Amazon Web Services ブログ

【お客様事例】株式会社フジテレビジョン 総合コンテンツ管理システムの構築

株式会社フジテレビジョン様では、2019年度の送出マスター設備更新に合わせて、番組素材を一元的に管理する「総合コンテンツ管理システム」を開発・導入されました。これは、従来放送局の送出マスター設備のサブシステムとして構築していた「番組バンク」と呼ばれるシステムとは大きく異なります。クラウドを活用することで、社内設備を最小限にしたシンプルなシステムとなっています。このシステムでは、放送用番組素材だけではなくインターネット動画配信や番組販売用の番組素材も扱い、アーカイブシステムも包括しています。

2020年12 月に開催されたAWS re:Invent 2020では、フジテレビジョン様に「総合コンテンツ管理システム」の導入経緯と効果、今後の展望についてご登壇いただきました。本ブログでは、こちらのセッションをご紹介させていただきます。

登壇者

株式会社フジテレビジョン 井村紀彦様
アマゾンウェブサービス ジャパン株式会社 山口賢人

資料

番組完成素材を一元的に管理するコンテンツ管理システムの構築 [Slide]

講演動画

AWS Content Lake コンセプト

メディア業界では、データからより深い洞察を得るために一般的なビジネスメトリックスだけではなくコンテンツの情報を活用することが重要です。AWSではビジネス分析のためのデータレイクにコンテンツ情報をを取り込んだものをContent Lakeと呼んでいます。Content Lakeでは、1つのレポジトリでコンテンツと付随する情報が一元的に管理されていることで誰でも常に最新のデータにアクセスすることができます。それによりコンテンツの再活用・再利用を効率的に行ったり機械学習サービスを利用すること でContent Lakeを更にリッチにしていくことができるようになります。

大容量のデータを扱うContent Lakeではストレージの選択が重要です。Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)では、用途に応じたストレージクラスを提供しており、放送や配信に向けたメディア処理やプレビューなど即座のアクセスが求められる場合は”S3 標準”を利用し、メディアを長期保存する場合は”Amazon S3 Glacier Deep Archive“を利用いただくことでコストとパフォーマンスを最適化することができます。

Content Lakeを構築するためのキーとなるシステムがMedia Asset Management(MAM)です。MAMを導入することで、コンテンツがどのように入力され、どのようなプロセスを経て活用されていくのかを一元的にトラッキングすることが可能になります。さらにMAMでは多種多様のメディアフォーマットやアセットタイプを管理し、配信方法に最適なワークフローを定義します。

CX_unified_mam

 

番組完成素材を一元管理するコンテンツ管理システム

コンテンツファーストの考え方へ

株式会社フジテレビジョンは地上波、BS、CSの放送事業に加え、フジテレビオンデマンド(FOD)と呼ばれる動画配信や番組販売といった放送以外の事業も行われています。これらの番組素材を一元管理して効率よく複数のサービスに対してコンテンツを提供していくことを目的としたシステムが総合コンテンツ管理システムとなります。本システム導入までは視聴サービスごとに別々のワークフローで運用・管理していたため、視聴サービス間での番組素材の共有が柔軟に行えず、会社として最適化を果たしていないことが課題だった、とコンテンツ管理システムの必要性について説明されています。この課題を解決するために個別ワークフローを廃止し、番組コンテンツを一箇所にまとめて複数のサービスに供給していくコンテンツファーストへ方針を転換されました。

現在は以下のように、MAMをベースに構築した総合コンテンツ管理システムで番組素材を一元管理し、納品と準備のオペレーションをできる限り各視聴サービスで統一されています。

CX_unified_mam

フジテレビのクラウドジャーニー

これまでのフジテレビジョンのクラウドジャーニーについてもご紹介して頂きました。2014年からクラウドの検証を開始、2015年にオンラインの納品システムを、2017年には初めてクラウドで番組素材を扱ったCS番組向けの搬入出システムの構築を行われました。2018年には、プチフジと呼ばれる配信チャンネル用のクラウドプレイアウトシステムを開発し、2019年にはCMAF-ULLによる超低遅延配信の実用、2020年にはスポーツ得点板を画像認識し配信のためのCG化を行うなど、様々なエリアでクラウドを活用いただいています。

コンテンツ一元管理のメリットと課題

総合コンテンツ管理システムでは、すべての番組コンテンツは納品後、放送・配信準備を経てAmazon S3に保存されます。このレポジトリにはコンテンツの検索・プレビュー、配信のためのトランスコードなど、様々なアクセスがあります。コンテンツが一元管理されているため、誰もが用途に合わせて最新のデータへアクセスすることができます。そのため現在計画中の系列局向けの番組販売システム(新FileX  ※2021年4月より稼働)のような新しいサービスへの拡張も容易になっています。また各視聴サービス間のワークフロー統合により、CSチャンネルでの再放送処理に掛かる作業量は導入後約半分になっています。システムのクラウド化に伴いオンプレミスの放送機器が約半分になり、メンテナンスやサポート期限切れへの心配から解放されています。

一方で過去コンテンツの多くはまだ倉庫に保存されており、見方を変えると、本システム導入によりクラウドというコンテンツの保管場所が増えてしまったという課題を持たれています。

CX_unified_mam

今後の計画

今後の展開として、真の一元管理を目指すために、10PBを超える過去コンテンツのマイグレーションを計画されています。そして、本システムを軸にクラウドプレイアウトの構築、リモート編集環境の整備、AI/MLを活用したコンテンツの自動メタ付与、コストの可視化など機械学習や深層学習、自然言語処理を使ってコンテンツの付加価値や視聴体験の向上へのアイデアを共有いただきました。

CX_unified_mam

おわりに

コンテンツ提供が多様化し、4K/8Kなど高画質化の期待とともに、制作されるコンテンツは大きく増加しています。コンテンツを多様な方法でマネタイズしていくこともメディアビジネスではますます重要になってきています。このような中で、コンテンツを効率良く管理し、放送・配信・販売へシームレスに繋げていくために、クラウドの活用がキーとなると考えています。本記事が、コンテンツ管理システムの開発やメディアオペレーションの改善を検討されているお客様へのヒントとなれば幸いです。


AWS Media & Entertainment 参考コンテンツ

AWS Media & Entertainment Blog (日本語)

AWS Media & Entertainment Blog (英語)

AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp

※毎月のメルマガをはじめました。最新のニュースやイベント情報を発信していきます。購読希望は上記宛先にご連絡ください。

このブログはSA小林、BD山口が担当しました。