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Amazon AppStream 2.0 のGPU強化によるストリーミングインスタンス
re:Invent 2016 でリリースした Amazon AppStream 2.0 についてお知らせします。このアプリケーションストリーミングサービスは、デスクトップブラウザに Windows アプリケーションを配信することができます。
フルマネージド型の AppStream 2.0 は、多目的、コンピュート最適化、メモリ最適化のストリーミングインスタンスでアプリケーションを実行することにより、一貫性のあるスケーラブルなパフォーマンスを提供し、安全で忠実度の高いストリーミングプロトコルの NICE DCV を介して配信します。エンタープライズおよび公的機関のお客様は、レガシーアプリケーションストリーミング環境の代わりにオンプレミスでインストール済みの AppStream 2.0 をすでにご利用されています。こうしたお客様は AppStream 2.0 を使用して、商用アプリケーションおよびビジネスアプリケーションをデスクトップ ブラウザに配信しています。ISV をご利用されているお客様はコードを変更せずに、AppStream 2.0 を使用してアプリケーションをそのままクラウドに移動しています。こうしたお客様はデモ、ワークショップ、企業の SaaS プランなどに注目しています。
高評価を頂いている AppStream 2.0 には新しい機能が迅速に追加されています (AWS の平均に比べても速い方です)。今年に入ってからすでに image builder、SAML 2.0 のフェデレーティッドアクセス、CloudWatch モニタリング、Fleet Auto Scaling、シンプルなネットワークセットアップ、ユーザーファイル用の永続的ストレージ (Amazon S3 によりバックアップ)、VPC セキュリティグループのサポート、ユーザー向けのウェブポータルを含む組み込みのユーザー管理が追加されています。
新しい GPU によるストリーミングのインスタンス
専用のデザイン、エンジニアリング、HPC、メディアアプリケーションをユーザーに提供するために AppStream 2.0 を使用したいというリクエストを数多く頂きました。こうしたアプリケーションは、通常グラフィックスを集中的に使用し GPU (グラフィックスプロセッシングユニット) と組み合わせた高額で高性能の PC で実行するように設計されています。こうしたアプリケーションのハードウェア要件により、定期的または時折アクセスする場合のみ使用することでコストを抑えることが一般的でした。そして、最近になってまた新しい要件が追加されました。ほとんどの場合、こうしたアプリケーションはクラウドで保存、処理、安全に維持することが適切とされる大量の機密データへの共有済みの読み書きアクセスが必要です。このようなユーザーやアプリケーションのニーズに応えるため、AWS は 2 つの新しいタイプのストリーミングインスタンスをリリースすることにしました。
Graphics Desktop – G2 インスタンスタイプをベースにした Graphics Desktop インスタンスは、CUDA、DirectX、レンダリング用の OpenGL を使用するデスクトップアプリケーション向けに設計されています。こうしたインスタンスは 15 GiB のメモリと 8 vCPU を備えています。AppStream イメージまたは AppStream フリートを設定する際に、このインスタンスファミリーを選択できます。
Graphics Pro – 最新の G3 インスタンスタイプをベースにした Graphics Pro インスタンスは、NVIDIA API を使用または大量のメモリへのアクセスを必要とするハイエンドで高性能のアプリケーション用に設計されています。こうしたインスタンスには 3 つのサイズがあり 16 – 64 vCPU まで対応でき、122 – 488 GiB までのメモリを提供します。繰り返しになりますが、AppStream フリートを設定する際にこのインスタンスファミリーを選択できます。
ストリーミングアプリケーション環境の起動、実行、スケールの方法に関する詳細は「Amazon AppStream 2.0 でデスクトップアプリケーションストリームをスケールする (Scaling Your Desktop Application Streams with Amazon AppStream 2.0)」をご覧ください。
前述のとおり、こうした 2 つのインスタンスタイプのいずれかを使用して AppStream イメージを構築することができます。これでアプリケーションのテストや微調整を行い、インスタンスの動作を見れるようになります。
ストリーミングインスタンスインアクション
AWS は新しいインスタンスタイプのプライベートベータプログラムで複数のお客様と協力してきました。AppStream 2.0 を介してストリーミングしているアプリケーションの例を (スクリーンショットも) いくつかご紹介しましょう。
AVEVA は海運業、電力産業、プラント業界、海底油田およびガス産業において、エンジニアリングデザインと情報管理ソフトウェアソリューションで世界をリードする企業です。大規模な資本投入を伴うプロジェクトの一部として、同社の顧客はエンジニアリングの専門家から成る多数のグループをまとめて、デジタルアセット製作の共同作業を行う必要があります。この要件をサポートするため、AVEVA はストリームしたエンジニアリングアプリケーションのストリーム送信と世界中のエンジニアと共有するスケーラブルプロジェクトデータ環境へのアクセスを組み合わせた SaaS ソリューションを構築しています。新しいインスタンスは AVEVA がクオリティとパフォーマンスを最大限に活用しながら SaaS のエンジニアリングデザインソフトウェアを送信できるようにします。次のスクリーンショットは Everything 3D アプリが AppStream からストリームされている様子を表したものです。
日本の多国籍自動車メーカーの Nissan は、高価なグラフィックワークステーションで 3D シミュレーションソフトウェアを使用して自動車スペシャリストをトレーニングしています。The DiSti Corporation が開発したトレーニングソフトウェアは、スペシャリストが作業する車のリアルな 3D モデルを使用しながら、メンテナンスのプロセスをシミュレートできるようにします。AppStream 2.0 の新しいグラフィック性能により、Nissan は低価格の PC で実行するデスクトップブラウザに向けて、最新情報を含むトレーニングツールをリアルタイムで配信できるようになりました。同社のスペシャリストは、実にリアルな車のレンダリングを操作できるようになり、効率性の高いメンテナンスオペレーションのトレーニングや計画を立てられるようになりました。
Cornell University はアメリカのニューヨーク州イサカにあるアイビーリーグの私立大学で、ランドグラント大学です。同大学はコースワークや授業内容、リサーチをサポートするために、AutoDesk AutoCAD や Inventor といった高度な 3D ツールを学生や職員に提供しています。今までは、こうしたツールを使えるのは研究室や教室にある GPU によるワークステーションに限られていました。AppStream 2.0 はあらゆるデスクトップで実行するウェブブラウザでアプリケーションを提供できるようにし、ローカルワークステーションで使用しているかのように実行することができます。研究室や教室にある利用可能なワークステーションだけに限定されることがなくなり、自分のデバイスでコースソフトウェアにアクセスできるようになりました。このように柔軟性が増したことで、職員がコーススケジュールを作成する際に研究室を利用できるかどうか考慮する必要がなくなりました。同大学の AppStream で実行している Autodesk Inventor Professional のコピーはこちらをご覧ください。
提供開始
グラフィックスストリーミングインスタンスファミリーはどちらも米国東部 (バージニア北部)、米国西部 (オレゴン)、欧州 (アイルランド)、アジアパシフィック (東京) のリージョンで今すぐご利用いただけます。アプリケーションは Windows 2012 R2 環境で実行する必要があります。また、DirectX、OpenGL、CUDA、OpenCL、Vulkan を使用することもできます。
米国東部 (バージニア北部) リージョンでの Graphics Desktop インスタンスの料金は 1 時間あたり 0.50 USD、Graphics Pro インスタンスの料金は 1 時間あたり 2.05 USD です。経済的な時間単位の支払い方法で AWS クラウドにて独自のシミュレーション、視覚化、HPC ワークロードを実行できます。Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)、Amazon Simple Storage Service (S3)、AWS Lambda、Amazon Redshift、その他の AWS サービスですばやい低レイテンシーアクセスを利用し、データ処理前後を扱うワークフロー処理を構築することもできます。
— Jeff;