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AWS Summit Tokyo 製造業向け展示速報
みなさん、こんにちは!製造業のお客様を中心に技術支援を行っているソリューションアーキテクトの山田です。
4 年ぶりのオンサイトでの AWS Summit Tokyo が 2023 年 4 月 20 日(木)、21 日(金)の 2 日間、幕張メッセにて開催されました!
大盛況のまま無事イベントを終えることができました!
基調講演・150 を超えるセッション・180 を超える EXPO コンテンツが披露されましたが、今回はその中から製造業に関する展示の様子を速報でご紹介させて頂きます。
そもそも AWS Summit Tokyo とは何か? でしたり、製造業向けにどのようなコンテンツが提供されたか、については以下の予告ブログもご参照ください。
AWS Summit Tokyo は見どころがいっぱい!製造業向け展示・セッションのご紹介
ミニステージ
「AWS における製造業領域のフォーカス分野と製造ブースのデモ展示のご紹介」というタイトルで、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 エンタープライズ技術本部 製造グループ シニアソリューションアーキテクトの鈴木健吾よりミニステージ上で 15 分のプレゼンテーションが実施されました。
AWS が製造業領域でフォーカスしている 5 分野(設計開発、スマートファクトリー、スマートプロダクト&サービス、サプライチェーン、サステナビリティ)、製造業向けリファレンスアーキテクチャ、展示ブースの概要についての解説が行われました。
また、Amazon のフルフィルメントセンターにおいて Amazon Monitron が導入され、センターの何千もの産業機器の潜在的な障害が検出されている様子や、バンクーバー港で年間 350 万個の輸送コンテナを AWS Panorama を使ってコンテナの ID を読み取り、データベースへ連携し、手作業だったコンテナ受入処理を自動化した事例が動画で紹介され、このあとすぐそばのデモ展示会場で現物を直接見られることへの期待感が高まりました。
展示ブースでは多数のお客様から「このデモや展示パネルについての説明資料は配布されていないのか?」といったお問い合わせをいただきました。当日、紙での資料配布は行なっておりませんでしたが、このミニステージのプレゼンに用いられた資料が全ての展示内容を包括して説明したものになっておりまして、こちらからダウンロードいただけます。
是非ダウンロードしていただき、来場された方にとっては振り返り用に、残念ながらご来場いただけなかった方にとっては内容把握用にご活用ください。
ブース展示
製造ブースの全体像は以下のようになります。
モデルファクトリーデモ 1 および製造ダッシュボード : 工場データの可視化 ・ 分析
ミニチュア工場のデモは大きく 2 つのパートから構成されています。前半は、赤、青、白3色の材料を入荷台に置き、自動で真空グリップアームが材料を倉庫へ入庫するところまでになります。後半は、Web 上のオーダー画面から色指定の注文を行い、画像認識技術により対象の材料を倉庫から取り出し、マルチプロセスステーションにて加工が行われ、仕分けベルトコンベアで色ごとの取り出しが行われ、出荷されるところで終了になります。
このようなほぼ自動で入荷〜生産〜出荷が行われる工場における、生産設備の稼働状況などのデータはクラウドに集約され、各製造ラインや製造装置の稼働状態をリアルタイムにダッシュボードへ表示することで、複数工場の現在の稼働状況を遠隔地から把握することを可能とします。
製造ダッシュボードのデモでは、現場で取得した各工程の部品在庫情報と、ERP から取得した各部品の単価情報を組み合わせることで、工場内の在庫の滞留を発見し、在庫金額の高い部品のトレンドを分析することで、キャッシュフローの最適化を行う事例を紹介しました。ダッシュボード構築にはクラウドネイティブな BI ツールである Amazon QuickSight を活用することで、MES (製造実行システム) や ERP などの複数のデータソースを組み合わせた柔軟なデータ分析が可能となります。
クラウドアーキテクチャはパネルに貼り付けられており、工場部分については目の前にある実物と照らし合わせながら構成やネットワークの流れを確認することができ、非常にわかりやすかったと好評をいただきました。また、クラウド部分についても、AWS IoT SiteWise Monitor で作られたリアルタイムモニタリング画面、Amazon QuickSight で作られたビジネス判断用製造ダッシュボード、AWS Amplify などで作られた Virtual Andon 画面をディスプレイやPC モニターで確認いただくことで、「アーキテクチャ図が表現している機能がどういったものかをイメージしやすかった」や、「まさに取り組みたかったことであり、部分的にはほぼこのままの状態で実際の業務に使えるのではないか」といったありがたい声もいただいております。
モデルファクトリーデモ 2 : 外観監査の自動化・デジタルツインによる工場稼働状態の可視化
モデルファクトリーデモ 2 ブースでは、クラウド機能を工場側に拡張させ、機械学習推論をエッジで実行することで、自動化した外観検査をご覧いただきました。傷がついている品がベルトコンベアで搬送されてきた場合、Amazon Lookout for Vision のコンピュータビジョンを使用して製品欠陥を検出し、推論結果を PLC 側にフィードバックし機器の制御を行い、NG 品と出荷品の仕分けを実施しています。
このエッジ推論は、工場ネットワークが途切れてしまった場合でも、工場の稼働を止めずに利用できると好評をいただきました。エッジデバイスには NVIDIA Jetson AGX Xavier が採用されており、推論に要するスピードもディスプレイにリアルタイム表示しておりましたが、おおよそ 200 〜300ms 程度という結果が出ており、実用にも十分耐えられるレベルであるとフィードバックをいただきました。
AWS IoT TwinMaker で構築したミニチュア工場の 3D モデルについては、目の前の現物と照らし合わせて確認した完成度の高さに驚かれている方が多い様子でした。AWS IoT SiteWise で収集したデータをモデルにマッピングし工場の状況をリアルタイムに可視化しており、例えばベルトコンベアが動いている状況では 3D モデルのベルトコンベア部分で動線方向の矢印が表示され、停止している状況では矢印が消える様子など確認いただきました。海外工場など、遠隔地においても稼働状況をリアルタイムで可視化して管理できるイメージを持っていただけたのではないかと思います。
エッジデバイス :産業向け AI サービス( Amazon Monitron 、AWS Panorama )とエッジデバイスの展示
Amazon Monitron 設備の異常を検出
Amazon Monitron は、工場や倉庫等において、機器・設備の予知保全や異常検知をローコストで行うための仕組みで、Amazon Monitron センサーを機器に取り付け、振動や温度データをクラウドに送信し、機械学習によって分析、潜在的な障害を検知してダウンタイムを防ぎます。今回、国内では初の展示となります。
写真のモーターに取り付けられている黄色いセンサー、およびモーターの左にある黄色いゲートウェイのセットが Amazon Monitron です。実物のサイズ感や、アプリ画面をディスプレイで確認いただいたことで、実際に手軽に異常検知が始められる感触を掴んでいただけたのではないかと思います。
なお、現状 2023 年 4 月 20 日時点では、米国の Amazon.com(https://www.amazon.com/Amazon-Monitron-Starter-Kit-Everything/dp/B0851JTCC1/)で販売しており、米国内の住所に発送が可能です。
AWS Panorama 画像・映像の CV 処理
同じくエッジデバイスブースでは、AWS Panorama を用いた棚モニタリングのデモンストレーションも展示しました。AWS Panorama は、機械学習デバイスとソフトウェア開発キット (SDK) の集合体で、オンプレミスの IP カメラ群にコンピュータービジョン (CV) をもたらします。
エッジデバイスブース全体写真(2つ上の画像)の中央奥に IP カメラが設置されています。撮影対象は黒い布で覆われていますが、手前にある PC 画面に中身が映っています。PC画面を拡大したものが以下画像になります。
実際のデモでは、お客様ご自身にボトルを取り出していただき、即座に PC 画面上で在庫不足の赤いアラートが表示されることを確認いただき、さまざまなユースケースで手軽に素早く応用いただけることを体感いただきました。
AWSセッション Manufacturing on AWS ~製造 DX の新潮流~
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 シニア ソリューションアーキテクトの浅野 佑貴より、ステージ上で 40 分のプレゼンテーションが実施されました。
主に製造業のお客様に向けて、デジタル変革を加速する為に、AWS クラウドをどの様に活用すれば良いのか、企画検討や PoC の実施に留まらず変革に繋げていらっしゃる日本のお客様がいらっしゃるという事例や、リファレンスアーキテクチャと共に考え方が紹介されました。
AWS サービスを活用するポイントとしては、産業向けの目的別サービスや検証済みソリューション、リファレンスアーキテクチャを活用して、よくあるユースケースで必要な機能を独自実装せず、小さく始めて大規模に拡大し、小さなスコープで PDCA のサイクルを回していくことが重要であるという説明がありました。
こちらのセッションの資料アーカイブは近日中にAWS公式サイトから公開予定になります。
おわりに
4 年ぶりのオンサイト開催ということで、リモート開催と比べて移動は大変だったかもしれませんが、実物を見ながら自社の関連する課題についてその場で対話して相談できるという、理解の容易さやコミュニケーションの取りやすさや迅速性のメリットを久々に大いに体感いただけたのではないかと思います。
今回展示したデモの解説動画はまた後日ブログでまとめて公開させていただく予定です。
また、今回展示したデモの一部は AWS Japanの目黒オフィスにて常設展示する計画も立てておりますので、今回残念ながらご参加いただけなかった方も後日是非ご来社いただき、生で AWS の製造ソリューションの活用イメージを体感いただけますと幸いです。詳細をブログで報告させていただくときまで楽しみにお待ちください!
著者プロフィール
山田 航司 (Koji Yamada @yamadakj)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト
製造業のお客様を中心にクラウド活用の技術支援を担当しています。好きな AWS のサービスは Amazon Transcribe です。
愛読書は「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」です。