【パラレルマーケター 小島 英揮 氏が直言】エンジニアの成長の鍵は「コミュニティ」にアリ
小島 英揮 氏
Still Day One合同会社 代表社員
コミュニティは個人の成長に欠かせないメリットの宝庫
私が社会に出た当時は、これからも終身雇用制度が続くと信じる人がまだ大勢いました。
良いキャリアを築きたければ、勤め先の価値観やルールをよく理解し、会社が定めた「モノサシ」に合わせて、自分振る舞いを最適化することが最善手だった時代です。
経済が安定し、成し遂げるべきゴールが明確な時代ならそれでよかったのですが、いまは違います。テクノロジーの進歩とグローバル化によって、ビジネスの前提がどんどん変わる時代です。
設立間もないスタートアップや市場参入したばかりの異業種企業が、名のある大企業の顧客を奪うような場面を目にすることも、さして珍しいことではなくなりました。
当時に比べても、古い産業が廃れ、新しい産業に置き換わるスピードはさらに速まっています。数年おきに働く場所を変える人が増えるのは自然の成りゆきといえるでしょう。
もちろん新卒で入社した会社で上を目指し、定年まで勤め上げることが古いわけでも、悪いわけでもありません。
私が申し上げたいのは、この先 60 代、70 代まで働き続けると考えた場合、20 代前半でたまたま出会い入社した企業が、約 50 年もの間、右肩上がりで成長し続けるというのは、ちょっと考えにくいのではないか、ということです。
事実、東証一部上場企業に属する企業ですら副業を認める時代。もはや終身雇用は前提ではありません。
もしあなたが、会社の外で起こっている変化を知らず、勤め先でしか通用しないモノサシに過剰適応していたら、社外に一歩足を踏み出した途端、「新しい価値観を受け入れられない人」「変化に対応できない人」とレッテルを貼られてしまう可能性は決して低くはないでしょう。
しかも変化のスピードはますます速くダイナミックになっています。
もしこうしたリスクの存在に気づかないまま時間を浪費すれば、勤め先の業績が悪化しても沈みゆく船に残るか、次の目的地が見つからないまま船を下りるかしか選択肢しか残されないことにもなりかねません。
私が多くの皆さんに、ご自身の関心や専門性と深いかかわりがあるコミュニティへの参加を強くお勧めするのは、知識が得られるからだけではありません。
変化の激しい時代を生き抜くために必要な可能性を広げられる場だと考えるからです。
私はエンジニアに限らず、多くの社会人が社外コミュニティに積極的にかかわることで、次の 4 つのメリットを享受できると考えています。
<コミュニティに参加することで得られる 4 つのメリット>
- 知見を合理的に吸収できる
- 自分の実力がわかる
- ロールモデルを見つけられる
- 自分が何者か知ってもらえる
これらについて、もう少し具体的に説明していきましょう。
1. 知見を合理的に吸収できる
クラウドや AI のように技術革新が盛んな領域では、情報が活字になってまとまる頃には、すでに情報が古くなってしまっていることも珍しくありません。しかしコミュニティは、現在進行形で取り組んでいる人たちが数多く集まる場。当事者しか知りえない情報が盛んにやり取りされます。最新の技術動向や運用ノウハウを知りたければ、コミュニティに参加しない手はありません。
2. 自分の実力がわかる
コミュニティには、各所からさまざまな人たちが集まってくるため、ほかの参加者と交流するうち、自分の実力がどの程度なのか徐々につかめてきます。自分の経験が「スゴい !」と賞賛されるか、真逆の反応が返ってくるかはコミュニティによって変わるかもしれませんが、少なくとも社内でしか通用しないモノサシより、客観的な「外のモノサシ」が得られるはずです。
3. ロールモデルを見つけられる
この先、何を目指して努力すべきかわからない人にもコミュニティは有効に作用します。多くの人が参加するコミュニティで「この人のようなキャリアを築きたい」と思えるようなロールモデルに出会えることは珍しくないからです。こうした人物との出会いは、あなたが将来成し遂げるべき目標やキャリアの解像度をグンと高めてくれます。
4. 自分が何者か知ってもらえる
運営側に回ったり、発表したりする機会を上手に活用すると、交流の幅はさらに広がります。多くの人に自分がどんなことに興味があるか知ってもらう機会が増えれば、ほしい情報が向こうから集まってくる状況を作ることもできるでしょう。もしかすると仕事のオファーが舞い込むかもしれません。アウトプットを増やすと、かえってインプットが増えるというのもコミュニティ活動の醍醐味といえます。
まずは勇気を出して参加することからはじめよう
社外のコミュニティに参加することによって、キャリアやスキルを高めるために得られるものがとても多いことがおわかりいただけたでしょうか。
とくに東京は毎日どこかで技術勉強会が開かれているといわれるほど、コミュニティ活動が盛んですし、最近では、オンライン配信をする勉強会が増えてきたことで、地方からの参加や、家事や通勤中に「ながら参加」ができる機会も増えてきています。
非常に恵まれた環境がすでにあるわけですが、コミュニティに参加したことがないエンジニアにとってみれば、どのコミュニティに参加すればいいかわからないと思われる方もいるでしょう。
でも、難しく考える必要はありません。コミュニティを選ぶポイントはたった 3 つ。1 つは自分の関心がある分野のコミュニティであること、もう 1 つは自分の感覚にフィットするかどうか、そして最後は、参加者間のコミュニケーションが活発かどうかを意識するだけで構いません。
< コミュニティ選びのポイント >
- 自分の関心がある分野のコミュニティであること
- 自分の感覚にフィットするコミュニティか
- 参加者間のコミュニケーションが活発かどうか
もし興味が惹かれるのであれば、本業とかかわりがあってもなくてもいいですし、むしろ普段の業務より距離のある複数のコミュニティに参加したほうが、知見の掛け合わせにもなり知識の厚みも増すのでお勧めです。
一生を決める選択ではないのですから、気負う必要などありません。自分に合うと感じれば継続してみればいいですし、ちょっと違うなと感じたらまた別のコミュニティに参加すればいいのです。自分にフィットするコミュニティが見つかるまで、好きなだけホッピングしてみてください。
ネット検索でとっかかりをつかんだら、まずは面白いと感じるコミュニティを 2 つ、3 つ選び、参加してみましょう。
まず肌感覚で、自分に合うと思えるコミュニティを見つけることが重要です。
自分専用の “ハッシュタグ” を見つけるために
すこし蛇足めいて聞こえるかもしれませんが、ここで改めて強調しておきたいことがあります。
それは、コミュニティの参加者は決して「お客様」ではないということです。
インプットすることに意識が向いているとつい忘れてしまいがちですが、コミュティという場は、運営者も登壇者も観客も等しく「参加者」であり、対等だからです。
もちろん、情報を得ること、志をともにする仲間を得たいという思いでコミュニティに参加することは悪いことではありません。
ただ、自分が利益を得ること (テイク) にしか関心がなく、コミュニティや自分以外の参加者に対して貢献 (ギブ) する意識を持たない「ワナビーズ」のままでいると、得られるものは限られてしまいます。
コミュニティを一言でいい表すなら、同じ関心軸を持った人が集まる情報流通の場です。テイカー (Taker) よりもギバー (Giver) が、より多くの人の関心を集め、周りからも有益なフィードバックを得られるという前提は、心のどこかに持っておくべきでしょう。
とはいえ、最初から自分の経験に基づいた知見を、多くの人の前でシェアするなんてハードルが高いという人がいるのもわかります。そういう方は、まず情報をシェアしてくれた方にフィードバックすることからはじめてみるといいでしょう。
本人に直接話しかけるのが難しければ、感じたこと、学んだことをツイートしたり、ブログにまとめたりするのでも構いません。取るに足らないことと思われるかもしれませんが、このようなフィードバックループに参加することも、コミュニティに対する大事な貢献の 1 つに違いありません。
<はじめてコミュニティ参加する際のポイント>
- まずは気負わず興味のあるコミュニティに参加してみよう
- 専門外のコミュニティにも顔を出してみよう
- アウトプットの前にフィードバックからはじめよう
コミュニティ内で登壇している人の経験談をたくさん耳にしているうちに、おそらく「自分も挑戦してみよう」という意欲が湧いてくる瞬間がやってきます。
その時がチャンスです。
1 つ階段を上るだけで、新しい風景が目の前に広がっていることはわかるはずです。
コミュニティ活動を通じて、会社とは異なるモノサシで自分を測れるようになると、自分がどんな人になりたいか、人からどのような人として受け止められたいかがだんだん明確になってきます。
「◯◯のことなら◯◯さんに聞け」といわれるような人になるには、多くの人に見つけてもらわなければなりません。
つまり、あなたの個性を示すあなた専用のハッシュタグが必要なわけです。
コミュニティに参加し、会社とは異なるモノサシを持つことは、多くの人々の関心を惹きつけられる自分だけのハッシュタグを見つけることにもつながります。
ぜひ、自分に合ったコミュニティを見つけて、活躍の場を広げてください。
プロフィール
小島 英揮 氏
Still Day One合同会社 代表社員
1969 年生まれ、高知県出身。明治大学商学部卒業後、PFU 、アドビシステムズを経て、2009 年にアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 (当時 アマゾン データ サービス ジャパン株式会社) に入社。日本法人の 1 号社員としてマーケティング部門の責任者を務め、JAWS-UG (Japan AWS User Group) を立ち上げる。同グループの運営支援に携わる過程で、コミュニティマーケティングの手法、成功モデルを確立し、現在はコミュニティマーケティングのコミュニティ「CMC_Meetup」の主宰のほか、複数企業のマーケティングおよびエバンジェリスト業務に従事する。
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