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週刊AWS – 2020/11/30週 (re:Invent 特別編集号)

みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの下佐粉です。
今週も週刊AWSをお届けします。

先週からAWSの年次イベント AWS re:Invent 2020 が開催になりましたね。今回はオンライン開催、無料で参加可能、かつ3週間に渡っての開催と初の試みが多いre:Inventになっています。去年と同様、re:Invent期間中は特別編集号とさせていただき、筆者らが独断と偏見でピックアップした重要アイテムを紹介する形でお送りします。今号はKeynote (Andy Jassy)で発表されたものを中心にピックアップしてご紹介します。

それでは、先週の主なアップデートについて振り返っていきましょう。

2020年11月30日週の主要なアップデート – re:Invent 2020 特別編集号

  • Amazon EC2 Mac インスタンスの発表とGA
    • iPhoneやmacOS用のアプリケーションを開発するエンジニア向けに、macOSがネイティブ動作するEC2インスタンスファミリーが発表され、即時に利用可能になりました。
    • Mac mini とAWS Nitro システムの組み合わせで動いており、例えばVPCに入れる、EBSをアタッチする等、他EC2インスタンスファミリーと同様に操作が可能になっています。
    • macOS 10.14 (Mojave) と 10.15 (Catalina) が選択可能で、利用可能なリージョンは現在北バージニア、オハイオ、オレゴン、アイルランド、シンガポールです。
    • 利用可能なサイズは現在専有ホストのみで、オンデマンド利用は最低24時間からとなっています。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
  • Amazon EC2に多数の新インスタンスが追加、および予告
    • Macインスタンス以外にも、多数の新しいインスタンスファミリーが発表されています。
    • R5bインスタンスは既存のR5と比較して3倍のEBS性能を持つインスタンスです。最大260K IOPS&60GbpsのEBS接続性能が得られるため、ハイパフォーマンスなデータベース用途等に適したインスタンスです。同時にRDS for SQL ServerとRDS for Oracleで利用可能になっています。東京リージョンで利用可能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • D3/D3ebインスタンスは、既存のD2インスタンスの後継にあたり、大容量のHDDをローカルストレージとして備えているため、大規模なHadoop/Spark環境等に適しています。D2と比較してコンピューティング性能は30%、ネットワークパフォーマンスは最大2.5倍に向上します。D3enはD3と比較してvCPUあたりのストレージ量とネットワーク帯域が大きく、より大きいワークロードに適しています。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • M5znインスタンスは、第2世代のカスタムIntel Xeon Scalable (Cascade Lakeマイクロアーキテクチャ ) プロセッサーを搭載し、最大4.5Ghzのターボクロックを実現します。高いCPU性能と、低レイテンシーのネットワーク帯域、 Elastic Fabric Adapter (EFA) も利用可能であり、ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC)等に適しています。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • 上記はすでに利用可能になっていますが、こちらの2つは今後リリースの予告です。G4adインスタンスはAMDのRadeon Pro V520 GPUを搭載したGPUパフォーマンスに優れたインスタンスです。C6gnインスタンスはAWS Graviton2プロセッサ(Armアーキテクチャ)を搭載しており、C6gと比較して4倍のネットワーク帯域、2倍のEBS帯域幅を提供する予定です。
  • パブリックなコンテナレジストリを提供するAmazon Elastic Container Registry Publicをリリース
    • Amazon Elastic Container Registry (ECR)はコンテナイメージのレジストリですが、これが拡張されパブリックにコンテナイメージを共有できるようになりました。AWSアカウントをお持ちであれば50GBまで無料でストレージ領域が利用可能です。Pullする際もAWSアカウントは不要で500GB/月の帯域が利用可能で、AWSアカウントで認証すれば5TB/月まで増やすことが可能です。この帯域はAWS上のシステムからのPullの場合は制限なく(無制限に)利用が可能です。同時にECRパブリックギャラリーも利用可能になっていて、すでに色々なイメージが公開されています。
  • オンプレミス上のリソースでECSワークロードを実行可能にするAmazon ECS Anywhereの発表
    • AWSには、コンテナのオーケストレーションサービスとして、Amazon ECS(2014年リリース)と、Amazon EKS(Kubernetesベース、 2018年リリース)があります。このうちECSはAWS内部でしか利用できませんでしたが、これの拡張であるECS Anywareが発表されました。2021年にリリースの予定です。
    • ECS Anywhereでは起動タスクとして、これまでの”EC2″、”Fargate”に加えて”External”が追加され、AWS外部(オンプレミス)のコンピュートリソースをECSのコントロールプレーンから管理可能になります。(コントロールプレーンは引き続きAWS側で準備され、ユーザは準備不要です)。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • 合わせてEKSをお客様インフラで実行可能にするAmazon EKS Anywareも発表されています。
  • AWS Lambdaで複数の機能拡張を発表
    • サーバレスの実行環境であるLambdaで、複数の機能拡張が発表されました。
    • 料金の課金単位が1ms(ミリ秒)単位になりました(これまでは100ms単位でした)。これは2020年12月の料金計算から適用される予定です。より細かい粒度で計算されるようになったことで、短時間で終わる処理では自動的な費用削減が期待できます。
    • リソース上限が緩和され、最大10GBのメモリが利用可能になりました。同時にvCPUも最大6vCPUまで利用可能になりました。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • コンテナイメージをLambda関数として利用可能になりました。ECRに登録したイメージをLambdaにデプロイできるようになっています。詳しくはこちらのBlogをご覧ください。
  • Amazon S3でオブジェクト更新後の読み取りが”強い整合性”に
    • Amazon S3ではオブジェクト(ファイル)を新規に作成した場合、その読み取りは常に強い整合性(Strong Consistency、最新ファイルが必ず読み込める)でしたが、オブジェクトを更新した直後の挙動は結果整合性(Eventual Consistency)でした。つまりタイミングによっては古いデータを読み取る可能性がありました。
    • これが改善され、オブジェクト更新直後でも常に強い整合性が実現されるようになりました。すでに全リージョンで実現されており、お客様は特に設定変更の必要はありません。また、これまでとほぼ同様のパフォーマンスを実現しています。
    • これにより、S3をデータレイクとして利用してデータを受け渡しするようなケースや、HadoopでHDFSの代わりにS3を使う(EMRFSやS3A経由で)ようなケースで、古いデータを読む可能性を考慮したコーディングが不要になり、よりシンプルにS3を活用いただけるようになりました。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
  • 新しいAmazon EBSボリュームタイプであるgp3がリリース
    • EBSで提供しているSSDのボリュームタイプとしては、汎用のgp2と、より高いIOPSを実現するio1/io2が提供されていますが、gp2の後継となるgp3がリリースされました。
    • gp2のIO性能はボリュームサイズに比例する形で提供されていました。サイズが増加するとそれに比較してIOPSや帯域(スループット)が増加します。これは多くのケースにフィットする方法でしたが、サイズに関係なくIOPSやスループットを調整したいというリクエストもいただいていました。
    • gp3は最小サイズでも3,000IOPSと、125MiB/sの帯域を提供し、サイズ単価も約20%安価になっています。また追加でIOPS、スループットを独立して設定可能になっており(追加料金が必要です)最大16,000 IOPS、1,000 MiB/秒までスケールアップが可能です。これはgp2と比較して4倍のスループットです。既存のgp2は簡単にgp3に移行可能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
  • さらに性能が向上したAmazon EBSボリュームタイプのio2 Block Expressがプレビュー開始
    • EBSのio2ボリュームタイプは、io1と比較して10倍のIOPS/GiBを提供可能にしたものですが、これをさらに高速化したio2 Block Expressがプレビュー開始になりました。
    • io2 Block Expressは新しいEBS Block Expressアーキテクチャの上に作られており、最大 256KIOPS、4,000MBps のスループット、最大64TiB のボリュームサイズを実現します。
    • 新しい設計によりレイテンシーの短縮も実現しており、サブミリ秒でのアクセスが可能になっています。より高いIO性能を必要とするアプリケーションを構築しやすくなるだけでなく、オンプレミス環境等で低レイテンシでストレージを接続していることを前提に設計されたアプリケーションのAWSへの移植が容易になります。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
  • 複数のデータソースからVIEWを作成するAWS Glue Elastic Viewsがプレビュー開始
    • AWS Glue Elastic Viewsがプレビューとして公開されました。複数のデータソースにあるデータから加工してビュー(View)を作成し、ターゲット上にマテリアライズ(実体化)するまでを自動的化してくれるサービスです。
    • ViewはSQL風に定義でき、インフラ管理は不要です。またソース側を継続的にモニタし、変更が発生した場合にViewを更新する機能もあります。
    • 現在東京リージョンを含む、複数のリージョンでプレビュー受付が開始になっています。詳細はホームページをご覧ください。
  • Amazon QuickSightで自然言語で問い合わせができる機能(QuickSight Q)のプレビューが開始
    • サーバレスのBIサービス Amazon QuickSightに、自然言語で問い合わせると、それに適したグラフを作成してくれる機能 (QuickSight Q)がプレビュー公開されました。
    • ”What is the weekly sales in California versus new york this year? (今年のカリフォルニアとNYの週単位の売り上げを比べるとどうか?)”といった質問をそのままQuickSightに入力することで、適切なグラフをQuickSight Qが作成します。現在、対応言語は英語のみです。
    • 具体的な画面イメージや使い方はこちらのBlogを参照してください。
  • SQL ServerからAurora PostgreSQLへの移行を容易にするBabelfish for Amaozon Aurora PostgreSQLがプレビュー開始
    • SQL Server用のSQL通信をAurora PostgreSQL用に変換するBabelfish for Amazon Aurora PostgreSQLがプレビュー公開されました。
    • SQL Serverのネットワークプロトコルに対応し、T-SQLを解釈してAurora PostgreSQLが実行できる形に変換するレイヤーであり、SQL Server 2014移行用に書かれているアプリケーションをAurora PostgreSQL用に移行することを容易にします。プレビューの申し込みはこちらから可能です。
    • 合わせてBabelfish for PostgreSQLとして、OSSとして2021年に公開することが予告されています。
  • Amazon Aurora Serverless v2がプレビュー開始
    • Amazon Auroraをサーバ管理なしで利用できる、Amazon Aurora Serverlessで、新しいv2のプレビューがアナウンスされました。
    • v2では、短い時間に数十万トランザクションが発生するようなケースにも迅速にスケールを拡張できるようになっているのが特徴です。現在はMySQL 5.7互換のAmazon Auroraでプレビューが開始になっています。v2はv1と併存するため、引き続きv1もご利用いただけます。
  • クラウドコンタクトセンターのAmazon Connectに多数の新機能が追加
    • インフラの準備が不要ですぐにコンタクトセンターを開始できるAmazon Connectに多数の新機能が発表されました。ここではそのいくつかを紹介します。
    • Contact Lens for Amazon Connectがリリースされました。顧客との会話をリアルタイム分析(通話中に分析)するための機能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • Amazon Connect Customer Profileがリリースされました。顧客に関する情報をタイムリーにオペレータに提供するための機能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
    • Amazon Connect Voice IDがプレビュー開始になりました。電話の声で顧客を自動認識する機能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。
  • 機械学習のサービスにも多数の新サービスが追加
    • Amazon SageMakerファミリーや機械学習サービスにも多数の新しい発表が行われました。特に製造系ニーズ向けに多くの新サービスがリリースされており、プレスリリースが出ています。その中からここではAWS Panorama Applianceを紹介します。
    • Panorama Applianceは、生産現場にすでに設置されているカメラからの動画を使いコンピュータービジョンによる品質管理や安全性の向上(たとえば作業員がちゃんとヘルメットをかぶっているかの確認)を実現するためのアプライアンス(機器)とSDKのセットです。
    • 分析用のモデルはSageMakerで構築でき、それを工場内に設置したアプライアンスにデプロイすることで、カメラでとらえた動画をすぐに分析することが可能になります。
    • プレビューの申し込みはこちらから可能です。詳細はこちらのBlogをご覧ください。

いつもより長めの内容になりましたが、それでも今号で取り上げることができなかった興味深い新発表がまだたくさんあります。各種の新発表をより広くチェックしたいという方向けには、AWS Black Beltオンラインセミナーで今日(12/7)から毎週月曜18時に、3週にかけて新発表を説明するオンラインセミナーを開催しています。こちらもぜひご覧ください。こちらから申し込みが可能です。

(2020/12/9追記:上記12/7セミナーの資料が公開されました。こちらで閲覧可能です。)

 

それでは、また来週!

ソリューションアーキテクト 下佐粉 昭 (twitter – @simosako)