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Amazon Bedrock とロボティクスで目指す「未来の実験室」 ― AWS Summit Japan 2026 の Physical AI ―

本ブログは、コニカミノルタ株式会社と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。

はじめに

2026 年 6 月 25 日、26 日に幕張メッセで開催された AWS Summit Japan 2026 で、コニカミノルタ株式会社 ( 以下、コニカミノルタ ) は「Amazon Bedrock による自然言語駆動型自律実験」を展示しました。自然言語の指示を AI が構造化し、カメラで実験台の状態を確認しながらロボットアームを動かし、結果を電子実験ノートへ戻すデモです。生成 AI、ロボティクス、記録基盤を一つの流れにつなぎ、Physical AI による「未来の実験室」の可能性を紹介しました(図 1)。

図 1 展示した実機デモ。Amazon Bedrock とロボティクスを組み合わせ、「未来の実験室」の可能性を示しました。

1. 研究開発と「未来の実験室」

コニカミノルタは、光学・画像・材料・微細加工の技術を幅広い事業で培ってきました。研究開発では、実験内容を次の判断へつなげる記録も重要です。電子実験ノートと社内ナレッジ共有基盤に、生成 AI の要約・通知を組み合わせ、記録を検索・再利用しやすくしています(図 2)。今回の展示は、この基盤を実験の指示と実行まで広げる試みです。

図 2 電子実験ノートの記録を生成 AI が要約・通知する仕組み。

2. Materials Informatics (MI) を支えるハイスループット実験

MI には十分な実験データが必要です。しかし材料開発は、高粘度材料や粉体、多段工程などを扱うため、既製の自動化設備を適用しにくい場合があります。

「未来の実験室」では、目的別に設計するハイスループット(HT)実験でデータを増やし、MI や生成 AI で次の判断を支援します。記録、実行、解析を循環させ、開発を加速します(図 3)。

図 3 「未来の実験室」の構想。生成 AI とロボットの連携により、発案、計画、実行を支援します。

3. 展示したデモ

来場者が電子実験ノートに「緑色を作ってください」などと入力すると、システムが複数のカラーフィルムから必要なものを選び、ロボットアームが重ね合わせて目標色へ近づけます。カメラが実験台を撮影し、Amazon Bedrock 上の基盤モデルが自然言語と画像からフィルムの種類と順番を判断します。ロボットアームは指定された操作を実行し、その結果を次の判断に利用します。

色づくりは短時間で仕組みを理解できる展示用タスクですが、人が目的を伝え、AI が状態を見て操作を選び、ロボットが実行する閉ループ実験の最小構成になっています。 発展例として、pH の値を見ながら溶液を加え、目標値まで調整する動画も紹介しました。将来は試薬調整、測定、分析、記録へ広げます。

図 4 システム構成。電子実験ノートの指示を Amazon Bedrock が解釈し、Worker PC を介してロボットアームを動かします。

4. 自然言語を安全に物理操作へつなぐ

安全性、再現性、監査性を確保するため、LLM が座標や動作列を直接生成せず、自然言語を構造化された中間表現へ変換します。例えば「緑色を作ってください」という指示を、目標色、利用可能なフィルム、操作候補、停止条件などに分解し、JSON 形式で出力します。座標制御やアクション列は、人が設計した決定論的な制御層が担います(図 5)。

図 5 自然言語から座標データまでの流れ。LLM は構造化と関数選択を担い、後段を検証可能な処理にしています。

存在しない対象や実現できない色を指定された場合は、無理に操作せず停止します。Physical AI では、動作性能だけでなく、止まるべき場面で確実に止まる設計が重要です。

5. 軽量モデルで動かせた理由

Amazon Bedrock 上の Claude Haiku 系モデルを使用しました。LLM の役割を自然言語と画像の解釈、中間表現への変換に絞り、物理制御を決定論的ロジックへ分けることで、軽量モデルでも速度とコストを両立しました。

6. 来場者の反応と開発

製造、化学、通信、商社、メディア、SIer など幅広い業界の方にご覧いただき、自然言語の指示でロボットが動く様子に関心が集まりました。

技術者から特に多かったのは、「LLM が生成した JSON を制御関数や座標へどう変換するか?」という質問です。AI の判断範囲と機器制御の境界に、実装上の本質があることを共有できました。座標を直接指定する試作から、Stack、Pick、Place、Remove などの操作をカプセル化。ここまでを 2 ヶ月ほどで実装し、開発には Kiro CLI をフル活用しました。

7. 研究開発基盤への展開

この展示を Physical AI と呼ぶのは、AI が現実の状態を観察し、目標との差を判断して物理操作を行うためです。ただし、目指すのは一過性のロボットデモではありません。

実験の指示、条件、操作、結果、ログを電子実験ノートへ戻し、検索・追跡できる形で残すことが重要です。再利用可能な記録が、次の仮説検証、品質確認、知財化や論文化を支えます。

自然言語の実験意図を Amazon Bedrock で構造化し、物理操作へつなぎ、結果を記録へ戻す。この循環により、実験室を知識、データ、実行が連携する研究開発基盤へ変えていきます。コニカミノルタには、産業機器のハードウェア技術、光学・画像・材料の知見、クラウド人財、研究開発現場があります。記録、再現性、品質、知財まで横断して設計できる点が強みです。

8. 今後の展望

今後は、複数のロボットアーム、搬送ロボット、電子天秤、ピペット、pH メーター、分注機、測定装置などとの連携を検討します。自動化自体を目的にせず、HT 化する実験と蓄積するデータの粒度を設計します。装置、材料、データサイエンス、クラウド、現場運用を横断し、実験をデータ駆動型へ変えます。

実運用では、判断と結果を検証できるログが不可欠です。安全性、品質、知財、監査性を考慮し、AI、ロボット、人が担う範囲と、記録する情報を明確にします。

まとめ

今回の展示は、自然言語で書かれた実験意図を生成 AI が構造化し、ロボットの物理操作へ変換し、結果を実験記録へ戻す最小構成を示したものです。

生成 AI の価値はチャット画面の中だけにとどまりません。記録、クラウド、AI、ロボティクスがつながることで、実験室は知識を蓄え、その知識から次のデータを生み出すシステムへ変わります。

コニカミノルタと AWS は、今後も対話と実装を重ね、生成 AI とクラウドが研究開発にもたらす可能性を探っていきます。

図 6 AWS Summit Japan 2026 で展示を担当したコニカミノルタメンバー。


執筆者

コニカミノルタ株式会社

野場 考策 技術開発本部 データサイエンスセンター データジェネレーション部
野場 考策
室田 和敏 技術開発本部 データサイエンスセンター データジェネレーション部
室田 和敏
成毛 章容 技術開発本部 デバイス技術開発センター マテリアルサイエンス部
成毛 章容

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池田 拓生 ハイテク&ヘルスケア事業本部 アカウントマネージャー
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森下 裕介 ソリューションアーキテクト
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