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AWS Summit Japan 2025 AI健康アプリ「HugWay」を支えるAWSアーキテクチャ:テオリア・テクノロジーズの認知症プラットフォーム戦略

このブログは、テオリア・テクノロジーズ株式会社と、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューション アーキテクト 椎名優司による共著です。

2025 年 6 月 25 日、26 日に幕張メッセで開催された AWS Summit Japan 2025 では、EXPO として AWS Village と呼ばれる展示エリアが用意され、90 を超える AWS 最新テクノロジー展示、先進企業 50 社による AWS 活用事例、パートナーによる 130 以上のソリューション展示など、270 を超える展示を行いました。その中に展開された Industries Pavilion では、各業界向けの最新の AWS ソリューションの展示や、実際に AWS を活用している企業のブースも併設されました。 テオリア・テクノロジーズ株式会社は Industries Pavilion のヘルスケア・ライフサイエンス業界向けブースに出展されました。

今回のブログでは、Industries Pavilion のテオリア・テクノロジーズ株式会社ブースで展示されたAI健康アプリ「HugWay(はぐうぇい)」について、プラットフォーム概要やAWS アーキテクチャをご紹介します。

テオリア・テクノロジーズの認知症プラットフォーム事業とAI健康アプリ「HugWay」

テオリア・テクノロジーズは「認知症との向き合い方を、テクノロジーで変えていく。」をミッションに掲げ、エーザイグループの一員として認知症という社会課題の解決を目指しています。

エーザイが創薬で貢献する一方、テオリアはデータサイエンス技術を中心に、「認知症にかかわる全ての人が自分らしくいるための『羅針盤』となる」世界を目指します。その核となるのが、認知症に関する様々なソリューションや人々をつなぐ「認知症プラットフォーム」の構築です。

運動プログラムや食事指導、治療薬やデジタルを活用したものなど多岐にわたるソリューションを線で繋げ、一人ひとりへの「体験の最適化」を目指します。具体的には、健常・未病の方向けに認知機能の低下のリスクに「そなえる」、認知機能の低下が顕著になった方向けに医療機関受診・診断・治療への橋渡しを行う「つながる」、認知症やMCI(軽度認知障害)の診断後の治療・介護を「ささえる」の3つの領域でサービス開発を進め、ポータルサイト「テヲトル」がこれらを横断します。

「そなえる」領域のサービスである脳に良い生活習慣をサポートするアプリ「HugWay(はぐうぇい)」は、2025年6月16日にリリースしたAIを搭載した健康管理アプリケーションです。「HugWay」は、ユーザーに寄り添うAIパートナーとの対話を中心に、歩数管理、睡眠管理、活動記録、脳に良い生活習慣コンテンツ、そして楽しく続けられる脳トレゲーム(ブレインワークアウト)を提供し、多くの人が抱える「漠然とした認知症への不安」や「義務感があって健康活動が続けられない」「老後の健康不安」といった悩みを解決します。

脳に良い生活習慣をサポートするアプリ「HugWay(はぐうぇい)」の特徴

AIパートナーとの会話と記録

AIパートナー「ハグまる」と日常の出来事や感じたことなど好きなテーマで話す事ができます。AIパートナーがユーザー自身の事や話した内容の一部を覚えて、寄り添った会話が特徴です。話せば話すほどにAIパートナーの「ハグまる」がユーザーの事を理解してくれて、共感し、時には健康に関するヒントや新しい活動を提案します。過去の会話内容も踏まえてパーソナライズされたコミュニケーションを提供し、孤独感の解消やモチベーション維持に繋げます。また、会話の記録はアプリで確認してふりかえる事ができます。

歩数や睡眠などの活動管理

日々の歩数や活動量、睡眠データ、毎日の会話を自動で記録し、ダッシュボードで分かりやすく可視化します。歩数の目標設定機能もあり、AIパートナーとの会話の中で褒められたりと楽しみながら健康習慣の定着をサポートします。

脳活コンテンツ

脳トレゲームとしてブレインワークアウトを搭載。計算問題や記憶ゲームなど、スキマ時間に手軽に楽しく取り組める全10種類のゲームです。脳の活性化を促し、認知機能の維持をサポートします。その他にも脳の健康情報サイトである「脳ラボ」と連携し、脳の健康を意識した食事や睡眠、運動などのコンテンツを提供します。

こんな方におすすめ

脳の健康が気になる方

「何となく認知症は不安」、「とりあえず脳トレはやってるけど、認知症のそなえはよくわからない」といった方へ脳に良い生活習慣のサポートを「HugWay」が行います。

健康改善が必要な方

健康診断の結果や体調の変化を機に、生活習慣を見直したいと考えている方に、「HugWay」が寄り添います。

アクティブなシニア層

趣味や社会との繋がりを大切にし、これからも活動的な生活を送りたい方を「HugWay」が応援します。

「HugWay」のシステム設計と運用基盤

「HugWay」 では、生成 AI によるユーザーの会話体験を中核に据え、継続利用を促す話題創出に向けた機能拡張性を担保しました。さらに、スケールと安全性を高めるために当社独自の ID 基盤を活用し、API ゲートウェイを開発して、モバイルからバックエンド、データ基盤までを疎結合のマイクロサービス群として設計しています。これにより、新しい会話体験や外部データ連携を小さく素早く追加可能にしました。また、トラフィックのスパイク時にも安定したレスポンスを維持し、ゼロトラスト前提の認証・認可でユーザーデータを保護します。さらに、DevOps 体制のもとで CI/CD とオブザーバビリティ基盤を活用し、継続的なフィードバックを取り込むことで、機能改善の速度とサービスの信頼性を同時に高めています。

「HugWay」のAWSアーキテクチャのご紹介

サービスとしてAPI機能を提供するバックエンド環境と、生成AIのオブザーバビリティ環境について紹介します。

API を提供するバックエンドは AWS App Runner を中核に据え、オートスケーリングと負荷分散を適切に設計しています。構成は、当社 ID 基盤と連携する認証サーバー、生成 AI と連携するチャットサーバー、その他のアプリ機能を担うメインサーバーの3サーバー構成です。

AWS App Runnerはウェブアプリケーションを自動的に構築するサービスであり、トラフィックに合わせてスケールし、Amazon Bedrockを含むほかAWSサービスとシームレスに連携させることができます。AWS App Runnerはフルマネージドサービスであり、インフラの構築や運用は不要です。開発者はコンテナレジストリに保存されているコンテナイメージ、もしくはレポジトリでホストされているコードをソースとして使用することでサービス(上記構成では各機能をもつサーバー)をデプロイできます。

Amazon Bedrockは生成AIアプリケーションやエージェントを構築するためのサービスであり、「HugWay」ではユーザーとAIパートナーの間でパーソナライズされたコミュニケーションを実現するために利用しています。ユーザーとの会話を実現するためにAIチャットサーバーがConverse APIを用いてAmazon Bedrockを利用しているほかに、会話内容からユーザーの特徴や傾向を分析したり、シームレスな会話体験を提供するため会話内容を要約してAmazon Auroraに保存し適宜参照し会話に活かすことで、ユーザーに寄り添った会話を実現しています。

生成 AI のテレメトリーは過渡期にあり選定が難しかったため、「HugWay 」では OpenTelemetry を採用しその時最適なソリューションを選択する方法を採用しました。ベンダーに依存しない形でアプリケーションの観測性を高め、生成テキストの安全性検証や表現ルールの策定に活用しています。

おわりに

本ブログでご紹介したテオリア・テクノロジーズ株式会社の展示や関連する AWS サービスに関して、ご興味・ご質問をお持ちのお客様はお問い合わせフォームもしくは担当営業までご連絡ください。

著者について

テオリア・テクノロジーズ株式会社

太田 忠 (Tadashi Ota) プロダクトマネージャー
予防、ヘルスケア領域を担当しており、認知症のそなえを推進しています。プロダクトマネジメントの他に事業戦略や組織、採用など幅広く活動しています。

安藤 圭吾 (Keigo Ando) プロダクト開発部シニアソフトウェアエンジニア
バックエンド・インフラを中心に、何でもやる縁の下の力持ちを目指しています。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

椎名 優司 (Yuji Shiina) ソリューションアーキテクト
ヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様を中心に、クラウド利用の技術支援を通じてお客様のご要望を具現化するための活動をしています。