このような柔軟なリソース調達が可能な AWS は、『OPENREC.tv』に非常にフィットしていると感じています。
株式会社 CyberZ は、スマートフォン市場に軸足をおき、アドテクノロジーを中心とした B2B 事業と、メディア運営の B2C 事業を行っています。2014 年に立ち上がった新規事業である『OPENREC.tv』は、ゲームに特化した動画配信プラットフォームです。ゲーム大会の実況や他プレイヤーのゲーム動画の視聴ができる他、自分のプレイ動画のライブ配信や動画アップロードをする事ができ、チャットを通じた視聴者や配信者間のコミュニケーションを楽しむことができます。
世界的にゲームプレイ競技が e-Sports と呼ばれ、スポーツの一つとして認知されるようになり、現在では年収 1 億円を超えるプロゲーマーも出てきています。CyberZ では、海外と同じように、日本の e-Sports 市場を盛り上げ、e-Sports を一般の人が楽しめるエンターテインメントに発展させることをミッションとし、ゲームのプレイ動画やコミュニケーションを通じた新しいユーザー体験の創出、コミュニティの活性化、ゲームのプロモーションに貢献するべく、サービス開発を行っています。
CyberZ では事業の多角化を目指し 2014 年以降に幾つもの新規事業を立ち上げ、その一つとして 『OPENREC.tv』の企画・開発が始動しました。「一般的に動画サービスは大きな初期投資が必要となり、かつ競争も厳しい市場です。『OPENREC.tv』の基盤選定において、開発・運用を可能な限りスモールスタートで進められること、リードタイムを最小化できること、動画データやリアルタイムメッセージの効率的な配信が可能であること、かつ突発的な負荷やサービスの急成長にも耐えうるスケーラビリティが担保できること、が必須条件でした。」と、株式会社 CyberZ OPENREC事業部 エンジニア 廣瀬 太郎氏は振り返ります。
また、 CyberZ ではメディア事業、アドテクノロジー事業、いずれも大量の個人情報や機密情報を取り扱っているため、高いセキュリティレベルも求められていました。
これらの理由から、CyberZ は『OPENREC.tv』をスモールスタートで進められるクラウドサービスを前提に基盤選定を行いました。「一般的に動画サービスは大きな初期投資が必要となります。テキスト情報や画像ファイルと比べてデータサイズの大きい動画データを扱い、それを全世界のエンドユーザーに届ける必要があるためです。」(廣瀬氏)
CyberZ では以下の点を評価し、AWS が動画プラットフォームをスモールスタートで開発する上で最もマッチするクラウドサービスであると判断しました。
● 動画を全世界に効率よく届けるための Origin サーバーと Edge サーバーを省コストで構築できること
● 動画を無制限に永続化できるストレージが利用できること
● スケーラビリティを実現するための機能や API が充実していること
● フルマネージドサービスが充実していること
● 様々なセキュリティ要件に準拠していること
「2014 年当時、AWS はクラウド業界で最も勢いがあり、かつ国内に活発なユーザーコミュニティが形成されていた点も魅力的でした。また、AWS なら初期費用とリードタイムを最小化しスモールスタートで事業を始めることができます。特に新規事業はインフラエンジニアを抱えることが難しいケースも多いので、AWS のようにフルマネージドサービスが充実しており、スケーラビリティも容易に実現できるクラウドを採用することは運用面や体制上のメリットも多いと考えました。」(廣瀬氏)
動画プラットフォームという特性上、本来であれば莫大な初期投資が必要になりますが、AWS を活用することで、CyberZ では初期費用を最小化し、スモールスタートで事業を始めることができたことにより、大きな費用削減効果が得られています。また、機器調達などに要するリードタイムの大幅な削減にも繋がり、スピーディーな開発とデリバリを実現する大きな要因となっています。「動画配信基盤 という高ワークロード、高トラフィックな要件に耐えられる基盤を構築するには、今までのコロケーション式の開発・構築であれば 1 年、どんなに早くても半年は要するものでしたが、AWS を活用することでリードタイムを大きく短縮することができ、サービスローンチまでの期間を半減させることができました。」(廣瀬氏)
サービスの面でも AWS には、容量上限のないオブジェクトストレージである Amazon S3、効率的に全世界にコンテンツを配信できる Amazon CloudFront、柔軟に増減可能で GPU 搭載型も選択できる Amazon EC2、ハイパフォーマンスなネットワーク基盤、トランスコーディングサービス Amazon Elastic Transcoder、これらがフルマネージドサービスとして提供されていることは、動画プラットフォームを開発する上で CyberZ にとってメリットとなりました。
また、『OPENREC.tv』は、有名なゲームプレイヤーによるライブ配信やゲーム大会のようなイベント開催を機に突発的にアクセスが高騰します。注目度の高いライブ配信が始まるとスマートフォンへのプッシュ通知や SNS への投稿をトリガーとして、アクセス数が瞬間的に数倍数十倍と跳ね上がります。「AWS を活用すれば 1 日もかからずに数十台のサーバーを用意することもできますし、想定以上の負荷がかかったとしても自動にスケールアウトすることも可能です。対して、アクセス数の少ない時間帯は縮退運転させることもできます。このような柔軟なリソース調達が可能な AWS は、『OPENREC.tv』に非常にフィットしていると感じています。」(廣瀬氏)
さらに、最近の AWS のサービスアップデートの中で、 CyberZ にとって特に魅力的かつ大きな変化となったものが、Application Load Balancer の登場でした。『OPENREC.tv』では、配信者と視聴者のコミュニケーションパスとしてライブ視聴画面にチャット機能を提供しており、この機能に WebSocket を採用しています。チャットに飛び交うメッセージの流量は非常に多く、それを何千何万ものエンドユーザーに伝達させる必要があるため、拡張性とリアルタイム性を要求されるシステムとなっています。以前 CyberZ では、自社で作成したバランシング機能を実装して運用していましたが、拡張性と可用性、運用性の面で課題が出ていました。これを 2016 年10 月に Application Load Balancer に WebSocket 通信を終端させるようにリプレースを行ったことで、拡張性と可用性の両面を見事に解決することができ、さらに運用性も向上させることができました。「AWS を活用することで、シンプルかつ柔軟性の高いアーキテクチャが実現できた印象的なプロジェクトでした。」(廣瀬氏)
『OPENREC.tv』は現在国内を中心に利用されているサービスですが、海外からの配信や視聴も増えてきており、今後より一層のサービス成⻑が見込まれています。そこで、次のフェーズに備えデプロイメントやスケーリングに伴う運用効率化、及びコスト効率化をテーマにアーキテクチャの最適化を進めています。「直近では Amazon EC2 Container Service (Amazon ECS) の導入を検討しています。昨年末の AWS re:Invent 2016 で Blox (Amazon ECS のオープンソースのスケジューラー) が公開されたことでコンテナ管理の利便性が一層増したため、これを機に Amazon ECS と Blox を活用し、動画配信基盤のリプレースを進めています。また、ステートレスな Web アプリケーションに対しては Spot Fleet の導入を検討しており、ランニングコストのさらなる削減を狙っています。」 (廣瀬氏)
また、CyberZ では、AWS re:Invent 2016 で発表された 3 つの AI サービス Amazon Rekognition、Amazon Polly、Amazon Lex にも注目しています。「動画サービスを運営していることもあり、顔認識をはじめとした代表的なモデルを Amazon Rekognition から手軽に利用できるようになったことは特に魅力的だと感じています。」 (廣瀬氏)
AWS クラウドがメディア・エンターテインメント企業でどのように役立つかに関する詳細は、デジタルメディアとエンターテインメントの詳細ページをご参照ください。