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【開催報告】メディア企業様向けクラウド活用最新事例紹介・シーズン Ⅳ

メディア業界向けAWS セミナーシリーズ 第四弾
|Inter BEE 2019 / AWS re:Invent 2019 ReCap
|& 最新メディア管理ユースケースをご紹介

12月18日 AWS 目黒オフィスにて、映像メディアに関わる事業者様および企業様を対象とした、クラウド活用最新事例紹介イベントを開催しました。

4半期毎に開催しているセミナーの最終回として、今回は 11 月中旬の Inter BEE 2019 と 12月上旬の AWS re:Invent 2019 の内容についての振り返りと、AWS パートナーとエンドユーザ様から最新のユースケースとして、メディアアーカイブやアセット管理についての事例を中心に発表いただきました。

■Inter BEE 2019 振り返り:講演資料
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト
金目 健二


ソリューションアーキテクトの金目より 11 月に開催された国際放送機器展「Inter BEE 2019」の振り返りをさせていただきました。
始めに Inter BEE 2019 の来場者数は昨年に続き史上2回目の4万人を超えた事、昨年よりも海外からのお客様も増えた事、今年も大変賑わっていた事をお話しさせていただきました。次に AWS ブースで展示された内容に加え、実際のデモを実演させていただきました。
・テクノロジー・イノベーションカテゴリ:約 3 秒の遅延で配信する超低遅延配信、ロイヤルティフリー且つ低ビットレートでも高画質のコンテンツが配信可能な AV1 コーデックのデモ
・ AI 機械学習カテゴリ:ロゴ検出/テキスト検出/武器検出をするデモやリアルタイムに字幕再生ができるデモ
・コンテンツ制作カテゴリ:クラウド上で編集が行える制作環境やスケールする CG レンダリングのクラウド環境の説明
・コンテンツ管理カテゴリ:ファイルをアップロードすることによりメタデータの抽出や文字起こし、顔認識、オブジェクト検出をしてくれる Media2Cloud デモ
※デモにリンクがあるものは AWS CloudFormation Template を使用することにより数クリックで構築が可能です

パートナーブースでは 17 社の企業様にコンテ ンツ制作、コンテンツ配信、コンテンツ管理のカテゴリでご出展をいただきました。AWS ブース以外でも AWS を使ったソリューションが展示され、「 Inter BEE 2019 の歩き方」のルートとしても登場しました。また、ブース展示以外にも特別講演に登壇致しました。11 月 14 日はお客様にもご登壇いただき「特別講演6 “メディア業界におけるクラウド活用最新事例 2019 ”」を、11 月 15 日には「特別講演 10 “ CDN セッション2019”」に登壇しております。

Inter BEE 2019 での講演資料はこちらよりダウンロードいただけます。

■「民放キー局で国内最大級、5年で13PBのメディアアーカイブをAWSで実現」:講演資料
株式会社 テレビ東京ホールディングス 技術IT統括局専任局長
兼 日本経済新聞社イノベーションラボ
石田 淳人 様
技術IT統括局アーカイブセンター 兼 IT推進局アーカイブセンター 担当長 副参事
北村 嘉邦 様


石田様、北村様よりコンテンツのアーカイブをクラウド上で行うことの有用性についてご説明いただきました。
最初に石田様より何故クラウドへの移行をご検討されたかをご説明いただきました。現行のアーカイブセンターはあまり進化しておらず、利便性、コスト、安全性の観点から合理的ではないため、物理メディアからコンテンツを開放したいとの思いをお持ちでした。そこで利便性、堅牢性、拡張性、経済性を総合的に判断してクラウドを採用されました。

続いて北村様より具体的な移行についてご説明いただきました。
ここ数年は毎年 1 万 6 千枚ぐらいのメディアを購入されており、保守期間の影響でメディアを HDCAM から XDCAM へと移行されています。IMAGICA 様が提供されている自動化された24時間稼働の仕組みでも新しいメディアへのデータ移行に大変な労力がかかっているとのことです。そこでアーカイブが抱えていた問題を改めて見直された結果、スタジオ収録、編集、OA 納品に大量のメディアが必要なことに加え、高額な放送機器の保守終了のために新しいメディアへの大量マイグレーション作業が 5 ~ 10 年単位で発生し続けていることがわかりました。
ファイル化が進んだ今ならアーカイブ保存に関してはクラウド化できないかと検討をされた結果、AWS のサービスをご利用いただくことになりました。クラウド化することのメリットとして、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) が実現する 99.999999999% の耐久性によりデータ損失のリスクの軽減、クラウドにデータを送ることで倉庫に保存されているメディアの再利用が可能となり毎年購入しているメディアを削減しコストダウンできることへの期待、倉庫からのメディア配送も現状より早くデータを取得できる可能性、セキュリティに関しても適切な設定をしておけば問題なく利用ができ移送中のメディアの紛失などのリスクを回避でることを上げていただきました。現状では S3、S3 Glacier、Lambda とIMAGICA 様の TASKEE を使用して、「素材の検索」、「プレビュー」、「復元」、「ファイルのダウンロード」の一連の流れをテストされている状況です。
更にクラウドをアーカイブすることにより、映像の AI 解析などを新しい試みができるのではないかとご期待されています。
最後に費用対効果の悪い物理メディアから脱却したい、自由度の高いクラウドを活用してワークフローを改善していきたいとのコメントをいただきました。

■「IMAGICA Lab.とAWSメディアアセット管理とアーカイブ」:講演資料
IMAGICA Lab. 研究開発本部 技術開発室
鈴木 隆文 様


鈴木様より映像業界におけるクラウド利用の有効性についてポストプロダクションの観点でご説明いただきました。「セキュリティーを最優先で」「とにかく大容量を安く高速に」という映像業界に求められる要件に対する解決策として、自社開発の映像・動画ファイル管理システム「TASKEE」をご紹介されておりました。TASKEEでは複数の AWS サービスを組み合わせることでセキュリティーの高い安全なシステムを構築。更に AWS Direct Connect、Amazon S3、AWS Elemental MediaConvert などのAWSサービスや Terraform などのオープンソースツールを利用することで、映像業界特有の大容量ファイルを安く高速に転送/トランスコードをお客様専用の環境構築を含めて実現しておりました。その他、クラウド編集「EDIUS Cloud」との連携や自動文字起こしサービスの「TRASC」という新しいサービスを発表されておりました。
「今後も皆様の業務に合わせたサービスを提供できれば」と仰られており、クラウドの利点を活かした様々なサービスはとても印象的なご紹介となっておりました。

■「WebベースのQCツールとクラウドの活用で、品質管理・保証のワークフローを効率化」
Codemill / Accurate Player社
CEO、リッカード・レーネボルグ 氏
セールスマネージャー、ヘンリック・ランドグレン 氏


リッカード氏、ヘンリック氏のお二方から Accurate Player と Accurate Video の製品についてご説明頂きました。

Accurate Player はプラグインを必要としない HTML5ベースの Player となっており、SMPTE のタイムコードに対応しておりフレーム精度のでの映像と音声と同期が可能となっていると仰られていました。Accurate Video は Accurate Player が基になっているソリューションで QC (Quality Check) 、レビューなどのユースケースにご活用できる他、既存のシステムと柔軟なインテグレーションが可能になっているそうです。

海外の映画スタジオでの事例では、Accurate Player、Accurate Video を基にしたソリューションを提供することで高解像度の映像転送や長時間の待ちが発生するプロセスであるダウンロードをスキップし、クラウド上のみで QC や レビューを実現することでワークフローとコストを最適化できるとのことです。また Accurate Video QC では、業界標準の Baton との連携が可能で、BatonのQCレポートをタイムライン上や一覧表示が可能。海外のスタジオや放送局では、広告挿入点をフレーム精度でタグ付けするのに Accurate Video を利用されているケースが多いことをご紹介いただきました。

これらのサービスには AWS が使用されており、将来的に AWS の ML (Machine Learning) サービスを利用してワークフローの自動化を充実させていきたいとも仰られておりました。実際の画面を使った事例のご説明では QC 結果が視覚的にも分かりやすく、本イベントに参加された方も記憶に残ったのではないでしょうか。映像と音声の同期が正確な Accurate Player もメディア企業様の重要なコンテンツに対する親和性が高く、魅力的な製品の発表でありました。

■AWS re:Invent 2019 振り返り:講演資料
アマゾン ウェブ サービス ジャパン
ソリューションアーキテクト
石井 悠太


ソリューションアーキテクトの石井より、AWS re:Invent 2019 におけるアップデートと振り返りを実施しました。
世界最大の”学習型” AWS カンファレンスである re:Invent は 12/1 ~ 6 にてラスベガスで開催され、世界中から 65,000 名以上、日本からは 1,700 名以上の方にご参加いただきました。会期前後で非常に多くのサービスサップデートがあった中からメディア業界のお客様向けに以下、大きく 3 点のポイントにまとめて紹介しました。

1.超低遅延を実現するための新たな選択肢として

利用者視点、提供者視点で超低遅延を実現する為、5G ネットワークのエッジにある通信プロバイダーデータセンターに AWS のコンピューティングおよびストレージサービスを組み込む AWS Wavelength やレイテンシーの影響を受けやすいアプリケーションを、特定の地域のエンドユーザーにより近い場所で実行するための AWS Local Zones、AWS のインフラストラクチャとサービスをオンプレミスで実行し、真に一貫したハイブリッドエクスペリエンスを実現するための AWS Outposts など新しい選択肢が登場しました。こちら既にユーザーとなっている FOX 様の事例とともに紹介しました。

2.AWSのコアサービスの順当な強化について

Amazon S3、Amazon FSx for Windows File Server、Amazon Aurora、AWS Lambda、AWS WAF など全方位的に既存サービスがアップデートしており、お客様の使い勝手が更に良くなっていること、定常的にご利用いただいているEC2 や Fargate のコストメリットを受けやすくなった新割引オプション Savings Plans について紹介しました。

3.よりスマートな業務フローの実現

機械学習のテクノロジーを活用して「サービス利用者によりリッチな体験を提供」+「サービス提供者の業務負荷を低減」を両立する形の業務改善を実現する為、AWS の機械学習関連サービスがどのように活用いただけるか Amazon Transcribe(音声文字起こしサービス)、Amazon Comprehend(テキスト構文解析、感情分析サービス)、Amazon Rekognition(画像認識サービス)のアップデートとともにユースケースを紹介しました。

re:Invent の動画は “re:Invent 2019“ で検索するとすぐに視聴いただけます。メディア関連の注目セッションをまとめたBlog もあるのでチェックしてみてください。 “Media & Entertainment Guide to AWS re:Invent 2019”
また AWS 公式の振り返り re:Cap や JAWS ユーザーグループでも最新情報が共有されます。ぜひ積極的にご参加ください。

■「AWS re:Invent 2019 視察レポート Have a Session with Cloud!」:講演資料
株式会社テレビ東京ホールディングス 技術IT統括局 配信
技術部 兼 技術戦略部 兼 人事部 兼 テレビ東京コミュニケーションズ
段野 祐一郎 様


段野様より、昨年から引き続き re:Invent の視察レポートを発表いただきました。段野様は今年で 3 回目の参加、今年のセッション数は約 4,000 となり、二名以上での参加がおすすめとのことです。発表されたサービスの中で特筆すべきは AWS Local ZoneAWS Wavelength で、放送マスターや 5G でのリモートプロダクション、配信に活用できるのではと注目されています。
近年のトレンドとしてディープフェイクを挙げられ、US での Reality Defender という取り組みにおいてフェイク動画への対策、調査を行っているとお話しいただきました。メディアは加害者にもなり得るため、対策とリテラシーの向上が求められているとのことです。Workshop にも参加され、 AWS Media Insights Engine(MIE) ではサーバレスでの動画ロゴ検出、メタデータ生成、transcribe 等の環境を構築し、ワークフローを理解しながら学ぶことができたとおっしゃっていました。
※この Workshop は Github で公開しているので簡単にお試しいただけます

最後に海外事例セッションを取り上げていただきました。インドの大手 OTT 事業者である Hotstar では、同時視聴ユーザ 2,500 万人にも登るクリケットの試合の配信を AWS 上で実現しました。本番を想定した 4,000 万アクセスの負荷試験や、高アクセス環境下でのカオスエンジニアリング、配信オペレーション最適化の取り組みから、トラブル対策に関する課題を多く認識されたとのことです。また、Amazon Prime Video の分析基盤の事例からは、取得するメトリクスのワークフローの整備やガバナンスの重要性が感じられたとのことでした。段野様の資料はこちらで公開されています。

皆様のおかげでメディア業界セミナーは毎回ご好評をいただき、本年 4 回の開催を果たすことができました。誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。

このブログは SA 門田、小林、長谷川、森が担当しました。