AWS Startup ブログ

「AWS 認定ソフトウェア取得はセキュリティや信頼性の底上げにつながる」スマートラウンド社の事例

株式会社スマートラウンドは、スタートアップと投資家のやりとりを効率化するためのデータ作成・共有・管理プラットフォーム「smartround」を開発・運営する企業です。「smartround」は 2022 年 8 月に AWS ファンデーショナルテクニカルレビューを通過し、AWS 認定ソフトウェアとなりました。この認定制度により、プロダクトがセキュリティや信頼性、運用上の優秀性などの観点で AWS のベストプラクティスを遵守していることを証明できます。

今回は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの小林 主典が、株式会社スマートラウンド SRE の山原 崇史 氏にお話を伺いました。

*…サムネイル写真左は山原 氏、写真中央は小林、写真右はアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの山田 隆太朗です。スマートラウンド社の前担当が小林、現担当が山田であり、今回のインタビューは小林が実施しました。

スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界をつくる

小林:まずはスマートラウンド社の事業概要をお話しください。

山原:スマートラウンドは「スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界をつくる」というミッションを掲げている企業で、社名と同じ「smartround」というプラットフォームをスタートアップに向けて提供し、3,800 社以上にご利用いただいています。

「smartround」はスタートアップと投資家間のやりとりを効率化するためのデータ作成・共有・管理プラットフォームです。スタートアップ向けには株主総会や資本政策、ストックオプション管理などの管理業務を効率化するサービスを提供しています。投資家向けには、ソーシングや投資先管理、パフォーマンス分析、レポーティングなどのファンド関連業務を効率化するサービスを提供しています。

スタートアップ経営者は、創業が初めてだという方がほとんどです。そのため、ファイナンスや会社法などの知識がない状態で、各種の事務手続きや投資家とのやりとりに忙殺されてしまいます。そういった社会の負を解消するためのプラットフォームが「smartround」です。

また、事業やサービスとは別の話題として、2022 年に開催された「Startup CTO of the year 2022」で弊社 CTO の小山 健太が優勝しました。ピッチコンテストでは「smartround」が AWS 認定ソフトウェアであることを紹介したのですが、それも優勝できた要因のひとつなのではないかと考えています。

株式会社スマートラウンド SRE 山原 崇史 氏

小林:CTO の小山さんもすごいですが、山原さんご自身も 2023 Japan AWS Top Engineers に選出されていましたね。スマートラウンド社のメンバーの優秀さが伺えます。

AWS 認定ソフトウェアになることで得られる利点とは

小林:今回のインタビューでは、まさに今お話しいただいた AWS 認定ソフトウェアや AWS パートナーネットワーク、AWS ファンデーショナルテクニカルレビューなどについて取り上げたいです。まず、これらの制度を知らない読者の方々もいると思いますので、私のほうから簡単にご説明させてください。

AWS パートナーネットワークとは、AWS を活用して顧客向けのソリューションやサービスを構築している企業(AWS パートナー)が参加できるグローバルコミュニティのことで、いくつかのステージに分かれています。まずはパートナー登録をしてその後に AWS パートナーパスを選択すると「ENROLLED」、APN メンバーシップを獲得すると「CONFIRMED」などのステージへと変化していきます。

その次に、AWS ファンデーショナルテクニカルレビューを受けて審査の通過を目指すことになります。AWS ファンデーショナルテクニカルレビューとは、システムのアーキテクチャが AWS のベストプラクティス集である AWS Well-Architected フレームワークに沿って構築されているかを、AWS のパートナーソリューションアーキテクトが確認するものです。

レビューを通過するには、システムがセキュリティや信頼性、運用上の優秀性などの AWS ベストプラクティスに従っている必要があります。AWS ファンデーショナルテクニカルレビューを完了すると「VALIDATED」ステージになります。AWS 認定ソフトウェアのバッジを取得して、AWS によるファンド提供やマーケティング支援などの特典を利用できるようになります。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャー 小林 主典

山原:私は AWS 関連の勉強会によく参加しますが、その懇親会で知人のエンジニアから AWS 認定ソフトウェア制度を紹介してもらいました。ぜひ取得したいと思い、より詳しい話を聞いてみようと、担当のアカウントマネージャーである小林さんに相談したのが最初のきっかけでしたね。

小林:AWS 認定ソフトウェアのどのような点が、御社の事業にとってプラスになると感じましたか。

山原:当時、私は 1 人目の SRE としてスマートラウンドに参画したばかりでした。より良いシステム基盤へと改善したいとか、金融・証券データを扱っているためセキュリティを高めたいという思いがありました。AWS 認定ソフトウェアになることを目標にすれば、一定以上の信頼性やセキュリティを担保できますし、資格を取得すること自体が自分のモチベーションにつながります。そこで、チャレンジしてみようと思いました。

レビューを通して大きな学びと成果があった

小林:レビューを受ける過程で、大変だった点や工夫した点があれば教えてください。

山原:大変だった点としては、AWS ファンデーショナルテクニカルレビューのなかでディザスタリカバリ(システムに障害が起きたと想定して、その状態から復旧すること)を行う必要があったことです。準備にも実施にも苦労しましたが、こういったレビューの機会がなければなかなか取り組めないことですし、この作業を通じて多くの学びがありました。

工夫した点としては、自分たちの力だけでアーキテクチャ改善の対応をするのではなく、レビューの一連のプロセスにおいて、AWS のソリューションアーキテクトに適宜相談をしてフィードバックを得ながら改善していった点ですね。

小林:スマートラウンド社はとても優秀な結果が出ていました。初回の対面によるレビューの時点でチェック項目の 9 割を通過し、指摘を受けた残りの項目もわずか 2 週間後にクリアされていました。良い結果が出た要因は、どのような点にあると思いますか。

山原:まずは、私が参画する前の段階で CTO が AWS の環境をかなり整備してくれていたことです。たとえば、本番環境と検証環境の AWS アカウントを分離するといったベストプラクティスを、最初から実施していました。

それから、事業が拡大して技術的な負債が溜まるよりも前の段階で、レビューに着手したのが非常に良かったです。読者の方々にも、なるべく早期の段階でレビューを受けることをおすすめします。それが、システムの信頼性やセキュリティの底上げにつながります。

小林:AWS 認定ソフトウェアになったことで、事業にプラスの影響が出ている部分はありますか。

山原:サービス紹介用の資料や営業とお客さまとの商談などで、AWS 認定ソフトウェアを取得していることをお伝えするようになりました。それにより、一定以上のシステム品質であることを対外的に証明しやすくなりました。

弊社のサービスのユーザーにはスタートアップに対して投資を行う企業もいらっしゃいますが、金融機関のなかにはクラウドに対してまだ抵抗のある方々もいます。そうした方々にも「AWS のベストプラクティスに沿って運用しているので安全です」と伝えられるようになったのは大きいです。しかも、商談の場にエンジニアが同席していなくても、営業がお客さまにそうした情報を話してくれるようになったという変化がありました。

AWS 認定ソフトウェアを、より多くの人々に知ってほしい

小林:今後、システムやサポートなどで AWS へ期待することがあればお話しください。

山原:大きく 2 つあります。まずは今回のテーマである AWS 認定ソフトウェアに関することで、まだまだ世の中での知名度がそれほど高くないと感じています。利点の大きな制度なので、ぜひ AWS 社には広報活動に力を入れていただき、多くの方々に知ってもらえるようにしてほしいです。

もうひとつは、特定の業界のなかにはまだ「インフラにクラウドを使うことは、セキュリティや信頼性が不安だ」と思われる方々がいます。もちろんそんなことはなく、AWS は非常に安心・安全なクラウドだと思いますので、そのこともさらに世の中へと広報していただけると、とてもありがたいです。

小林:ありがとうございます。多くの方々のマインドを変えられるように、私たちもより一層頑張りたいと思います。最後に、今後の目標を教えてください。

山原:事業面では、私たちは「smartround」がスタートアップにとってのデファクトスタンダードのプラットフォームになることを目指しているので、必要なサービスを拡充したり、既存の機能を磨き込んだりといったことをさらにやっていきたいです。

また組織面では、エンジニアの人数が徐々に増えているので今後も開発生産性を落とさないように、より使いやすいツールや開発環境を提供したり、DevSecOps の手法を開発プロセスに組み込んだりといったことに取り組みたいです。

小林:ぜひ多くの方々に、スマートラウンド社の事例を参考にしていただきたいですね。今回はありがとうございました。


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