エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングとは、情報を生み出すデバイスと、その情報を利用するユーザーに近いところに情報の保存場所と計算能力を配置したプロセスのことです。従来は、センサーやスマートフォンなどのスマートデバイスからのデータをアプリケーションが中央にあるデータセンターに送信し処理を行っていました。しかし、今までになく複雑で大規模なデータがネットワークの能力を越えてしまいました。処理能力をユーザーとデバイスに近いところにシフトすることで、エッジコンピューティングはアプリケーションのパフォーマンスを大幅に改善し、必要な帯域幅を削減します。また、より速くリアルタイムのインサイトが得られるようになります。 

なぜエッジコンピューティングが重要なのですか?

エッジコンピューティングは、エンタープライズが生のデータをより効率的に収集し、分析できるようにするため、普及が進んでいます。組織はこれまで以上に、業務効率やビジネス機能について情報に基づいた決定を行うために、データに即座にアクセスする必要があります。エッジコンピューティングを適切に利用することで、組織は安全性とパフォーマンスの向上、プロセスの自動化、ユーザーエクスペリエンスの改善を実現できる可能性があります。

ここでは、エッジコンピューティングの利点をいくつか紹介します。

レイテンシー低減/高速化

多くの産業では、ほぼ瞬時にデータを転送することが技術的に求められています。例えば、工場フロアにあるロボット機械を考えてみましょう。生産中の事故によってロボットの動作が危険な状態になった場合、ロボットはできるだけ早く情報を受け取り、動作を停止させる必要があります。

データセキュリティの向上

エッジコンピューティングでは、データの大半はローカルで処理保存されます。データセンターに送り返す必要がある情報は、送信前に暗号化することができます。また、エンタープライズは、エッジコンピューティングを利用することで、機密データをソースに近い場所に保存することで、一般データ保護規則 (GDPR) などのデータ主権に関する法律に準拠することができます。

 

生産性の向上

エンタープライズは、情報により迅速に対応することで、業務と従業員の生産性を向上させます。ソースで収集したデータを分析することで、組織は施設、インフラストラクチャ、または機器のうちパフォーマンスが低下している領域を改善することができます。エッジコンピューティングは、人工知能や機械学習ツールと組み合わせることで、ビジネスインテリジェンスとインサイトを導き出し、従業員とエンタープライズの生産性を向上させることができます。 

リモートデータ収集

接続性や帯域幅が不安定な場所からデータを収集することは困難です。ネットワークエッジにコンピューティングとデータストレージの機能を確立することで、エンタープライズは遠方の油田、工業地帯、海洋船舶からのデータ収集と送信を行うことができます。 

コスト削減

大量のデータを発信地から集中管理されたデータセンターに送るには、より多くの帯域幅が必要なため、コストがかかります。エッジコンピューティングモデルでは、エンドユーザーが重要なデータのみを送信するため、拠点からデータセンターへ送信されるデータ量を減らすことができます。お客様のビジネスで送信し、処理するデータの量によっては、運用コストを大幅に削減することができます。 

信頼性の高いパフォーマンス

エッジコンピューティングは、インターネット接続が困難な遠隔地で行われることが多いです。エッジコンピューティング環境をセットアップすることで、エンタープライズは、データの処理、分析、保存を確実に実行できるようになります。これにより、ネットワークや接続の途絶による運用のダウンタイムに悩まされる可能性を大幅に削減することができます。

エッジコンピューティングはどのような産業で利用されていますか?

データ転送が高速かつ低レイテンシーであることと、エッジデバイスの設置が比較的容易であることから、エッジコンピューティングはあらゆる産業で広く利用されています。次に例を示します。

製造業

センサーやゲートウェイなどのモノのインターネット (IoT) デバイスの普及により、エッジコンピューティングシステムは製造業に広く浸透しています。製造業では、自動化の実現、現場でのデータ収集、生産効率の向上、迅速な機械間通信を可能にするために、エッジコンピューティングソリューションを活用しています。 製造業におけるエッジコンピューティングの詳細情報 >>

自動走行車

自動運転車のような自動走行車には、毎秒大量のデータを収集する複数の IoT センサーが搭載されています。瞬時に対応するためにはリアルタイムのデータ処理が必要であり、瞬時の判断のためにリモートサーバーに頼ることはできません。

さらに、自動走行車は、天候、交通、事故、迂回路などのデータをリモートサーバーに送信するのではなく、まず互いに通信することでより効率的に対話します。エッジコンピューティングは、彼らの安全性と道路状況を正確に判断する能力を確保するために重要な技術です。

エネルギー

エネルギー企業は、石油掘削装置、ガス田、風力タービン、太陽光発電所のデータを収集および保存するために、エッジコンピューティングを使用しています。Rig のオペレーターは一般的にエッジ人工知能をデプロイして、危険の検出やパイプラインの最適化と検査を行っています。エッジコンピューティングは、この業界の運用効率の向上、作業員の安全確保、保守作業の必要時期の予測に役立っています。 エネルギー分野のエッジコンピューティングの詳細情報 >>

医療

エッジデバイスは、体温や血糖値など、患者の重要な機能をモニタリングします。エッジコンピューティングによって、ヘルスケア部門はこの患者データをローカルに保存し、プライバシー保護を向上させることができます。また、医療施設では、中心地点に送信するデータ量を減らし、データ損失のリスクを軽減することができます。 

エッジコンピューティングの仕組み

エッジコンピューティングは、計算とストレージをデータの生産者と消費者に近づけることで機能します。エッジのデプロイはユースケースによって異なりますが、大きく 2 つのカテゴリに分類することができます。

アップストリームアプリケーション

アップストリームアプリケーションでは、スマートセンサーやその他のデバイスからデータを収集し、データセンターに送信してさらに処理することが優先されます。収集されたデータは、大きく 3 つのカテゴリに分類されます。

  • センサーが 5 分ごとに測定する室温データのように、冗長または無関係なデータ
  • 数時間の平均気温のような、長期保存が必要な有用なデータ
  • ヒーターがオンになるべき室温の値などの、短期的な意味を持つ有用なデータ

アップストリームのユースケースにおけるエッジコンピューティングは、これら 3 種類のデータソースを区別し、重要な情報のみをデータセンターに送信することに重点を置いています。  エッジ戦略には、次のような例があります。

ローカルオンプレミスデータセンター

企業は、ストレージ、サーバー、その他のエッジデバイスをデータソースの隣に設置します。例えば、エネルギー会社が風力発電機内にいくつかのサーバーラックとリモート LAN を設置し、風力発電機が生成するデータを収集および処理するような場合です。

モノのインターネット (IoT) 機器に搭載されるコンピューティング能力

企業は十分なコンピューティング能力を持つセンサーを使用し、送信前にあらかじめ決められたフィルタリングルールを使ってデータを処理します。

リージョン別エッジサーバー

企業がクラウドサービスを利用して、1 つのリージョン内にある複数の異なるセンサーからのデータを処理します。クラウドプロバイダーは、クラウドサービスをローカライズし、企業が必要とするリージョンにあるエッジサーバーでコンピューティングが行われるようにすることができます。 

ダウンストリームアプリケーション

ダウンストリームアプリケーションは、エンドユーザーへのデータ配信を優先します。例えば、メディアやエンターテインメントにおけるライブ動画ストリーミング、オンラインゲーム、バーチャルリアリティの動画フィードなどがを含みます。ダウンストリームユースケースのエッジコンピューティングは、ネットワークのレイテンシーを低減し、ユーザーがイベントをその場で体験できるようにすることに重点を置いています。以下に、ダウンストリームエッジコンピューティングの例をいくつか示します。

キャッシュ

ある企業は、コンテンツ配信ネットワークをセットアップし、地理的によりユーザーに近いエッジサーバーにコンテンツをキャッシュすることで、ユーザーのコンピュータにより速く到達できるようにします。CDNsの詳細情報 >>

クラウドエッジサービス

クラウドコンピューティングサービスを使用すると、特定の地域のエンドポイントやリソースに対して、レイテンシーの影響を受けやすいアプリケーションの一部をローカルに実行することができます。

モバイルエッジコンピューティング

ある企業は、5G ネットワークや 5G ベースのモバイルクラウドコンピューティングサービスなどのモバイルエッジコンピューティングインフラストラクチャを使用して、超低レイテンシーアプリケーションを開発、デプロイ、スケールしています。

エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違い

エッジコンピューティングとは、ワークロードをエッジ、つまりデバイスやエンドユーザーに近い場所で実行することです。一方、クラウドコンピューティングは、クラウドサービスプロバイダーのデータセンターであらゆるタイプのワークロードを実行することを含む広い用語です。

しかし、クラウドサービスプロバイダーは、エッジコンピューティングサービスも提供していることに留意する必要があります。例えば、 AWS のエッジサービス は、データ処理、分析、およびストレージをエンドポイントの近くで提供し、AWS データセンターの外にある場所に API とツールをデプロイすることができます。

AWS エッジコンピューティングのユースケース

多くの大手エンタープライズが AWS のエッジコンピューティングツールを活用しています。以下、3 つの代表的な例を挙げます。

Volkswagen Group

世界有数の自動車グループである Volkswagen は、AWS IoT、機械学習、エッジサービスを利用して、Industrial Cloud を強化しています。120 以上の製造工場からデータを接続し、工場設備の効率と稼働率を向上させ、生産の柔軟性を高め、車両の品質基準を推進することができます。Volkswagen が AWS をどのように利用しているかを読む >>

Hulu

ストリーミングプラットフォームの Hulu は、AWS のエッジネットワーキングサービスを活用し、ユーザーのトラフィックが高い場合でも、お客様に優れたコンテンツとユーザーエクスペリエンスを提供できるようにしています。Hulu は AWS のサービスを利用して、スケーラブルで機敏、かつコスト効率の高いインフラストラクチャを提供しています。Hulu が AWS をどのように利用しているかを読む >>

Riot Games 

Riot Games は、世界で最も人気のある PC ゲームの 1 つである League of Legends を含む、世界で最もプレイヤー重視のゲームを開発、公開、サポートしています。チームベースのタクティカルシューティングゲームである VALORANT の 2020 年の世界的な発売に伴い、Riot はレイテンシーによって引き起こされる「飛び出し有利 (ピーカーズアドバンテージ)」を減らして、競争力の完全性を確保したいと考えていました。Riot は AWS Outposts を使用することで、ゲームサーバーを迅速にデプロイし、レイテンシーを 10〜20 ミリ秒短縮できました。これにより、飛び出し有利 (ピーカーズアドバンテージ) を最小限に抑え、すべてのプレイヤーに公平な競争の場を提供しています。Riot Games が AWS をどのように利用しているかを読む >>

エッジコンピューティングの要件について、AWS の貢献

AWS for the Edge は、世界で最も高性能で安全なクラウドを、お客様のエンドポイントやユーザーに近づけることができます。AWS は、クラウドで提供されるインフラストラクチャ、サービス、API、ツールをフルマネージドサービスとして、事実上あらゆるオンプレミスデータセンター、コロケーションスペース、エッジ施設に拡張する唯一のプロバイダーです。

AWS データセンター以外の場所にデプロイされたマネージドハードウェアを活用し、メトロエリア、5G ネットワーク、オンプレミスの場所、切断された場所やリモートの場所に安全なエッジコンピューティング機能を拡張することができます。特定のエッジユースケースに特化した機能を採用し、200 以上の統合デバイスサービスから選択して、数十億のデバイスにエッジアプリケーションを迅速かつ容易にデプロイできます。

AWS がエッジコンピューティングに役立つ方法は、次のとおりです。

  • AWS Outposts は、AWS のインフラストラクチャとサービスを事実上どこにでも拡張し、一貫したハイブリッドエクスペリエンスを享受できます。
  • AWS Storage Gateway は、事実上無制限のクラウドストレージへのオンプレミスアクセスを提供します。
  • AWS Snow ファミリーのデバイスは、データセンターの設置が困難な厳しい環境や、ネットワーク接続が不安定な場所でオペレーションを実行します。
  • Amazon SageMaker Edge Manager は、エッジデバイスのフリートで機械学習モデルの最適化、セキュリティ確保、モニタリング、保守を行います。

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