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ベストプラクティス: Amazon Connect での通話録音の管理
競争の激しい今日の世界でビジネスを成功させるには、優れたカスタマーサービスを提供することが不可欠です。コンタクトセンターは、多くの場合、主要な顧客接点の一つであり、通話録音は、企業が可能な限り最高の顧客体験を提供するのに役立つ貴重なツールです。インサイトに富んだ情報源を提供することで、次のような複数の目的を果たすことができます。
- 品質保証: 通話録音は、エージェントのカスタマーサービスの効果を信頼できる方法で評価します。エージェントのパフォーマンス、社内基準との整合性、顧客満足度などの要素を評価するために利用できます。
- トレーニング: 通話録音は、新しいエージェントが様々なシナリオに慣れるための貴重なトレーニングリソースとなるだけでなく、既存のエージェントが自分のパフォーマンスを自己評価したり、マネージャーが対象を絞ったトレーニングプログラムを構築したりするための貴重なトレーニングリソースにもなります。
- インサイト: 通話録音は、顧客の行動や感情に関する貴重なインサイトを提供するため、企業は顧客のフィードバックやレビューを収集したり、繰り返し発生するテーマを特定したり、マーケティングイニシアチブの影響を評価したりすることができます。
- コンプライアンス: 通話録音は、顧客とのやりとりを記録し、会社の方針や手順への順守を保証することで、コンタクトセンターが規制要件を満たすのに役立ちます。
通話録音には数多くの利点がありますが、様々な管理上の課題を引き起こすこともあります。コンタクトセンターが生成する通話録音が増え続ける中、大量の蓄積データを費用対効果の高い方法で管理することが難しくなる場合があります。さらに、いくつかの業界では、通話録音の保存と維持に関して厳しい規制が課せられています。これは、特に通話録音を長期間保存することを義務付けられている企業にとって、大きな課題となる可能性があります。さらに、企業にとっては、通話録音や保有する機密情報のセキュリティと保護を確保することも不可欠です。
Amazon Connect にはフルマネージド型のネイティブ通話録音機能があり、お客様は最小限の設定とオペレーション労力で、エージェントと顧客との会話を録音して安全に保存できます。この投稿では、コスト最適化、セキュリティ、データ戦略を含む、前述のよくある課題に対処するために、Amazon Connect の通話録音に適用できる追加のベストプラクティスについて説明します。取り上げるトピックには以下が含まれます。
- 通話録音の偶発的または悪意のある削除からの保護
- 通話録音ライフサイクルの理解と管理、およびコスト最適化アプローチ
- 通話録音アクセスの監査
1. 通話録音の偶発的あるいは悪意のある削除からの保護
通話録音は Amazon S3 にネイティブに保存され、99.999999999%(11 個の「9」)のデータ耐久性を備えています。提供されている高い耐久性に加えて、各企業にとっては明確なアプローチを取り、これらの通話録音を悪意のあるまたは偶発的な削除や上書きから保護するための安全対策を講じることがベストプラクティスです。次のような様々なアプローチを使用できます。
- IAM とバケットポリシー。通話録音バケットに適用されるバケットポリシーやユーザーポリシーはすべて、最小権限の許可モデルに準拠していることを確認してください。既存のポリシーを定期的に見直し、不要になったポリシーはすべて削除してください。お客様は IAM の最終アクセス情報を利用して、レビューの際に役立てることができます。
- Amazon Connect のユーザーアクセス許可。 Amazon Connect インスタンス内の設定済みユーザーに、それぞれの役割と責任に適したアクセス権限が付与されていることを確認します。アクセス権限の範囲を必要なものだけに絞り込むのがベストプラクティスです。
- バックアップ。従来的に通話録音のバックアップを取り、保存要件に従って保存します。 AWS Backup for Amazon S3 は、AWS サービスのデータ保護を簡単に一元化および自動化できるフルマネージドサービスで、このプラクティスを簡素化するために活用できます。
- 通話録音に対する S3 オブジェクトロック。多忙なコンタクトセンターでは、通話録音がすぐに蓄積されてしまいます。データのコピーを余分に作成して保存する従来型のバックアップ方法ではストレージコストが増加し、大規模になると非常に高額になる可能性があります。通話録音用バケットに Amazon S3 オブジェクトロックを組み合わせることは、一定期間の間に通話録音を偶発的または悪意ある削除から守るための費用対効果の良い代替方法となり、さらに Write-Once Read-Many (WORM) ストレージを利用することで無期限に守ることもできます。さらに、オブジェクトロックは使用しても追加コストが発生しません。詳細については、Amazon S3 ユーザーガイド と Amazon Connect 管理者ガイド を参照してください。
2. 通話録音ライフサイクルの理解と管理
一般的に、コールセンター環境において、通話録音はライフサイクルの初期段階、つまり品質保証、エージェント評価、トレーニングと開発の一環として録音された直後に、最も頻繁にアクセスされます。通話録音が古くなるにつれてアクセス頻度は低下し、一部の録音だけが特定の長期にわたる顧客からの問い合わせや内部調査のサポートや、コンプライアンスと監査の目的のためにアクセスされます。
通話録音が典型的にどうアクセスされるかと、そのアクセスが通話録音の存続期間を通じてどのように変化するかを理解することで、大幅にコスト最適化できる可能性があります。デフォルトでは、通話録音は頻繁にアクセスされるデータ用に設計された、可用性と耐久性に優れたストレージクラスに保存されます。古くてアクセス頻度の低い通話録音を低コストのアーカイブストレージクラスに移行すると、同等に高レベルなデータ耐久性と可用性とアクセス時間を維持しながら、ストレージコストを大幅に削減できます。
Amazon S3 ライフサイクルポリシー では、個々の通話録音の経過期間に基づいて通話録音を別のストレージクラスに移動する自動化されたメカニズムが提供されています。例えばお客様は、あらかじめ決められた期間を過ぎた通話録音を、即時アクセスできる低コストのアーカイブストレージクラスである Amazon S3 Glacier Instant Retrieval に移動できます。取り出しリクエストに対する Glacier Instant Retrieval の料金には注意が必要ですが、典型的には大幅なストレージコストの削減幅がこれを上回ります。アクセスパターンが異なるお客様も、使用するストレージクラスを要件に合わせて調整することで同様のアプローチをとることができます。
3. 通話録音アクセスのロギングと監査
最高レベルのセキュリティと監視を確保するには、通話録音へのアクセスに対して包括的なロギングと監査のアプローチを実装することが重要です。これにより不正アクセスを検出して防止できるだけでなく、録音にアクセスしたユーザーやアクセス日時、アクセス元の場所を明確かつ検証可能な形で記録できます。この情報は、コンプライアンス監査に使用できるだけでなく、セキュリティ調査の際にも役立ちます。
以下のいずれかのアプローチを使用することで、お客様は通話録音バケット内のすべてのアクセスを簡単に記録、監査、把握できます。
- AWS CloudTrail を使用して Amazon S3 API 呼び出しを記録する。 AWS CloudTrail はユーザーやロール、AWS サービスから実行されたアクションの記録を提供するサービスです。 CloudTrail ログには、ユーザーが再生のために通話録音をいつ取得したかなど、実行された API 呼び出しに関する詳細が含まれます。サーバーレスのインタラクティブクエリサービスである Amazon Athena を使用すると、お客様は標準 SQL を使用してこれらのログを素早く分析し、貴重なインサイトを得ることができます。 Athena ユーザーガイドはすぐに使い始めるためのステップバイステップの手順を提供しています。
- サーバーアクセスログを使用してリクエストを記録する。 Amazon S3 サーバーアクセスログは、通話録音バケットに対するリクエストの詳細な記録を提供できます。こちらも Amazon Athena により標準 SQL を使用してログを分析できます。こちらのナレッジ記事では、すぐに使い始めるためのサンプルクエリを含むステップバイステップガイドを提供しています。
こちらのリソースでは、上記のロギングオプションに関する情報を提供し、それぞれの違いを取り上げて最適な方法を判断しやすくしています。要件によっては両方を組み合わせることも可能です。
結論
このブログでは、Amazon Connect での通話録音の管理に関する一連のベストプラクティスを紹介しました。まず、偶発的および悪意のある削除から通話録音を保護するための様々なアプローチとして、アクセス許可、バックアップ、オブジェクトロックなどを確認しました。続いて、通話録音のライフサイクルと、適切なストレージクラスを活用してコストを最適化する方法を検討しました。最後に、通話録音へのアクセスを記録および監査するための 2 つの簡単な方法として、AWS CloudTrail や S3 サーバーアクセスロギングの使用方法と、Amazon Athena を使用してこれらを迅速に分析して貴重なインサイトを得る方法について詳しく説明しました。
次のステップ
通話録音のさらなる最適化についてより詳しく知りたい場合は、次のブログ記事「Amazon Connect 通話録音のアーカイブコストを最適化するためのサーバーレスアーキテクチャ」と関連するコードリポジトリをご覧になることをお勧めします。
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※訳注 オンラインイベントは2023年4月26日に開催されました。現在はイベントをオンデマンド配信でご覧いただけます。
翻訳はソリューションアーキテクト遠藤が担当しました。原文はこちらです。