AWS Startup ブログ
検索機能の改善が、サービスの利便性向上に大きく寄与。アソビュー社の Amazon OpenSearch Service 活用
日本最大の遊び・体験の予約サイト「アソビュー!」を提供するアソビュー株式会社。同社のエンジニアたちはサービスの機能や利便性を向上させるため、日々の開発・運用に取り組んでいます。
同社が注力する領域のひとつに、“検索機能の改善”が挙げられます。そして、検索機能を実現するうえで、OpenSearch クラスターのデプロイ、オペレーション、スケーリングを容易にするマネージドサービスの Amazon OpenSearch Service を活用しているのです。
今回は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの坂井 英昭とシニア スタートアップ ML ソリューションアーキテクトの針原 佳貴が、アソビュー株式会社 VPoE 兼 テックリードの兼平 大資 氏とデータ基盤チーム チームリーダーの霧生 隼稀 氏、SRE ユニット ユニットリーダーの鈴木 剛志 氏にお話を伺いました。
「遊び産業」の創造と活性化のためにサービスを提供
坂井:はじめに、アソビュー社が提供されているサービスの概要を教えてください。
兼平:私たちは BtoC の事業として、日本最大級の遊びのマーケットプレイス「アソビュー!」を運営しています。このサービスでは北海道から沖縄まで、アウトドアスポーツやものづくり体験、遊園地や水族館、日帰り温泉など 600 種を超える遊びができる 9,900 以上の施設を紹介しています。それから BtoC の別のサービスとして、「アソビュー!」に掲載された体験を厳選して収録したカタログギフトやギフトカードを販売するサイト「アソビュー!ギフト」もあります。
BtoB の事業で提供しているのは、レジャー・観光・文化施設向けの DX ソリューションである「ウラカタ」というサービス群です。
レジャー・観光・文化施設向け DX ソリューション。レジャー・観光・文化施設にチケット販売システムを提供し、チケットの電子化を支援します。
購買データ分析 BI ツール。企業の購入者データ・口コミデータを活用し、来場者の居住地、性別、年齢ごとの顧客属性を分析することで運営戦略を支援します。
アクティビティ・体験事業者向け DX ソリューション。800 施設以上が導入するネット予約・顧客管理システムです。
また、これらのサービスによってユーザーが地方に足を運ぶ機会を創出できることから、私たちは地方自治体の方々を支援するソリューション事業も提供しています。この事業ではアソビューの社員が各地域のパートナーとなって、体験型観光商品の開発・販路開拓・販売などのコンサルティングを行い、地域活性化を支援しています。
アソビュー株式会社 VPoE 兼 テックリード 兼平 大資 氏(写真右)
検索機能の改善が事業の成果に直結する
針原:Amazon OpenSearch Service を導入した経緯についてお聞きします。
兼平:導入したタイミングは 5 年前くらいですね。それ以前は、カスタム検索サービスの Amazon CloudSearch を使っていました。ですが、Amazon CloudSearch ではインデクシングの要件を満たせないことがわかり、Amazon OpenSearch Service の導入を決めました。
針原:何か、検索機能を改善するきっかけがあったのですか。
兼平:当時、サービスのリニューアルを実施したことが影響しています。私たちの事業は最初にアクティビティ(体験レジャー)の販売からスタートして、そこから徐々に電子チケットの領域に挑戦していきました。
その頃は大きく分けて 2 種類の電子チケットを提供していたんですが、それらの概念を統合するという構想が立ち上がりました。また、もともとはプランに基づいた検索だったものを、拠点に基づいた検索に変えたいという意図もあったんです。それらを実現するためにリニューアルを実施しました。
霧生:リニューアル前の段階で、当時の「アソビュー!」は検索機能にいくつかの課題を抱えていました。そこで、Amazon OpenSearch Service を導入して検索機能をより強化しようという意思決定になりました。
システム内での Amazon OpenSearch Service の利用イメージ
針原:どれくらいの期間で Amazon OpenSearch Service を導入できましたか。
兼平:Amazon OpenSearch Service の立ち上げは簡単なので、導入そのものは AWS マネジメントコンソールから操作をしてすぐにできました。現在は、プランや商品、拠点などの検索を Amazon OpenSearch Service によって実現しています。
坂井:Amazon OpenSearch Service によって実現した検索機能によって、ビジネス面ではどれくらいの効果が出ているでしょうか。
兼平:「アソビュー!」が提供する各機能のなかでも、特に検索による CVR は高いです。「アソビュー!」ではサービスの検索ウィジェットだけではなく、レジャーロケーションページと呼ばれる、拠点と遊びジャンルの組み合わせごとに作られるページなどでも Amazon OpenSearch Service の検索結果を使っています。このレジャーロケーションページは SEO による顧客流入が非常に多いため、Amazon OpenSearch Service はアソビューの事業にかなり寄与してくれています。
アソビュー株式会社 データ基盤チーム チームリーダー 霧生 隼稀 氏(写真左)
イベント駆動アーキテクチャの実現のため AWS のサービスを有効活用
針原:Amazon OpenSearch Service が関係するシステムのアーキテクチャをお聞かせください。
Amazon OpenSearch Service が関係するシステムのアーキテクチャ
鈴木:「アソビュー!」のサーバーサイドでは、Amazon EKS(Kubernetes)上で Worker が動いています。この Worker が Amazon Aurora から必要なデータを取得し、Amazon OpenSearch Service 上で動く Elasticsearch にデータを投入しています。
霧生:この箇所は Amazon Kinesis Data Streams を用いた非同期的なイベント駆動アーキテクチャを組んでいます。Amazon Kinesis Data Streams を選んだ大きな理由は、まず可用性の高さやデータ保証です。大規模なストリーミングデータを扱うことができ、高いスループットでデータの安全性の担保などを実現してくれます。かつフルマネージドであるため運用にかかる工数を削減できます。また、他の AWS のサービスとの連携が容易であることも重要な点でした。
イベント駆動アーキテクチャでは、特定の出来事(イベント)を Publisher が発行し、Subscriber がそれを監視してイベントに対する処理を行います。両システムが連携を行ううえでは送受信データの形式(インターフェース)を事前に定義しておく必要があり、そのために Protocol Buffers を利用しています。
針原:イベント駆動アーキテクチャにしたモチベーションは何でしたか。
兼平:アソビューではこれまで、新しい事業を次々に立ち上げてきました。その過程で、システムそのものも新しく立ち上げる機会が多かったです。しかし、扱っている商品は各事業で共通していることが多いため、複数システム間でのデータの逐次連携がビジネス上必要になります。そこで、イベント駆動アーキテクチャを用いて各システムで発生するイベントをベースに情報連携する方針を選びました。
アソビュー株式会社 SRE ユニット ユニットリーダー 鈴木 剛志 氏
今後、アソビューはエンジニアがより活躍できる環境になる
針原:今後、アソビューの事業やアーキテクチャをどのように発展させたいですか。
霧生:私は現在、データ基盤チームでデータ分析関連の業務に携わっているんですが、ユーザーの口コミのデータから特定拠点のキラーコンテンツを抽出するとか、画像解析によりタグ付けを行って Elasticsearch に連携するなどの方法で、より良い検索体験を実現できると思っています。データ分析を活かしたサービス改善に注力していきたいです。
鈴木:今回のインタビューでは Elasticsearch をメインにお話ししてきたのでそれに関連する目標としては、SRE の観点からアーキテクチャで改良できる部分はまだまだあると思っています。たとえば、Elasticsearch は現状あまり負荷がかかっておらず、むしろサーバーがオーバースペックなところがあります。モニタリングを強化し、その解析結果に基づいてより最適なスペックに変更するなど、インフラのコスト最適化を実現したいです。
兼平:事業的な目標を話すと、これまでの「アソビュー!」は SEO での流入を前提とした事業展開が多かったです。しかし、そのルートで「アソビュー!」を利用したユーザーは、その後なかなかサービスをリピートしてくれませんでした。リピーターをいかに増やすかが、事業成長において重要だと考えています。
その目標を実現するうえで、Amazon OpenSearch Service をさらに使い倒していきたいです。現在、私たちはこのサービスの一部の機能しか使えていません。たとえば、Amazon OpenSearch Service のスコアリングやランキングなどの機能をうまく活かしたり、レコメンデーションと絡めてパーソナライズされた検索結果を出せるようにしたりといった施策が有効だと思っています。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 シニア スタートアップ ML ソリューションアーキテクト 針原 佳貴
針原:AWS のサービスやサポートに、さらに期待することはありますか。
霧生:アソビューでは、Amazon EC2 のスポットインスタンスを多用しています。たくさん使っているからこそ、利点だけではなく欠点が見えることもあります。今後、さらに使い勝手が良くなるとうれしいですね。
鈴木:AWS Trusted Advisor は、弊社の AWS 環境をモニタリングしてコストやパフォーマンスなどの最適化のプランを提案してくれます。ですが、なかには AWS Trusted Advisor のモニタリング対象外のサービスもあるんですよね。対象サービスの範囲をもっと広げてもらえると、インフラを運用するエンジニアとしてはすごくありがたいです。
兼平:AWS は新しいサービスが次々に登場するので、私たちのアーキテクチャ改善につなげられそうなリリース情報を定期的に教えてもらえると助かります。
針原:貴重なご意見をありがとうございます。今回のインタビューを通じて、御社のサービスの全体像を把握したうえで AWS 設計のベストプラクティスについてディスカッションすることが、ソリューションアーキテクトとして必要なスタンスだと再認識しました。例えば先ほど話に出たレコメンデーションに関して、Amazon Personalize を用いたパーソナライゼーションも可能だと思うので今後情報共有させて下さい。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャー 坂井 英昭
坂井:エンジニア採用にも注力されていると思うのですが、みなさんはどのようなスキルやマインドの人と一緒に働きたいですか。
鈴木:私たちの事業理念に共感してくれて、サービスの価値をユーザーに届けたいという思いを強く持っている人ですね。仕事と真摯に向き合って、その目標を実現できる方と一緒に働きたいです。そして、ユーザーへ価値を提供するためにも、日々の技術的なキャッチアップを欠かさない人が良いですね。
霧生:良い意味での野心がある人がマッチすると思います。アソビューはより良いサービスや開発体制を実現するために、積極的にさまざまな技術を導入しています。そして、エンジニアがチャレンジする機会もたくさんあります。
私はもともとバックエンドエンジニアでしたが、アソビューで未経験の状態から SRE になりました。さらに、現在はデータ基盤という私にとっては未知の領域に挑んでいます。自分自身の熱意や行動が、そのままサービスの価値に直結します。だからこそ、「○○を実現したい」というような野心を持っている方がいいんじゃないかと思います。
兼平:アソビューではこの先、今回解説した各種のサービスをさらに成長させ、事業がより多角化していきます。0→1 のさらに先のフェーズに進んでいくので、エンジニアがチャレンジする機会やできることも増えていくはずです。
一方で、既存事業を伸ばすだけではなく新規事業の立ち上げも実施していくので、0→1 に携わる機会もあります。取り組めることの範囲が広く、その環境のなかで自主的に動いていきたい人には、とてもマッチする会社です。
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