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AWS Transform for VMware を使用して VMware ワークロードを移行およびモダナイズする
本稿は、2025 年 7 月 8 日に AWS Architecture Blog で公開された Migrate and modernize VMware workloads with AWS Transform for VMware を翻訳したものです。
2025年5月15日、AWS は画期的なソリューションである AWS Transform for VMware を発表しました。この革新的なサービスは、クラウド移行における長年の課題に正面から取り組み、AWS クラウドへの簡素化され効率的な移行の新たな時代を切り開きます。手作業を大幅に削減し、重要な VMware ワークロードの移行を加速することで、AWS Transform for VMware は、組織がクラウドへのアプローチを革新することを目指しています。
一般提供開始の発表以来、AWS Transform for VMware は業界全体で注目を集めており、組織はその機能を活用して VMware のワークロードの移行とモダナイゼーションの取り組みを加速したいと考えています。この革新的な技術の詳細を掘り下げていく中で、 AWS Transform for VMware が移行を簡素化するだけでなく、クラウド導入とデジタルトランスフォーメーションの実態を再形成していることを明らかにします。
VMware 移行の課題
企業のワークロードをクラウドに移行することは、単なる技術的な課題ではありません。それは、ビジネス変革、精度、スピード、そして最小限の中断です。長年にわたる確立された運用プロセスは、文書化が不十分な構成、一貫性に欠けるセキュリティプラクティス、そして暗黙知への強い依存を伴う複雑な環境を作り出すことが多くあります。技術チームは、これらの変革プロジェクトを実行しながら、複雑なアプリケーションの依存関係を把握し、複数のステークホルダー間で調整を行い、ビジネスの継続性を維持しなければなりません。包括的な文書化の欠如と、システム間の依存関係に対する明確な理解の不足は、頻繁な移行期間の延長やプロジェクトリスクの増加につながります。さらに、進行中の運用と移行活動のバランスを取る必要性も課題です。適切な知識の移転を実現することは、これらの重要な取り組みにさらに複雑さを加えます。
ソリューションの概要
AWS Transform for VMware が、アプリケーションのディスカバリーを簡素化し、ネットワーク変換を自動化し、包括的なアーキテクチャを通じて複雑な移行をオーケストレーションする方法について、以下の図で見ていきましょう。
これらの機能がどのように連携するかを理解するために、アーキテクチャの各構成要素を調べてみましょう。
効率化されたディスカバリーとアセスメント
この旅は、VMware 環境の徹底的なディスカバリーとアセスメントから始まります (1)。AWS Transform for VMware (4) は複数のディスカバリー方法をサポートしています。1つの選択肢は、VMware インベントリ収集用の RVTools です。VMware NSX を実行しているお客様向けには、オプションで import/export 機能があります。さらに、AWS Application Discovery Service は、移行のためのデータと依存関係を収集する、エージェントベースおよびエージェントレスの両方のディスカバリーオプション (2) を提供しています。
インベントリ検出 (5) は、ソース環境から重要なデータを収集し、AWS Migration Discovery アカウント (7) 内にある Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) バケット (12) に安全に保存します。このデータは、十分な情報に基づいた移行計画の基礎となり、AWS Application Discovery Service (15) によって、AWS Migration Planning アカウントでさらに処理されます。AWS Transform は、これらのサービスと連携し、移行の進捗状況を追跡し、サーバーのインベントリと依存関係データを収集するための単一の場所を提供します。これは、アプリケーションの適切なグループ化とウェーブプランニングの成功に不可欠です。
インテリジェントなネットワーク変換とウェーブプランニング
環境を包括的に理解することで、AWS Transform for VMware は、次の重要なフェーズへ移行します。ネットワーク変換機能 (19) は、ターゲットネットワークインフラストラクチャを設定するために、AWS CloudFormation テンプレート (13、26) の作成を自動化します。これらのテンプレートにより、クラウド環境がソース設定を密接に反映することを確実にし、移行のセットアップを簡素化します。
一方、ウェーブプランニング機能 (6) は、高度なグラフニューラルネットワークを使用してアプリケーションの依存関係を分析し、最適な移行ウェーブを計画します。これにより、複雑なポートフォリオおよびアプリケーションの依存関係分析が最小限に抑えられ、移行準備の整ったウェーブプランが提供され、スムーズな移行を実現します。
強化されたセキュリティとコンプライアンス
セキュリティは移行プロセス全体を通じて最優先事項です。AWS Key Management Service (AWS KMS) (8、16、26) は、保存されたデータ、会話履歴、および成果物に対して堅牢な暗号化を提供します。デフォルトでは、AWS マネージドキーが使用され、追加の制御のためにカスタマーマネージドキーを使用するオプションがあります。
AWS Organizations (9) は、複数の AWS アカウントにわたる一元管理を可能にし、AWS CloudTrail (14、26) は、完全な監査証跡のために API アクティビティの取得と記録をします。アクセス制御は、AWS Identity and Access Management (IAM) (26) を通じて管理され、AWS アカウント全体で一元化されたアクセス管理を提供します。
Amazon CloudWatch (10、26) は、管理アカウント内の AWS Transform サービスのアクティビティ、リソース利用状況、および運用メトリクスを継続的に監視し、移行プロセス全体を通じて完全な可視性と制御を提供します。AWS Identity Center (11) は、移行に関与するすべての AWS アカウントに一元的なアクセス管理を提供することで、セキュリティをさらに強化します。
組織的な移行実行
移行を実行する時が来たら、AWS Transform はさまざまな AWS ツールとサービス (20) と連携し、エンドツーエンドの移行をオーケストレーションします。AWS Application Migration Service (25) は、綿密に計画されたウェーブとグループ化に基づいて、ソース環境から AWS Migration Target Account (18) の Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンス (21) にサーバーを複製します。
AWS レプリケーションエージェント (2) は、AWS Application Migration Service と連携し、効率的で信頼性の高いデータ転送を実現します。Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) (21) は、移行された仮想マシンに必要なストレージを提供し、最適なパフォーマンスとスケーラビリティを実現します。
柔軟なネットワーク構成
AWS Transform for VMware は、異なる要件に対応する2つのネットワークモデルを提供します:
- ハブアンドスポークモデル – AWS Transit Gateway (23) は、Amazon Virtual Private Clouds (Amazon VPC) に共有 NAT ゲートウェイを持つ中央ハブ VPC を介して接続します。このモデルは、一元管理および共有サービスに最適です。
- 分離モデル – 各 VPC は接続性が確立されていない状態で独立して動作します。このアプローチは、既存の AWS ネットワークインフラストラクチャを持つお客様向けに設計されており、新しい VPC を既存のネットワークトポロジーに手動で接続することを可能にします。
AWS Transform によって作成された VPC (22) は、オンプレミスのネットワークセグメントと一致し、シームレスな移行を提供します。NAT ゲートウェイ (24) は、プライベートサブネットにアウトバウンドインターネットアクセスを提供し、セキュリティを維持しながら必要な接続性を可能にします。ハブアンドスポークアーキテクチャでは、ハブ VPC の一元化 NAT ゲートウェイを複数のスポーク VPC に提供でき、コストの最適化と管理の簡素化を実現できます。分離された VPC 展開の場合、インターネットアクセスを必要とする各 VPC 内で専用の NAT ゲートウェイをプロビジョニングする必要があります。すべての場合において、NAT ゲートウェイを通る Egress トラフィックの流入を可能にするために、ルートテーブルを設定する必要があります
完全なセットアップ手順と要件については、AWS Transform ユーザーガイドを参照してください。
追加の考慮事項
AWS Transform for VMware のディスカバリーワークスペースは、世界中でご利用いただけます (3)。サポートされているリージョンに関する最新の情報については、AWS Services by Region (17) を参照してください。
移行プロセス全体を通じて、AWS Migration Discovery アカウントと AWS Migration Target アカウントの両方の主要な移行成果物は Amazon S3 バケット (12、26) に格納されます。これらには、インベントリデータ、依存関係マッピング、ウェーブプラン、アプリケーショングループ化、同様に Infrastructure as Code templates (AWS CloudFormation および AWS Cloud Development Kit)、およびウェーブごとの移行計画が含まれます。
お客様のメリット
AWS Transform for VMware は、重要な利点を提供します:
- 手作業の手間を削減 – 自動化により人的ミスを最小限に抑え、貴重な IT リソースを解放します
- 精度の向上 – AI 主導の依存関係マッピングとウェーブプランを活用でき、最適な移行戦略を立てられます
- コラボレーションの強化 ― 一元管理とトラッキングにより、チーム間の連携が向上します
- コスト最適化 – インスタンスの適切なサイズと AWS の柔軟な価格設定モデルを活用して、即時かつ長期的なコスト削減を実現します
- 将来性 – AWS クラウドサービス上で、継続的なモダナイゼーションとイノベーションの機会を開きます
移行ソリューションを実装する際には、常に組織のセキュリティ要件、コンプライアンス義務、および AWS セキュリティベストプラクティクスを確認し、遵守してください。詳細なセキュリティガイダンスについては、AWS セキュリティドキュメントと組織のセキュリティチームに相談してください。
料金
AWS Transform は、エージェント AI 機能により、VMware ワークロード向けの移行およびモダナイゼーションプロジェクトを加速します。現在、アセスメントと変換を含む主要機能を無料* で AWS のお客様へ提供しています。これにより、前払い費用なしで、移行とモダナイゼーションの道のりを迅速化できます。
*無料とは、AWS Transform サービス自体を指します。移行時に使用する AWS サービスおよびリソースには標準料金が適用されます。
まとめと次のステップ
AWS Transform for VMware は、組織に VMware の移行とモダナイゼーションの複雑さを克服する力を与えます。包括的で自動化されたアプローチを提供することで、AWS クラウドへのより高速で信頼性の高い移行を可能にします。この新しいサービスは、変化する VMware の環境を自信を持って進むために必要なツールと機能を提供します。
探究したアーキテクチャは、AWS Transform for VMware が主要な課題にどのように取り組むか示しています:
- ディスカバリーおよびアセスメントプロセスを効率化
- ネットワーク変換とインテリジェントウェーブプランニングの自動化
- 最小限の混乱で移行実行をオーケストレート
- 移行全体を通じたセキュリティとコンプライアンスの向上
- 一元管理と監視の提供
- 多様な要件に対応できる柔軟なネットワークオプションの提供
VMware 移行の旅を加速する準備はできましたか? AWS Transform for VMware 製品ページにアクセスして、詳細をご確認いただき、今日から始めましょう。AWS Transform for VMware のインタラクティブデモをご確認ください。VMware NSX 環境からネットワーク構成をエクスポートする場合は、Import/Export for NSX によるネットワーク構成データのエクスポートも参照してください。私たち専門家チームが、お客様の移行およびモダナイゼーションの取り組みをガイドし、AWS クラウドの可能性を最大限に引き出すお手伝いをいたします。
著者について
この投稿の翻訳は Solutions Architect の田澤が担当させていただきました。原文記事はこちらです。