Amazon Web Services ブログ
AWS Well-Architected Operational Readiness Review lens の発表
Amazon の最高技術責任者 (CTO) である Werner Vogels は、「10 Lessons from 10 Years of Amazon Web Services ~ AWS10年に学ぶ10のレッスン」の中で、「障害は避けることができないもので、時間が経てばすべてのものはいずれ壊れる」と語っています。これを念頭に置いて、Amazon Web Services (AWS) では、障害から学ぶことで回復力のあるサービスの構築と運用に努めています。
このために、Correction of Errors (COE) プロセスと呼ばれるクローズドループなメカニズムを使用しています。COE は、特定のワークロードで発生したイベントが、そのワークロードで再び発生するのを防ぐように設計されています。ただし、Operational Readiness Review (ORR) プログラムを使用して、障害イベントから学んだことをワークロード全体に適用しています。ORR は、AWS における運用上のインシデントから得た知見を、ベストプラクティスのガイダンスに沿って厳選された質問集としてまとめたものです。これにより、ビルダーはアジリティとスピードを犠牲にすることなく、可用性が高く回復力のあるシステムを構築できます。ORR には、リスクを明らかにし、サービスチームがベストプラクティスを導入する際の指針となるような質問が用意されています。ORR は基本的に、運用上の優秀性 (Operational Excellence) を達成するために、チームがワークロードにおけるオペレーショナルリスクを自己評価するために使用するチェックリストです。チェックリストは多くの業界で一般的ですが、よく知られている例は航空業界で、パイロットは飛行前に毎回使用するプリフライトチェックリストを用意しています。AWS は ORR を使用して、世界中の主要な公共部門のお客様の立ち上げを支援してきました。
2023年3月22日、AWS は AWS Well-Architected Tool のカスタムレンズとして ORR のリリースを発表しました。これは、アプリケーションとワークロードの状態をアーキテクチャのベストプラクティスに照らして確認し、改善の機会を特定し、時間の経過とともに進行状況を追跡できるように設計されています。ORR プログラムを使って Well-Architected Tool のカスタムレンズを作成し、ここに自社のビジネス、文化、ツール、ガバナンスルールに特化した Lessons Learned を盛り込むことで、Well-Architected レビューを補完することができます。
AWS Well-Architected Framework を用いることで、お客様が AWS でシステムを構築する際に下した意思決定の長所と短所を理解することができます。このフレームワークを使用することで、信頼性、安全性、効率性、費用対効果の高いシステムをクラウドで設計、運用するためのアーキテクチャ上のベストプラクティスを学ぶことができます。これにより、アーキテクチャをベストプラクティスに照らして一貫して測定し、改善すべき領域を特定できます。Well-Architected Framework に沿ったシステムであれば、お客様のビジネスが成功する可能性が大幅に高まると私たちは考えています。
Operational Readiness Review (ORR) カスタムレンズのインストール方法
ORR カスタムレンズをインストールし、アカウントのワークロードに適用することができます。また、カスタムレンズを他の AWS アカウントや AWS Identity and Access Management (IAM) ユーザーと共有することもできます。インストール方法を手順に沿って説明します。
1. AWS マネジメントコンソールにサインインし、AWS Well-Architected Tool Console を開きます。
2. ORR カスタムレンズ の JSON ファイルを GitHub からダウンロードします。ORR カスタムレンズ JSON ファイルには orr-{version}-PUBLISHED.JSON という名前が付いています。{version} 番号が最も大きいファイルをダウンロードしてください。
3. Well-Architected Tool から、左側のナビゲーションメニューで [カスタムレンズ] を選択します。
図1. Well-Architected Tool ダッシュボードで [カスタムレンズ] を選択します。
4. [カスタムレンズを作成] ボタンを選択します。
図2. [カスタムレンズの作成] ウィンドウ
5. [カスタムレンズファイル] で、[ファイルを選択] を選択し、ステップ 2 でダウンロードした JSON ファイルをアップロードします。その後、[送信] を選択します。
図3. 自分が所有しているカスタムレンズのウィンドウ。
6. [Well-Architected Tool カスタムレンズ] ページで、生成した新しいカスタムレンズを選択します。
図4. カスタムレンズ設定内の AWS Operational Readiness Reviewフィールド
7. エクスペリエンスをプレビューするか、レンズを公開して既存および新規のワークロードで使用するか、あるいは他の AWS アカウントや IAM ユーザーとレンズを共有するかを選択できます。
8. カスタムレンズリストから、対象のカスタムレンズをチェックします。次に、[アクション] を選択し、[レンズを公開] を選択します。
図5. レンズの公開
9. [バージョン名] フィールドに、バージョン変更の固有の ID を入力します。この値は最大 32 文字で、英数字とピリオド (「.」) のみを含めることができます。
図6. 公開バージョン名を選択します。
10. [公開] を選択してカスタムレンズを起動します。
カスタムレンズが公開されると、そのカスタムレンズは [公開済み] ステータスになり、複数のアカウントで共有したり、複数のワークロードで使用したりできます。
まとめ
Operational Readiness Review (ORR) を実施することで、AWS で得た知識とベストプラクティスを活用して、自社のワークロードにおける運用リスクを軽減できます。このチェックリストはリスクの発見に役立ち、お客様がワークロードにレジリエンスを実装しようとする際に、サービスチームが緩和策を講じる際に役立ちます。
ORR に加えて、Well-Architected Framework の他の柱に基づいてレビューを実施し、オペレーショナルエクセレンス、セキュリティ、パフォーマンス効率、信頼性、コスト最適化、持続可能性のための基本的なベストプラクティスをワークロードが採用しているかどうかを確認することをお勧めします。
イノベーション実現までの道のりにおいては失敗は避けられないかもしれませんが、AWS コミュニティにおける多くの知見を活用し続けることが有用です。もし、ベストプラクティスや ORR に関する質問で、他の人のためになりそうなものを見つけたら、ORR の Github リポジトリに issue として記録していただけると幸いです。
その他のリソース:
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翻訳はソリューションアーキテクト河角が担当しました。原文はこちらです。