Amazon Web Services ブログ

【開催報告】AWS AI/ML@Tokyo #2 ~エンタプライズ企業におけるAmazon SageMakerの活用~

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の帆足 (Twitter: @hoahoa) です。AWS Japan 目黒オフィスでは、今年からAI/ML関連情報を発信するイベント「AWS AI/ML@Tokyo」を定期的に開催しています。2020年2月27日に開催された AWS AI/ML@Tokyo #2では、AWS Japan によるサービスの最新情報や事例紹介と、Amazon SageMaker をご利用いただいているお客様をゲストスピーカーにお招きし、実際に導入頂いたお客様による「体験談」をお話し頂きました。

「AWS AI/MLサービス概要と最新アップデート」[Slides]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
プラットフォーム事業開発部
澤田 大輔

AWSが提供するAI/MLサービスの最新状況について、Amazon SageMakerの新機能を中心に紹介しました。AWSでは「すべての開発者に機械学習を」というミッションの元、数多くのAI/MLサービスを提供しています。その中でも、Amazon SageMakerは機械学習のプロセス全体を効率化するマネージドサービスであり、機械学習のコスト削減とパフォーマンス向上を、簡単な操作で実現することができます。
今回のセッションでは、AWS re:Invent 2019で発表されたAmazon SageMaker関連のリリースについて説明しました。これらのリリースは、Amazon SageMakerを利用されているお客様からのご要望に対応し、機械学習の各過程(開発、学習、推論)をより手軽かつ効率的に実行することを目指しています。たとえば、Amazon SageMaker Studioは、SageMakerの各機能を呼び出すことができるWeb上の統合開発環境(IDE)であり、シングルサインオンでアクセスするだけで統合開発環境のインタフェースを利用いただくことが可能です。また、Amazon SageMaker Autopilotは機械学習のAutoML機能を簡単に実行するための機能です。テーブルデータを準備し、予測対象を指定するだけで、データの前処理、アルゴリズムの選択、および学習処理を実行するためのインスタンスの選択などを自動的に行うことができます。 これら以外にも、学習プロセスの機能として、学習時の異常出力を検出するAmazon SageMaker Debugger、学習を改善するための実験管理を行うAmazon SageMaker Experiments、学習時のコストを大きく削減できるAmazon SageMaker Managed Spot Trainingがリリースされています。さらに、Amazon SageMaker Model Monitorは、学習されたMLモデルの出力結果を監視し、異常があれば通知するための機能を提供しています。これらの新機能の活用により、お客様はAmazon SageMakerの中で完結した形で機械学習を導入・運用することができます。
本セッションの後半では、AWSのAIサービスレイヤーで提供されているサービスについても紹介しました。これらのサービスでは、AWSによって最適化されたMLモデルをAPIで簡単に利用することができます。音声および自然言語関連のサービスでは、Amazon Transcribe(音声認識)、Amazon Comprehend(自然言語理解)、Amazon Translate(テキスト翻訳)が日本語に対応されています。また、画像認識サービスのAmazon Rekognitionの拡張機能として、お客様が認識したい画像を対象とした物体認識のモデルを構築できるAmazon Rekognition Custom Labelsについても紹介しました。

「Amazon.comにおけるスケール可能なモデルデプロイと自動化」[Slides]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト
鮫島 正樹

本セッションでは、お客様が機械学習を導入する上で考慮すべき機械学習のモデル開発ライフサイクル(Model Development Life Cycle; MDLC)という概念、およびMDLCを実行するためのワークフローについて紹介しました。この MDLC は実際に、Amazon Consumer Payments で取り入れられている方式であり、re:Invent 2019 におけるセッションでも紹介されています (https://www.youtube.com/watch?v=_mfTG63sAF0)。
一般的なソフトウェア開発と異なり、機械学習システムには導入のための開発だけでなく、MLモデルを維持するための努力を継続的に行うことを意識することが重要です。MDLCは、MLモデルを構築するためのデータ収集、MLモデルの開発および学習とデプロイ、そして本番環境への統合を含めた機械学習システム全体のライフサイクルです。データ収集のフェーズでは、MLモデルを学習するためのデータを集め、データの完全性・一貫性などの品質を確認した上で、特徴量を生成します。モデル開発のフェーズでは、モデルを構築するための機械学習アルゴリズムを選定(もしくは独自に開発)し、学習処理を実行します。この学習処理では、複数のアルゴリズムおよびパラメータの組み合わせを試しながら、MLモデルの有用性を評価する必要があります。この結果、最終的に選定されたモデルを本番システムに求められる要件に合わせた形でデプロイします。たとえば、リアルタイムでの推論の要否に応じて、オンライン推論もしくはバッチ推論の形で本番環境にMLモデルをデプロイする必要があります。MLモデルは、本番環境へのデプロイの後もその出力結果を随時監視し、必要に応じてモデルを変更したり、再学習したりする必要があります。
MDLCを実行するための課題として、各プロセス管理のコスト、ライフサイクル全体における担当者の決定、MLモデルのバージョン管理、多数のMLモデルを頻繁に再学習し本番環境に安全にデプロイするための環境構築などがあげられます。AWSでは、Amazon SageMaker、AWS Step Functionsなどのサービスを組み合わせたテンプレートにより、MDLCのワークフローを簡単に構築することができます。本セッションでは、実際に構築可能なMLDCワークフローとして、バッチ推論およびオンライン推論を行う機械学習システムの構築例を示し、MDLCワークフローがもたらすメリットを説明しました。

「SoVeC Smart VideoにおけるAmazon SageMakerを用いた開発運用事例」[Slides]

ソニー株式会社
R&Dセンター Tokyo Laboratory 16
大石 壮一郎 様

ソニー株式会社の大石様からは、Amazon SageMakerを開発で用いることにより、SoVeC Smart Videoという、深層学習を活用した動画自動生成クラウドサービスを短期間でリリースした事例を紹介いただきました。
SoVeC Smart Videoは、デザイナー級の高品質な動画をクラウド上で簡単に生成することができるサービスです。このサービスの中では、動画の素材として利用者から提供された静止画が低解像であっても SRGAN(Super Resolution Generative Adversarial Network)を用いて高精細化する超解像技術が搭載されています。Amazon SageMakerを活用することにより、機械学習のDevOps、すなわち、学習環境構築、MLモデルの学習と評価、および本番システムの構築・運用を含むすべてのプロセスを短期間で実現した様子を説明いただきました。Amazon SageMakerの導入により、それまでの環境において多くの工数を要していた、インフラの設計、学習環境の構築・管理といった煩雑な作業を大幅に削減し、サービスを実現するために必要なMLモデルの学習・評価にリソースを注力することができました。大石様は、本開発で初めてAmazon SageMakerを本格的に活用されたとのことですが、今回の成功を通じ、Amazon SageMakerの各機能の利便性を強く実感することができたと、お話しいただきました。また、今後Amazon SageMakerを利用される方向けのTipsとして、ローカルPCへのSageMaker環境構築方法や、Amazon SageMaker Managed Spot Trainingを利用する際の注意点などについても説明いただきました。

まとめ

今回はAWS AI/MLサービスの最新アップデートとAmazon.comにおけるスケール可能なモデルデプロイのご紹介ののち、Amazon SageMakerを活用されているゲストをお迎えし、実際の活用事例についてお話しいただきました。次回のAWS AI/ML@Tokyoは、4/23の開催を予定しています。https://awsj-ml.connpass.com/ にご登録ください。2019年に開催した「Amazon SageMaker事例祭り」の開催報告と登壇スライドは、以下のリンクからご覧いただけます。

  • 第1回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年1月15日 [Web]
  • 第2回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年2月12日 [Blog]
  • 第3回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年3月12日 [Blog]
  • 第4回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年4月24日 [Blog]
  • 第5回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年5月21日 [Blog]
  • 第6回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年7月18日 [Blog]
  • 第7回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年8月29日 [Blog]
  • 第8回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年9月19日 [Blog]
  • 第9回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年10月30日 [Blog]
  • 第10回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年11月28日[Blog]

またAmazon SageMakerのオンラインによる体験ハンズオンがございますので、こちらもご活用ください。
https://pages.awscloud.com/event_JAPAN_hands-on-ml_ondemand.html

AWSクラウドに関する最新情報について学べるオンラインカンファレンス「AWS Innovate」(開催期間:3月10日~4月17日)も、現在参加申し込み受付中です。AI/ML関連では、教育系YouTuber・ヨビノリたくみ氏による招待講演の他、AWSのソリューションアーキテクトによる機械学習活用事例を紹介する講演をご覧いただくことができます。奮ってご参加のほどよろしくお願いします。
参加申込URL:https://pages.awscloud.com/event_JAPAN_Innovate-StartupDay_2020_spring.html