ホールディングス化などさまざまな対応事項があり開発スケジュールが複雑だったため、片方では結合テスト、片方では統合テストというようにテスト環境を個別に用意する必要がありました。急きょ環境を増やして欲しいというリクエストも多くありましたが、AWS のおかげでタイムリーに応えることができました」と語ります。味山氏も「SAP S/4HANA の環境は、開発、検証、本番の 3 ランドスケープだけでは足りず、移行環境を大量に用意する必要がありましたが、想定外の事態にも短期間にリソースを調達することができました」と付け加えます。

SAP S/4HANA と連携するデータ連携基盤、帳票出力、ID 管理、ジョブ管理、固定資産管理などのサブシステムや購買関連のアプリケーションは SAP BTP や AWS 共通基盤上で開発しています。ID 管理基盤を担当したデジタルイノベーション本部 IT 基盤センター 技術部の畑昌宏氏は「これまではグループ各社、各システムの認証基盤で認証を行ってきたため、各社の認証基盤を併存させる形で統合認証基盤を構築し、SAP S/4HANA や SAP BTP、AWS 共通基盤と連携する経路を設定しました」と語ります。味山氏は「各システムでロールの概念が異なる中で、権限を抽象化することでシンプルな認証を実現しました」と話します。

アーキテクチャ

アーキテクチャ

導入効果 | 経理業務の効率化やデータ利活用による高度化が実現

2023 年 10 月から本格的に始動した新基幹システムは、ホールディングス化されて初の月次決算を済ませ、現在もトラブルもなく順調に稼働しています。

「これまで各社で個別運用されていた会計システムが統合されたことで、グループ全体の経理業務の効率化を図ることができました」(下田氏)

インフラ環境についても、複数のアベイラビリティゾーンによる可用性の向上や、バックアップの自動取得による事業継続性の確保、段階的拡張によるコストの最適化などクラウドならでのメリットが発揮されており、AWS を採用したことで IT 監査の業務も効率化しています。

データ活用についても、SAP S/4HANA に蓄積したデータをデータウェアハウス(DWH)に転送し、BI ツールで可視化することで経理業務の高度化を実現しています。

デジタルイノベーション本部 IT 基盤センター 技術部 課長の江口嘉伸氏は「今回、新たに会計系の分析ダッシュボードを用意して、経理部門などに提供を開始しました。これまで、経理担当者は CSV 形式でデータを抽出して、Excel 等で分析したり、レポートを作成したりしてきましたが、BI ツールで可視化が可能になり、活用レベルが向上しました。今後も分析コンテンツを充実させたり、セルフ BI でユーザー自身が分析できるようにしたりしながら、分析の習慣化・定着化を進めていきます」と語ります。

分析の高度化に向けた取組みも展開されており、グループ会社では AI/ML サービスの Amazon Sagemaker や生成 AI サービスのAmazon Bedrock を活用した AI Sandbox 環境の構築検討が進められています。また、複数の生成 AI の LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を集約した業務特化型 LLM-HUB 構築のプロジェクトも推進中で、データ利活用をさらに促進していく方針としています。

ホールディングスと事業会社への導入を終えた現在、国内の製造系グループ会社 14 社に会計システムとして SAP S/4HANA を導入中で、2024 年 4 月のカットオーバーを予定しています。その後も国内グループに展開しながら、新たな基幹システムのあり方を模索していく考えです。

企業概要
TOPPAN ホールディングス株式会社

印刷テクノロジーをベースに、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業の 3 分野で事業活動を展開。2023 年 10 月のホールディングス化に伴い、持株会社の「TOPPAN ホールディングス株式会社」の傘下に旧凸版印刷の主要部門を継承する「TOPPAN 株式会社」、リアルとデジタルの両面でビジネスプロセス変革を支援する「TOPPANエッジ株式会社」、グループ全体の DX 事業戦略を推進する「TOPPAN デジタル株式会社」を設立。「Digital & Sustainable Transformation」を基本方針に持続可能な社会の実現を目指している。

TOPPAN ホールディングス株式会社
下田 泰之 氏

下田 泰之 氏

江口 嘉伸 氏

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味山 博之 氏

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土田 光男 氏

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畑 昌宏 氏

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