任天堂は、新しい体験をお客様に提供するために、ネットワークを利用したエンターテイメントにも力を入れています。その一環として、ゲームソフト向 けのネットワーク機能や、ニンテンドー3DS™ や Wii U™ で楽しむことができるネットワークサービスなどの提供を行っており、一例として以下のようなものを展開しています。

DataStore 機能: 自分のデータをアップロードしたり、ネットワーク越しに他のユーザーとデータを交換したりする際に利用するオンラインストレージ機能です。

Miiverse: Wii U™ やニンテンドー3DS™ で利用できるサービスで、各ソフトにそれぞれ専用の「コミュニティ」を提供。お気に入りのソフトの情報を交換したり、気になるソフトの評判をチェックした りなど、ゲームの中での体験をさまざまな形で世界中の人と共有することができます。

すれちがい通信中継所: すれちがい通信とは ニンテンドー3DS™ を持った人同士がすれちがった時に起こる通信機能です。すれちがい通信中継所は、ネットワークを利用してすれちがい通信をもっと身近に楽しめるようにするための機能です。

*ニンテンドー3DS™ ・Wii U™ は任天堂の商標です。

弊社は、ニンテンドー3DS や Wii U のシステム、それらで楽しむことができるゲームやサービスなど、いろいろなところでネットワークを活用しています。ケースによって対処しなければならない 課題は変わりますが、ネットワークサービスを提供するにあたって常に念頭に置いておかなければならないこととして、

ソフトの発売直後やクリスマスなどに、ネットワークトラフィックの急激な増加が発生する

世界中のお客様に楽しんでいただいているため、日本のみならず北米や欧州なども考慮してシステムを構築する必要がある

の2点が挙げられます。前者に関しては、実際にどれぐらいアクセスが発生するか予測できない面もあり、そのピーク負荷に耐えられるリソースをどのよ うに確保するのかも大きな課題です。後者については世界中に独自にオンプレミスの運用体制を整えるには膨大なコストがかかります。また、それによってリ リースまでに長期のリードタイムを要してしまうことは避けなければならず、どのように解決をしていくのかということが、長年の課題でした。

ニンテンドー3DS の発売に向けて、ゲーム向けに提供しているネットワーク関連の機能を大幅に変更することにしました。オンラインでユーザー同士が対戦を行うマッチメイクや 得点などを競うランキングなどの機能を提供していますが、それらの中の一つの機能として、ユーザーが自分のデータをアップロードしたり、他人のデータをダ ウンロードしたりすることができる、DataStore というオンラインストレージ機能があります。他の機能は弊社プロプリエタリなオンプレミスのシステムで運営していますが、この DataStore 機能については、想定されるストレージサイズやユーザー数などを考慮した結果、クラウドを基盤として利用する方針になりました。実際、これが、AWSを利 用する最初の取り組みとなり、2010年末に Amazon S3 の採用を決定しました。このケースでは、「必要なときに、必要なだけ、ストレージ容量をスケールすることができる」こと、なおかつ、Amazon S3 に保存したデータはアマゾン側で自動的にリプリケーションが行われ、厳重に保護されることが決定の要因となっています。

その後、Amazon S3 以外の AWS のサービスを各種利用し、徐々に AWS の経験を積んでくる中の2011年秋に、Miiverse というプロジェクトが立ち上がりました。このサービス要件として、日本、北米、欧州の3つのリージョンをシームレスに結び、世界中のどの都市からも快適な ユーザー体験(レスポンス)を得られるようにする、という事があります。また、北米での Wii U の発売を2012年11月18日(欧州は11月30日、日本は12月8日)に控え、それまでに残された期間内で、必要なシステムをオンプレミスで構築する のは困難と考え、AWS を採用しました。もちろん、経験を積んできていたというのも理由の一つではありますが、このケースでは、ワールドワイドのサービス網を持つクラウドサービ スである、という点が決め手となっています。

ただ、Miiverse のサービス提供基盤は、いままで利用してきたものと比べて圧倒的に大規模なものになると予想され、慎重な取り組みが求められました。そこで弊社は、AWS を利用した豊富な実績を持つ株式会社はてなに開発を委託したうえで、株式会社はてなと弊社のエンジニアがチームを組み、かつ、AWS のエンタープライズサポートを利用することで、3社が一体となった構築体制を築いてプロジェクトに臨みました。

特にこのケースでは非常に手厚いサポートをいただきました。ソリューションアーキテクトやテクニカルアカウントマネージャーの方々を含めて 4名の専属の担当者をつけていただいたことは非常に助かりましたし、隔週で直接のテレビ会議の場を設けていただいたことも、課題を解決しサービスをリリー スするうえでは大変役に立ちました。

これら2つのケース以外では、2013年8月にリリースしたすれちがい通信中継所のシステムを構築する際にも AWS を全面的に利用しています。サービス部分で AWS を利用するという事は上記の2例と同じですが、このケースでは、AWS のデータウェアハウスサービス Amazon Redshift をあわせて活用することにしました。

より良いサービスの実現のためには、既存ユーザーのアクセス状況を的確に把握・分析する必要があります。分析に関しては、オンプレミスで独自に整備 したデータ分析基盤を運用していますが、データ量の増加にあわせてシステム構成を変更したり、分析要件に応じて処理自体を最適化したりなど、さまざまな手 間がかかっていました。場合によってはエンジニアがこの作業にロックインされ、肝心のサービスの改善に手が回せなくなるという事もあります。そういったこ との改善を期待して、Amazon Redshift が、タイミングよく日本でも利用できることになりましたので、採用することにいたしました。

 

 

 

「任天堂株式会社様 Miiverseシステムアーキテクチャ概要全体図」

nintendo_diagram2

「DataStore 機能」は2013年12月現在、「マリオカート 7」や「ポケットモンスター X ・Y」をはじめとするゲームタイトルなど、約 40 種類のソフトで利用されています。利用頻度の高いソフトでは、90 日間の保存期間に 8,000 万件以上のデータが登録されています。このサービスを安定して運用できていること、かつ、サービス提供基盤への投資コストを当初オンプレミスで行うケース で想定していた金額と比較して、1/10 程度に抑えることができました。

「Miiverse」においても、日本、北米、欧州の 3 つのリージョンから全世界をカバーする狙いどおりのサービス体制が整いました。Amazon VPC を利用し、各リージョンをメッシュ構造で相互に VPN 接続したシームレスな運用を実現。2013年12月現在、この環境下で Amazon EC2 のインスタンスを約 1,000 台、ウェブサーバーの負荷分散のために「Elastic Load Balancing」を 100 以上運用するほか、手書き投稿画像などのユーザーデータの保存用として Amazon S3 を利用しています。
また、スマートフォンや PC のブラウザで利用できる「Miiverse」のリリースにあわせて、一部の Amazon EC2 クラスタ、メディアファイルの配信を北米リージョンに一元化することになり、高速なレスポンスを確保するため、Amazon CloudFront も新たに導入しました。

ただ、Miiverse のサービス提供基盤は、「DataStore機能」と比べて圧倒的に大規模なものになると予想され、今まで以上に慎重な取り組みが求められました。そこで 弊社は、AWS を利用した豊富な実績を持つ株式会社はてなを共同開発のパートナーに選定するとともに、AWS のエンタープライズサポートを利用し、3社が一体となった構築体制を築いてプロジェクトに臨みました。

こうした Miiverse のサービス提供基盤の構築にあたり、弊社がコスト削減やリードタイムの短縮とともに高く評価しているのが、高度なサービス継続性の確保です。実際、それぞ れ異なる役割を持ったインスタンスが1000台という大規模なシステム環境になると、日常的にいずれかのインスタンスに何らかの問題が起こります。そこ で、Amazon VPC における サブネット や ENI の仕組みを効果的に活用し、サーバやネットワーク、アプリケーションを冗長構成にしておくことが必須となります。また、それぞれのAZ間、大陸を横断する リージョン間のネットワークをシームレスに結ぶために、パケットルーティング制御に OSPF(Open Shortest Path First) を採用し通信障害時の収束性を高め、AWS 内部のネットワークをより強固なものとして実装しています。

「すれちがい通信中継所」では、Amazon Redshift を利用したことで必要に応じてリソースを柔軟にスケールすることができていますので、分析側の作業にかかるコストは著しく抑えられたと感じています。た だ、これ以上に、ほぼリアルタイムに分析まで行えることのメリットを強く感じるようになりました。この点は新たな発見であり、今後の展開に生かしていきた いと考えています。

AWS を利用するという選択肢を得たことで、弊社がサービスを検討する上での柔軟性が数年前と比較して大きく改善しました。今回紹介させていただいたこれらのプ ロジェクトを通じ、さまざまな知見を獲得しましたが、これらは AWS を利用した他のプロジェクトにもフィードバック可能なため、今後もお客様に楽しんでいただけるサービスの提供基盤として、AWS を利用していきたいと考えています。


 

- 任天堂株式会社 様