NEC が目指す Digital Inclusion の実現
多様な視点を尊重する組織づくりで環境変化に強い IT を実現
2021
基幹系システムの AWS 移行の前倒しとともに、企業カルチャーの変革を推進する NEC 。
急ピッチで進む改革を支える環境変化に強い IT と組織づくりのポイントとは。
デジタル技術が浸透して社会の見える化が進み、個々人が能力を発揮できる世界へ─ Digital Inclusion の実現には NEC 自身が変わらなければなりません。当社や従業員だけでなく、取引先や顧客、日本社会まで、すべてのチカラを引き出す源泉は IT であり、重要パートナーによる提供サービスとして、 AWS を活用していきます
小玉 浩 氏
日本電気株式会社
執行役員常務 兼 CIO 兼 CISO
デジタルビジネスプラットフォームユニット担当
デジタル技術が浸透して
個人が主役となる社会
NEC が DX の先に目指す世界
「NEC」の略称でよく知られる日本電気株式会社は、1899 年に創業した日本を代表する電機メーカーです。PC /サーバー/メインフレーム/スーパーコンピューターなどのコンピューティング機器をはじめ、IP 網/携帯電話/公共交通機関向け無線/宇宙通信などの有線・無線通信機器のほか、システムインテグレーションを含む IT サービス、“電機”にまつわる広範な事業を展開しています。AI や IoT、 5G 、スマートグリッド、ブロックチェーンや自動運転などの先端技術にも積極的です。
NEC は 2018 年、デジタル技術の進展が隅々まで浸透した社会──「Digital Inclusion 」を提唱しました。デジタル技術を活用することで、社会を見える化/分析してさまざまな事象に対処できるようになり、個々の人が多様な能力を発揮する機会・場を得られる世界です。 NEC 自身も、この実現に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。
「Digital Inclusion を実現するためには、NEC 自身が変革しなければなりません。私たちは NEC 自身を“ビジョン”や“戦略”“組織” “カルチャー”“ブランド”“エコシステム”など多次元的に捉えて、経営・業務・ITが一体となってさまざまな方面から変革に取り組んでいます。中でも重要なのは“カルチャー”です」と、NEC 執行役員常務 兼 CIO 兼 CISO を務める小玉浩氏は述べます。
NEC は 2018 年、人事評価や人材育成、働き方などを変革する「Project RISE」を発足しました。同社の長い歴史で培われてきたよい伝統を活かしつつ、時代に即した新しい文化を採り入れることが目標です。特にコミュニケーションに注力し、部門を超えた新しいつながりも生み出しました。小玉氏によれば、同プロジェクトによって社内の意識は大きく変化しつつあり、さらなる文化の醸成を加速するための促進剤として“IT 改革”も重要だとしています。
AWS クラウドエコノミクスで効果を見える化
SAP S/4HANA への更改に合わせ、
AWS 移行の計画を数年前倒し
NEC の DX の取り組みの 1 つとして、基幹系をはじめとした社内システムのクラウド活用が挙げられます。まず同社は、既存のオンプレミス SAP ERP を最新の SAP S/4HANA へ更改すると同時に、アマゾン ウェブ サービス (AWS)へのクラウド化も実施します。当初は数年をかけて段階的に移行する計画でしたが、将来的に多様な新システムを立ち上げていく中で基幹系システムの移行タイミングについての議論がなされました。その結果、急速に移り変わる環境変化へ対応すべく、クラウド化に向けた計画の前倒しが決定されました。
この決断には、インフラコスト、生産性、レジリエンス、俊敏性など多様な観点から、事前に移行効果を試算するサービスである AWS クラウドエコノミクスが活用されました。NEC 社内の試算とほぼ同様に 30% という大きなコスト削減効果と生産性向上効果を得られることを確認しました。
また、NEC は AWS の APN プレミアコンサルティングパートナーを取得しており、国内でもトップクラスの AWS 上級技術者を擁しています。そうした活動から多くの知識と経験を積んでおり、信頼性・柔軟性・拡張性もよく理解していたことが決め手となりました。
検討開始からわずか 3 ヶ月で移行を決断した NEC は、テスト・リハーサルも短期間に済ませ、2021 年春には本番環境の移行を完了する計画です。さらに今後は、600 を超える他の社内システムも順次マルチクラウド/ハイブリッドクラウドへのモダナイゼーションを推進していくことが計画されています。
NEC はこれらのチャレンジで得た知見やノウハウを、顧客価値に転換していきたいと考えており、小玉氏は、「NEC は、“海底から宇宙まで”幅広い事業を展開しており、極めて複雑で大規模なシステムを運用してきました。私たちのクラウド活用の成功体験は、どのようなお客さまにも大きな価値を提供できるはずです」と話します。
多様な観点を持つ組織へ
社員の IT に対する意識を変え、
さらなるチカラを引き出したい
こうしたプロジェクトを進める中で、小玉氏は、IT 技術者の意識改革にも取り組んできました。これは上述の NEC 自身が変わらなければならない、単にシステムを作ったり変更したりしただけで DX が終わるわけではないという考えの表れです。
「私たちは、顧客のニーズを個別に解決していくチカラを持っています。しかし社会に IT が浸透して顧客の環境が変化し、強い影響力を持ったゲームチェンジャーが次々と生まれていく現在において、NEC自身がレガシーなままでは生き残ることは困難です。組織全体をリセットして、エンド・ツー・エンドで最適化・高度化していくことが必要です。そのためには、社員の IT に対する意識や行動を変えていく必要がありました」(小玉氏)
小玉氏は、何がよい・何が悪いではなく、多様な観点を持って、技術と文化をうまくかみ合わせることのできる力を持ってもらいたいと考えました。そのためには、プロセスを 1 から作り直したり、新しいフレームワークを採り入れたりと、多様な取り組みを実践してきたとのことです。
特に IT 関連の課題解決においては、次のような細かなプロセスを採りました。(1)差別化・ビジネスにつながるものに集中して社内実証を行う。(2)差別化要素でなければアウトソース/クラウド化。(3)社内に能力がなければ外部専門家へ。(4)エコシステム・パートナリングやアジャイルチームの形成。(5)グローバルでの共通化とガバナンス強化──といった具合です。こうした意識改革には苦労もありましたが徐々に実を結びつつあり、今後も従業員から経営層まで幅広く継続的に取り組んでいきたいとしています。
「私は、目標を重視することがとても重要だと考えています。組織のリーダーとして、目標を達成するためのチカラを引き出すことが使命だと捉えています。そして、従業員1人ひとりはもちろん、課や部門といった組織、取引先や顧客、そして社会全体にいたるまで、すべてのチカラを引き出す NEC でありたいと考えています。AWS を含む IT が、その源泉となるはずです」(小玉氏)
力強いビジネスパートナーとして
日本のチカラを引き出すサポートを期待
NEC の DX、Digital Inclusion の実現に向けた取り組みは現在も進行中です。今後さらに新しいビジネスへ幅広くチャレンジし、社会価値創造企業として成熟していくことが期待されます。小玉氏は、改善すべき点はあり、引き続き包括的に取り組んで環境や時代の変化に対応できるITと組織を作り上げたいと話します。
「AWS には、NEC の経営アジェンダに寄り添うことのできるパートナーとして、強い信頼感を抱いています。また先進的なクラウドベンダーであり、NEC の知見やリソースと融合することで新しい価値を生み出すことのできる存在でもあります。AWS には、これまで以上に日本企業のニーズに合ったサービスで、日本のチカラを引き出してほしいと考えています」(小玉氏)
カスタマープロフィール:日本電気株式会社
- 代表取締役:執行役員社長 兼 CEO 新野 隆 氏
- 従業員数:連結 112,638名(2020年3月末現在)
- 事業内容:社会公共事業、社会基盤事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業、グローバル事業
実施施策
- AWS クラウドエコノミクスの活用により、基幹系のクラウド移行の前倒しの決断
- 新たなフレームワークの採用
- 多様な観点を持って、技術と文化をうまくかみ合わせる施策
ご利用の主なサービス
Amazon EC2 High Memory インスタンス
EC2 High Memory インスタンスでは、インスタンスで 6 TB、9 TB、12 TB、18 TB、24 TB のメモリを利用できます。これらのインスタンスは大規模なインメモリデータベースを実行するよう目的に応じて構築されており、これにはクラウドでの SAP HANA インメモリデータベースの本番デプロイメントを含みます。
クラウドエコノミクスセンター
クラウドでできることは、総所有コスト (TCO) の削減だけではありません。AWS ユーザーは、スタッフの生産性向上、運用の回復力、ビジネスの俊敏性など、他の分野でも大きな改善を実感しています。
AWS Migration Acceleration Program (MAP)
AWS Migration Acceleration Program (MAP) は、移行の工程に取り組む企業が、既存のワークロードをアマゾン ウェブ サービスに移行することで、ビジネス上のさまざまなメリットを得られるよう作成されました。MAP はコンサルタントサポート、トレーニング、サービスクレジットを提供するために始めたもので、クラウドへの移行のリスクを軽減し、強固な運用基盤を構築し、移行の初期コスト軽減の役に立つことを意図しています。
Amazon RDS
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。