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約 3 万人のAIネイティブエンジニア体制へ ― NEC は Claude Code をどう全社展開しているのか? CoE・チャンピオン制度による取り組み
日本電気株式会社(以下、NEC)・Anthropic Japan 合同会社(以下、Anthropic)のご協力を得て、AWS がお届けします。本稿では、大規模な組織で生成 AI ツールの展開・定着化に課題や関心をお持ちの方に向けて、NEC の実践事例から組織展開の具体的な施策をご紹介します。
NEC は日本および海外の NEC グループへの Claude 展開を進めています。全社員(最大 12 万人)向けに Claude Desktop on Amazon Bedrock を展開しており、その詳細はこちらの記事をご参照ください。そして開発の現場では、約 3 万人の AI ネイティブエンジニア体制の構築を目指し、Claude Code on Amazon Bedrock の活用拡大を進めています。その取り組みの一環として、いち早く現場で実践する人材を増やすため、2026 年 7 月 16 日と 8 月 25 日の 2 回にわたり、NEC と AWS の共催で「Claude Code ワークショップ」を開催しました。8 月 25 日の応用編には Anthropic もゲストとして登壇しています。延べ 158 名が参加し、座学だけでなく、実際に手を動かしながら業務適用のアイデアを練り、チーム間で共有する機会となりました。
この 2 回のワークショップを含め、NEC の Claude Code 全社展開を支える SI サービス CoE(Center of Excellence)の取り組みとイベント当日の様子を、NEC 金竹氏からの寄稿、Anthropic 服部氏のコメント、企画・運営を担当した AWS 西部の振り返りを通じてお伝えします。

寄稿:NEC 金竹氏 ― 参加者の反応から見えた、次の一手
開催背景:NEC が考える Claude Code 全社展開の成功要因
NEC エンジニアリング推進統括部 金竹です。NEC は、Amazon Bedrock 上で Claude Code の全社展開を進めています。Claude Code を約 3 万人規模へ展開するにあたり、以下の 3 つを重要な成功要因と考えています。
- 各事業部門における推進体制 (部門 CoE) の構築
- チャンピオン制度
- Skills※1 による知見の標準化
※1 Skills とは、AI エージェントの機能を拡張するモジュール式の仕組みで、業務の手順やノウハウ、スクリプトなどをまとめておくと、AI エージェントが関連するタスクで自動的に読み込んで使用します。
SI サービス CoE として全社規模のエンジニアに浸透させるには、自部門だけでは手の届く範囲に限界があります。そこで、各事業部門内に、連携する推進体制 (部門 CoE) を構築し、実際に活動をリードするチャンピオンを育成することで、現場の業務特性に即した活用拡大を進めています。
今回のワークショップは、AWS 様と NEC が企画・運営した全社的なイベントで、各事業部門の中でチャンピオン候補となるメンバーの実践スキルを底上げする機会として位置づけていました。8 月 25 日の応用編では Anthropic 様にも参加いただき、三社協働での体制を構築しました。ワークショップは、基本操作の習得と業務適用のアイデア出しを行う「入門編」と、実践的な開発プロセスへの組み込み方を体感する「応用編」の 2 段構成です。特に応用編は、前述の各事業部門の推進体制から推薦された中級者に限定して実施し、今後チャンピオンとして現場をリードしていく人材の実践力を高めることを狙いました。
7 月 16 日:入門編 – Claude Code の基本操作と業務適用アイデア発見
初級・中級者を対象に、基本操作と業務適用のアイデア出しをテーマとしました。座学とハンズオンで Claude Code の基本を学んだ後、グループワークで「自分たちの業務にどう活かせるか」を議論し、その場で Claude Code を使ってプレゼン資料やモックを作成、チーム間で発表・質疑を行いました。
ハンズオンコンテンツは AWS での Claude Code 入門 を活用しました。Workshop Studio で公開されているので、ご興味のある方はぜひお試しください。
8 月 25 日:応用編 – 個人の活用からチームの活用へ、ハーネスエンジニアリング実践
各事業部門の推進体制から推薦された中級者に対象を限定し、「ハーネスエンジニアリング」※2の実践をテーマとしました。座学や NEC 社内標準の Skills の紹介に加えて、SI 事業に関する業務を題材としたゲーム形式のハンズオンを通じて、ハーネスエンジニアリングの考え方を実践していただきました。この回には Anthropic 様からゲストが登壇し、AWS 様と Anthropic 様のパートナーシップの概要や Claude Code を中心とした最新動向を紹介いただくとともに、相談会にも参加いただきました。
※2 ハーネスエンジニアリングとは、AI モデルの周辺に用意する指示・知識・ツールなどの仕組み(ハーネス)を業務プロセスに応じて設計する考え方です。
参考:NEC と各社の戦略的協業
- NEC、米国AWSと日本で初めてコーポレートレベルの戦略的協業を締結 (2020年11月13日): プレスリリース | NEC
- NEC、Anthropic とエンタープライズAI分野を中心に戦略的協業を開始 (2026年4月23日): プレスリリース | NEC
ワークショップを通じて得た手応え
入門編は、定員 100 名に対して募集開始から即満席になるなど想定を超える反響がありました。参加後のアンケートでは、Claude Code を開発業務で活用したいと回答したメンバーが 93%、満足度は 88% に達し、参加者の当事者意識の高さを改めて実感しました。「Claude Code の機能や使い方など、まだまだ使いこなせていないことを実感した」「業務への活用イメージが持てた」という声が多く、チャットでの利用が中心だった参加者にも、アプリケーション作成までの体験を通じて具体的な活用イメージを持ってもらえたと感じています。
応用編では、SI 事業の実務そのものを題材にしたゲーム形式のハンズオンにより、単発のプロンプトでは終わらない、業務プロセスを分解してハーネスを組み込む考え方を体感できました。「すぐにでも実業務に実践可能と感じた」「個人単位でなくグループ単位で活用するための学びと気づきがあった」という声が寄せられており、個人の Claude Code 活用から、チーム・部門単位での活用へ発想を切り替えるきっかけになったと考えています。
現場で見えてきた学びと課題
社内では、人材育成と並行して、開発現場のユースケースをよりクイックにカバーするため、標準的な Skills を展開する取り組みも進めています。要件定義から設計、製造、テストまでの各工程に対応した専門 Skills を整備することで、個々のエンジニアが試行錯誤するコストを抑え、NEC が長年にわたり有識者やベテランエンジニアが蓄積してきた知見・ノウハウを、AI が活用可能な形で現場に展開していくことを目指しています。
今回のワークショップで扱ったハーネスエンジニアリングは、そのための重要な考え方の一つです。イベントで得た学びをその場限りにせず、参加者が実際の開発現場で活用し、得られた知見や改善点を Skills に反映する。そして、その Skills を他のチームやプロジェクトにも展開し、さらに磨き上げていく。この継続的なサイクルを通じて、個人の経験を組織の資産へ変え、AI ネイティブ開発を全社的に加速していくことを期待しています。
一方で、イベント後の相談会では、AI をどこまで信頼し、どう向き合うか、など現場ならではの悩みも多く寄せられました。参加者が実業務での Claude Code 活用に向けて、本格的に動き出したことを示しています。
また、ハンズオン中には、実行環境に起因するトラブルも複数発生しました。展開を広げていくうえでは、環境面を改善し利用者体験を向上していくことも、今後の展開を左右する重要な要素です。
今後の展望
今回のワークショップで高まった熱量を維持して活動を加速するために、NEC では次のような取り組みを進めていきます。
- 継続的な人材育成施策 — 基本的なトレーニングコンテンツに加えて、各事業部門のチャンピオン向けにはより高度な内容を準備するなど、AWS 様・Anthropic 様とも連携しながら、対象者層別に適切な育成施策を継続していきます。
- コミュニティの活性化 — 各現場で良い取り組みを横展開できるように、SI サービス CoE メンバーや各事業部門のチャンピオンを中心とした、事例共有・相互学習の場の形成を支援します。現場発の知見が自然に広がっていく構造を目指します。
- ユースケースの拡充と業務プロセスの標準化 — SI サービス CoE や、各事業部門のチャンピオンを起点に、各現場でのユースケースを拡充・蓄積していくとともに、ハーネスエンジニアリングや Skills 整備といった取り組みを通じて、業務プロセスの標準化を進めていきます。個別の活用にとどまらず、組織として再現性のある開発プロセスを確立することを目指します。
これらの取り組みは、NEC だけで完結するものではありません。AWS 様や Anthropic 様にお力添えいただきながら連携して進めていきます。本取り組みを一過性のイベントで終わらせず、全社展開を支える継続的な枠組みに育てていきたいと考えています。
おわりに (AWS 西部)
本ワークショップの企画・運営を担当した AWS カスタマーソリューションマネージャー 西部がワークショップを振り返ります。
まず印象的だったのは、参加者の熱量の高さです。当日は大変盛況で、最後まで議論が絶えませんでした。この熱量の背景には、SI サービス CoE を中心として、現場の関心を日頃から育ててきた素地があります。ツールの導入とあわせて「使いたい人を増やす」土台をどれだけ築けているかが、全社展開の速度を左右することを実感しました。
また、参加者の反応からは、生成 AI 活用の焦点が「個人の生産性向上」から「開発プロセスへの組み込み」へ移りつつあることを確信しました。単発のプロンプトの工夫よりも、業務プロセスにどう組み込むかという議論に参加者の関心が集まっていたのが印象的です。NEC が進める Skills 整備や業務プロセスの標準化は、この転換を組織として先取りする取り組みです。
NEC の強力なリーダーシップのもと、AWS の Amazon Bedrock 構成の知見と業務理解、Anthropic のモデル・プロダクトの知見がこの取り組みを支えています。三社が協力することで単独では得られない価値を生み出せると感じています。この三社の協働について、Anthropic の服部氏は次のように語っています。
「NEC 様とは戦略的協業以降、SI サービス CoE の皆さまと継続的に連携しながら Claude の全社展開をご一緒してきました。今回の Claude Code ワークショップは、NEC 様が築いてこられた推進体制と、AWS 様のご支援があってこそ実現できた取り組みです。相談会では、AI とどう向き合うかといった現場ならではのお悩みを直接伺うことができ、今後の支援のあり方を考えるうえで大きなヒントをいただきました」
― Anthropic Japan 合同会社 服部 佑樹 氏
2 回のワークショップを通じて、NEC の SI サービス CoE を中心とした Claude Code 活用の裾野を広げることができました。参加者からは全社展開や継続開催を望む声も多く寄せられており、AWS は今後も NEC・Anthropic とともに、各事業部門の推進体制とチャンピオンを軸とした Claude Code 活用の定着化を支援していきます。
日本電気株式会社について
NEC は、125 年以上の歴史を有する、AI やサイバーセキュリティ、通信などの技術を強みとするグローバルテクノロジー企業です。社会と産業の AI トランスフォーメーションを推進する IT サービス事業と、日本をはじめ世界の安全保障に貢献する社会インフラ事業を展開しています。業種横断の先進的な知見と最先端技術を結集し体系化した価値創造モデル「BluStellar (ブルーステラ)」を中核に、世界に革新と安心を届け、誰もが人間性を十分に発揮できる社会の実現を目指します。





