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AWSが支えるCOVID-19との闘い①──LINEパーソナルサポートプロジェクトは、なぜAWSクラウドでなければならなかったのか?―発案者・宮田裕章教授に訊くAWSの魅力

世界的に甚大な災禍をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。日本では当初、感染経路の追跡と水際対策を徹底してきましたが、市中感染が拡大するにつれビックデータを活用した感染防止のプロジェクトが進行しました。基盤として活用されたのはAWSクラウドです。なぜこのプロジェクトにAWSクラウドが必要とされたのでしょうか? 今回は、プロジェクトの発案者である宮田裕章教授に、当社の執行役員 宇佐見 潮がお話を伺いました。

感染拡大防止には、ビッグデータのリアルタイム解析が不可欠

振り返れば、2020年1月15日に国内での最初の新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、3月下旬からは大都市圏を中心に感染が急速に拡大。これを受けて国では、4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に対し緊急事態宣言を発出し、4月16日にはその対象を全国に拡大しました。

当初はクラスターを中心に、検査数を絞りながらの対策が功を奏していましたが、感染が拡大し、感染経路の把握が難しくなるのを見越してあるプロジェクトが進められました。それが、LINEを活用した「新型コロナ対策パーソナルサポート(行政)」です。

このプロジェクトの発案者であり展開を牽引してきた立役者が、慶應義塾大学医学部でデータサイエンス、科学方法論を専門とされている宮田裕章教授です。

宮田教授自身、これまでは感染症分野にほとんどかかわってこられなかったといいますが、2月中旬、ダイヤモンド・プリンセス号の船内で感染が拡大し、首都圏に感染者が増えだした際には新型コロナ対策に強い関心を寄せるようになられたといいます。

「これまでの感染対策というのは、症状が急激に表れている患者治療と水際での封じ込めに主眼が置かれていましたが、感染が市中に広がってきて、感染経路が追跡できなくなったときに、PCR検査で陽性者判定された患者の外側で何が起こっているか、その実態を把握しなければ有効な対策を講じることはできません。それには、必要なデータを速やかに収集し、その分析を行って、有効な対策につながる洞察を得ていくことこそが不可欠だと考えました」(宮田教授)。

ユーザーに価値を提供する仕組みでなければ成り立たない

そこで、宮田教授は、自身が顧問を務めている神奈川県へ働きかけ、3月5日には早くも、県の公式LINEアカウント「新型コロナ対策パーソナルサポート(行政)」が開設されました。これは、県民がLINEを通じて自らの状態を入力することで、自身の状態に合わせた新型コロナウイルスに関する情報が得られるというサービスです。

神奈川県のLINE公式アカウントと友だちになり、発熱しているか、咳などの症状が出ているかなど体調を入力いただくと、それにあわせ診療の必要性や地域の保健所などの連絡先などを提供するというもの。集めたビッグデータを分析し、例えば発熱者が増える傾向にある地域やリスクなどを予測し、行政側で対策を講じる仕組みです。

「分析の精度を保つには、データ量が必要です。そのため、まずはサービスを使ってもらえなければ話になりません。ユーザーに価値を提供できる仕組みでなければなりませんでした。当然UX(ユーザーエクスペリエンス)には非常に力を入れましたし、集めたビッグデータを迅速に分析して、対策に反映するためにはオンプレミスの選択肢はなく、クラウドベースでなければなりませんでした」と宮田教授は振り返ります。

国内に膨大なユーザーを有するLINEは、そうした全国展開を目指したサービスのフロントエンドを担うシステムとして、使ってもらえる仕組み作りの観点からまさにうってつけだったと言います。

一方、サービスのバックエンドにあって、収集したセンシティブなデータを格納し、分析に供するための基盤には、AWSにお声がけいただきました。「スピード感はもちろん、セキュリティ対策、リスク管理などに要する作業負荷などを考え合わせれば、AWSクラウドがまっさきに思い浮かんだ」と宮田教授は振り返ります。

結果、仕組みとしては大きく2つのシステムが稼働しています。サービスを提供するパーソナルサポート部分、そしてその取得したデータ転送を受け、分析するための慶應義塾大学管理下のプラットフォームです。双方基盤としてAWSクラウドを活用いただいています。

AWSクラウドが選ばれた理由

サービスを支えるクラウドインフラとして我々にご相談いただいた理由として宮田教授は、いくつかのポイントを挙げています。

まずは、「エンジニアフレンドリー」なところがAWSの大きな魅力だったといいます。「私自身、これまで様々なデータ活用のプロジェクトに携わり、エンジニアの方々と共創する中でシステム構築の容易さにおいて、エンジニアの方々から絶大な支持を獲得しているのがAWSでした。そのほかにも、セキュリティ面や堅牢性、そして何よりもクラウドサービスとしてのグローバルでの圧倒的な存在感などもあって、AWSを最優先の選択肢とすることは必然だったといえます」と宮田教授は強調します。

宮田教授はまた、AWSの意思決定や構築に際しての「スピード感」も高く評価頂きました。「プロジェクトへの協力をAWSさんに求めたのが2月24日のこと。1時間後には承諾のお返事をいただけて、非常に驚きました。」(宮田教授)。

というのも、ちょうど宮田教授からお声がけをいただいた際に、当社では世界の各拠点の幹部の間で、コロナ禍を乗り越えるための支援の検討を進めているところでした。当社としてコロナ禍対策の領域で、わが国社会に対して速やかに貢献を果たしていきたいとの思いから、お声がけいただいた1時間後には受諾の旨の返答となったのです。

「AWSさんに感じるのは、クラウドを基点にしたコミュニティを形成する上でとてもフェアでニュートラルなことです。実はこれはこれからのデータ駆動型の時代には非常に重要な点になると考えています」(宮田教授)。

次回以降、本プロジェクトにおけるデータ解析の目的、システム概要、分析結果などをご紹介していきます。第2回のブログでは、主に慶應義塾大学の研究室において、どのような課題を解決しながらデータ分析を行い、どのような成果をあげたかを紹介します。第3回目では、より具体的に、どのような要件の下でAWS環境上にデータ解析基盤を構築し運用に入っていったかを、解析のご支援に関わったIQVIA ジャパン様とAWSの担当者たちにより解説いたします。そして最後に第4回目では、一連のプロジェクト全体での成果、さらには宮田教授が指摘するデータ駆動型社会の今後のビジョンなどについて、改めてご紹介します。

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このブログは、 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授 宮田裕章氏へのインタビューを、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 執行役員 パブリックセクター 統括本部長の宇佐見 潮が取材・執筆を担当しました。

今後とも日本の公共部門ブログ(日本語)やウェブサイト、又AWS 公共部門ブログ(英語版)等 AWS の最新ニュース・公共事例をぜひご覧いただき、デジタル化の推進にお役立ち頂ければ幸いです。

AWSが支えるCOVID-19との闘い ブログシリーズ

①LINEパーソナルサポートプロジェクトは、なぜAWSクラウドでなければならなかったのか?
発案者・宮田裕章教授に訊くAWSの魅力

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/covid-19_response1_profmiyata/

②科学的知見を社会に発信ープロジェクト分析リーダ・慶應義塾大学 野村准教授に訊く舞台の裏側

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/covid-19_response2_profnomura/

③刻々と変わる可視化ニーズをAWSクラウドでどう実現したか?― IQVIAジャパンに訊くELT処理・BIダッシュボードの実装・運用

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/covid-19_response3_iqvia/

④宮田裕章教授が語る「データ駆動型社会」という未来―「誰一人取りこぼさない」を実現するためのAWSの役割とは?

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/covid-19_response4_profmiyata/

番外編 AWSとLINEが推進する3つのDX支援~企業のDX、自治体のスマートシティ、医療ICTの社会実装~

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/covid-19_responseextra_line/

公共機関における AWS 導入のためのお役立ちサイト

https://aws.amazon.com/jp/government-education/worldwide/japan/