Amazon Web Services ブログ

Amazon AppFlowを用いてSAP ERPとBWからデータ抽出

はじめに

AWSでは、SAPシステムをクラウドに移行するだけでなく、組織内のデータ活用や分析機能の変革もしたいというお客様の声をよく耳にします。さらに、SAPデータとSAP以外のデータを組み合わせて、AWS上で統一のデータおよび分析ソリューションも求められています。そのため、先日、お客様の声にお応えして、SAP ERP/BWシステムのデータをAWSサービスで使えるように、Amazon AppFlow SAP OData Connectorを使用してデータ抽出できるようになったことを発表しました。今回の発表により、SAPからAmazon S3へのデータ抽出フローを数クリックで簡単に設定できるようになりました。

多くのSAPのお客様は、既にAWSでのデータレイクを活用して、SAPとSAP以外のデータを連携でき、AWSの業界をリードするストレージや分析サービスを利用しています。中にはすでに数年前から行っているお客様もいます。例えば、Bizzy社、Invista社、Zalando社、Burberry社、Visy社、Delivery Hero社、Engie社などです。しかし、多くのお客様はまだ、SAPシステムからデータを抽出するための最良の選択肢について、追加のガイダンスを求め続けています。

ブログSAP on AWSと組み合わせたデータレイクの構築では、SAPからデータを抽出するために利用できる様々なデータ抽出パターンを紹介し、SAP Beyond Infrastructure Immersion Daysでは、これらをハンズオン・ラボとして提供しています。

今回の発表では、これらの選択肢が拡大され、お客様はAWS上でSAPデータの保存や分析をするための選択肢がさらに増えました。このブログでは、新しいAppFlow SAP OData Connectorを使ってSAPからのデータフローを実行する方法をご紹介します。

Operational Data Provisioningベースの抽出

Operational Data Provisioning(ODP)フレームワークは、プロバイダとサブスクライバーのモデルを使用して、SAPアプリケーションとデータ格納ターゲット間のデータレプリケーション機能を実現します。ODPは、フルデータ抽出だけでなく、オペレーショナルデルタキューを使用した差分データ抽出もサポートします。

DataExtraction

SAP Data ServicesおよびSAP Data Intelligenceなどのソリューションは、ネイティブのRemote Function Call(RFC)ライブラリを使用してODPと連携できます。SAP以外のソリューションであるAWS Glue、AWS Lambda、Amazon AppFlow SAP OData Connectorは、HTTPまたはHTTPS経由で連携するためにODATAレイヤーを使用できます。

Amazon AppFlowを使用する主なメリットは何ですか？

私たちのお客様は、イノベーションにより自分のお客様に価値を提供するために、迅速な方法を探しています。開発者がビジネス価値につながる作業に集中できるように、多くの方が、自分で構築したりメンテナンスしたりすることなく、あらかじめ用意されたコネクタを使用したいと考えています。

AppFlowBenefits

Amazon AppFlowは、SAP、Salesforce、Zendesk、Slack、ServiceNowなどのSaaS（Software-as-a-Service）アプリケーションと、Amazon S3、Amazon RedshiftなどのAWSサービスとの間で、数回のクリックで安全にデータを転送することができるフルマネージドの統合サービスです。AppFlowでは、エンタープライズ規模のデータフローを、スケジュール、ビジネスイベントに応じて、あるいはオンデマンドで、選択した頻度で実行することができます。フィルタリングや検証などのデータ変換機能を設定することで、追加作業が必要なく、フローの一部としてリッチですぐに使えるデータを生成することができます。また、AppFlowは移動中のデータを自動的に暗号化し、AWS PrivateLinkと連携したSaaSアプリケーションでは、パブリックインターネット上にデータが流れないように制限することができ、セキュリティを向上することができます。

Amazon AppFlow SAP OData Connectorについて

Amazon AppFlow SAP OData Connectorは、Amazon S3と連携しているため、シンプルなインターフェースでデータを簡単に設定し、複数のファイルフォーマットであっても対象となるS3バケットに抽出することができます。Amazon S3にデータが入っていれば、AWSのネイティブサービスやサードパーティのソリューションから使用可能になります。

Amazon AppFlow SAP OData Connectorは、セキュリティとプライバシーのレイヤーを追加するAWS PrivateLinkをサポートしています。AWS PrivateLinkを使用してSAPアプリケーションとターゲットのAmazon S3バケットの間でデータが流れるとき、トラフィックはパブリックインターネットを使用せず、AWSネットワーク内に留まります。（Private Amazon AppFlow flowsの詳細参照）

This image shows how AWS PrivateLink is used to keep data secure between the source application and the target S3 bucket

AWSコンソールのわかりやすいユーザーインターフェースで、SAPからデータフローを接続・設定することができます。必要な作業は、接続を作成し、Amazon AppFlowでフローを構成することだけです。

AppFlowconnectflow

Amazon AppFlowのSAP OData接続を新規に作成するために必要な設定入力は以下の通りです。

  • SAPアプリケーションのURL
  • SAP ウェブサービスポート
  • SAP クライアント
  • SAP ログオン言語
  • SAP アプリケーションカタログサービスパス
  • 認証方法 (Basic Auth または OAuth2)

SAP接続を作成する方法の詳細は、Amazon AppFlow SAP OData Connectorのドキュメントに記載されています。

Amazon AppFlowで新しいSAP ODataフローを作成するための設定手順は以下の通りです。

  1. フローの設定
  2. SAPサービスの指定
  3. SAP Service Entity Sets の選択
  4. フロートリガーの定義(オンデマンドまたはスケジューリング)
  5. フィールドのマッピング、バリデーションの定義、フィルタの設定
  6. フローの実行

フローの設定では、OData を使って抽出する SAP サービスエンティティを定義できます。さらに、ソーステーブルのフィールドを抽出先とマッピングすることで、要件に応じてデータをフィルタリングすることができます。

最後に、フローをオンデマンドで実行するかスケジュールで実行するかを指定して、フローを有効化します。ここでは、実行頻度や差分転送するための詳細情報も設定します。

This image shows the process of building your data flow with Amazon Appflow-- including connecting source/ destination, mapping source fields to destination, adding filters/ validation, and finally, activating or running the flow.

Amazon S3にデータを書き込む際に対応するファイルフォーマットは以下の通りです。

  • JSON
  • CSV
  • Parquet

また、データ転送に、すべてのレコードを集約するか、タイムスタンプを付けて複数のファイルに分割するかを指定できます。また、それらを異なるS3フォルダに配置することもできます。

詳細なガイダンスについては、YouTubeでのExtract Data from SAP applications to AWS services with Amazon AppFlowデモビデオをご覧ください。

SAPシステムをオンプレミスで運用しているお客様は、SAP ODataエンドポイントのパブリックIPアドレスを使用する代わりに、AWS VPNまたはAWS Direct Connect接続を使用してAWS PrivateLinkを構成することで、Amazon AppFlow SAP OData Connectorを使用することもできます。

SAP ODPアプローチを使用するメリットは以下の通りです。

  • 抽出するためのビジネスロジックがアプリケーション層でサポートされているため、抽出されたデータのビジネスコンテキストが完全に保持されます。
  • SAP アプリケーションのすべてのテーブル関係、カスタマイズ、およびパッケージ構成も保持されるため、変換作業が減少できます。
  • 変更データのキャプチャは、オペレーションデルタキューメカニズムを使用してサポートされています。OData クエリパラメータを使用して、マイクロバッチによるフルデータロードもサポートされています。
  • SAP Data Services と SAP Data Intelligence は、RFC レイヤーを使用した ODP 統合にアクセスできるため、SAP からデータの抽出のパフォーマンスが更に高くなる可能性があります。SAPはSAP以外のアプリケーション向けにODPへのネイティブなRFC統合機能を開放していないため、AWS GlueやLambdaはODATAへのアクセスするにはHTTPベースを使う必要です。逆に言えば、オープンな統合技術で標準化したいお客様にとっては、この点はメリットになるかもしれません。ODPの機能と制限についての詳細は、ODP（Operational Data Provisioning）FAQを参照してください。
  • Amazon AppFlowは、サードパーティのアプリケーションの必要性をなくし、総所有コストを削減します。簡単な設定とAWSマネジメントコンソールに直接統合されたUIにより、SAPシステムとAppFlowを素早く接続し、データをAmazon S3に抽出することができます。これは、抽出のためのSAP ODataの設定を除いて、お客様の開発を必要としません。

Amazon AppFlowの価格

Amazon AppFlowは、自社でコネクタを構築したり、他のアプリケーション統合サービスを使用したりする場合と比較して、大幅なコスト削減のメリットを提供します。AppFlowを使用するための初期費用や手数料はなく、お客様は、実行したフローの数と処理したデータ量に対してのみお支払いが必要です。

SAPのフロー実行が成功する度に料金が発生します（フロー実行とは、Amazon S3にデータを転送するためのSAPシステムへのコールです）。新しいデータの有無を確認するフロー実行は、SAPシステムから転送可能な新しいデータがない場合でも、フロー実行のコストが発生します。

Price per flow run $0.001
Maximum number of flow runs per AWS account per month  10 Million

Amazon AppFlowのデータ処理、Amazon S3、AWS Key Management Service（使用する場合）には追加料金がかかります。

詳細な価格は、Amazon AppFlowの価格ページで確認できます。

まとめ

Amazon AppFlow SAP OData Connectorは、SAPデータを他のAWSサービスで使用できるように、ODataを使用してSAPデータをAmazon S3に直接抽出する簡単で効率的なサービスを提供します。AWS上でSAPシステムを運用しているお客様は、AWSマネジメントコンソール内でこのサービスの使用を開始できます。また、オンプレミスでSAPシステムを運用しているお客様も、SAPデータを直接Amazon S3に抽出し、パワフルなAWS Data Lakesの作成を開始でき、SAPへの投資やエンタープライズデータからより多くの価値を得られることが可能になります。

使い始めるには、Amazon AppFlowのページをご覧ください。

AWSが5000以上のSAPのお客様にイノベーションプラットフォームとして選ばれた理由については、SAP on AWSのページをご覧ください。

翻訳はSpecialist SA トゥアンが担当しました。原文はこちらです。