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Hannover Messe 2026 AWS ブースレポート
AWS の展示ブース
AWS は “Built for Industrial AI” を体現するブースとして「スマート生産」「サプライチェーン」と「製品設計・開発」「スマートプロダクト」の4領域を2つに分けて展示しました。フィジカル AI やシミュレーションへの注目により製品開発系の展示が大きく増えています。
今年度も昨年同様、SIEMENS, QAD, Zoomilion といった様々な業界パートナーが AWS ブース内で展示を行うとともに、AWS 自身の展示を大きく増やしました。本年も、日本チームが現地で日本語でお客様をご案内しました。
本ブログでは、フィジカル AI と主要な4領域の展示についてご紹介します。
フィジカル AI
写真: フィジカル AI デモ “AI-Driven Product Journey”
フィジカル AI は本年 AWS ブースで最も注目を集めたエリアの一つで、来場者の足が絶えない人気を博していました。目玉となったのが、”AI-Driven Product Journey” と題された大型デモです。このデモは、来場者がキオスク端末でデザインを選択・入力すると、生成 AI がオリジナルデザインを生成し、AMR(自律走行ロボット)・協働ロボットアーム・レーザー彫刻機・AI 画像検査装置・ヒューマノイドロボットが協調しながら金属製コースターを製造、最終的にヒューマノイドが完成品を来場者に手渡すという一連のプロダクトジャーニーを実演するものです。AMR が LiDAR で周囲を知覚し自律走行する、ロボットアームが 3D ビジョンで部材を認識し把持する、ヒューマノイドが強化学習で獲得した歩行で物を運ぶなど、それぞれが物理世界を知覚・理解し、直接作用するという フィジカル AI の異なる側面を体現しており、フィジカル AI が役割分担して働く姿を一望できる構成になっています。
写真: エージェント AI による工程のオーケストレーション
本デモのもう一つの注目点は、工程全体を エージェント AI が自律的にオーケストレーションしている点です。各装置・ロボットの操作がツールとして定義され、エージェント AI が状況をリアルタイムに判断しながら全工程を指揮します。事前にハードコードされたシナリオをなぞるだけではなく、状況に応じて柔軟に振る舞える点が従来の産業オートメーションとの大きな違いであり、産業 AI を実運用へスケールさせていく上での重要なステップを示すデモとなっていました。
スマート生産 (Smart Manufacturing)
Smart Manufacturing エリアは今年も AWS ブースの中で最も広いスペースが割かれており、上記の AI-Driven Product Journey を中心に多くの来場者で賑わっていました。また Rockwell Automation、HighByte、Databricks、Snowflake、Palantir といったパートナー各社との協業展示が目立ち、AWS 単独ではなくエコシステム全体でスマート製造を実現するという姿勢が強く打ち出されていました。技術面では AI エージェントが自律的に複数システムを横断して分析・判断を行うアーキテクチャが前面に出てきたのが昨年からの大きな変化です。ここではその中から、Agentic Workflow Automation と Real-Time Plant Analytics の 2 つのデモをご紹介します。
写真: Agentic Workflow Automation — AI エージェントが製造現場の意思決定を自律支援する内容のデモ
Amazon Bedrock AgentCore を基盤に、複数の AI エージェントが MES・ERP・CMMS・IoT を横断して製造データを分析するデモです。「3 工場の生産実績とオーダー目標を比較してほしい」「納期リスクのある顧客オーダーはどれか」といった質問を自然言語で投げかけると、エージェントがグラフデータベースの関係性を元に複数システムからデータを取得し、レポートを自動生成します。エージェントの推論過程がステップごとにリアルタイム表示される “Investigation Trace” 機能もあり、AI がどのデータソースにアクセスしてどう判断したかが透明に追跡できる点が印象的でした。
写真: Real-Time Plant Analytics — 工場 KPI(OEE、不良率等)のリアルタイム監視と、AI によるシフト交代レポートの自動生成デモ
Amazon Quick を基盤とした Manufacturing Dashboard の展示です。Overview 画面では OEE や Defect Rate、First Pass Yield といった主要 KPI がリアルタイムで一覧表示されます。中でも注目したいのが Shift Handoff Report 機能で、シフト交代時に AI がワークセンター別の OEE・欠陥分布・保全状況を自動分析し、引き継ぎレポートを生成します。画面右側には Manufacturing Assistant チャットも統合されており、レポートの内容を対話形式でさらに深掘りすることも可能です。
サプライチェーン (Supply Chain)
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写真:Supply Chain のデモ
今年も AWS ブース内の他のデモと連携した、Supply Chain のデモをご紹介しました。昨年も同じ AWS ブース内にある製造デモと情報連携し、Supply Chain に関わる情報の可視化や需要予測などを展示しておりましたが、昨年からの大きな変更点として、今回は Kiro で開発したアプリケーションを展示させていただきました。
業務仕様書とデータの構成を元にアプリケーションを自動生成することで、企業におけるカスタムアプリケーション導入/利用の柔軟性を上げ、開発/導入の時間および難易度を下げていく例をご紹介しました。また、同ブース内では、パートナー企業である QAD の ERP・Redzone の展示や、会期中には、こちらもパートナー企業である Infor が製造業における エージェント AI の活用に関する協業の発表を行い、パッケージアプリケーションとカスタムアプリケーションを選択していただく、または組み合わせて利用するといった、お客様の状況に合わせて選択していただける選択肢を AWS が提供している様子をお伝えしました。
製品設計・開発 (Product Engineering)
今回、フィジカル AI の注目により製品設計・開発領域の内容を大きく増やしました。Engineering & Development Tunnel という展示では、AI によるデザインの提案 –> エンジニアリングツールを仮想化 –> デジタルスレッドで設計開発データの連携 –> AI によるパラメータ空間探索(サロゲートモデル)という流れをご紹介しました。AI (Amazon Nova) が提案した意匠は、Smart Manufacturing のデモに連携され、レーザー加工によりコースターとして生産されます。
製品設計に必要な様々なエンジニアリングツールを仮想化する例として、 PTC の CAD (Creo) と、開発中の CAD へのアドバイスを行う紹介がありました。全体に、Engineering Development Hub (EDH) という新しいエンジニアリング環境が使われ、様々な CAD/CAE の環境を仮想化し、呼び出し、管理し、VDI で接続することで計算リソースやワークステーションを柔軟に増減させ管理の手間を減らすことができる様をご紹介しました。
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写真:Engineering & Development Tunnel (左) と Creo のデモ (右)
設計されたデータはシミュレーションにより性能を検証しますが、設計パラメータを変更して都度シミュレーションを行うとそのための計算量やコストも膨大になります。そこで、過去のシミュレーション結果から異なる設計パラメータのシミュレーション結果を AI で予測する手法がサロゲートモデルです。パートナーの Neural Concept との共同展示で、データセンターの冷却を題材としたパラメータスタディを行うデモを展示しました。
SIEMENS との共同展示では、設計データから強度シミュレーションを行い、その結果を元に生成 AI に設計改善のアドバイスをさせるデモが示されました。また、“OT Modernization” という展示では、シミュレーションを製品開発だけではなく生産設備のエンジニアリングに活用し、生産ラインにおけるアームロボットの動作を生成 AI で最適化してタクトタイムを縮めるという提案を行いました。
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写真:SIEMENS との共同展示 (左) と OT Modernization の展示 (右)
他にも、CAD の展示として完全クラウドベースのアーキテクチャにより無限 Undo や PDM の統合を可能にし、オペレーションを中間言語で記述することで AI による支援を容易にするといった意欲的な機能を搭載した PTC の Onshape が紹介されました。
スマートプロダクト (Smart Products & Services)
今年のスマートプロダクトエリアのトレンドは、「売って終わり」から「売った後も継続改善」への転換が現実的になってきたことです。開発面では、AI エージェントが設計からリリースまで全フェーズに介入し、組み込みソフトの開発サイクルを劇的に短縮。出荷後も迅速にアップデートを続けられる体制が整いつつあります。サービス面では、テレメトリ・保守履歴・顧客問い合わせなど複数データソースを AI が統合解析し、故障予兆検知やプロアクティブなサポートを実現。予防保守サブスクやリモート診断など新収益ストリームの創出と顧客関係強化につながっています。スマートプロダクトでも DevOps の継続改善サイクルが回せる時代に入った — これが今年最大の変化です。この記事では、”Accelerate embedded software development and equipment” と “Smart Products Telemetry Driven ‘X'”の 2 デモをご紹介します。
写真: Accelerate embedded software development and equipment — 組み込みソフトウェア開発の課題を示すスライドと、Kiro が 30 分以内で実装した 空調管理システム UI の実機(右下)
Kiro(AI 駆動 IDE)による組み込みソフト開発ライフサイクル全体の加速デモです。空調管理システム(C++ で実装/ 7 インチ HMI 画面)を題材に、Research・Plan・Development・Release の 4 フェーズを一気通貫で実演します。注目すべきは、画像右下の空調管理システム実装において、リモートデバッグ・UI チェック・デプロイをすべて Kiro が自律実行し、30 分以内で完了させている点です。従来 1 週間以上かかる作業が、コード生成→デプロイ→スクリーンショット評価→改善のフィードバックループで劇的に短縮されています。デモの内容を体験できるワークショップも公開されています。
写真: Smart Products Telemetry Driven “X” — デバイス障害検知時に Amazon Connect へリアルタイムのテレメトリとアラートが自動連携される様子
AWS IoT Core と Amazon Connect を組み合わせたサービス改善の展示です。産業機器(デモでは 3D プリンター)のテレメトリをリアルタイム収集・監視し、エラー発生時にはデバイスデータがサポートエージェントに自動連携されます。顧客にシリアル番号や症状を確認する手間なく即座に問題解決に着手できます。AI エージェントが解決できない場合は自動でタスク生成し、熟練技術者や専門 AI エージェントへエスカレーションする仕組みも備えています。
まとめ
本年のハノーバーメッセでは、”Built for Industrial AI” のテーマのもと、フィジカル AI と エージェント AI が製造業のバリューチェーン全体に広がりつつある姿が印象的でした。生成 AI による意匠提案から エージェント AI による工程オーケストレーション、ロボットによる物理世界での実行までが一つのシナリオで繋がる “AI-Driven Product Journey” は、その象徴的な事例です。Smart Manufacturing・Supply Chain・Product Engineering・Smart Product の各領域でも、AI エージェントが複数システムを横断して人の意思決定を支援するアーキテクチャが共通の方向性となりつつあり、産業 AI が実証から実運用フェーズへ着実に進みつつあることを感じる場となりました。AWS は引き続き、産業 AI を実運用にスケールさせていくお客様の取り組みを支援してまいります。
なお、6 月 25, 26 日に開催される AWS Summit Japan 2026 でも フィジカル AI や産業 AI の展示をご用意しています。Summit 向けに企画した新たなデモを通じて、製造業における AI の可能性を体感いただけます。ぜひご登録のうえ、会場でお会いできれば幸いです。
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