Amazon Web Services ブログ

エージェンティックセキュリティ: マシンスピードでの検出と対応

本ブログは 2026 年 9 月 2 日に公開された AWS Blog “Agentic security: Detection and response at machine speed” を翻訳したものです。

この 1 年間、エンタープライズのセキュリティリーダーと対話を重ねる中で、はっきりしたことがあります。自律型 AI エージェントの台頭は、セキュリティポスチャにとってクラウドへの移行以来最大の変化だということです。あらゆる業界の組織が、ユーザーに代わって認証を行い、複数ステップのワークフローを実行し、インフラストラクチャをまたいで意思決定を下す AI エージェントを導入しています。しかも多くの場合、人間の承認を待つことはありません。セキュリティ運用もこの流れに追随する必要があります。

Amazon Web Services (AWS) では、セキュリティは AI の導入に後れを取るのではなく、一歩先を行って進化すべきだと考えています。この考えに基づき、AWS のチームは SANS Institute と協力して、2026 Cloud Security Exchange eBook の新しい章を執筆しました。この章では、エンタープライズ規模でエージェンティックワークロードを保護するための実践的なフレームワークを紹介しています。

課題: 脅威は今やマシンスピードで進行する

従来のセキュリティは、入力と出力が予測可能な決定論的システムを前提に構築されてきました。エージェンティックワークロードは、この前提を崩します。同じプロンプトでも、あるリクエストではポリシーに準拠した応答を返し、次のリクエストではポリシーに違反する応答を返すことがあります。エージェントは、ユーザー、データ、ツールとやり取りしながら時間とともに振る舞いを変え、真の自律性をもって動作します。つまり、API に接続し、アクションを連鎖させ、独立して意思決定を行うのです。

こうした性質があるため、一度きりの評価を想定して設計されたセキュリティコントロールでは、もはや不十分です。検出と対応は、継続的に、そしてマシンスピードで機能しなければなりません。

この課題への対応が急務となっているのは、導入のスピードとセキュリティの成熟度の間にギャップがあるからです。80% の組織が AI を導入している一方で、AI のガバナンスを実施しているのはわずか 10% にとどまります。しかもエージェントは、ローコードツールを使う開発者を含め、拡大し続ける開発者層によって構築されており、既存のセキュリティプログラムを拡張して対処すべきガバナンス上の課題が生じています。

既に機能しているものを拡張する

良い知らせもあります。エージェンティックセキュリティは、まったくの白紙から始めるものではありません。アイデンティティガバナンス、最小権限、多層防御、バックアップとリカバリといった、セキュリティチームが既に実践している原則の上に築かれます。変わるのは、ワークロードが自律的かつ確率的である場合に、これらの原則をどう実装するかという点です。eBook の章では、次の 4 つの基礎領域を取り上げています。

  • エージェントのアイデンティティとガバナンス: すべてのエージェントには、永続的で広範なアクセス権ではなく、一時的でスコープを限定した認証情報を伴う独自のアイデンティティが必要です。これはゼロトラストの原則を AI エージェントに拡張するもので、すべてのリクエストが個別に認証および認可され、すべてのアクションに追跡可能な認可のチェーンが存在します。1 つのエージェントが、機密データへのアクセス、外部と通信する能力、信頼できないコンテンツにさらされる状態を併せ持つと、リスクプロファイルは大きく変わります。単一のコンポーネントがこの 3 つすべてを兼ね備えないようにする設計パターンを採用すれば、そのリスクを大幅に低減できます。
  • エージェンティックワークロードに向けた検出の進化: 人間のアクティビティパターンを想定して設計された静的でルールベースの検出では、エージェントの振る舞いに追随できません。組織に必要なのは、継続的な振る舞いの監視、エージェントの進化に応じた動的ベースライン、そして異常をリアルタイムで浮かび上がらせるオブザーバビリティです。Amazon GuardDuty は、セキュリティシグナルを継続的に分析し、脅威が出現した時点で検出することで、これを既に実現しています。
  • スピードと精度のバランスを取った対応: 脅威がマシンスピードで進行する場合、対応は自動化され、かつ段階的でなければなりません。エージェントの振る舞いには、直ちに封じ込めるべきものもあれば、人間の判断を必要とするものもあります。この章で示す対応フレームワークでは、安全に自動化できるアクションと、エスカレーションが必要なアクションを区別しています。
  • 単一エージェントからマルチエージェントエコシステムへ: エージェントは既にチームを構成し、サブタスクを委任し、アクセス権を交渉し、組織の境界をまたいで連携しています。この進化の各段階は、それ以前のすべてのセキュリティ要件を引き継ぎます。つまり、今日の基本的なチャットエージェントを保護している組織は、明日のマルチエージェントエコシステムに向けた土台を既に築いているということです。

エージェンティック AI 導入を可能にするセキュリティ

日々対話しているセキュリティリーダーが問うているのは、AI エージェントを導入するかどうかではありません。ビジネスのスピードを落とさずに、責任ある形で迅速に導入する方法です。

AWS はこの課題に対し、あらゆるレイヤーにセキュリティを組み込むというアプローチで取り組んでいます。AWS 上に構築されたエージェンティック AI は、ミッションクリティカルなワークロードを保護してきた 20 年近くの経験を引き継ぎます。Amazon GuardDutyAmazon InspectorAWS Security Hub が連携して、継続的な脅威検出、脆弱性管理、統合されたセキュリティ運用を提供し、いずれもエージェンティックワークロード固有の特性に適応します。

これは、新しいセキュリティをゼロから構築するという話ではありません。お客様のチームが既に信頼しているセキュリティの基盤を、AI がますます高い自律性をもって動作する環境へと拡張するという話です。

フレームワークの全文を読む

2026 Cloud Security Exchange eBook に収録された AWS の章では、これらの各領域をさらに掘り下げ、具体的なアーキテクチャパターン、実装のガイダンス、そして評価段階、パイロット段階、大規模運用段階のいずれにあるセキュリティチームにも役立つフレームワークを紹介しています。

2026 Cloud Security Exchange eBook を読む: Agentic Security: Detection and Response at Machine Speed

AWS のセキュリティサービスの詳細は、AWS Cloud Security でご確認いただけます。また、AI Security Framework では、AWS が適切なコントロールを、適切なレイヤーで、適切なフェーズで適用して AI ワークロードを保護する方法を包括的に紹介しています。


Gee Rittenhouse

Gee Rittenhouse

Gee は AWS の Agentic Security 担当バイスプレジデントです。MIT で博士号を取得し、エンタープライズセキュリティとクラウドの分野で豊富なリーダーシップ経験を持っています。以前は Skyhigh Security の CEO、および Cisco の Security Business Group のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務め、Cisco の世界規模のサイバーセキュリティ事業を統括していました。

本ブログは Security Solutions Architect の 中島 章博 が翻訳しました。