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AWS Marketplace で SaaS 契約ソリューションの出品を成功させるためのベストプラクティスガイド

この記事は、Juston Salcido による Best practices guide to successfully list your SaaS contract solution in AWS Marketplace の翻訳です。

(訳者注)2022 年 5 月 31 日より、SaaS 契約製品の無料トライアルの機能が利用できるようになっています。本記事内にも無料トライアルに関するガイドが含まれていますが、無料トライアルを実施する場合の最新の推奨方法についてはこちらをご覧ください。

AWS Marketplace は、お客様がソリューションの構築やビジネスの遂行に必要なサードパーティのソフトウェア、データ、サービスを、簡単に検索、テスト、購入、デプロイできるようにするための厳選されたデジタルカタログです。

この記事は、AWS Marketplace に SaaS 契約製品を出品するための支援を目的としています。サンプルとなる製品の現在の階層型の SaaS 料金モデルを取り上げ、特定の AWS Marketplace における SaaS 契約料金モデルに当てはめます。また、営業活動に関連する AWS Marketplace の機能および製品詳細ページを構成するためのベストプラクティスについても説明します。

また、AWS Marketplace に出品する際に考えるべきマーケティングのベストプラクティスについても詳しく説明します。AWS Marketplace にソリューションを掲載することは出発点であり、どのようにオファリングをプロモーションするかは、成功するかどうかの良い予測因子となります。

前提条件

読者の皆様は、すでに AWS Marketplace の販売者として登録が完了していることを前提としています。もしまだの場合は、AWS Marketplace のブログ『7 Tips to Successfully Submit Your Product Listing in AWS Marketplace』をご覧ください。AWS Marketplace の SaaS 製品が必要とする AWS Marketplace との API 統合については、この記事では取り扱いません。

ステップ 1: 料金モデルの定義

AWS Marketplace 向けの料金モデルを定義する際の最初のステップは、現在の料金モデルを確認し、それに最も近い AWS Marketplace の料金モデルに当てはめることです。次のスクリーンショットは、現在の階層型の料金設定モデルを示しており、Standard、Pro、Enterprise といったティア (階層) が含まれています。Standard ティアは、月額 1,000 ドルからで、月間 1,000 回までの API コールを提供します。Pro ティアは、月額 2,500 ドルからで、月間 10,000 回までの API コールと、いくつかの高度な機能が提供されます。Enterprise ティアはカスタム価格で、無制限の API コール、全機能へのアクセス、プレミアムサポートが提供されます。注目すべき点は、Enterprise ティアが価格を公開していないことです。この後、AWS Marketplace の製品詳細ページでこれを実現する方法を紹介します。

今回使用するサンプルの製品は、月額と年額の階層型モデルを採用しているので、それを SaaS 契約料金モデル に当てはめます。これにより、顧客は AWS Marketplace で設定されたティアのリストの中から 1 つのみを選択することになります。

ステップ 2: AWS Marketplace の製品詳細ページの作成

A. SaaS 契約製品の作成

  1. AWS Marketplace 管理ポータルにアクセスします。
  2. Products タブのドロップダウンメニューを開いて、SaaS – Software as a service を選択します。
  3. ページ右側の Create saas product のドロップダウンメニューを開いて、New SaaS Contract を選択します。
  4. これで新しい SaaS 契約の下書きが作成されました。下書きには、AWS Marketplace 管理ポータルの Requests タブからアクセスできます。

Create SaaS Contracts コンソールでは、画面全体に 4 つのタブが表示されます。Onboarding、General、Pricing、Notes です。ここでは、左から右へタブを説明します。入力した情報は自動的には保存されないので、随時タブセクションの左下にある Save ボタンを押すことをお勧めします。

    • Onboading タブ: 販売者登録時に入力した情報に基づいて、適切なラジオボタンを選択します。
      • 入力が完了したら、Next ボタンを選択します。
    • General タブ: ここでは、製品のタイトル、説明、ロゴ、ハイライトなどの、商品詳細ページで必要なすべてのメタデータを入力します。
      • ベストプラクティスとして、顧客の課題に対するソリューションのバリュープロポジションを打ち出し、製品の利点、機能、差別化のポイントを伝え、顧客が AWS Marketplace で購入すべき理由を説明するようにしてください。
      • 料金を公開していないティアの場合: AWS Marketplace の製品は、出品ページで価格を公開する必要があります。この例では、料金を公開していないティア (Enterprise) があるので、カスタム規約と料金も提供していることを顧客に周知しましょう (ハイタッチセールス)。これは、製品説明の最後に記載するのが良いでしょう。ベストプラクティスは、次のような文言を入力することです。
        1. また、私たちはカスタム料金プランも提供しています。掲載されている料金プランのどれもあなたのニーズを満たしていない場合は、メール (sales@awsmptesting.com) か、こちらのお問い合わせページをご利用ください。
        2. AWS Marketplace のプライベートオファーの機能を使用して、規約と料金をカスタマイズして顧客に提示することもできます。プライベートオファーによって、パブリック向けの料金と一緒に掲載することなく、製品に Enterprise ティアを実装することができます。
      • 無料トライアル: AWS Marketplace の SaaS 製品は、ロータッチセールスのため、無料トライアルを直接はサポートしていません。無料トライアルを提供する場合も、製品説明はそれを周知するのに最適な場所です。料金設定の章で、無料のティアを提供する方法を紹介します。
      • 入力が完了したら、Next ボタンを選択します。

B. 料金モデルの作成

Pricing タブ: ここで、製品の階層型料金モデルを、AWS Marketplace における SaaS 契約製品の出品形式に対応させます。

  1. 階層型料金モデルをマッピングするには、Pricing タブで、Target Customer の地域を選択します。これにより、ターゲットとする地域の顧客のみが製品を購入することができるようになります。
  2. オプションとして、Set Product Tax Code のボックスをチェックすると、製品の米国売上税徴収を有効にできます。この機能の詳細については、管理ポータルに記載されているリンクをご覧ください。
  3. この製品が AWS GovCloud (US) の顧客のみを対象としている場合、Set Target Market の下にあるチェックボックスを選択することができます。この場合、SaaS ソリューション全体が AWS GovCloud リージョンで実行される必要があることに注意してください。
  4. Set pricing は、製品のティアを作成する場所です。AWS Marketplace ではこれをディメンションと呼びます。
    1. 前述したように、例題の製品の料金構成は、月契約または年契約のいずれかです。
      • Monthly1 Year のボックスにチェックを入れます。
        • これはいつでも変更可能です。
        • Monthly1 Year にチェックを入れると、Complete fields to customize your pricing chart というセクションが表示されます。
    2. この製品は複数のティアを提供しており、顧客はその中から 1 つを選択できるので、Choose the contract type you want to offer ドロップダウンメニューから、Buyer can choose one tier from multiple tiers offered を選択します。
    3. 製品の利用単位を設定します。これは、お客様への課金方法です。この例では、API リクエストの数に応じて課金します。API リクエストという選択肢はないので、UnitsRequests のどちらかを選択します。Units は、ドロップダウンメニューに課金に使用したい利用単位がない場合の受け皿です。
      • ドロップダウンメニューから、Requests を選択します。
    4. 製品のディメンションまたはティアを、現在の製品のティアと一致するように入力します。料金体系には 3 つのティアがありますが、ここでは 2 つのディメンションのみを記載しています。前述したように、各ティアは価格を公開する必要があるため、価格を公開していない Enterprise ティアは省略しています。
      • ディメンション 1: 現在の料金設定に合わせて、以下の詳細を入力します。
        • Name: Standard
        • Description: 1 ヶ月あたり最大 1,000 回の API リクエスト
        • API name: standard
        • Price/month: 1000
        • Price/ 1 year: 9600
      • ディメンション 2: 現在の料金設定に合わせて、以下の詳細を入力します。
        • Name: Pro
        • Description: 1 ヶ月あたり最大 10,000 回の API リクエスト
        • API name: pro
        • Price/month: 2500
        • Price/1 year: 10000
      • オプション: 無料ティア (ディメンション) の提供: 無料ティアを提供することは可能ですが、その際の注意点は、顧客の使用状況を監視し、無料ティアの制限を超える前に顧客に連絡する必要があることです。これは、顧客が購入前に製品を試すことができる良い方法ですが、顧客の使用状況を監視するために販売者側で余分な作業が発生します。また、実際に無料ティアを出品する代わりに、0 ドルのプライベートオファーを顧客に提供することもできます。
        • Name: Free Tier
        • Description: 1 ヶ月あたり 500 API リクエストまで
        • API name: free
        • Price/month: 0
        • Price/1 year: 0

次のスクリーンショットは、名前が Free Tier、説明が Up to 500 API requests per month、API 名 が free、月額および年額の料金が 0 である ディメンション 1 を示しています。

次のスクリーンショットは、ステップ 2.B.4 で作成したディメンションを示しています。

    1. チームが必要な API 統合作業を行う間、出品された製品の閲覧を許可したい AWS アカウント ID を入力します。最初に製品が公開されたときは、許可された AWS アカウント ID のみが出品された製品を表示できる、いわゆる限定公開の状態になります。API 統合作業を行う技術チームに相談し、彼らがテスト時にログインして製品の出品ページを表示するのに使用する AWS アカウント ID を教えてもらうのがベストプラクティスです。
      • AWS アカウント ID を入力し、Next を選択します。

C. 出品の送信

ステップ 2.B.5 で述べた限定公開の状態にするために、出品を送信します。

  • 出品を公開する AWS Marketplace Managed Catalog Operations (MCO) チームに対する、追加のメモやコメントを入力します。
  • Contact information for this request に、あなたのメールアドレスと必要に応じて組織の他のメンバーを入力します。
  • Review ボタンを選択し、すべての情報が正確であるかどうかを確認します。
  • Submit for Review を選択します。

おめでとうございます!お客様の製品は、公開に向けて Managed Catalog Operations (MCO) チームに送信されました。AWS Marketplace 管理ポータルの Requests タブから、ステータスを確認できます。

掲載審査のリクエストは、通常 3 ~ 5 営業日以内に処理されますが、提出された情報に不備がある場合は、さらに時間がかかる場合があります。

次のステップ

1. API 統合

API 統合を完了するには、3 つの方法があります。

  1. SaaS インテグレーションガイドを使用して、完全な統合を完了します。完全な統合を完了するための推定時間は、2 人の開発エンジニアを使用して 3 週間から 5 週間程度です。この作業は、通常、開発スプリント内で完了することができます。
  2. AWS Quick Start, AWS Marketplace Serverless SaaS Integration を使用します。このクイックスタートは、AWS 上に AWS Marketplace Serverless Software as a Service (SaaS) 統合をデプロイします。登録済みの AWS Marketplace セラーは、これを使用して、新しい SaaS 製品を統合するための軽量なサーバーレスオプションを導入できます。サーバーレス統合を完了するまでの推定時間は、1 人の開発エンジニアまたは技術者を使用して 10 ~ 30 分程度です。
  3. 次のようなサードパーティの ISV イネーブルメントパートナーを使用します。

2. マーケティング計画

ソリューションの需要を喚起するためのマーケティング活動を検討し始めます。AWS Marketplace を、AWS の顧客と取引するための調達チャネルとして考えましょう。ソリューションのマーケティングを計画することが重要です。そのために、以下のような活動を完了することを検討してください。

  • AWS Partner Network (APN) に参加する。これは、APN のメンバーにプログラム、技術、ビジネス、および Go-to-market のサポートを提供することに焦点を当てたプログラムです。
  • すでに APN のメンバーであれば、APN Customer Engagement Program (ACE) に参加して、AWS との共同販売を開始する方法について検討する。
  • AWS Marketplace でのローンチに関するプレスリリースを作成する。
  • AWS Marketplace ブログへの寄稿を検討する。これらのブログ記事は、チュートリアルや、貴社の製品や他の AWS サービスを使用して一般的な顧客の課題を解決する方法を示すものが望ましいです。
  • AWS Marketplace 180-day GTM Academy は、AWS Marketplace で提供する製品の需要創出キャンペーンの構築、活性化、測定を支援するセルフサービス型の Go-to-Market (GTM) リソースを提供するオンラインポータルです。
    • 180-day GTM Academy ポータルに登録するには、AWS Marketplace 管理ポータル (AMMP) にログインします。
    • 初めて利用する場合は、まず登録を行ってください。
    • Marketplace Resources または Announcements セクションで、180-day GTM Academy のリンクを選択します。
    • 登録が完了したら、180dayGTMAcademy.com にサインインします。

3. 質問をする

出品や開始方法に関する質問がある場合は、以下のリソースをご利用ください。

  • スタートアップ企業であれば、AWS Marketplace Startup program に該当するかどうかを確認します。
  • 販売者登録を行い、管理ポータルの Contact Us フォームを使用して、Marketplace Business Development チームのメンバーとの会話をリクエストします。
  • AWS アカウントマネージャーに連絡し、AWS Marketplace Emerging Tech Business Development Team につないでもらいます。

まとめ

この記事では、現在の料金体系をうまく当てはめて AWS Marketplace に SaaS 契約ソリューションを出品する方法を紹介しました。AWS Marketplace は、無料トライアルやティア、プライベートオファーなど、ロータッチとハイタッチの両方の販売活動を促進することができることを示しました。また、考慮すべきマーケティングのベストプラクティスと、SaaS API 統合を完了するために利用可能な 3 つの異なる方法についても触れました。料金モデルを定義したら、AWS Marketplace 管理ポータルにログインし、ステップ 2 で説明した手順に従ってください。その他の質問がある場合は、前述の質問をするのセクションに記載されているチャネルを使用して、ご連絡ください。

翻訳はパートナー SA の櫻谷が行いました。