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Amazon Connect Tasks を使用して問い合わせ後アンケートの顧客満足度スコアを分析する
顧客満足度 (Customer satisfaction : CSAT) は、コンタクトセンターに問い合わせした後の顧客の認識を計測するために使用される最も重要な指標の一つです。問い合わせ後の CSAT アンケートは、コンタクトセンターで提供される体験やサービスを改善するための診断ツールとして重要です。それにより顧客の体験を評価できるだけでなく、体験後の顧客のモチベーションや意図を組織が理解するのにも役立ちます。
Amazon Connect は音声、チャット、タスクを提供するオムニチャネルコンタクトセンターサービスです。Amazon Connect Tasks では、アクティビティを作成したり、外部アプリケーションやサービスと統合したりして、エージェントのタスクの優先順位付け、割り当て、完了までの追跡を行うことができます。Amazon Connect Tasks を使用することで、顧客の課題を迅速に解決し、顧客満足度の向上に繋げることができます。
このブログ記事では、Amazon Connect コンタクトセンターで問い合わせ後アンケートを構成する方法、アンケート結果を含むタスクをスーパーバイザーのキューに割り当てる方法、安全なウェブアプリケーションでアンケートを管理する方法について説明します。それにより、コンタクトセンターのマネージャーはほぼリアルタイムで顧客の課題を特定し、顧客満足度を改善するためにタイムリーに行動できるようになります。
ソリューション概要
このソリューションのアーキテクチャとフローは図のようになり、問い合わせ後アンケートを顧客に提供し、Task を使用してアンケート結果をスーパーバイザーに共有します :
- Amazon S3 に保存されたフロントエンドの静的コンテンツを Amazon CloudFront を通じて公開し、Amazon Cognito によってユーザー管理を行います
- 必要なコンタクトフローモジュールを Amazon Connect インスタンスにデプロイします
- 必要に応じて、管理者はウェブアプリケーションを使用して問い合わせのアンケートを作成します
- アンケートの設定は Amazon DynamoDB に保存されます
- 必要に応じて、問い合わせ時にコンタクトフローモジュールを実行し、提供するアンケートを識別するコンタクト属性の情報をパラメータとして含めます
- コンタクトフローモジュールは、その問い合わせ用のアンケートの設定を取得します
- その問い合わせでアンケートが実施され、顧客がアンケートに回答します
- 個々の問い合わせのアンケート結果が Amazon DynamoDB テーブルに保存され、必要に応じて Amazon Connect Task が作成されます
問い合わせ後アンケートは、顧客の問い合わせ後 (音声着信、音声発信) に受動的に行うこともできますし、StartOutboundContact API と組み合わせて能動的に行うこともできます。
このソリューションのソースコードは GitHub 上で公開されています : Contact Surveys for Amazon Connect
前提条件
このブログ記事では、次の AWS サービスおよび機能に関する知識とアクセス権を持っている必要があります :
- AWS Identity and Access Management (IAM) ロールの作成および編集権限を持つ AWS アカウント
- AWS Identity and Access Management (IAM)
- 少なくとも一人のエージェントが設定された Amazon Connect インスタンス
- Amazon Lex
- Amazon S3
- Amazon DynamoDB
- Amazon API Gateway
- Amazon CloudFront
- Amazon Cognito
- AWS Lambda
- AWS CloudFormation
ソリューションの設定
-
- 「Launch Stack」 ボタンをクリックし、ご希望のリージョンにソリューションをデプロイします。これは Amazon Connect インスタンスがデプロイされているリージョンと同一である必要があります。
- 必要なパラメータを入力します :
– スタックの名前
– 本ソリューションの初期ユーザー用のメールアドレス
– 本ソリューションで使用する Amazon Connect インスタンスの ARN
– 本ソリューションで使用する Amazon Connect インスタンスのエイリアス
– 本ソリューションによって作成されるタスクの送信先となるコンタクトフローの ID
補足 : もし本ソリューションで作成されるタスクを処理するためにどのコンタクトフローを使用すべきかわからない場合は、Amazon Connect インスタンスでデフォルトで使用できる Sample inbound flow (first contact experience) を使用してください。
- 次へをクリックします。
- スタックオプションの設定に進み、次へをクリックします。
- スタックのサマリーをレビューし、「AWS CloudFormation によって IAM リソースが作成される場合があることを承認します」 にチェックを入れます。
- 送信をクリックします。
補足 : スタックのデプロイが完了するまで約 5 分かかります。また、ユーザー名と一時パスワードが記載されたメールが送信されます。
- スタックがデプロイされたら、出力タブに AdminUser の値とアプリケーションの URL が表示されるので、記録しておきます。
- 出力タブで記録した URL にアクセスします。一つ前の手順で記録した AdminUser の情報と、スタックのデプロイ中に送信されたメールに記載されているパスワードの情報を使用して、アプリケーションにログインします。
- Login をクリックします。
補足 : 初回ログイン時はパスワードの変更を求められます (パスワードは 8 文字以上で、アルファベットの大文字・小文字・数字・特殊文字を全て含む必要があります)
- 以下の画面が表示されれば、ソリューションのデプロイは成功です。
ソリューションのテスト
次の例では、一般的なユースケースでこのソリューションをどのように使用できるかを紹介します。
基本的な問い合わせ後アンケートで、低スコア時にレビュー対象となるようにフラグを付ける
この例では、顧客から低スコアで回答があった場合に Amazon Connect Task を通してスーパーバイザーへアラートが通知される基本的な問い合わせ後アンケートの作成方法を紹介します。
- 本ソリューションでデプロイした Contact Surveys for Amazon Connect のアプリケーションを使用して、新しいアンケートを作成します :
- アンケートに質問をいくつか追加します :
- どれか一つの質問で、Additional settings をクリックします。
- Flag for review にチェックを入れ、閾値を定義します。
この質問で定義した閾値を下回るスコアが入力されると、Amazon Connect でタスクが開始されます。このタスクは、ソリューションをデプロイした時に定義されたコンタクトフローにルーティングされます。 - Save をクリックします。
- 一覧をリフレッシュし、新しく作成されたアンケートの Id を記録しておきます。
補足 : 皆様の環境で作成されたアンケートの Id は、スクリーンショットのものとは異なります。 - Amazon Connect インスタンスで、新しいコンタクトフローを作成します。
- Survey Example Disconnect フローをインポートします。
- 公開する前に、「呼び出しモジュール」ブロックで Amazon Connect インスタンスで利用できる Contact Survey モジュールが設定されていることを確認します。
- この 3 つのステップを繰り返し、Simple Survey with flag フローをインポートします。まだ公開はせず、その前にいくつか設定変更を行います。
- 「切断フローを設定する」ブロックをクリックします。このブロック内で、切断フローとして前の手順でインポートした Survey Example Disconnect フローが設定されていることを確認します。
- 「コンタクト属性の設定」ブロックをクリックします。このブロックでは、surveyId というコンタクト属性を設定しています。
- surveyId コンタクト属性の値の欄に、アンケートの Id をペーストします (前の手順で記録したもの)。
補足 : surveyId を静的に設定することで、アンケートの選択は静的になります。代わりに、例えばコンタクト属性に保存された値を使用することで、動的にこの属性値を設定することも可能です。 - 保存をクリックします。
- フローを公開します。
補足 : このフローで処理された問い合わせは、Amazon Connect インスタンスでデフォルトで利用可能な BasicQueue に割り当てられます。もし異なるキューでテストを行いたい場合は、「作業キューの設定」ブロックの設定を変更してください。 - テスト実施のために、利用可能な DID 番号を Simple Survey Example コンタクトフローに関連付けます。
- テスト用電話番号に電話をかけます。着信が転送されるキューに、対応可能なエージェントが必要な点に注意してください。
- 顧客との通話が開始されたら、エージェントが通話を終了します。顧客はアンケート回答に誘導されます。
- 顧客がアンケートの最初の質問をされるので、3 と回答します (前の手順で定義した閾値以下のスコア)。
- 2 番目の質問に対しては、顧客は 0 から 5 の任意の数字を回答します。
- 顧客が最初の質問に対して低いスコアを入力したので、スーパーバイザーがレビューするためのタスクが作成されます。このタスクは本ソリューションのデプロイ時に定義したコンタクトフローで処理されます。
- このタスクをスーパーバイザーが受け取り、スコアが低かった問い合わせの詳細が含まれていることが確認できます。
アンケート結果を可視化する
Contact Surveys for Amazon Connect アプリケーションを使用して、アンケート結果を集約して可視化することができます。
- ソリューションをデプロイした際に記録した URL にアクセスし、前の手順で定義したユーザー名とパスワードを使用してログインします。
- 一覧から対象のアンケートを選択し、Results タブをクリックすることでアンケート結果を参照できます。
各質問の集約された結果は、円グラフで確認可能です。必要に応じて、日付の範囲を指定してフィルターすることができます。
- Export ボタンをクリックすることでアンケート結果をエクスポートでき、顧客に提示された各アンケートの結果が、問い合わせのコンタクト Id の情報も含めて csv ファイルとして生成されます。
クリーンアップ
- CloudFormation のページにアクセスし、本ソリューションをデプロイした際に作成したスタックを選択します。
- 削除をクリックします。
- もし本ソリューションのテスト用に新しい DID 番号を取得した場合は、将来の課金を回避するために Amazon Connect 内で DID 番号をリリースします。
まとめ
問い合わせ後アンケートはコンタクトセンターで顧客満足度 (Customer satisfaction : CSAT) を測定する最も重要な指標の一つで、それにより顧客がコンタクトセンターに問い合わせた直後にフィードバックを集めることができます。顧客体験の鮮度が高いうちに情報を集めるために、問い合わせ後アンケートを問い合わせの直後に実施するのが重要です。また、Amazon Connect Tasks を組み込むことで、ほぼリアルタイムに問い合わせ後アンケートの結果をスーパーバイザーに通知し、顧客体験に応じた迅速なアクションができるようになります。このブログ記事では、問い合わせ後アンケートを作成し、ネガティブな反応をほぼリアルタイムに通知するソリューションを紹介しました。より良い顧客体験を提供するのに役立つ他の AWS ソリューションを見つけるために、ぜひ以下の GitHub リポジトリをサブスクライブしてください :
このブログの翻訳はソリューションアーキテクトの 泉 航 が担当しました。原文はこちらです。
著者について
Aurelien Plancque は AWS で Amazon Connect / カスタマーエクスペリエンスを専門とするソリューションアーキテクトで、コンタクトセンターソリューション向けソフトウェアの設計と構築の 12 年以上の経験があります。 | |
Enid Zambrano は AWS で Amazon Connect を専門とするスペシャリストソリューションアーキテクトです。Enid はカナダに拠点を置き、コンタクトセンターの最適化と構築の 25 年以上の経験があります。 |