優れた AWS 環境の応答性能(他社ベンチマーク比)
低遅延かつ堅牢なクラウド型 PLC を実現
概要
50 年以上にわたって制御機器領域をリードしてきた東芝インフラシステムズ株式会社。工場やプラントの機器を制御する PLC(プログラマブルロジックコントローラ)のクラウド化にいち早く着手した同社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の低遅延性、計算リソースに集中できるハイパーバイザー AWS Nitro System の性能を評価して採用しました。さらに、独自開発の通信プロトコルと多層的なセキュリティ対策により、安全な遠隔制御を実現。人手不足に直面する製造業の DX 推進を支援しています。
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ビジネスの課題 | IT と OT の分断を超えた課題解決
株式会社東芝の事業会社である東芝インフラシステムズは 50 年以上にわたり、上下水道、製紙、食品・飲料、鉄鋼、半導体製造、物流、電力、鉄道といった社会インフラ関連の産業分野で、高い信頼性が求められるコンポーネントの開発・製造・販売を手がけてきました。現在は社会システム、電波システム、セキュリティ・自動化システム、鉄道システムの各事業部に加え、システムコンポーネントを製造する産業システム事業部を擁しています。
近年は IT との融合に注力し、2023 年 4 月にスマートマニュファクチャリング事業部を設立。この事業部は、産業システム事業部の OT(Operational Technology)関連装置を開発する部門と、グループ会社である東芝デジタルソリューションズの IT ソリューション部門が統合されて発足しました。
スマートマニュファクチャリング事業部では、工場やプラントなどの設計段階でのシミュレーションの活用、災害時の供給リスクに対応したサプライチェーン管理、生産工程でのデータ収集や AI を用いた検査など、多様なソリューションを提供。なかでも計装ビジネスユニットでは、センシングと制御の技術を核に、生産管理の効率化や働き方改革の支援に取り組んでいます。同事業部設立以前の 2019 年頃から、制御領域のリモートワークを推進するため、PLC のクラウド化構想が立ち上がりました。「東芝社内のアイデアコンテスト『みんなの DX』で、クラウド型 PLC のアイデアが経営陣からも注目されたことがきっかけです」と語るのは、同事業部の計装・制御システム技師長である高柳洋一氏です。
工場やプラントでは、従来 OT 側の機器データを産業用コンピュータで一時保管してから IT 側へ受け渡す方式が取られてきました。しかし、この方法ではリアルタイムな状況把握が難しく、メンテナンスも現地対応が必要となります。近年のコロナ禍や人手不足を背景に、リモートで制御状況をリアルタイムで把握し、複数の現場にある機器を効率的に管理したいというニーズに応えるのが、クラウド型 PLC の構想です。
「東芝は 1975 年に、業界に先駆けて機器のデジタル制御技術を開発した歴史があります。クラウド型 PLC も業界をリードする先進的な取り組みとなると考えています」と、計装技術部 コントローラ機器事業責任者の百武博幸氏は語ります。
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ハイパーバイザーはさまざまな処理を担いますが、AWS Nitro System ではそれらの機能を分割し、CPU を制御演算に専念させることで高いパフォーマンスを実現しています"
高柳 洋一 氏
東芝インフラシステムズ株式会社 スマートマニュファクチャリング事業部 計装・制御システム 技師長
ソリューション | AWS の機能を使ってリアルタイム性を向上
インターネットを介した機器の監視は比較的簡単にできますが、機器の制御には通信途絶時の対応や安全性、セキュリティ確保といった課題をクリアしなくてはなりません。そこで 2021 年頃、事業部の技術部門では、クラウド型 PLC 構築に向けて複数のクラウドサービスを比較検証しました。計装クラウドサービス技術担当 マネジャーの佐藤光永氏は、「計算特化型インスタンスを使用し、連続運転時の遅延時間を検証したところ、他のクラウドサービスと比べて優れた性能を示した AWS を採用しました」と語ります。この性能差について高柳氏は「ハイパーバイザー(物理マシン上で複数の仮想マシンを実行するソフトウェア)では、ネットワーク処理やストレージの I/O も処理していますが、AWS Nitro System はこれらの機能を分割し、CPU がリアルタイム処理や制御演算に専念できる仕組みとなっており、高いパフォーマンスが実現されているのだと思います」と述べています。
クラウド型 PLC の構成要素は大きく 3 つあります。まず、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)に展開された「制御コア」で、制御プログラムを連続的に実行。次に、制御コアと現場の機器と接続するのが、東芝インフラシステムズ製の小型組込み産業用コンピュータを使った「エッジエージェント装置」です。そして、「制御コアマネージドサービス」で監視や異常時の通知を行います。また、制御コアとエッジエージェント装置間の通信に使用する特許出願中の独自技術「マルチコネクション型通信プロトコル」について佐藤氏は「複数の経路で通信することで、パケットロスが発生した際にも別経路から受信ができます。この仕組みにより、パケットロスの確認や再送信にかかる時間を短縮し、インターネット接続の不安定性を軽減しています」と語ります。
セキュリティ対策については、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の脅威分析のガイドラインに準拠した複数の防御策を重ねて実施。具体的には、通信の暗号化と HTTPS による相互認証を行い、登録済みプログラム以外の実行を制限するホワイトリスト方式でマルウェアから保護。さらに、AWS スナップショットによる自動差分バックアップとリストア環境を整え、エッジエージェント装置では USB ストレージの自動読み込みを制限するなどの安全対策を講じています。
導入効果 | 業界の"非常識"を乗り越え、クラウド制御の新領域へ
東芝インフラシステムズのクラウド型 PLC は、2024 年 5 月に『Meister Controller Cloud PLC パッケージ typeN1』としてリリース。クラウド型 PLC の導入によって、たとえば 2 人以上で行っていた PLC の改修工事を、1 人が現場で対応しもう 1 人がリモートでサポートする体制に変更できれば、移動にかかる費用や負担が軽減されます。また、生産現場のデータ収集も物理的な受け渡しからクラウド型 PLC の自動収集に切り替えることで、作業の効率化とセキュリティの向上を同時に実現できます。さらに PLC の更新時には、現場の機械停止や整合性検証の手間も低減され、業務全体の効率化や費用削減も期待できます。
東芝インフラシステムズではクラウド型 PLC を展開する領域として、これまで同社があまりつながりのなかった食品・飲料業界や繊維業界にも目を向けています。これまでに、ピッキングロボットのデジタルツイン、AI 分析による食品製造ラインの調整、受電切換制御などの実証実験を重ねてきました。また今後、スタートアップ企業と連携し、漁港で使用される AI 外観検査・異物除去システムの実証や空調最適化ソリューションによる空調制御も実施予定です。クラウド型 PLC によって全国各地のしらす干し製造現場で必要なプログラムの調整がリモートから実施できるようになり、技術者が現地に出向かなくても対応可能になるといいます。
さらに高柳氏は今後の展望について、次のように語っています。
「制御機器とインターネットの接続については、まだ業界で賛否が分かれています。しかし、20 年前には非常識だと言われた制御技術も現在当たり前になっていますから、クラウド制御も同じように普及していくでしょう。今後、データ連携などさらに高度な取り組みを進めていく上で、AWS には新サービスの情報提供や技術サポートなど継続的な協力とともに、AWS のエコシステムを活用して、SI 企業やエンドユーザなどとの新しい出会いも期待しています」
カスタマープロフィール:東芝インフラシステムズ株式会社
東芝の連結子会社であり、社会インフラ事業を中心とした製品やシステムの開発、製造、販売、サービスを提供している。事業領域は幅広く、社会システム、電波システム、セキュリティ・自動化システム、鉄道システム、産業システム、ビル・施設ソリューションなどを手掛けている。これらの事業を通じて長年培った技術と経験を活かし、社会インフラの発展と安全性の向上に取り組んでいる。
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![高柳 洋一 氏 高柳 洋一 氏](https://d1.awsstatic.com/case-studies/jp/case-study-toshiba-tiss_takayanagi.cda98ec303b5cd8a85bc1ecaef0fcbfc8290450b.png)
高柳 洋一 氏
![佐藤 光永 氏 佐藤 光永 氏](https://d1.awsstatic.com/case-studies/jp/case-study-toshiba-tiss_sato.329395b7ac095f69c7a2a62336682d8b342bfdf3.png)
佐藤 光永 氏
![百武 博幸 氏 百武 博幸 氏](https://d1.awsstatic.com/case-studies/jp/case-study-toshiba-tiss_hyakutake.9a28e1f54103b9eff721a1632aedefeb2c789ba2.png)
百武 博幸 氏
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