Amazon Web Services ブログ

各国の介護・医療機関では Amazon Alexaを導入し、治療体験のDXを推進

今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、「医療現場で導入が進むAmazon Alexaの利用シーン」について紹介します。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。(以下、AWS Public Sector Blog へ掲載された投稿の翻訳となります。)

カナダの公共部門では、革新的な医療システムや介護事業者が、Amazonのテクノロジーを活用して、患者の受け入れプロセスを大幅にスケールし、治療期間中に施される患者へのケアを合理化し、患者に対するエンゲージメントや支援を提供しています。病院、医療機関、学術医療センターなどでは、人材を増員・再配置するのではなく、アクセスが容易で拡張性のあるテクノロジーを利用してスタッフをサポートし、ケアを必要とする市民に迅速でより良い「治療体験(treatment journey)」を提供しています。 Amazon Alexaがあれば、患者の皆さんは音声でいくつかの質問に答えるだけで、治療を開始することができます。

Alexaを活用し、離れていながら人々を結びつける

オンタリオ州トロントにある高齢者ケアのパイオニアであるベイクレスト(Baycrest)は、アカデミック・ヘルス・サイエンス・センターとして、1,200人以上の高齢者を対象に、独立した生活、支援付き生活、長期ケア、急性期後の病院など、連続的に提供されるケアの流れを1つのキャンパス内で提供しています。また、脳科学の研究にも力を入れており、認知症や脳外傷の患者さんを専門的なケアでサポートするほか、予防医療のソリューションも考案しています。COVID-19への対応として、ベイクレストはウイルス対策のため、キャンパスへの訪問者を制限し、入居者の外部・内部の移動を制限しました。しかし、隔離された環境では、患者の精神衛生上の問題が発生するものです。患者さんをサポートするために、Baycrestは遠隔医療迅速実施( Telemedicine Rapid Implementation = TRIM)チームを立ち上げました。Baycrestのイノベーション担当Vice President 兼最高技術責任者であるRon Riesenbach氏は、「個室に遠隔配信できるプログラムの作成と、社会参加、教育、トレーニングのためのデバイスの構築の両方に、多面的に取り組みました」──と述べています。チームは、公共スペースや移動中の遠隔医療車両に「Amazon Echo Dot」を設置し、入居者が音楽を聴いたり、ゲームをしたり、スキルを練習したりできるようにしました。

さらにイノベーションを進めていくために、「Echo Show」に接続されたスマート照明、ブラインド、サーモスタットからなるスマート・スイートを導入する予定です。これにより、IoTの力を借りて、患者皆さんがより快適な環境に簡単に変更できるようになります。将来的には、「Amazon Alexa」デバイスをキャンパス内に広く配置し、患者皆さんが大切な人に電話をかけたり、居住者に健康チェックを依頼したりすることで、より多くの患者ケアを効率的かつパーソナライズドされた方法で実現したいと考えています。高齢者にとって、技術リテラシーに馴染むのは、難しいものです。しかし、音声を使うことは簡単で、ベイクレストの住人が高度な技術に簡単にアクセスできるようになり、ベイクレストのイノベーションチームがAmazon Alexaを「デジタルなパーソナル・サポート・ワーカー」として使えるように設定するという、多くの機会を与えてくれます。

COVID-19の症状をスクリーニングする
仮想アシスタントで医療従事者をサポート

マギル大学ヘルスセンター(MUHC)は、重要な第四次医療(critical quaternary care) を提供する世界有数の学術医療施設であり、モントリオールからケベックにかけての患者にサービスを提供しています。そのチームは、音声技術を病院と家庭の両方に統合することで、患者へのケア提供を拡大できる可能性があると考えました。そして、「COVID-19のパンデミックでは、COVID-19の症状をスクリーニングするために多くの人的資源が使われていることが問題の1つであることに気づきました」──と、マギル大学の心臓病学助教授であるAbhinav Sharmaは述べています。その結果、音声技術を利用して、215名の患者とその家族のCOVID-19の症状を効率的にスクリーニングできることがわかりました。これにより、フルタイムのスタッフは、従来よりも多くの時間をかけて、他の患者さんやそのご家族に直接対応できるようになります。MUHCは、患者の受け入れプロセスの一部を自動化することで、こうした技術が医療チームの負担を軽減できることを実証しました。

Alexaは今回のケースで、フランス語と英語の両方で患者にスクリーニングの質問をしました。患者とその家族は、音声アシスタント対応のCOVID-19スクリーニング・デバイスの英語版とフランス語版の両方を非常に快適に使用でき、特に高齢の患者層にとって使いやすいと感じた──と報告しました。この概念実証により、チームは、患者と臨床医の両方の視点から、音声ベースのソリューションをヘルスケアや医療提供の他の分野に拡大することができます。

MUHC財団が提供する資金を利用したパイロット版の成功に基づき、同病院の心臓病学の専門家は現在、COVID-19に関連する症状についてAlexaがより多くの質問をする方法を最適化することを計画しています。MUHCは、Alexaが多くの情報発信に貢献している指標を評価できることを楽しみにしています。同チームは現在、McGill Interdisciplinary Initiative in Infection and Immunity(MI4)からの資金提供を受け、カナダで販売されているCOVID-19ワクチンにまつわるよくある質問に答えるための「COVID-19ワクチン・チャットボット」を開発しています。

家庭での健康モニタリングの用途も拡大

University Health Network(UHN)は、カナダ最大の教育機関で、Toronto General、Toronto Western、Princess Margaret Hospital、Toronto Rehab、The Michener Institute──という参加組織で構成されています。UHNは、患者のケア、医療従事者や将来の医療リーダーの教育、そして年間4億ドルの研究を行っています。カナダ最大の研究機関の一つであるUHNチームは、「Medly」と呼ばれるデジタルヘルスの取り組みを開始しました。これは、カナダで100万人以上が苦しんでいる心不全のケアを患者や家族が自己管理できるようにするためのもので、再入院や生活の質の低下につながることが多い課題の解決を目指すものです。Medlyは、スマートフォンのアプリを使って、患者さんが毎日、血圧、体重、症状などを測定します。このアプリのアルゴリズムは、薬の使い方やセルフケアのベスト・プラクティスを患者にアドバイスし、最終的には必要に応じてクリニックに通知することもできます。UHNは、入院回数を50%以上削減し、健康状態の改善に成功しました。

しかし、このプログラムは成功したものの、ある一定層の人々(訳注*音声でのアプリ操作を選好する人々)にとってはアクセスが困難な場合があります。「私は、将来的にデジタル・アプリケーションとのコミュニケーション手段として”音声”を使用することは避けられないと考えており、Alexaプラットフォームは魅力的で成熟した開発ツールだと思いました。また、これはスマートフォンアプリケーションを補完したり、代替したりするのに非常に適していると考えたのです」。このように、UHNのバイオ・メディカル・エンジニアリング部門のエグゼクティブディレクターであり、ウォルフォンド・チェア・イン・デジタル・ヘルスのジョセフ・カファゾ博士は述べています。

このチームは、MedlyアプリケーションのAlexa版を立ち上げ、Echo Show用のビジュアル・インターフェイスを作成してユーザーのエンゲージメントを高めました。UHNでは、20人の患者を対象とした臨床試験を行った結果、特定の患者にとっては、アプリベースのシステムよりも”音声ベース”のテクノロジーの方がはるかに使いやすく、高い利用率を得られることがわかりました。コスト面でも、Alexaはスマートフォンよりもはるかに安価であり、一般市民への普及を前提とした経済的な公平性の観点からも患者のアクセスを向上させることができます。UHNのチームは、AWSのサポートのもと、必要な品質とセキュリティチェックを受けた後、このソリューションを臨床に導入することを目指しています。

このように、音声技術は、アクセシビリティの向上とイノベーションの推進を通じて、患者がよりスムーズに回復していくのに必要なケアを受けるための摩擦を最小限に抑え、障壁を低減してくれるのです。

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このブログは英文での原文ブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫(@Koboku_Ikuoが翻訳・執筆しました。

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小木 郁夫
AWSジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
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