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AI 時代だからこそ、人を育てる ─ コニカミノルタのクラウド人財育成 6 年の歩みと「AWS Boost Camp!」の取り組み
本ブログは、コニカミノルタ株式会社と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。
みなさん、こんにちは。AWS Japan ソリューションアーキテクトの森下です。
本記事では、コニカミノルタ株式会社 ( 以下、コニカミノルタ ) が AWS と共同で 6 年以上にわたり推進してきたクラウド人財育成の歩みと、その最新の到達点の 1 つである事業課題解決型プログラム「AWS Boost Camp!」の取り組み、そして 2026 年 5 月 22 日に開催された最終成果報告会の模様についてご紹介します。
1. はじめに ─ コニカミノルタについて
コニカミノルタは、 1873 年創業の写真材料事業をルーツとし、現在では複合機・プロダクションプリントや、ヘルスケアやセンシングなど多様な事業を展開するグローバル企業です。「Imaging to the People」を長期経営ビジョンに掲げ、長年培ってきた光学・画像・材料などのコア技術に AI を掛け合わせ、既存領域に加えて成長領域へと事業を広げています。
近年では、自社プロダクトのクラウド化や生成 AI の業務活用を進めるとともに、AI とデータの活用を全社的な経営の軸に据えて事業変革を加速しています。こうした取り組みを支える土台として、社内の DX 専門技術者を計画的に育成する取り組みを長年にわたり継続して進めてきました。2024 年度末時点で、コニカミノルタの DX 専門技術者の登録人数は 1,000 名を超える規模に達しています。
2. コニカミノルタの人財育成の歩み
コニカミノルタと AWS の人財育成における共同の取り組みは、2019 年にCloud Center of Excellence(以下 CCoE)構想の議論として始まりました。当時から一貫して掲げてきたのは、「座学や資格取得で終わらせず、実プロジェクトで成果を出せる人財を育てる」という思想です。最終的なゴールは、各事業部門が自走してクラウドを活用できる組織能力の獲得に置いてきました。
2020 年からは、AWS が伴走する形で、座学型のクラウド研修と実プロジェクトを題材にした OJT を組み合わせた集中投資型のプログラムを、シーズン制で複数回にわたり実施してきました。各シーズンでは数名規模のチームを並列に編成し、コニカミノルタ独自の DX ロール認定制度と紐付けて受講者のスキル変化を可視化することで、人財育成施策を経営層に KPI として説明できる形に整理しました。
このプログラムは、社内の DX 専門技術者数の急速な拡大とそれに伴う事業部門の多様な課題への対応の必要性から、2024 年度に新たな枠組みである「AWS Boost Camp!」へと進化しました。最大の特徴は、参加者が自部門の実プロジェクト ( 事業課題そのもの ) を題材として持ち込み、AWS のソリューションアーキテクト ( 以下、SA ) と Training and Certification ( 以下、T&C ) チームのインストラクター、そしてコニカミノルタの CCoE メンバーが三位一体で伴走する点です。これにより、研修中に設計したアーキテクチャや実装したプロトタイプが、そのまま事業部門の本番開発へ直結する構造が生まれます。人財育成だけでは予算を確保しづらいという事情を、事業課題の解決と同時に達成する形で解いた試みでもありました。
3. 事業課題解決型プログラム「AWS Boost Camp!」
3.1 プログラム概要
AWS Boost Camp! は、コニカミノルタの人財強化委員会傘下のソフト・ICT 部会を主管とし CCoE メンバーが運営に参画する形で実施しています。第 2 回 (2025 年度) は 2025 年 10 月にキックオフし、 2026 年 5 月の最終成果報告会までのおよそ半年間にわたって実施されました。
カリキュラムは、前半 3 ヶ月でアーキテクチャ設計、後半 3 ヶ月でプロトタイプ実装を進め、これに並行する形で AWS 認定資格取得を目指した自学自習を AWS Skill Builder や T&C インストラクターによる技術サポートを活用して支援する構造としています。各テーマには、AWS SA と CCoE メンバーが定例レビューおよびアーキテクチャ討議を行い、T&C のインストラクターが個別の学習プラン策定や認定試験対策、テーマ共通のオフィスアワー開催などにて支援する体制を組んでいます。
3.2 AWS と コニカミノルタ社 CCoE の役割分担
AWS Boost Camp! の運営においては、 AWS とコニカミノルタ社 CCoE の役割分担を設計しています。 AWS 側は、SA によるアーキテクチャの議論やベストプラクティスの伝達、最新アップデートも踏まえたソリューションの提案 、T&C インストラクターによる認定試験対策・学習進捗のフォローを担います。一方、コニカミノルタ社 CCoE は、社内のセキュリティ・ネットワーク・運用ガイドラインとの整合を確認した上で、各テーマのアーキテクチャ設計にも参画し、社内事情を踏まえた現実解の提示と、プログラム終了後の自走を見据えた知見の社内蓄積を担います。
なおコニカミノルタの CCoE は固定の所属組織ではなく、各事業部門から有志が参画する組織横断のバーチャル組織です。発足当初は10名弱の規模でしたが、その後幅広い事業部門から有志が加わり、現在は 30 名近くにまで広がっています。 AWS Boost Camp! の運営に CCoE の一部が伴走者として参画することは、 CCoE 自体の運営力強化と次世代の AWS 推進人財の育成にもつながっています。
3.3 第 2 回 ( 2025 年度 ) の取り組みテーマ
本プログラムは 2024 年度の第 1 回から同じ枠組みで実施しています。クラウドを活用してどうシステムを構築するかという点は第 1 回・第 2 回に共通していますが、第 2 回ではそこに機械学習や生成 AI に関連したテーマが大半を占めるようになりました。
今回は、コニカミノルタの 4 つの事業領域から、それぞれ 1 テーマずつが取り組み対象として持ち込まれました。それぞれのテーマはいずれも、各事業部門が実際に推進している事業上の課題であり、プログラム終了後にそのまま本番開発へ繋がる前提で設計しています。
具体的な題材は、生産系データに関する AI SaaS の実現、研究開発部門における機械学習パイプラインの再構築、専門ドメイン向けデータ管理基盤、組織横断の生成 AI 活用基盤など、いずれも事業インパクトの大きい課題です。すでにクラウド上で PoC を進めているものもあれば、一から開発する新規プロジェクトもあり、進度はテーマによって様々でした。
4. 最終成果報告会の模様
2026 年 5 月 22 日、2025 年度 AWS Boost Camp! の最終成果報告会を開催しました。各テーマの参加者・テーマオーナー ( 参加者の上長にあたり、各テーマを持ち込んだ事業部門の責任者 ) ・ CCoE メンバー・運営事務局が一堂に会し、4 テーマの成果発表と質疑応答、フィードバックが交わされました。
4.1 テーマ全体の成果
最終成果報告会では、設計を語るだけでなく、必ず「動くもの」をプロトタイプとして開発しデモで示すことが達成基準となっています。各テーマの発表では、初期構想からプロトタイプ完成までの設計判断の過程と技術選定の理由、成果物のデモが共有されました。前提や制約が事業部門ごとに異なる中、Amazon が実践する顧客起点の開発手法である Working Backwards の考え方に基づいて「解くべき課題」を定義し、複数の選択肢を比較して現実解を選び取り、動作するプロトタイプへと結実させる過程は、座学だけでは得られない実践的なアーキテクト思考を養う機会となりました。
Amazon EC2 ベースで構築していた機械学習システムを、 コンテナ x Amazon SageMaker Pipelines を用いて MLOps ワークフローへと再構築した例。いずれのテーマも、 AWS マネージドサービスを組み合わせたエンドツーエンドの構成をもって最終発表に臨みました。
4 つのテーマを横断して、特に評価したいポイントが 3 つ浮かび上がりました。第一に、Amazon SageMaker AI、Amazon Cognito、AWS Fargate、Amazon Bedrock など AWS の幅広いマネージドサービスを実践的に活用された点です。PoC では Amazon EC2 ベースだったプロジェクトも、マネージドサービスの意義や複数の選択肢のトレードオフを理解した上で設計に落とし込み、実装までを完遂しました。第二に、 AWS 認定試験に向けた学習と実プロジェクトでのアーキテクチャ設計・実装を並行して進められた点です。第 2 回では、プログラムを通じて 7 名が AWS SAA ( AWS Certified Solutions Architect – Associate) に新たに合格し、実務で触れた知識を体系的な学習で補強する学習サイクルが回りました。第三に、CCoE や関係部門との密な連携により、コニカミノルタ独自のポリシーやセキュリティ・ネットワーク観点を設計へ反映できた点です。
特筆すべきは、複数のチームから「AI コーディングエージェントを業務に取り入れる動き」が生まれたことです。 Kiro や Claude Code on Amazon Bedrock、 Amazon Q Developer などを使いこなして従来の数十倍以上のスピードで開発を進められた経験は、参加者の発表でも強調されました。「一週間ほどを見込んでいたタスクが数時間で完了した」といった声からも、AI ネイティブ開発が現場で着実に浸透し始めていることがうかがえます。
4.2 参加者の声
参加者からは次のような声が寄せられました。
「 AWS のアーキテクトとの議論を通して、複数の選択肢からアーキテクチャを選択する際の考え方を学ぶことができた。」
「AWS には便利な選択肢が多いからこそ取捨選択しなければいけないことを実感した。最適なシステムの構築の重要性と難しさを実感した。」
「 Kiro を活用することで、これまでドキュメント調査に費やしていた時間を、本来の設計判断に充てられるようになった。開発のスピードが従来の数十倍になった実感がある。」
「 AI コーディングエージェントを使いこなすことで、ドキュメントの調査も開発も爆速になった。何より『自分が AWS でモノを作れる』という自信がついた。」
これらに共通するのは、「AWS の知識が増えた」というスキルアップにとどまらない、「クラウドでモノを作るうえでの判断軸」を獲得したという点であり、本プログラムが目指してきた「実践的に活かせる人財」の到達像と言えます。テーマオーナーや運営からも、AWS と CCoE の伴走により各テーマで実用に足る成果を形にできたと高く評価され、参加者が今後は各事業部門で先頭を切ってクラウド活用を主導することへの期待が寄せられました。
5. AI ネイティブ開発への移行に向けた今後の展望
2026 年現在、ソフトウェア開発のあり方そのものが大きく変容しつつあります。従来 AI はコード補完などで開発者を支援する役割が中心でしたが、近年では AI コーディングエージェントが自律的にコードを探索・編集・テストするようになりました。これに伴い、エンジニアの役割はコードを一行ずつ書くことから、解くべき課題を定義し、エージェントに与える仕様やルールを設計し、生成された成果の品質を高めながらレビューし、意思決定を下すことへと比重を移しつつあります。この潮流は、コニカミノルタが 2026 年 4 月に発表した中期経営計画「Corporate Plan 2026-2028」が掲げる「AI ネイティブ開発への移行」とも軌を一にしており、本プログラムが今後進化していくべき方向性も、この経営計画と密接に整合する形で検討しています。
私たちは、AI 時代だからこそ人を育てる重要性はむしろ高まっていると考えています。AI エージェントの出力の妥当性を見極めて意思決定につなげるには、クラウドやソフトウェア開発の基礎知識とアーキテクチャ設計の素養が欠かせず、その土台を備えた人が使いこなしてこそ、生産性と品質はともに高まるからです。
このような認識のもと、私たちは現在の AWS Boost Camp! のかたちが完成形だとは考えていません。技術や事業環境、参加者のスキルの変化に応じて、プログラムも柔軟に進化させる必要があります。第 3 回以降に向けては、AWS が提唱する AI-DLC ( AI-Driven Development Lifecycle ) の推進や、Claude Code や Kiro を活用した開発実践の組織的な組込み、CCoE メンバーがより主体的に伴走する設計など、複数の方向性を両社で議論しています。
私たちが見据えているのは、本プログラムを「修了して終わり」にしないことです。力をつけた参加者が、今度はクラウドに不慣れなメンバーを育てる側へ回り、各事業部門のクラウド活用を主導していく。こうして育成と実践のサイクルが自走的に回り続ける体制をつくることが、コニカミノルタが中期経営計画で掲げる持続的成長を、人財の面から支えることにつながると考えています。
「すべての参加者にとって本プログラムが AWS への深い理解と AI ネイティブ開発への自信を得るための最良の機会となること」を目標に、コニカミノルタと AWS はこれからも対話と試行錯誤を続けていきます。
6. まとめ
最終成果報告会で見せた 4 テーマの成果は、 AWS のマネージドサービスを実践的に使いこなす力、認定試験を通じた体系的な知見、そして AI エージェントを駆使した開発スピードの劇的な向上が、各事業部門の現場で確実に獲得されたことを示しています。事業課題そのものを題材に持ち込む事業課題解決型へと本質をアップデートした AWS Boost Camp! は、コニカミノルタの中期経営計画が掲げる人財ビジョンを実現していく上で、その役割をますます大きくしていきます。
最後に、本プログラムを半年間にわたり全力で走り抜けてくださった参加者の皆様、テーマオーナーの皆様、運営事務局の皆様、そして CCoE メンバーの皆様に心から感謝を申し上げます。
執筆者
コニカミノルタ株式会社
Cloud CoE
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吉田 宏樹 | ![]() |
新田 祐士 |
ソフト・ICT 部会
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五寳 匡郎 | ![]() |
西村 有史 |
Amazon Web Services Japan
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ソリューションアーキテクト 森下 裕介 |







