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【開催報告】AWSヘルスケアクラウドセミナー~クラウドの基礎から最新サービスまで~

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 インダストリー事業開発部 片岡です。

ヘルスケア領域でクラウド活用を検討頂いている医療機関、医療系サービス提供事業者及びパートナーの皆様を対象として、2021年2月18日に「AWSヘルスケアクラウドセミナー」をウェビナーで開催しました。

医療機関でのクラウド利用が本格化し始めています。本ウェビナーにおいて、AWSセッションでは、クラウドの基礎から最新サービスまで幅広くご説明し、お客様セッションでは、国産初の手術支援ロボット「hinotori™」を開発されたメディカロイド様、そして、日本で初めて保険適用を受けた「治療アプリ🄬」を開発されたCureApp様にご登壇頂きました。本記事では、セッションでご紹介しましたAWS最新事例や最新サービス、お客様登壇を含む当日の資料・動画を皆様にご紹介します。

1. ヘルスケアクラウド活用の第一歩 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 パブリックセクター シニア事業開発マネージャー
遠山 仁啓

クラウドは、もはやITという枠組みだけで捉えるものではなく、産業構造や社会を変革する大きな原動力となっています。旧来型のデータセンターのような、仮想ホスティングの延長やレンタルサーバーの位置づけではなく、多種多様なサービス部品の集合体であることを、遠山よりご説明しました。これらのサービス部品のことをマネージドサービスと呼んでおり、インフラ管理の負担から大きく開放されました。アイドル状態ではコストが発生しない特性を活かすことでコストリダクションを実現することができ、サービス提供までのスピード感も加速しています。AWSサービスの本質は「ビルディングブロック」です。仮想マシンが必要なケースも充分にありますが、置き換えられるものは極力置き換えることをお勧めしています。仮想マシンを使わずにマネージドサービスのみで構成する「サーバレスアーキテクチャ」を実践している医療系サービス提供事業者の事例も増えています。

その上で、現行オンプレミスをクラウドに移行するには6つのステップがあり、Retain, Retire, Rehost, Repurchase, Replatform, Refactor/Re-architectの6つのRをステップごとにご説明しました。海外では、クラウドを「自分で運転する」、つまり ITシステムを自ら開発・運用する範囲を広げることで、インフラ管理や運用保守の負担を大きく減らしています。

AWSを活用頂くメリットとして挙げられる主な要素は、「弾力性」、「コスト削減」、「俊敏性」、「幅広い機能」、「グローバル規模の展開」、「高いセキュリティ」です。既に、医療機関や研究機関など様々なヘルスケア領域のお客様にAWSをご活用頂いております。例えば、国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT) 様や、京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター様、国立循環器病研究センター様、大阪国際がんセンター様、東京都済生会中央病院様等の事例がございます。また、医療機関にサービスを提供する事業者でも多数の事例がございます。例えば、MICIN様やメドレー様、CureApp様、オムロン ヘルスケア様等です。(詳しくは、資料・動画をご覧ください。)

 

2. やさしいHL7 FHIR応用 〜FHIR Works on AWSとAmazon HealthLake〜 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト
窪田 寛之

このセッションでは、AWSでHL7 FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resources) 関連サービスをすぐお使い頂けるようになることを目的として、HL7 FHIR、FHIR Works on AWS、 Amazon HealthLake の機能を、デモと併せてご紹介しました。HL7 FHIR は、施設内で普及しているHL7規格のv2 messaging等と比べて、HL7 FHIR の標準化されたデータ構造により、様々な医療情報を表現できる標準規格です。また、FHIR API により、クラウドやスマートフォンアプリと親和性の高いアクセスが可能となります。

FHIR Works on AWSは、マネージドなAWSサービスを組み合わせたFHIR Repositoryで、オープンソースとして提供されています。自社サービスへの組み込みや、HL7 FHIR の仕様を理解する目的でご利用頂けます。セッションでは、このソリューションを構成するAWSの各サービスと、具体的な環境構築方法をご紹介しました。(ウェブサイトから、4ステップで、FHIR Repositoryを稼働させることができます。)デモで、1. FHIR Works への患者登録と患者検索のAPI呼び出し、2. FHIR Works on AWSのAmazon DynamoDBに保存されているデータ構造、をご覧頂けます。

Amazon HealthLakeは、HL7 FHIR 準拠の医療データを保存・変換・検索・分析するHIPAA対応サービスで、現在バージニアリージョンでプレビューの申し込みを受け付けています(お申し込みサイト)。Amazon HealthLakeには基本機能として、データストア管理とデータ検索、FHIR APIがあります。デモでは、1. Amazon HealthLakeのデータ検索のGUI操作、2. Amazon S3へエクスポートしたデータをAmazon QuickSight で可視化する流れ、をご覧頂けます。

AWSでは、お客様がお持ちの構造化された医療情報をHL7 FHIRに変換するサンプル実装を公開しています。臨床検査結果メッセージ (HL7v2 OULメッセージ) をHL7 FHIR のPatient/Observationリソースにマッピングする方法がスライドに参考資料として含まれており、実装したコードはGitHubより入手いただけます。

 

3. hinotori™ サージカルロボットシステムと連携したサービスプラットフォームの実現 [Slide]

株式会社メディカロイド サービス部 次長
有野 康隆 様
シスメックス株式会社 グローバルサポート本部 技術サービス部 課長
大橋 政尚 様

メディカロイド様は、検査・診断の技術を保有し医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックス株式会社と、産業用ロボットのリーディングカンパニーである川崎重工業株式会社の合弁会社として2013年に設立されました。2020年8月には、国産初の手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」の製造販売承認を取得しました。同年12月には、神戸大学医学部付属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)において、hinotori™を用いた一例目の手術として前立腺がんの全摘手術が行われました。本セッションでは、メディカロイド様がhinotori™の付加価値向上のために構築したサービスプラットフォームである、Medicaroid Intelligent Network System の事例をご紹介頂きました。

本プラットフォームは大きく3つの要素で構成されており、今後の事業展開に必要な、「信頼性と安全性」、「グローバル展開」、「オープンイノベーション」を実現するインフラとしてAWSをご活用いただいています。
1.手術室または病院様内に点在する多様なデータの収集
2.データの蓄積・解析
3.データの利用用途に合わせてデータを提供

Medicaroid Intelligent Network Systemのイメージ図

本プラットフォーム上の機能を活用したソリューションの一例としては、きめの細かいサポートを実現するための「リアルタイムサポート」のご紹介を頂きました。従来のコールセンターでの応対では、1回の電話における約80%が顧客の状況把握に費やされており、トラブル解決までの時間が長期化する一因となっておりました。しかし、この「リアルタイムサポート」を活用することで、コールセンターのご担当者が遠隔からあたかも現場にいるようにhinotori™の状態をリアルタイムにモニタリングすることを可能にしました。その結果、顧客の状況把握に費やす時間が大幅に短縮され、顧客のトラブルを迅速かつ正しく解決できるようになったと、ご説明頂きました。

本プラットフォームの今後の活用について、リアルタイムサポートのような術中の支援のみならず、術前から術後に至るまで、手術全体のプロセスに貢献できるような展望をご説明頂きました。今後、IoTデータや映像データなどデータの種類や量の爆発的な増加への対応、蓄積したデータに対する様々な解析の高度化、他社様とのさらなるオープンな連携への支援・加速をAWSに期待している、と締めて頂きました。

 

4.「治療アプリ®」が切り開く新しい医療」[Slide]

株式会社CureApp 取締役CDO (Chief Development Officer) 兼医師
鈴木 晋 様

CureApp様は、医師が患者に処方する「治療アプリ🄬」を製造・販売するスタートアップ企業です。2020年8月にはニコチン依存症の治療用アプリがアジア初の薬事承認を取得しました。本セッションでは、治療用アプリが切り開く新しい医療を、システム全体像、作用機序、開発手法、AWS 基盤とあわせて概説頂きました。(本講演は、2020年10月に開催したイベントにてAWSと登壇した内容の再演です。その後、2020年12月に治療アプリ®️ CureApp SCが保険適用となりました。)

治療用アプリは、「医師が処方し、患者が利用するソフトウェアの医療機器」であり、薬事承認を取得するために、臨床試験、治験を通して確固としたエビデンスを作られています。この取り組みは世界でも注目されており、CBI Insights から ”Digital Health 150” (デジタルヘルス分野における革新的なスタートアップ企業) に2年連続で選出されていると、鈴木様にご紹介頂きました。

CureApp様の治療用アプリのラインナップには開発中のものも含めて4種類のアプリがあります。治療用アプリは医師・医療従事者との連携が必須となるため、それぞれ慶應義塾大学自治医科大学東京大学医学部附属病院久里浜医療センターと共同で研究開発されています。アプリの主な機能としては、日々の記録、体重計などデバイスとの連携、症状が出た際の対話型の相談、治療のために必要な行動のリマインド等が挙げられました。また、治療用アプリの作用機序は「行動変容」と「認知変容」に大きく分けられ、Prochaskaの行動変容ステージモデルなど、複数のモデルを参考に開発をされました。

次に、アプリの開発経緯についてご紹介頂きました。治療用アプリの開発にあたっては、一般的な医療機器の開発と同様に、安全性や品質など様々な規格に準拠した開発プロセスに沿う必要があります。特に技術チームの体制を確立したポイントとして、アプリ、フロント、サーバー、AWSが提供するインフラまでをフルスタックに扱えるJavaScriptエンジニアを集められた点をご説明頂きました。具体的にご利用頂いているアーキテクチャーとして、AWS LambdaやAmazon CloudFront、Amazon S3などのサーバレス技術を中心に治療用アプリを構成されています。AWSは、費用削減と安定運用を実現しつつ、充実した監査系のサービスや機能を持ち、コンプライアンス対応を行いやすいという点で、治療用アプリを支えているとご紹介頂きました。加えて、AWS クラウド開発キット (AWS CDK) により、JavaScriptでインフラの構成管理が可能となり、JavaScriptエンジニアが最小の学習コストでアプリからインフラまでをメンテナンスできるAWSの利点をご説明頂きました。

治療用アプリのアーキテクチャー

最後に、治療用アプリの未来として、治療用アプリの保険償還の取得、日々のモニタリング情報をもとにした価値のある介入、服薬アドヒアランス向上等での製薬企業との連携、あらゆる疾患での治療用アプリの普及、などを挙げて頂きました。

まとめ

本ウェビナーに関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。

 

参考コンテンツ

・日経XTECH Special「デジタル化が進む医療現場 がんゲノム医療のシステム構築にクラウドサービスを活用」:https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/20/aws0121/
・日経XTECH Special「ハイブリッドクラウドで実現した京都大学のヒトゲノム情報解析プラットフォーム」:https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/20/aws1030_01/index.html#cont03
・日経XTECH Special「日本医学放射線学会がCT/MRIの大量画像をクラウドに移行を検討した理由とは」:https://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NXT/20/aws1118/
・ヘルスケア・ライフサイエンス関連コンテンツ:https://aws.amazon.com/jp/health/

 

このブログの著者

片岡 勇人 (Yuto Kataoka)
インダストリー事業開発部 事業開発マネージャー (ヘルスケア・ライフサイエンス)