Amazon Web Services ブログ
中堅・中小企業でも広がる生成 AI。企業の成長にも貢献
AWS ジャパンの 広域事業統括本部では、中堅・中小企業のお客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)、クラウドや生成 AI の利活用などを支援しています。過去 2 年間、 AWS では7月の「中小企業魅力発信月間」に合わせて、最新のテクノロジーがどのように中堅・中小企業の成長に貢献するのか、どういった成功事例があるのかなどを定期的にご紹介してきました。
2023年は、鶴見酒造株式会社様に、 AWSクラウドを活用した温度センシングシステム「もろみ日誌クラウド」を導入し、10分ごとに温度データを自動収集しリアルタイムで可視化することで、24時間どこからでも温度管理が可能になったことに加え、酒質の向上、泊まり込み勤務の解消、若手への技術継承という3つの課題を解決した事例をご紹介頂きました。2024年は、 AWSの生成AIサービスを活用した事例として、株式会社やさしい手様に、介護関連文書の処理自動化により、個別化されたサービス提供と高い説明責任を実現した事例と、株式会社ネイティブキャンプ様には、英会話レッスンの音声データを自動要約して改善点を提案する機能を構築した事例をご紹介いただきました。
本ブログでは、中堅・中堅企業のお客様のビジネス成長や新たな価値創出に向けた、2025年度の新たなAWSの取り組み、生成 AI の事例について解説いたします。
経済産業省は2025年5月に公開したレポート「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」において、依然として日本の多くの企業組織におけるDXの進捗はスピード感に欠け、進化するデジタル技術の導入や連携の遅れは諸外国との隔たりを一層拡大させ日本の産業競争力が低下の一途を辿ると問題提起しています。日本の産業構造に目を移すと、中堅・中小企業が全企業数の99.7%、売上高に占める割合が78%*となっており、少子高齢化や人口減少、労働者不足などの課題を抱える日本の競争力を向上させるためには、中堅・中小企業が成長の源であり、そのDX推進は急務であると考えます。
AWSジャパンでは、中堅・中小企業のお客様が、変化を続ける顧客や社会のニーズを捉えて対応していくために、 クラウドを中核としたデジタル技術やAI技術を駆使して新たな価値を創出するご支援をしていくことが必要だと考えています。そしてこのような支援を、企業全体の99%以上を占める中堅・中小企業に対して継続的に行うことが、日本全体の成長に寄与することに繋がると確信しております。その具体的な支援策としては、以下の4つを注力領域として全国のAWSパートナーと共に全国の中堅・中小企業のお客様のDX、クラウド民主化に向けた取り組みを一層強化しています。
- 生成AIをはじめとした最新技術の導入と業務プロセスのデジタル化
- レガシーシステムからの脱却ーマイグレーション&モダナイゼーション
- デジタル人材の育成
- 地域創生に向けた取り組み
*2024年発行 帝国データバンク「『中堅企業』の実態分析」ならびに東京商工リサーチ「TSRレポート」参照
1.生成AI をはじめとした最新技術の導入と業務プロセスのデジタル化
AI 活用の最新動向と職場におけるスキル習得のニーズを把握するため AWS は2024年、Access Partnership 社に委託して「加速する AI 活用、AI スキルに関するアジア太平洋地域の雇用主および労働者の意識調査」を実施したところ 、2028年までに78%以上の組織がAIを導入する見込みであることが明らかとなりました。なかでも生成AIは急速に普及が進んでおり、2024年は生成AIを活用したサービスがローンチするなど実用化が進み、そして今年2025年は、生成AIを活用してビジネス価値を創出するフェーズへと移行が進んでいるとAWSでは考えています。
企業が生成AIに期待する効果や創出するビジネス価値は多岐にわたりますが、中堅・中小企業の多くのお客様においては以下の4つが代表的なものであると考えます。
- 生産性:大幅な生産性の向上
- 洞察:あらゆる社内情報から洞察を抽出しより迅速で的確な意思決定を支援
- 新体験:顧客および従業員との新しい革新的なコミュニケーションを確立
- 創造性:会話、物語、画像、映像、音楽などの新しいコンテンツやアイデアを創出
AWSの中堅・中小企業のお客様も、AWSの生成AIサービス Amazon Bedrockなどを活用して、こうした新たなビジネス価値創出に向けた取り組みを進められてます。下記に活用事例の一部をご紹介いたします。
株式会社ジュビロ
アカデミーのコーチングに生成 AI を活用、トレーニング指導案を作成
サッカー J リーグの「ジュビロ磐田」を運営する静岡県の企業、ジュビロは、クラブ運営やデータベース構築でのデジタル活用を積極的に推進してきました。2024年6月からは、アカデミーにおけるコーチング知識や経験の継承という課題解決のため、Amazon Bedrock を活用した生成 AI 導入の実証実験を開始。コーチが練習テーマなどを入力すると、過去の指導案データを学習した生成 AI が最適な練習メニューを提案し、コーチをアシストするツールを構築。将来的には選手個々のデータを活用したパーソナライズされた練習メニューの考案や、部活動支援など地域課題解決につながる展開も模索しています。
タキヒヨー株式会社
アパレルの社内業務に生成AIを活用 ~月450時間の効率化とデザイン創造性の進化を実現~
アパレル事業を中核とする繊維専門商社のタキヒヨーは、コロナ禍で顕在化した業務の属人化課題に対し、Amazon BedrockとGenerative AI Use Cases JPを活用した生成AI導入を実施。使いやすさとセキュリティを重視したシステム構築により、4部門で月450時間の工数削減を達成し、デザイン部門では1点あたり2時間の効率化を実現。さらにアパレルデザインの検討業務などクリエイティブな領域にも生成AIを展開し、デザイナーの創造性向上にも貢献しています。
アライズイノベーション株式会社
生成AIでローコード開発を効率化、次世代OCRの開発に成功 ~顧客の金融機関の帳票処理工数を80%削減見込み~
AIとローコード開発に強みを持つアライズイノベーションは、AI-OCRサービス「AIRead」の進化を目指し、トップダウンでClaude 3.5 Sonnetの評価から開発着手までわずか2週間でプロジェクトを始動。Amazon SageMakerとAmazon Bedrockを組み込んだ「生成AI-OCR」の開発により、OCRの精度と汎用性を飛躍的に向上。導入事例では、金融機関の年間数百万枚に及ぶ決算書のデータ化作業で、業務工数80%削減を実現見込みです。
株式会社やさしい手
非エンジニアが実現! 3000 人規模の介護×生成 AI 革命
日本全国で在宅介護サービスを提供するやさしい手では、長年の課題であった現場スタッフの介護記録業務の負荷の軽減策として Amazon Bedrock を導入。IT 知識ゼロの 6 名のチームが、2 週間で生成 AI アプリを開発し、3 ヶ月で 3000 人の介護現場に展開。
その結果、記録業務時間が 83 %削減、計画書作成時間も 75 %削減。更に、介護スタッフが利用者と直接関わる時間が 25 %増加し、要介護者の小さな変化も見逃さない、一人ひとりに合わせた質の高いケアが可能になりました。これにより、高齢者が住み慣れた自宅や地域で安心して暮らし続ける「Aging in Place」の実現に貢献しています。
岩崎電気株式会社
生成 AI が実現する防災・減災 DX ~カメラ映像を用いた道路状況の無人監視~
道路照明に強みを持つ創業80年の照明器具メーカーである岩崎電気では、昨今異常気象や震災による自然災害が頻発しており、防災・減災への危機意識が高まっていることを受け、同社では、自社の道路用照明とカメラを組み合わせたシステムに Amazon Bedrock を適用した道路状況の自動監視ソリューションを開発しました。従来はセンサーで冠水検知をする必要がありましたが、カメラ映像を生成 AI で解析することで、大幅なコスト削減と運用負荷の低減を実現しました。
さらにAWSジャパンでは、日本における生成AI技術の実用化を支援するため、2024年7月から「生成AI実用化推進プログラム」の提供を開始し、200社を超える企業・団体の生成AI実用化支援を行っていますが、その半数近くが中堅・中小企業のお客様です。今後も継続してAWSパートナー様と連携してAWSは本プログラムを通して、お客様の生成AIによる価値創造を技術面、資金面、またナレッジを提供しご支援しています。
出所:AWSジャパン
2.レガシーシステムからの脱却ーマイグレーション&モダナイゼーション ~今こそクラウドへ マイグレーション&モダナイゼーション
日本では生成AIなどの最先端のデジタル技術を活用したくても、既存のレガシーシステムが足枷となり、連携や組み込みがスムーズに進められないといったレガシーシステムを取り巻く問題も発生しています。AWSの中堅・中小企業のお客様からも、基幹システムのクラウド移行を進めたけれど、仕様書が残っていない、システムがブラックボックス化してしまっている、といったお声をお聞きしています。クラウドは、必要なリソースを必要な分だけ柔軟かつ容易に調達が可能、調達まで数か月を要する物理サーバーと異なり、数クリックでサーバーを立ち上げられるなどすぐに始められ、また、高いセキュリティで安心安全にデータにアクセスすることができます。こうしたクラウドの優位性から、生成AIを「とりあえず使ってみる」ためにも、生成AIを最大化するためにも、クラウドは最適といえ、社内にAIエンジニアがいないという企業においても生成AIを身近なものにしています。生成AI隆盛の今だからこそ、クラウドへの移行、モダナイゼーションに取り組みを加速させる必要があると考えます。
今年5月にAWSは、レガシーからAWSへの移行とモダナイゼーションを支援する AWS Transform の提供を開始しました。初のエージェント型AIサービスであるAWS Transformは、AIが複雑な依存関係を理解し、暗黙知化したビジネスロジックを可視化、従来は年単位だったプロジェクトを月単位まで短縮することを可能にしました。 また、クラウド移行においても、お客様がその状況に応じて最適な移行を実現できるようにAWSパートナーと連携してご支援しています。クラウド移行に関して豊富な知識と高い経験値を有し、「AWS移行とマイグレーションコンピテンシーパートナー」として認定されたパートナー各社が、複雑な移行プロジェクトの実現に活躍しています。
出所:AWSジャパン
3.デジタル人材育成
総務省が2023年に公開した「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」によると、日本は米国や中国、ドイツなどの諸外国と比べてシステム開発における内製化割合が低いことが明らかとなっています。デジタル人材が不足し、デジタルを十分に活用できていない中堅・中小企業のお客様がITの内製化を推進できるようにAWSは、デジタル人材の育成支援にも注力しています。その一環として、初学者から経験豊富な技術者まで、AWSのクラウド・AI関する知識やスキルを習得できるデジタルトレーニング AWS Skill Builder を提供しています。
今年7月にAWSは、生成 AI を搭載した仮想顧客とのチャットを通じて実践的な AWS スキルを身につけられる新しい学習プラットフォーム AWS SimuLearn の提供を開始しました。AWS SimuLearn では、日本語の生成 AI に関するラボとクラウドの基礎 (Cloud Practitioner) に関するラボが無料で提供されており、クラウドや生成AIを一から学び、使い始めたいという方にも最適です。
4.地域創生
超高齢化・人口減少・労働力不足など日本の様々な社会課題を解決するために、デジタル技術を活用した課題解決が求められています。日本全国の中堅・中小企業のお客様におけるクラウドの民主化、生成 AI の利活用促進は、こうした社会課題の解決を後押しし、日本政府が目指す地域創生を加速させると考えます。
日本全国のAWSのお客様がクラウドの民主化を実現するために、AWSパートナーのネットワークとの連携は必要不可欠です。多くのパートナーの中でも特に、中堅・中小企業のお客様のニーズ、課題に対するソリューションとサービスを定められた水準以上のレベルで提供する能力と実績を持つとして、AWSが認定した中堅・中小企業(SMB)向けコンピテンシーパートナーのクラスメソッド、サーバーワークス、GMOとの連携も強化して、全国のお客様の課題発見から寄り添い、その解決をご支援していきます。
また、こうした日本社会の課題を解決し、地域創生を加速するためには全国のデジタル人材の育成も急務です。AWSは地域で活躍できるデジタル、AI人材を育成に向けて今年6月25日、独立行政法人国立高等専門学校機構 旭川工業高等専門学校(旭川高専)および富山高等専門学校(富山高専)2校と包括連携協定を締結しました。
さらに全国のデジタル人材育成支援を強化するためAWSジャパンは、デジタル社会実現ツアー2025を、2025年8月18日~28日、全国7地域(新潟県、愛知県、大阪府、東京都、宮城県、福岡県、広島県)で開催を予定しています。今年で4回目(4年目)となる本ツアーでは、地域の学生や若手社会人を対象に地域課題をAIで解決を目指す「地域創生・社会課題解決 AI プログラミングコンテスト 2025 」 を実施します。地域が抱える多様な社会課題に対し、クラウドや AI などのデジタル技術を活用した解決策を地域社会と共に考え、実装していくこうした取り組みを通じて、持続可能な地域創生を実現するとともに、全国の中堅・中小企業のお客様の成長、新たな価値創出を後押しします。
最後に。「日本のために、社会のために」
AWS広域事業統括本部は、日本経済の根幹であり日本を支える日本全国の中堅・中小企業のお客様の成長とイノベーションの実現を支援するビジネスパートナーを目指し、本ブログでご紹介した施策を含めた取り組みを強化していきます。
「日本のために、社会のために」、今後も 継続してAWS は、クラウド・生成 AI による経営課題の解決をAWS パートナーと一緒にご支援していきます
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
常務執行役員 広域事業統括本部 統括本部長 原田 洋次

