Amazon Web Services ブログ
小売業におけるデジタルコマース戦略の実現方法
COVID-19 によるパンデミックが始まったとき、オンライン注文への急激なシフトを目の当たりにし、またおそらく個人としても体験されたことでしょう。しかし、やや意外かもしれませんがオンラインへのシフトにも関わらず、売上の 80 %は依然として実店舗で生まれています。e コマースが成熟し、消費者がデジタルに精通するようになるにつれて、次の傾向が現れています:
- オンライン販売は急増を続け、2020 年のオンライン販売は 2019 年比で 42 %増加
- 顧客はオムニチャネルトランザクションに慣れてきており、オンラインで購入して店舗で受け取る BOPIS (Buy Online, Pickup In Store; オンラインで購入した商品を店舗で受け取る購買形態) は 2020 年比で 67 %増加。30 % の顧客は BOPIS の方を好んでいるのも興味深い点
- モバイルデバイスを使って購入することが多くなっており、今やオンライン販売の 45 %はモバイルデバイス経由
- 音声コマースも成長しており 18 〜 29 歳の購買客の 34 %は、音声起動デバイスを使って買い物をしたことがある
一方、e コマースエグゼクティブへの最近の調査によると、今後一年間の優先事項として以下が挙げられています:
- 顧客生涯価値 (LTV: Life Time Value) の確保
- 新規顧客の獲得
- 新しいテクノロジーによる、より速い ROI 達成
これらの変化する消費者行動と最重要課題を踏まえ、小売企業の多くが、ブランドの維持と成長のためにはどこに資金と時間、労力を投資するべきかを理解しようとしています。
我々の推奨事項は「デジタルコマースへの投資」です。
どこから始めればよいかわからないのであれば、以下にデジタルコマースジャーニーの概要を説明しています。もちろん、他の小売企業に比べデジタル成熟度の高い小売企業もいるでしょうし、上述した以外の優先事項のある小売企業もあるでしょう。その場合でも、特定のニーズと最優先事項に合わせて次のロードマップを調整すればいいのです。
AWS はデジタルコマースプラットフォームのあらゆる要素を
構築するためのスマートな戦略設計を支援します
アジャイルでコスト効率の高い AWS クラウドで e コマースウェブサイトをモダナイズ
e コマースウェブサイトのモダナイズにあたり推奨事項をいくつか紹介します。
AWS クラウドへ移行する
IBM WebSphere、SAP Hybris などレガシーなテクノロジープラットフォームでウェブサイトを運用しているのであれば、AWS クラウドに移行するところからデジタルコマースジャーニーを始めてみてください。リフト & シフト型の移行ならアプリケーションをクラウドにすばやく配置でき、オンデマンドなスケーラビリティとゼロダウンタイムを活用できるようになります。これにより、ウェブサイトの機能をすぐに向上し、顧客体験を向上することができます。従量課金制なのでインフラストラクチャのコストも削減できます。
e コマースアプリケーションをマイクロサービスに分解する
巨大でモノリシックな e コマースウェブサイトの管理は困難です。Amazon も初期には 1 つのアプリケーションと 1 つのデータベースで運用しており、1 回のアップデートに 11 時間もかかっていました。私たちがマイクロサービスに移行した動機はそこにありました。モノリシックアプリケーションを分解して、より小さく、組合せ可能なマイクロサービスやビジネスロジックのパーツにし、さらに API によりさまざまな方法でそれらを組合せることができるようになり、変更やテストもはるかに簡単になりました。こうして Amazon.com は革新的な新しい e コマース機能を高速に展開することができるようになったのです。小売企業が e コマースプラットフォームをモダナイズし、イノベーションを加速するための、組合せ可能なサービスを AWS は数多く提供しています。マイクロサービスのアプローチ詳細については、昨年のブログ投稿「小売企業におけるヘッドレスコマースの実現方法」を参照してください。
マイクロサービスが成長とイノベーションにとってどれほど重要であるか理解するために、2020 年 6 月の Gartner レポートの次のポイントが参考になるでしょう:「2023 年までには、組合せ型のアプローチを採用する組織における新機能の実装速度は、競合他社を 80 %上回るようになるだろう」
顧客コンバージョンを向上させる
e コマースウェブサイトを訪れたお客様には、何かを買ってもらいたいものです。ブランドや商品を競合他社と差別化できるような関連コンテンツを追加すれば、より多くのお客様を獲得できることでしょう。例えばリアルタイムインタラクション、没入型商品体験、魅力的な商品の発見や最適化されたナビゲーションなどです。以下の AWS のお客様事例が参考になるでしょう:
- Pomelo Fashion では、Amazon Personalize の導入によりウェブページカテゴリからの総収益が 15 %増加した
- Morrisons では、パンデミックに際し、Amazon Connect を利用することで 8 週間でコンタクトセンターの従業員が自宅から仕事ができるようになり、毎週 6 倍もの通話量を捌けるようになった
- Trip.com は、パンデミックの間に魅力的な #DreamNowTripLater マーケティングキャンペーンを展開し、ライブストリームの旅行コンテンツを 4 億人の顧客に配信した
より多くのお客様にリーチする
ここで言うマーケティングとは、潜在的な顧客に意味のある働きかけをして、その顧客とつながることです。現在のターゲットオーディエンスや惹きつけたい顧客によりますが、厳選されたソーシャルメディアコンテンツ、デジタル広告、電子メールマーケティング、テキストメッセージングなどが戦略となるでしょう、パーソナライズ、機械学習、追跡、分析により戦術を強化することで、適切なメッセージを適切なタイミングで適切な顧客に届けることができるようになります。AWS は、Amazon Pinpoint、Amazon Advertising、Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS) といったその基盤となるサービスを提供しており、インテリジェントな自動マーケティングシステムを構築することができます。また、戦略的なキャンペーンの開発や展開を支援するさまざまなパートナーとも協業しています。
ブランドの期待値を実現する
注文した商品を正しく、できるだけ早く顧客に届けて満足してもらう、このコンセプトはこれに尽きます。返品は避けられないので返品や交換のプロセスも簡単かつ効率的でなくてはなりません。BOPIS や BOSFS (Buy Online, Ship From Store; オンラインで購入された商品を倉庫ではなく店舗から発送する形態) といったシームレスなフルフィルメントオプションを複数提供し、店舗に商品がない場合でも商品を顧客に直接発送できるエンドレスアイルも提供したいでしょう。商品と顧客プロファイルによっては日付指定のサードパーティー配達・返品も必要でしょう。
Party City はパンデミック中のロックダウン対応のために、AWS パートナーである配送フルフィルメントオーケストレーションプラットフォーム、Bringg と協力して、ラストワンマイルのカーブサイドピックアップ配送サービスを立ち上げ、パーティーグッズを顧客に配達できるようにしました。
デジタルコマースジャーニーの準備ができているなら AWS がお手伝いします。ジャーニーを始めるために今すぐアカウントチームにお問い合わせください。
著者について
David Dorf
David Dorf は、AWS のワールドワイドリテールスペシャリストであり、小売業界のお客様にソリューションを提供しています。 これまでに Infor Retail、Oracle Retail、360 Commerce、Circuit City、AMF Bowling、Schlumberger の Retail & Banking 部門においてさまざまなテクノロジーを使用した小売システムを開発する役職を歴任してきました。テクノロジー標準について NRF-ARTS に数年間協業し、Retail Orphan Initiative の慈善団体を継続的にサポートしています。バージニア工科大学、ペンシルベニア州立大学で学位を取得しています。
翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。