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株式会社トラフィック・シム 放送データ共有システム RecShare CLOUD における AWS の活用
メディアワークロードにおける同録の概要や課題
メディアワークロードでは、同録(同時録画または同時録音の略称)という領域があり、例えば、日本の放送事業者に対しては、放送法第十条「放送番組の保存」において、いわゆる「法定同録」の義務が定められています。「法定同録」以外の、視聴者目線での身近な例としては、スポーツや音楽関連などのライブイベントを放送しつつ「同録」しておき、適宜簡易な編集を施してハイライトシーンで利用する例などが挙げられます。前者の法定同録については高い可用性・耐久性が求められますし、後者のイベント利用においては、可用性・耐久性に加えて、編集者にとって使いやすい UI/UX が求められることになります。従来はこれらの要件に対応するには、オンプレミス環境に高価な収録機器や高耐久なストレージなどを調達・設置したり、高価なソフトウェアの購入や開発をする必要がありました。本記事では、これらの課題を解決することができる SaaS ソリューションとして、株式会社トラフィック・シムが提供している RecShare CLOUD における AWS の活用についてご紹介します。
(放送番組の保存)
第十条 放送事業者は、当該放送番組の放送後三箇月間(前条第一項の規定による訂正又は取消しの放送の請求があつた放送について、その請求に係る事案が三箇月を超えて継続する場合は、六箇月を超えない範囲内において当該事案が継続する期間)は、政令で定めるところにより、放送番組の内容を放送後において審議機関又は同条の規定による訂正若しくは取消しの放送の関係者が視聴その他の方法により確認することができるように放送番組を保存しなければならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000132
放送データ共有システムRecShare CLOUD
RecShare CLOUD のハイレベルなアーキテクチャを次に示します。RecShare CLOUD は、下図の向かって左側の「素材保存セクション」と右側の「素材管理セクション」に大別することが出来ます。
「素材保存セクション」では、様々な信号(IP/SDI/RF/IF/HLS/SRT等)を入力して復調・デスクランブル・トランスコードし、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) 上に同録していきます。なお、信号の入力方法については、3通りの方法があり、ひとつは、Stream Gateway というハードウェアを設置し、トランスコード・アップロードする方法となります。Stream Gateway では入力として受けた映像信号を 1 秒単位のファイル素材にトランスコードし、順次 Amazon S3 へアップロードしていきます。また、Stream Gateway では内部に一定期間のバッファを設けているのに加えて、Amazon S3 へのアップロード時にハッシュチェックも行うため、ネットワーク障害などが発生してしまった場合にも、最終的にはデータの欠損なく同録をすることができ、これにより高い可用性・耐久性を実現することが出来ます。他にも、HLS形式で事前にファイル化された素材を Amazon S3 に同録していく方法や、SRT の信号を AWS 上で受けてトランスコードしつつ Amazon S3 へ同録する方法を採ることも出来ます。
「素材管理セクション」では、RecShare CLOUD を初めて利用する担当者であっても直感的に操作ができるように、新聞やガイド誌などで目にする番組時刻表(ラテ欄 / ラジオ欄テレビ欄)形式の UI/UX を採用しており、権限設定されたユーザーでログインすることで利用可能な Web アプリケーションとなっています。ユーザーはラテ欄上にマウスオーバーすることで再生箇所のサムネイル表示を素早く確認が可能なのと、アドオン / プラグイン / 専用ソフトのインストールが不要な Web 動画プレイヤーを搭載しており、セキュリティポリシーなどでソフトウェアのインストールに制限のあるお客様であってもすぐに利用を開始することが可能になっていますし、Web 動画プレイヤーはインストールが不要なだけでなく、高度な再生制御や、画面キャプチャの作成、動画のトリミング / ダウンロード(TS、MP4、HLS ※)などにも対応しており、場所や時間を問わずに柔軟な利用方法でご利用可能となっています。
※ 元素材が HLS の場合で保存を希望される場合のみ HLS でもダウンロード可能
RecShare CLOUD のプラットフォームとして AWS を選定された理由や、RecShare CLOUD の利用ユーザーからの反響について、株式会社トラフィック・シム クラウド事業開発部 部長 山田 幸太朗氏は次のように述べます。「弊社が RecShare CLOUD の構築にあたって AWS を利用しようと思ったのは、AWS がメディア領域に力を入れており、我々の既存顧客様からのニーズや将来的に見込めそうなマーケットも大きかった、という部分が強いかと思います。そして、実際に RecShare CLOUD を利用いただいているお客様からの反響としては、ユーザーフレンドリーな UI で使いやすい、という評価や、オンプレミス側に設置するユニットと AWS を組み合わせたハイブリットクラウド構成でオンプレミス側にバッファを持つことにより、クラウドのメリットを享受しつつ、コスト効率よくワークロード全体としての耐障害性を高めることが出来る、などの評価をいただいています。」
ライブイベントにおける活用構成例
ライブイベントにおいて、RecShare CLOUD と 各種 AWS サービスを組み合わせて、同録と素材管理に加えて、クラウド編集とライブ配信も同時に実現するアーキテクチャ例もご紹介します。
上記の構成は、大きく分けて「素材保存セクション(左下)」「素材管理セクション(右下)」「クラウド編集セクション(左上)」「ライブ配信セクション(右上)」の 4 つのセクションに分ける事ができます。「素材保存セクション」および「素材管理セクション」については前の章で説明したとおり、RecShare CLOUD がサービスとして提供している領域になります。「クラウド編集セクション」については、例えば、Grass Valley 社の EDIUS のように S3 上のオブジェクトを直接編集可能な編集ソフトウェアを Amazon WorkSpaces などにインストールしておくことで、簡単にクラウド編集を実現することができます。「ライブ配信セクション」については、S3 上に保存されている単一の Resolution の HLS を AWS Elemental MediaLive の入力として設定し、Adaptive Bit Rate(ABR)変換をかけた上で、AWS Elemental MediaStore に出力し、Amazon CloudFront を通して配信をすることが出来ます。
おわりに
本記事では、高い可用性・耐久性と直感的で使いやすい UI/UX を提供する放送データ共有システム RecShare CLOUD における AWS の活用事例をご紹介させていただきました。RecShare CLOUD は元々は 2006 年に提供を開始した、オンプレミス環境向けのソリューションであり、全国で約 460 信号、法定同録で約 160 セット導入されている豊富な実績のあるソリューションを AWS 対応いただいたソリューションとなります。導入にご興味のある読者の方は、下記の参考リンクの RecShare CLOUD の製品紹介や事例紹介などのページからお問い合わせください。
また、AWS のメディアチームでは、オンプレミス環境向けのメディア系の既存のソリューションの AWS 対応や、AWS 上での新たなメディア向けソリューションの立ち上げなどのご支援も可能ですので、そのようなご要望があれば、下記のAWSのメディアチームの問い合わせ先からコンタクトいただけますと幸いです。
参考リンク
放送データ共有システム RecShare CLOUD [製品紹介] [事例紹介]
株式会社トラフィック・シム
AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)
AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
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この記事は SA 石井 悠太が担当しました。