AWS DeepRacer 対面レース日本一は誰の手に ?  

AWS DeepRacer Japan Championship Cup 頂上決戦レポート

2024-08-01
デベロッパーのためのクラウド活用方法

Author : 服部 京子

去る 2024 年 6 月 20 日 ~ 21 日、強化学習で自動走行するラジコンカー「AWS DeepRacer」の物理トラックでのレース 日本一決定戦が AWS Summit Japan (@幕張メッセ) にて「Japan Championship Cup」として開催されました。この記事ではあらためてAWS DeepRacer の概要と、AWS DeepRacer Japan Championship Cup について詳しくお伝えします。


AWS DeepRacer とは?

AWS DeepRacer は楽しみながら AWS と機械学習を学ぶことのできるプログラムです。強化学習のモデルで自律走行する1/18 スケールのラジコンカー、もしくはそのシミュレーターを使ってレースを楽しむことが出来ます。スキルレベルに左右されず気軽に機械学習、そしてクラウドを学ぶことのできるAWS DeepRacer は、2018 年の AWS re:Invent での発表以来、世界各国で多くの人に親しまれてきました。その数は 150 か国以上、32 万人を超えています。

AWS DeepRacer は以下のコンポーネントで構成されています。

  • AWS DeepRacer コンソール : シミュレートされた自動運転環境で強化学習モデルをトレーニングし、評価する AWS 機械学習サービス
  • AWS DeepRacer Car (デバイス) : 自動運転用にトレーニングされた AWS DeepRacer モデルで推論を実行できる 1/18 スケールの ラジコンカー
  • AWS DeepRacer リーグ : 世界初のグローバルな自律型レースリーグです。賞品、栄光、ワールド チャンピオン カップへの出場権を得るためのレース

なおレースの種類としては、大きく分けて、AWS DeepRacer Car を使用し物理的なトラックで行う「対面レース」、AWS DeepRacer コンソールのシミュレーター上で行う「仮想レース」の 2 種類があります。

以下にレースに参加するまでのステップをご紹介します。この記事の後半で取り上げるJapan Championship Cup は「対面レース」ですが、モデル作成、トレーニング、評価は仮想レースと同じです。


レースに参加するまでの大まかなステップ

ステップ 1 : モデルを作成する

AWS DeepRacer を走らせるためには強化学習の「モデル」が必要になります。詳しいモデル作成方法はこちらをご覧ください(モデルの作成には AWS アカウントが必要となります)。

ステップ 2 : モデルをトレーニングし、評価する

モデルを作成した後、シミュレーター上で評価します。初回のモデルでそれなりに走るモデルになっている場合もありますが、想定通りの走りを実現するためにはトレーニングを行う必要があります。トレーニングは複数回行うことが望ましく、トレーニング→評価を繰り返すこととなります。トレーニングと評価の方法はこちらです。
※モデルの作成 ~ 評価 ~ トレーニングの一連の流れにおいてはAWS使用料金が発生します。

ステップ 3: 仮想レースに参加する

トレーニングと評価を行い、一定の満足が得られるモデルが出来たら仮想レースに参加してみましょう。公式レースである AWS DeepRacer リーグでは 10 月末まで毎月仮想レースが開催されており、誰でも参加することができます。世界中のレーサーたちと勝負し腕試ししましょう。レースへの参加はこちら

理想の走りを実現するまでにはそれなりに時間を要する場合がありますが、「まず走らせてみる」ことを目的とするのであれば 1 時間弱でモデルは完成しますので、ぜひチャレンジしてみてください。

ステップ 1 ~ 2 については、オンデマンド動画で詳しくその方法を学習することができます。ご興味のある方はぜひ こちらの動画 もご覧ください !

2018 年の発表以後、毎年 AWS re:Invent では公式リーグである AWS DeepRacer リーグの世界大会が開催され、予選リーグを勝ち進んだファイナリストたちが熱い戦いを繰り広げてきました。2019 年の世界大会では日本のレーサー Sola さん、Fumiaki さんが優勝、準優勝という快挙を成し遂げられています。

2024 年の世界大会に進むためには、上記ステップ 3 の仮想レースで上位入賞することが必要です。まだ世界への切符は残っていますので、ぜひ読者の皆さんも挑戦されてみてはいかがでしょうか。


AWS DeepRacer Japan Championship Cup 頂上決戦レポート

AWS Summit では、毎年対面レース日本一を決めるレースを開催しています。今年も 100を超える熱い戦いが幕張メッセで繰り広げられました。

まずは簡単に、今年のレースのルールについておさらいしましょう。

レースのルール

  • レース形式:タイムトライアル
  • 持ち時間 : 2 分
  • 使用するトラック:「Smile Speedway」(反時計回り)
  • コースアウト回数制限:無し。
    コースアウトとは、4 輪すべてがコースから出てしまった状態を言う
    何度コースアウトしてもよい。ただしコースアウト戻しは持ち時間の中で行われる。
  • レース中のモデル変更:可能
    AWS DeepRacer Car には複数のモデルをロードすることが出来るため、持ち時間内であればモデル変更が可能
  • 6月21日終了1時間程度前からそれまでのベストラップ上位6名による決勝戦を行い、決勝戦でのベストラップ1位、2位、3位を表彰する。

いよいよレース開始 ~決勝進出を目指して

2024 年 6 月 20 日12:00、多くのお客様が見守る中、いよいよレースがスタートしました。実況担当は 3 年連続で吉﨑智宏さん (写真左)。なめらかでよどみないしゃべりで長丁場のレースを盛り上げてくださっています。

今年のトラック「Smile Speedway」 はもともと AWS DeepRacer Championship Cup 2019 のトラックとしてリリースされたもので、昨年の「A to Z Speedway」と比べると少し複雑な形状となっています。スタートしてすぐに最初のカーブがあり、その後も複数のカーブが待ち受けています。速いレーサーでもラップタイム (1 周あたりのタイム) 約 10 秒が出せるかどうかがポイントになるでしょう。

この記事では決勝に進出した 6 名のレーサーのレースを振り返りながら、最終結果をご紹介します。

「barkingdog_DNPds」さんは、一番目のレーサーとして登場。緊張感の漂う中でしたが、安定した走りで「10.053」という好タイムを叩き出しました。その後のチャレンジで「8.914」までタイムを上げてきました。

昨年の日本大会「Summit Circuit」 2 位の実績を持つ「m45」さん。最初のレースは慎重なスタートからの入りでしたが、ラップを追うごとに 14 秒台、10 秒台、そして 9.822 という好タイムを出しました。その後のチャレンジで、攻めた走りを展開し、「8.722」という驚異のタイムが生まれました。

2022 年の日本大会「Summit Circuit」優勝の同年アジア大会優勝の実績を持つ「kashi」さん。コースアウトの少ない安定した走りで「9.112」の好タイムが出ました。

「PITS-TK」さんは、会社の皆さんと切磋琢磨しあいながら上位入賞を目指して参戦されました。常に上位に居続け、最終的に 9.193 を出しました。

「Fumiaki_DNP」さんは、2019 年の re:Invent で開催された世界大会で準優勝を勝ち取った方です。走りの美しさに定評のあるFumiaki さんは、 9.513 の好タイムで決勝に進みました。

「TrustBase_Kotake」さんは、Summit のレースで上位に名を連ねるのは初となるレーサーです。他の上位レーサーも注目する中、「9.551」のタイムを出し決勝進出となりました。

優勝トロフィーは誰の手に?~決勝戦

こうして 6 名の決勝進出者が決まりました。これまでの戦いを敢えて「予選」と呼ぶとすると、予選進出のレーサーとタイムは以下のとおりです (敬称略)。

1 位 : m45 (8.722)
2 位 : barkingdog_DNPds (8.914)
3 位:kashi (9.112)
4 位:PITS-TK (9.193)
5位:Fumiaki_DNP (9.513)
6 位:TrustBase_Kotake (9.551)

1 位から 6位までのタイム差は 1秒にも満たない僅差となりました。誰が勝ってもおかしくない状況です。

決勝は予選タイムの遅いレーサーからのスタートとなります。

まず、TrustBase_Kotake さんのレース。思い切った攻めの走りで、決勝最初のレーサーながら自身の記録を塗り替える「8.916」を出しました !次に、Fumiaki_DNP さん。こちらも自身のこれまでのベストラップを上回る「9.050」が出ました。そして、PITS-TK さん。少しコースアウトが目立ってしまい、「13.168」で決勝レースを終えました。kashi さんは健闘し、「9.420」という結果を得ることができました。残すところ予選上位 2名となりました。barkingdog_DNPds さんはコースアウトが多くなり、残念ながら「22.149」となりました。予選1位の m45 さんは、8 秒台前半を狙えるはずの、ゴールライン付近でコースアウトするという大変惜しいラップがあり、残念ながら決勝の記録は「10.457」となりました。

あらためて決勝の記録は以下となりました。

決勝の結果
1 位 : TrustBase_Kotake (8.916)
2 位 : Fumiaki_DNP(9.050)
3 位 : kashi(9.420)
4 位 : m45(10.457)
5 位 : PITS-TK(13.168)
6 位 : barkingdog_DNPds(22.149)

そして、今年の入賞者は

1 位 : TrustBase_Kotake さん
2 位 : Fumiaki_DNP さん
3 位 : kashi さんのお三方となりました。

1位の TrustBase_Kotake さんには re:Invent 2024 へのご招待となり、そこで開催されるの世界大会予選としての対面レース「WildCard race」へご参加いただくことになります。また優勝トロフィーと AWS Credit Coupon USD500 が贈呈されます。2 位の Fumiaki_DNP さんには 2位のトロフィーと AWS  クレジット 300 ドル、3位の kashi さんには 3 位のトロフィーと AWS クレジット 200 ドルがそれぞれ贈呈されます。入賞された皆さん、おめでとうございます !そして参加されたすべてのレーサーの皆さん、素晴らしいレースをありがとうございました !


2024 年の AWS DeepRacer をとことん楽しもう!

Japan Championship Cup は終了しましたが、上に書いた通り、公式レース「AWS DeepRacerリーグ」は仮想レースとして 2024 年 10 月末まで毎月開催されています。上位入賞を果たせば世界大会への切符を手にすることができますので、ぜひ挑戦してみてください。また、仮想レースは気軽にみなさんの会社やコミュニティでも実施することができますので、併せてお楽しみください !

なお、あらためて今回のレースの模様はこちらから (Day1, Day2) ご覧いただくことができます。ぜひご視聴ください。

AWS DeepRacer にチャレンジしてみたい、という方は、モデル作成など、レース準備に関連する情報を以下にまとめましたのでぜひご活用ください。


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筆者プロフィール

服部 京子
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
マーケティング統括本部 シニア ディベロッパー マーケティング マネージャー

主に Developer の皆様向けのイベントの企画 / 推進を担当しています。「楽しみながら学べる」プログラムをお届けできるよう日々活動しています。
ここのところ時短料理にはまっており、例えば「レタスの湯引き (レタスを丸ごとゆでてタレで合えただけ)」などがお気に入りです。

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