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AWS Summit 2026 Supply Chainブースのご紹介

みなさんこんにちは!関西で製造業のお客様を中心に技術支援をしているソリューションアーキテクトの河井です。今年も AWS Summit Japan 2026 の季節がやってまいりました!会場は千葉県の幕張メッセです。今年も製造業向けの展示を出展する予定ですので、ぜひ遊びに来てください。AWS Summit の概要と製造ハイライト展示の見どころはこちらのブログに掲載していますのでご覧ください。

本ブログではハイライト展示内の Supply Chain ブースの展示について紹介します。今回のブースでは、サプライチェーンの意思決定を AI で加速する 2 つのアプローチを展示します。1 つ目は AWS のサービスを組み合わせて作る AI エージェントを活用したアプリケーションで、マーケットサインを起点に需要予測から生産計画提案までを一気通貫で実行するデモです。2 つ目は SaaS 形態でサプライチェーンの Decision Intelligence (DI) をエージェントとして提供する Amazon Connect Decisions で、サプライチェーン上で発生している問題を自動検知し、AI が根本原因の分析と推奨アクションを提示するマネージドサービスです。それぞれ異なるアプローチでサプライチェーンの意思決定を加速する様子をご覧いただけます。

製造業が直面するサプライチェーンの課題

製造製造業のサプライチェーンを管理する方々の頭を悩ませる課題は多くありますが、ざっくりとまとめると下記のように分類できるのではないでしょうか。

  • 需要変動の兆候を掴んでも、定量化できない: 政策発表や市場トレンドの変化を感じても、「実際にどれだけ需要が増えるのか」を定量的に見積もれません。結果として対応が後手に回ります。
  • 需要変動への対応に時間がかかる: 需要が急変したとき、在庫・生産キャパ・部品調達の見通しを確認するために、営業、生産管理、調達部門など様々な部署からの情報が必要で数日かかります。
  • 物流の不確実性:海上交通を使う場合はコンテナ不足・港湾混雑など予期せぬ問題が発生する可能性があります。そのほかにも地政学的リスクなどにより、輸送のリードタイムが突然倍増し、供給計画が崩れます。
  • 在庫配分の判断の難しさ:限られた在庫を複数の製品ラインにどう再配分するか、人手では即座に最適解を出せません。

これらの課題に共通するのは、「情報はあるのに、それを統合して迅速に意思決定する仕組みがない」 ということです。

AWS サービスを組み合わせた アプリケーションの概要

本デモでは、架空のドローンのメーカー「AnyCompany」(横浜工場)を題材に、マーケットサイン(政府のインフラ点検プロジェクト閣議決定)を起点として、AI エージェントに分析を依頼するだけで以下を一気通貫で提示する仕組みを体験いただけます。

  1. 需要予測 — 過去の受注履歴と公共入札件数から、今後 6 ヶ月の需要を予測
  2. 在庫・供給状況の可視化 — 現在の在庫水準、サプライヤー別の供給力、コンテナ不足の影響を即座に一覧化
  3. 増産シナリオ別の生産計画提案 — 需要予測の各シナリオに対して、3 製品間の生産配分最適化と売上影響を計算
  4. 総合提案 — 時間軸別(即時/短期/中期)の具体的なアクションリストを提示

従来なら数日かかる「需要変動への対応策立案」を、AI エージェントへの一言の依頼で数分に短縮します。

(需要予測)

(増産シナリオ別の生産計画の提案)

AI でどのように解決するのか

このデモのアプローチは 3 つのステップで構成されています。

ステップ1:不確実な需要を「数字」に変える

市場の変化を感じても「増えそうだ」という感覚のままでは動けません。時系列基盤モデルが過去の受注履歴と外部指標(公共入札件数)を組み合わせて、「月 180 台(+50%)」のように確率区間付きで需要を予測します。これにより、感覚ではなくデータに基づく判断が可能になります。

ステップ2:制約の中で「何ができるか」を即座に計算する

需要が増えても、部品の供給制約や在庫水準によって実際に対応できる範囲は限られます。AI エージェントが在庫・供給データを取得し、複数製品間の生産配分を利益率・季節需要・納期制約を考慮して最適化します。

ステップ3:段階的な対応策を提示する

「まず生産配分の見直しで即座に対応(追加コストゼロ)→ 需要が上振れしたら追加調達」という段階的な提案により、過剰投資を避けつつ機会損失も防ぎます。AI エージェントがサプライヤー情報や過去の調達実績を検索し、具体的なコスト・リードタイムを含めた調達オプションを提示します。

使用している技術要素

Amazon Bedrock AgentCore

Amazon Bedrock AgentCore は、AI エージェントの構築・デプロイ・運用を統合的に提供するプラットフォームです。エージェントにツール・メモリ・データを装備し、複雑なワークフローを処理させることができます。インフラ管理は不要で、セキュアかつスケーラブルなランタイム上でエージェントを実行できます。本デモでは、AgentCore 上に構築したエージェントが担当者の自然言語での依頼を理解し、需要予測の呼び出し → 在庫データの取得 → シナリオ計算 → Knowledge Base 検索を自律的にオーケストレーションします。従来であれば複数部門にまたがっていた確認作業を、1 つのエージェントが一気通貫で実行します。

Chronos-2(時系列基盤モデル)

Chronos-2 は Amazon が開発した時系列予測の基盤モデルです。単変量・多変量、さらに影響を及ぼすその他の要因(共変量)を含む予測タスクを、追加学習なしで処理できます。グループアテンション機構により、複数の関連する時系列間で効率的に情報を共有し、高精度な予測を実現します。本デモでは、産業用ドローンの月次受注数(ターゲット系列)とインフラ点検関連の公共入札件数(共変量)を入力として、今後 6 ヶ月の需要を確率区間付きで予測します。単なるトレンド延長ではなく、外部要因の影響を反映した予測が可能です。

Amazon Bedrock Knowledge Bases

Amazon Bedrock Knowledge Bases は、RAG(Retrieval Augmented Generation)ワークフローをフルマネージドで提供する機能です。データの取り込みから検索、プロンプト拡張までを、カスタム統合やデータフロー管理なしで実現します。本デモでは、サプライヤー別の基本情報(所在地・供給シェア・リードタイム)、部品仕様、過去の調達実績(増量交渉の実績・コスト増の目安)、航空便切り替え時のコスト情報を格納しています。AI エージェントがシナリオ分析の中で調達オプションを提示する際に、これらの情報を検索して正確な根拠に基づいた提案を行います。

これらの技術要素が同一プラットフォーム(AWS)上で動作するため、予測結果をエージェントに渡すための API 変換レイヤーや、Knowledge Bases へのアクセスのための認証統合を個別に設計する必要がないのも良いところです。IAM による統一的なアクセス制御のもと、エージェントが各サービスをネイティブに呼び出せます。

(アーキテクチャ図)

ここからは、サプライチェーンの問題検知と対応を継続的に行うためのマネージドサービス、Amazon Connect Decisions を紹介します。

Amazon Connect Decisions

コンセプト:発生した問題を即座に捉え、原因分析から対応策までを自動で提示する

サプライチェーンの現場では、在庫不足・供給遅延・需要との乖離といった問題が日々発生します。これらの問題に対して、従来は担当者がデータを突き合わせて原因を調査し、対応策を検討する必要がありました。Amazon Connect Decisions は、この「問題の検知 → 原因分析 → 対応策の提示」という一連の流れを AI で自動化します。

  1. 検知(Detection) — あらかじめ定義したメトリクスとルール(例:「在庫カバー日数が 15 日を下回ったら」)に基づいて、サプライチェーン上の問題を自動的に検知します。
  2. 洞察(Insight) — 検知された問題に対して、AI が根本原因を分析します。例えば「2025 年に発注した入庫注文 2 件(計 5,169 EA)が未受領のまま 200 日以上経過し、補充パイプラインが完全に途絶している」といった具体的な原因特定を行います。
  3. 推奨アクション(Recommendation) — 分析結果に基づき、「発注書作成:17,105 EA」「サプライヤーパフォーマンスレビューの実施」「未受領注文の調査」といった具体的な対応策を優先度付きで提示します。

主な機能

  • Insights(問題の検知と分析):ビジネスルールに基づいてサプライチェーンの問題を検知し、 AI が根本原因の分析と推奨アクションを生成します。ユーザーは自社のオペレーションを記述した S&OP を AI に読み込ませて「ガイドライン」を設定します。
  • Demand Planning(需要予測): Amazon が培ったノウハウを組み込んだ AI/ML モデルが、過去の販売実績から自動的に需要予測を生成します。少ない履歴データでも初日から利用可能です。営業見込み・顧客コミットメントなど複数部門からのインプットを 1 つの合意予測(Consensus Plan)に統合する仕組みも備えており、AI Teammate(自然言語インターフェース) に「なぜこの予測値になったのか」と聞いて根拠を確認することもできます。
  • Supply Planning(供給計画):需要予測や受注データをもとに、素材の利用可能性・リードタイム・生産キャパシティ・倉庫スペースといった現実の制約を考慮した供給計画(生産・調達スケジュール)を生成します。計画の定期実行スケジュールも設定でき、プランナーが計画を調整・確定したうえで下流プロセスへ公開できます。

( Insights の検出)

(根本原因と推奨アクション)

まとめ

サプライチェーンの意思決定には、大きく 2 つの局面があります。1 つは市場の変化や突発的な事象に対して「次にどう動くか」を素早く判断する局面。もう 1 つは、日々発生する在庫不足や供給遅延といった問題に対して「いま何が起きていて、どう対処すべきか」を把握し続ける局面です。本ブースでは、前者に対しては AI エージェントがマーケットサインから需要予測・生産計画提案までを一気通貫で実行するデモを、後者に対しては Amazon Connect Decisions が問題を自動検知し、根本原因の分析から推奨アクションまでを提示するデモをお見せします。
注文を待ってから動くのではなく、不確実な時点から先手を打つ。問題が大きくなってから調査するのではなく、発生した瞬間に原因と対応策を手にする。この 2 つのアプローチで、ビジネスのアジリティを強化します。あなたのビジネスへの次の装備となるこの AWS Summit のサプライチェーンブースのデモを、ぜひ体験しに来てください。

著者について

 河井信彦(Nobuhiko Kawai)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニアソリューションアーキテクト

セキュリティベンダーを経て AWS Japan に入社し、エンタープライズ技術本部でソリュー ションアーキテクトとして活動中。関西の製造業のお客様を中心担当している。趣味はサッカーとフットサル。