Amazon Web Services ブログ
中堅中小企業がデータストレージをクラウド化する4つの理由
(この記事は、Four Reasons Why Small and Medium Businesses Are Moving Data Storage to the Cloud を翻訳したものです。)
私たちを取り巻く世界は、驚異的なスピードでデジタル化が進んでいます。人々はリモートワーク化を進め、企業は新しいテクノロジーを導入して、顧客との信頼関係を築き、新たな機能を開発し、生産性の向上を図っています。
この第4次産業革命の進展に伴って、私たちが作成するデータは驚異的なスピードで増加しています。IDC によると、アジア太平洋・日本(APJ)地域は、世界で最も急速にデータ量が増大している地域の1つです。APJ 地域で生成されるデータは、2018年のわずか 5.9ZB から、2025年には 33.8ZB に増加する見込みです。しかし、多くの企業、特に中小規模の企業にとって、増大しつづけるデータの管理は悩ましい問題です。
私は、アジア太平洋地域と日本の創業者やビジネスリーダーと会話する際、事業継続に関する懸念、特にデータセキュリティ、ストレージ、レジリエンスに関する懸念がしばしば話題になります。このブログでは、革新的な企業がコストや運用負荷を抑制しながら、どのようにデータの保存、管理、保護を行っているかについてお伝えしたいと思います。
中堅中小企業で増加するクラウドデータストレージ
日々生成されるデータ量の増大に対応するため、企業は今、クラウドの利用にシフトしています。2021年では、オンプレミス環境に保存されるデータは 30%、クラウド上に保存されるデータは 70% です。ストレージとコンピュート・インフラへの支出は、2021年から 2026年にかけて 14% 以上の年平均成長率で増加し、1450億米ドルを突破すると予測されています。
クラウドは、必要に応じて拡張・縮小が可能なストレージ容量を、即座に、かつ手頃な価格で提供します。その際、インフラや設備への新たな投資は必要ありません。またクラウドでは、データとシステムの冗長性の確保は自動的に行われます。許可されたユーザーおよびアプリケーションに対する、データへのアクセスを常に保ち続けることができます。
以降4つのセクションにわたって、クラウドベースのストレージと保護を採用した中堅中小企業を取り上げ、コスト、キャパシティ、セキュリティ、継続性の4つのカテゴリにおけるメリットを説明します。
1. 80%のコスト削減 – ハリウッドスタジオの事例
多くのハリウッドスタジオが、「デイ・アンド・デイト・リリース」を行っています。これは、映画の海賊版防止のため、大ヒット作を世界中で同日公開するリリース方式です。さて、これをどのように実現しているか、ちょっと考えてみてください。
従来映画の公開日には、複数の国に物理的なインフラが必要であり、多数の仲介業者が関与していました。しかし、Qube Cinema は Amazon Web Services を利用してこの状況を変えました。Qube Cinema は、デジタルメディアコンテンツを物理的なハードディスクに保存して映画館に郵送するプロセスから脱却し、映画館と AWS を接続するようにしたのです。
映画は、平均ファイルサイズが約 150GB と大きなデジタル資産です。ほとんどの映画は、永久にとは言わないまでも数十年は保存されることを考えると、この業界には膨大なデータを保存する必要があります。Qube Cinema では、長期保存のニーズを満たしながらコストを抑えるため、約 107TB のファイルを Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) Glacier に、2.4PB のファイルを Amazon S3 Glacier Deep Archive に保存しています。これらのサービスでは、現在の映画や過去にアーカイブされた映画に効率的にアクセスするための迅速なファイル取り出しオプションが提供されています。
AWS での保存とアーカイブにより、Qube Cinema は 80%ものコスト削減を実現しました。配信される映画1本の単位でみると、物理的なハードドライブ、保護梱包、および輸送のためのコストを合わせて約 125 米ドルの削減を実現しています。
重要なポイント: データの増加には、ストレージハードウェア、ソフトウェア、ネットワークリソースの追加が伴います。加えて、電力、設備、運用スタッフの工数も必要です。クラウドストレージでは、これらのリソースは全てサービスとして提供され、コストは毎月のサービス利用料として包括されます。お客様は、使用量に応じた料金を支払うだけでよいのです。
2. アクセスキャパシティの向上 -オンラインメディア企業の事例
マレーシアの人々にとって、テレビや印刷物のニュースにかわり、オンライン・メディアが主要なニュース源となりつつあります。1999年の発足以来マレーシアの独立系オンラインニュースのパイオニアである Malaysiakini の使命は、4つの言語で毎月 1000万人以上の読者に迅速、正確、かつ十分な情報のニュースや見解を提供することにあります。同社のウェブサイトは、平均して1日に約 12,000人が同時に閲覧しますが、国政選挙のようなピーク時には、その数は 100万人以上に急増します。Malaysiakini では、ストレージおよびコンピューティングリソースが多くのトラフィックに対応をしきれずにダウンタイムが発生し、視聴者への影響が発生し、かつ IT サービスのコストも膨らんでいました。
ニュースのピーク時にコスト効率よく処理するため、Malaysiakini は Amazon S3 を使って静的なウェブサイトを立ち上げました。主要なニュースウェブサイトへのトラフィックは、live.malaysiakini.com の静的なウェブページにリダイレクトされます。これにより、100万人を超える同時アクセスユーザーに耐える拡張性のあるウェブサイトを運営することができ、かつインフラのコストを 50% 削減しました。
重要なポイント:未使用のリソースを過剰にプロビジョニングすることなく、日々の要件を満たすのに十分なリソースを確保することが重要です。また、市場環境の変化やビジネスニーズの変化に対応する能力、データの増加に対応するための十分なストレージ容量も同様に重要です。
3. より高いセキュリティレベルの実現 – ヘルスケア企業の事例
ヘルスケア分野に焦点をあててみましょう。医療機関にとって患者データを継続的に収集し、効率的に分析することがいかに重要であるかが、コロナ禍によって明らかになりました。
ニュージーランドのヘルスケア企業である Orion Health は、入院手続きの簡素化をミッションとしています。ソファでくつろぎながら手続き書類を記入できるようにしたり、筆談による通訳を用意したりといった取り組みを行う一方で、デジタルカスタマーエンゲージメントソリューション「デジタルフロントドア」を開発しています。同社のプロダクトディレクター、Anne O’Hanlon 氏は、このソリューションの利点について触れつつ、次のように述べています。「全体的な目標は、入院プロセスを患者にとってストレスの少ないものにすることです。」
Orion Health は、AWS クラウドのセキュリティ機能を利用して、大量の機密・個人情報を保護しています。責任共有モデルに則ってこれらのセキュリティ機能を利用することで、不正なユーザーから情報を保護することができます。
また、AWS グローバルインフラを流れるすべてのデータは、セキュアな施設内ネットワークから外部向けに通信される際に物理層で自動的に暗号化されます。企業が所有するデータは、企業自身が暗号化、移動、管理に関する完全に制御できます。
「患者のより良い生活のため、より速い革新を」と O’Hanlon 氏は述べています。この発言にはオリオンヘルス社の強みがよく表現されていますが、クラウドを利用することで、こういった強みをもつ分野により集中することが可能になりました。
重要なポイント:クラウドプロバイダーと顧客が責任共有モデルに則ってセキュリティのベストプラクティスを実践することで、企業が所有するデータセンターよりさらに高いレベルで、クラウド上でデータを保護することが可能です。
Smart Business ニュースレター:スマートなビジネスを構築するために必要なクラウドリソース、専門家のインサイト、同業他社の視点などの情報を毎月お届けします。
4. 24時間365日の継続性 – 私立病院の事例
インドネシアの西ジャワ州にある私立病院 Lira Medika は、2021年半ばまで、プライマリおよびデータリカバリのインフラとしてオンプレミスサーバを使用していました。同病院では、患者数の増加に伴い、X線画像などの大容量 DICOM ファイルを含む患者データを保管するためのストレージに求められる要件も高まっていました。しかし残念ながら、オンプレミスストレージの容量追加が追いつかず、6 時間に及ぶサーバーとストレージの停止を引き起こしました。これは本来、病院という重要度の高い施設ではあってはならないことです。
この状況は、メインデータベースを AWS に移行したことで一変しました。クラウドを利用することで、バックアップとフェイルオーバーがほぼリアルタイムで行われるようになり、移行前のオンプレミス環境と比較して 20% のパフォーマンス向上を実現しました。
親会社である Pundi Raya Niaga 社の情報技術部長である Moch Firmansyah 氏は以下のように述べています。「スケーリングとバックアップが自動化されたことで、夜もぐっすり眠れるようになりました。過去には発生してしまったダウンタイムを未然に防ぐことができ、Lira Medika の品質に対する評価を維持することができます。」
重要なポイント:ハードウェアやソフトウェアの障害、データの破損、電源の喪失は、予期せぬダウンタイムを引き起こす可能性があります。クラウド技術は、データの冗長性を高め、小さな障害から大災害まで、大小さまざまな問題が発生した状況においてもデータを利用できるようにするものです。
データの保存と保護にAWSを活用しましょう
どのような業種であっても、データの保存、バックアップ、保護、および復旧のためのベストプラクティスを確立することは非常に重要です。クラウドを利用することで、コストを削減し、運用を合理化し、ビジネスの俊敏性を高めながら、これを実現することができます。AWS は、業界をリードするバックアップの耐久性と最新のセキュリティ機能を備えており、データの保存と保護に費用対効果の高い方法を提供します。
中小企業が AWS クラウドでデータを保存・保護するためのヒントについては、eBook をダウンロードしてご覧ください。また、Smart Business ハブをご覧いただき、ビジネスのモダナイゼーションを推進するためにどう取り組むか、ぜひ学んでください。
翻訳はソリューションアーキテクトの田中が担当しました。原文はこちらです。