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【開催報告】AWS Cashless Frontier ― 決済業界のフロントランナーと描くAI × デジタル通貨の未来

開催概要

2026年9月2日に、AWS麻布台ヒルズオフィスにて「AWS Cashless Frontier」を開催いたしました。決済業界のIT推進・ビジネスリーダー約30社60名の皆様にご参加いただき、エージェンティック・コマースやステーブルコイン、AIエージェント活用といった最新テーマについて、実践知の共有とネットワーキングが行われました。本記事では、イベントを企画した背景から各セッションの様子、パネルディスカッションの内容をお届けします。

企画の趣旨 ― AIのプロダクション利用を見据えて

決済はあらゆる経済活動の重要な基盤であり、キャッシュレス化は生活者の利便性に直結します。キャッシュレスの推進に向けては、システムのサイロ化やレガシーシステムからの脱却をカード会社、決済代行会社、フィンテック企業など決済業界全体で進める必要があります。そのような背景から、ユーザーにシームレスな体験を届けるために「決済をなめらかにつなぎ、お客様の感動を創出する」というビジョンをAWS Cashless teamでは掲げています。ビジョンの実現に向けて、最新情報のお届けや業界課題について踏み込んだ意見交換を行うイベントを、毎年テーマを発展させながら行っています。

この1年で決済業界を取り巻く環境は大きく変わりました。AIエージェントが商品の検索・比較から決済まで自律的に実行するエージェンティック・コマースとその基盤となるステーブルコインやトークン化預金といったプログラマブルな通貨の台頭、不正検知や顧客対応の自動化など生成AIによる業務変革、そしてAI駆動開発と言われるようなAIネイティブな開発スタイルの浸透といったトレンドが同時に立ち上がりました。こうした変化の最前線に立つ決済企業の皆様と共に、リアルな実践知を交換し業界横断でのイノベーションを加速する場として、本イベントを企画しました。

イベント概要

  • 日時: 2026年9月2日(水)15:00–19:30
  • 会場: AWS麻布台ヒルズオフィス
  • 参加者: 決済関連企業 約30社60名

オープニング・AWS 決済業界クラウド活用最新動向

AWS 新相よりこの1年間の国内外の動きを紹介しました。2025年末のAWS re:InventでCoinbaseがx402プロトコルによるエージェントがステーブルコインを使い即時決済できる仕組みを実装した事例、2026年5月のFinancial Services SymposiumでVisa・Stripeが発表したTrusted Agent ProtocolやMachine Paymentなど、エージェントが安全に決済するためのインフラが急速に整備されてきた流れを振り返りました。

日本についてはJPYCがAWS上にステーブルコイン発行基盤を構築した事例や、シンプレクスのオンチェーン関連の取り組み、DCPのトークン化預金と国際決済の事例を紹介しました。AIエージェントによる決済は目新しいものに捉えられがちですが、本セッションで実用化が進んでいることをお届けしました。

AWS 金融・決済関連 最新サービスのご紹介

技術セッションでは、AWS松原よりエージェンティック・コマースの定義と影響を体系的に発表しました。入力支援から完全自律型購買までエージェントのレベル分けと決済プロトコルの全体像を解説しました。

その上でAWSのサービスとして、USDCを利用したエージェントコマースの実現を支援する、買い手側のエージェント決済実装のためのAmazon Bedrock AgentCore Paymentsと、売り手側リソースに支払いリクエストを追加するAWS Web Application Firewall (WAF) の機能を紹介しました。

決済プロトコルについては「エージェンティック・コマースのプロトコルが次々登場しているが、1つが全てを代替するものではなく相互に協調している」と述べ、AWSも決済プロトコルの領域において、x402 Foundation や UCP Tech Councilにメンバーとして参加し貢献していることを紹介しました。

Customer Lightning Session ― Frontier Builders、3社が語るAI実践知

三菱UFJニコス株式会社 ― クラウド活用のベストプラクティスと次の一手

三菱UFJニコス株式会社 システム基盤・運用部 共通システム基盤グループ 次長 中村 貴治 様には、DCカードとMUFGカードのシステム統合という大規模プロジェクトを乗り越えてきた経験と、次のステップとしてのAI活用について発表いただきました。

同社は2019年にAWSの利用を開始し、コロナ禍ではAmazon WorkSpacesを数ヶ月でリリースしました。2025年にはシステム統合プロジェクトで設置したお客様窓口でAmazon Connectを採用。ランニングコストの削減とともに、状況に応じたコールフローの迅速な変更を実現しました。導入にあたり社内に対してAWS担当者とともに説明を行い、約3ヶ月で導入を実現したエピソードは、多くの参加者の関心を集めていました。

今後に向けては、基幹システムのモダナイゼーションやAI活用を推進しています。AWS Transformを活用したリライト分析や、Kiroを活用したAI駆動開発の検証に取り組んでいます。また、AWS Security Agentを活用したソースコードレビューやペネトレーションテストの検証を進めており、新たな観点での評価できる可能性を確認しています。同サービスを検討・検証されている多くのご参加者からご関心が寄せられました。

SP.LINKS株式会社 ― CCoE主導のクラウド標準化とDevOps高度化の実践

SP.LINKS株式会社 IT Infrastructure Unit / Cloud Management1 Group 小柴 敦 様からは、ベンダー依存からの脱却と内製化推進のリアルな歩みを共有いただきました。

同社は決済代行事業を展開しており、2022年に決済サービスをオンプレミスからクラウドへ移行。CCoEを作り内製開発を推進してきました。参加者の多くがチャレンジしている、ベンダー委託の課題から脱却するために、クラウドネイティブな開発体制を構築した経緯を率直にお話しいただきました。

PCI DSS対象も含むシステムを内製で運用していくには統制が必要でしたが、サービス拡大の需要とのバランスが課題でした。そこで、AWS Professional Serviceサービスを活用して内製開発を安全に拡大するためのガイドラインや環境を整備しました。現在はAWS DevOps Agentを活用した問題調査の効率化、Kiroを用いたAI駆動開発の試行にも取り組んでいます。「標準化した知見をAIで活用し、DevOpsを高度化する」と紹介されたステップアップの道すじは、多くの企業が直面している「組織でAIをどう活用するか」のという課題へ示唆となる内容でした。

株式会社ネットプロテクションズ ― 顧客の「不安」を即時解決するAIサポート

株式会社ネットプロテクションズ AI Enablementグループ Enablement担当 田中 哉太 様には、後払い決済サービス「NP後払い」のコンタクトセンター業務にAIを活用した取り組みを発表いただきました。

支払い・請求に関する問い合わせに対して、FAQだけでは個人に合わせた回答ができず、データベースを参照した正確な回答が不可欠でした。しかしAIに直接SQLを生成させるとリスクが高いため、AWS Step Functionsで順序性を固定したフローを構築し、3段階のガードレール(①本人確認 ②DB参照成否チェック ③AIの自律判断)を配置しました。さらにヒューマン・イン・ザ・ループとして、DB参照を含む回答は必ず人間が確認してから送信する設計としました。

2026年8月のリリース後、対象カテゴリーにおいてAI回答率80%以上、うち60%はデータベース参照に成功という成果を達成。担当オペレーターからも他のカテゴリーに展開しても問題ないレベルという評価を得ています。一方で「フローの複雑化により、作成者本人でも全体像を追えなくなる」という率直な課題共有もありました。ハルシネーションという言葉が浸透してきていますが、実体験での取り組みや効果は参加者が直面する課題へのアクションにつながる内容でした。

Customer Panel Session ― Envisioning the Frontier、業界リーダーが描く決済の再定義

パネルディスカッションでは、株式会社インフキュリオン 代表取締役社長 CEO 丸山 弘毅 様、GMOペイメントゲートウェイ株式会社 専務執行役員 CTO 三谷 隆 様をパネリストに迎え、モデレーター:飯田 哲夫 様(株式会社ACSiON 社外取締役 兼 株式会社カンム 社外取締役)の進行により、4つのテーマで議論が交わされました。

テーマ1: エージェンティック・コマースの現在地

三谷様からは「エージェンティック・コマースでの取引は、B2B決済を中心にすでに広がってきている」というご体感、丸山様からは、自社で発表したエージェンティック・コマースのホワイトペーパーの反響と、すでにその内容を一般常識にしないといけない温度感になっていると双方より実体験をもとにした市場の勢いを共有されました。

テーマ2: 不正検知・セキュリティの新課題

三谷様は「AIエージェントはBOTに近い。これまではBOTをブロックする方向だったが、正しいBOTを判別する方向にルールチェンジが起きている」と見解を示されました。そして、正規のエージェントと悪意のあるBOTの判別が紙一重になっており、パケットレベルの監視が必要になるほど高度化していると述べました。

丸山様は「エージェントが本人のものかどうかの真正性、さらにマンデート(委任範囲)に沿っているかどうかの確認が最大の課題。」とコメント。チャージバックのルールやリスク負担ルールがまだ定まっていない現状の業界課題もあげられました。

テーマ3: 次世代決済プラットフォームに向けて(レジリエンス・AI駆動開発)

三谷様からは「入られる前提で考える」というサイバーセキュリティの方針転換について実践例が語られました。年に1回、経営陣向けのランサムウェア攻撃シミュレーションを実施しており、PCI DSSの再認証含めて考慮する必要があるという学びを共有されました。

丸山様からはAI駆動開発について、コーディング自体の効率化は進んでいるが、レビューは依然として人間が必要。求められる人材の質が変化してきているという見解を自社の経験から示されました。

テーマ4: 2030年のキャッシュレスビジョンとAWSへの要望

三谷様は「決済は気づかないうちに済ませておいてという世界。テクノロジーの観点では壁をなくして全日本で強くなりたい」と業界協力のビジョンを語りました。丸山様も同様に「テクノロジー面では業界全体で協力し、ビジネス面では競い合う。企業同士が協力して、表のコンシューマーには決済が見えなくても自由に取引ができる世界を作りたい」と呼応されました。

AWSへの要望としては、「グローバルで乱立するプロトコルを吸収できるレイヤーの役割」「政府に向けたクラウドの安全性の説明」「本イベントのような、企業の壁を越えた本音ベースのトークの場を続けてほしい」という率直な声をいただきました。ご登壇者の対話に加え、参加者からも質問が続き会場全体の熱意が感じられるセッションとなりました。

まとめ

本イベントではビジネス・IT両面のAIエージェントの活用について、一番大事なユースケースをお客様と深掘りました。懇親会でも社内や顧客向けに何が良くなるのかといった意見交換が活発にされ、ご参加者皆様の熱意を感じました。

AWSでは、差別化を生まない重労働をAWSに預けていただけるサービスを提供しています。AIエージェントをお客様が構築するにあたり、Amazon Bedrock AgentCore、さらには Amazon Bedrock AgentCore Payments や AWS WAF などのマネージドサービスを提供し、お客様の新たなビジネス創出を支援してまいります。

また、開発・運用に関しては、Kiro、AWS DevOps Agent、AWS Security Agentなどすぐにお使いいただけるフロンティアエージェントや、金融リファレンスアーキテクチャ日本版 をはじめとする実践的なコンテンツを提供し、各社のナレッジの体系化と金融システムにおけるミッションクリティカル領域の強化を支援いたします。

本イベントにご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた皆様に改めて御礼申し上げます。今後もAWS Cashless Initiativeでは業種・業態の垣根を越えた対話と共創を通じて、新しい決済の未来を皆様と共に切り拓いてまいります。

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