Amazon Web Services ブログ
【開催報告】AWS AI/ML@Tokyo #4
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 機械学習ソリューションアーキテクトの上総 (Twitter: @tkazusa) です。AWS Japan 目黒オフィスでは、今年からAI/ML関連情報を発信するイベント「AWS AI/ML@Tokyo」を定期的に開催しています。2020年6月11日にオンラインで開催された AWS AI/ML@Tokyo #4 では、AWS Japan による最新のAI/MLサービスアップデートとその利用用途のご紹介と、お客様活用事例として、Amazon Personalizeの活用事例をお話しいただきました。
「AWS AI/MLサービス概要と最新アップデート」[Slides]
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト 大渕 麻莉
AWS が提供する AI/ML サービスの中で最近一般公開となった、Amazon SageMaker Studio/Notebooks、Amazon Kendra、Amazon Augmented AI について紹介しました。機械学習分野の深い知識なしにご活用頂ける AI サービスからは、エンタープライズ文書検索サービスである、Amazon Kendra をご紹介しました。その主な特徴はキーワードでの文書検索に加えて、“Where is the IT support desk in Kumo?” といった自然言語による検索が可能である点があります。こういった文書検索を行えるようになるまでの一連の流れについて、学習用のデータを準備し、インデックスを作成し、データソースを追加する、といったそれぞれのステップについてデモを交えてご紹介しました。また、独自の機械学習モデル開発を効率化する ML サービスである Amazon SageMaker からは、統合開発環境である SageMaker Studio と、そこから活用できる Notebooks と、Autopilot についてお話しました。特に、これまでのノートブックインスタスにはなかった機能として、インスタンスタイプの手軽な変更や、URL の共有によるチームでのコラボレーション作業を促進させるような機能や、モデル開発パイプラインの自動化を実現する Autopilot についてデモをご覧頂きながら機能を紹介しました。また、推論環境において Human in the loop での性能評価を実現する Augmented AI についてご紹介しました。これにより、機械学習モデルの推論結果の Score (確信度)が低い場合に、再度人間がデータへアノテーションを行い、モデルが学習することで、推論精度の改善を目指すようになるワークフローを提供することができます。こちらも、このワークフローを構築する方法を画像内の物体検出を行うタスクを行うというデモを通してご説明しました。
それぞれの機能の詳細に関しましては各リンクよりご参照いただければと思います。Amazon SageMaker Studioのリージョン拡大(既存のオハイオに加えオレゴン、バージニア北部、アイルランド)、Amazon SageMaker Notebooks 、Amazon Augmented AI(A2I)、Amazon Kendra の一般公開発表がありました。
「Amazon Personalize とリコメンデーションのためのアーキテクチャ」[Slides]
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト 宇都宮 聖子
Amazon Personalize は、アプリケーションを活用したユーザーのログ情報などから、独自のレコメンデーションを簡単に構築するための AI サービスです。本セッションでは、まず、パーソナライゼーションを実現すために課題となってくる、ビジネス KPI の設定や、リアルタイム性の要求、人気の罠などについて整理しました。そして、Amazon Personalize が提供する3種類のレコメンデーションや、レコメンドシステムの運用をより効果的に行うための機能についてご紹介し、ご活用頂くまでの3ステップである、データの準備、学習、推論について順を追ってご案内しました。データの準備段階では、その種類や用途、スキーマを解説し、その上で、学習を進めるためのワークフローについて順を追ってご案内し、その手軽さを実感頂けたのではないでしょうか。機能の最新アップデートの中では、レコメンドスコアの取得や、フィルタ機能の追加など、ご要望が多かった機能も多く、さらに便利にお使い頂けるのではないかと思います。セッションの後半では、Amazon Personalize を活用するためのアーキテクチャについて考えました。例えば、ユーザーの購買履歴や、属性情報を収集、分析するためのユーザーエンゲージメントプラットフォーム である Amazon Pinpoint と組み合わせることで、オムニチャネルから得られるデータを用いて定期的に Personalize を再学習させ、推薦を最適化するような構成を紹介致しました。また、この Amazon Pinpoint を含む AWS サービスを活用し、オムニチャネルでの推薦を可能にするソリューションである、Retail Demo Store についてデモを交えてご紹介しました。これらのアーキテクチャはソリューションとして公開してあり、気軽にお使い頂けるようになっています。下記のリンクをご参考に、ぜひご活用下さい。セッションを通して、Amazon Personalize を用いると、数クリックでレコメンデーションを実施頂けるその手軽さや、他の AWS サービスを組み合わせることで、ご要望に応じたパーソナライゼーションが実現できる拡張性などをご体感頂けたのではないかと思います。
Amazon Personalize を活用したソリューション
「BASEでのAWS Personalizeを活用したレコメンドシステム構築事例」[Slides]
BASE 株式会社
Data Strategy Team 齋藤 勇介 様
BASE 株式会社では「誰でも簡単につかえるネットショップ作成サービス」をコンセプトにした E コマースプラットフォームを提供されており、その中でユーザーの嗜好に合うように、コンテンツをレコメンドされています。今回のご登壇では、Data Strategy Team 齋藤様よりサービス中の「今日のおすすめ商品」でレコメンドを実施されている配信基盤で Amazon Personalize をご活用頂いた事例についてお話を頂きました。レコメンド基盤は、ユーザーの属性などに合わせる形で、複数のアルゴリズムを組み合わせて使われていましたが、①時系列性を取り込んだ新規アルゴリズムの開発への工数とリターンが見合わない、②独自実装が存在することによるメンテナンス性の低下、③精度向上を目指した活動への工数確保、といった観点から運用上の課題を感じておられたようです。そんな中、昨年6月に Amazon Personalize が東京リージョンで利用可能になったことをきっかけに、10月から運用を開始し、事前定義済みレシピである HRNN を使ってセッションベースでの推薦を実現され、独自仕様の削減によって運用開始8ヶ月でコード修正が2回ほどで済んだり、パラメーター探索の自動化で精度検証の工数が削減されたりと、運用の容易さについても実感頂けているようです。特に独自でアルゴリズムも含めてレコメンドシステムを構築されてきた中で、その運用の容易性から Amazon Personalize に移行されたというお話は機械学習を含むシステムを運用し続けるという観点から非常に示唆に富んでいるなと感じました。実際の運用実績については、アプリ内遷移の指標をもとに解説されており、特にアルゴリズム選択については、既存の独自アルゴリズムは柔軟にカスタマイズできるため精度向上の観点ではメリットがある一方で、Amazon Personalize は指標によってはそれらを上回る性能を出すこともあるので、売上重視、回遊重視などの目的に従って選択することが重要と結論付けられておりました。セッションの最後には、Amazon Personalize を運用するための Tips をお話頂きました。特にコストの観点から、Perform HPO や Perform AutoML の違いについて理解した上で、必要なタイミングのみチューニングを実施することを強調されてました。さらに、新規ユーザーや長期間ログインしていないような未学習ユーザーについては、人気順のアイテムが同様に表示されるので、追加で機能を拡張するような工夫をされているとのことでした。全体を通して、レコメンドサービスを手間をかけずに構築できるとのことで満足されているようでした。
まとめ
今回は Amazon Kendra や Amazon SageMaker Studio といったサービスのアップデートの後、 Amazon Personalize についてのご紹介や、お客様での活用事例についてお話を頂きました。次回のAWS AI/ML@Tokyoは、7/9の開催を予定しています。こちらのリンクからお申し込み下さい。2019年に開催した「Amazon SageMaker事例祭り」、2020年からスタートした「AWS AI/ML@Tokyo」の開催報告と登壇スライドは、以下のリンクからご覧いただけます。
- 第1回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年1月15日 [Web]
- 第2回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年2月12日 [Blog]
- 第3回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年3月12日 [Blog]
- 第4回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年4月24日 [Blog]
- 第5回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年5月21日 [Blog]
- 第6回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年7月18日 [Blog]
- 第7回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年8月29日 [Blog]
- 第8回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年9月19日 [Blog]
- 第9回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年10月30日 [Blog]
- 第10回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年11月28日 [Blog]
- 第1回 AWS AI/ML@Tokyo #1 2020年2月6日 [Blog]
- 第2回 AWS AI/ML@Tokyo #2 2020年2月27日 [Blog]
- 第3回 AWS AI/ML@Tokyo #3 2020年4月23日 [Blog]
またAmazon SageMakerのオンラインによる体験ハンズオンがございますので、こちらもご活用ください。
https://pages.awscloud.com/event_JAPAN_hands-on-ml_ondemand.html